フェイクというには程遠い   作:若葉ノ茶

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頑固爺の思うこと

 

 

 

 

 

 

 とある海の彼方にて、悪魔の実を落としたロナン達の悲鳴が響いている頃――――――。

 

 

 

 

「うぉぉぉぁぁぁぁっ! 何としても捕まえんかー!!!」

 

 

「おだまり! 少しは静かにできないのかい!?」

 

 

「儂の曾孫ぉぉぉぉぉっ!!!!」

 

 

 

 軍艦にて響く鳴き声が複数あった。

 甲板にて涙ながらに怒声を上げる声に海兵たちが慌てているが、それらを静める老女がため息を吐いた。

 

 そもそも新世界ではなくグランドラインの序盤に来ているのは彼らの我儘が原因だ。

 もちろん仕事の為もあるが、公私混合でやらかしそうな爺共を止めるためにお守役として引き受けたのもため息を吐く原因でもあった。

 

 この爺共は先ほど送られてきた手配書一覧の中にあった例の少年と赤ん坊について文句を言っている。少年や赤ん坊にではなく、その周囲に対して。

 

 

 

「誰だ! 手配書に『生け捕りのみ』と記載した大馬鹿者は!! いや誰がやったのかは理解できるが……それにしても生け捕りにして何をするつもりか!!」

 

 

「まったくもってその通りじゃ! 赤ん坊を見ろ! 今から育て直せば立派な海兵に―――――」

 

 

「何を言うか煎餅爺っ! 赤ん坊を守っている少年こそ優秀だ! いや、写真を見る限りロナンは優秀で良い子だ。それに海軍から逃げきれているのが証拠だろう!」

 

 

「何じゃとおかき爺っ!」

 

 

「およしなさいダブル爺共。今の元帥が聞いたら青筋立ててキレること間違いなしだよ」

 

 

 

 否、それを含めて叫んでいる可能性も否定できないと老女―――――おつるがまた深い溜息を吐く。

 手配書に映し出されている少年と赤ん坊に対して様々な感情を向ける人間は少なからずいる。彼らは外見がまったく似ているのだ。年齢は違えども面影はある。

 

 手配書を出したのも一刻も早く捕まえるためだ。

 だが、それで海賊たちの目に留まり、興味を持って捕まえる奴らがいるかもしれない。

 ハイリスクハイリターンの可能性を考慮して、赤犬が指示を出したのだろう。あの赤犬が生け捕りのみの手配書を用意するとは思えないが。

 

 

 

「…………この子供たちは彼らとはまったくの別物なんだよ。それを分かってて言ってるのかい?」

 

 

 

 クローン体の噂は流れている。それに興味を持つ連中は多いだろう。

 いや、人間を一から作り上げることはもう不可能の領域ではない。だから海軍である程度の地位を持つ人間は少年たちがクローンであることを知っている。

 新たな生命を作り上げることだって、発想力が組み合わさった科学の力とその技術力さえあればドラゴンさえ作れる可能性をおつるは知ってるのだから。

 

 

 だがそれとこれとは話が別だ。

 

 彼らを作り上げた科学者の手配書を用意しても捕まらない事実への不安はあれど、それらを吹き飛ばすような爺共に冷めた目を向けるしかない。

 

 彼らはクローン体だ。

 爺共が愛してやまない子供の面影を持っているとしても、それは変わらない。

 ただ身体が似ているだけの他人に等しい。

 

 

 

 

「何を言うとるんじゃおつるちゃん」

 

 

 

 

 ―――――――それを、爺共は不機嫌な顔で文句を言う。

 

 

 

「クローン体であろうとも、細胞と血が全く同じということは、儂の曾孫も同然じゃ!」

 

 

「身体が同じだけ。血と細胞が同じだけ。それだけでも十分だ」

 

 

 

 

「……それで、以前味わった後悔を子供たちにぶつけるつもりなのかい?」

 

 

 

 

 鋭く睨むおつるは心配しているのだ。

 彼らが失ったものは大きい。それらを守ることはできなかった。

 

 曾孫という言葉を使う意味を彼らは理解しているのか。

 似ているという理由で守るつもりか。

 ……ただのクローンという理由だけでオリジナルとは違うロナン達をその代わりにでもする気なのかと。

 

 そう、おつるは怒っているのだ。

 

 

 

 

「ふむ、そういわれたら何も言い返せないな」

 

 

「そうじゃな。じゃが儂らの気持ちは変わらん」

 

 

 

 だが、爺共にも覚悟はあった。

 おつるの優しさと心配を察して、それ以上の覚悟で正面から向き合っているのだから。

 

 

「彼らもまた、多くの欲望によって生み出された被害者だ。手配書から捕えるのは協力しよう。だがその後は彼らがクローンでも危険人物の予兆がある人間兵器でもない、ただの一般人だと証明できればそれでいい。その後の平穏な暮らしは私が手配しよう」

 

 

「何を言うか。この子供らの優秀さは聞くだけでも分かるじゃろうに。海兵にすれば生涯安心して暮らせる。海賊には絶対にさせん! 幸せに暮らしてくれるというのなら、なんでもいいがな!」

 

 

「ああ、それは言うまでもない」

 

 

 

「おつるちゃんや、この子供らは代わりなどではない。儂らの我儘じゃ! それにな、クローンであったとしても、子供らをまったく同じに見ているわけではない! ただ血が似ている。見た目がそっくり。そんな子供らに情が湧くのも当たり前じゃろうて!」

 

 

「ロナンはロナンだ。『あやつ』自身として扱うつもりは全くない。ただそれだけだ」

 

 

「……つまり、愛しい子供たちに似ているだけであって、実際に血も繋がっているから家族として扱いたいということだね?」

 

 

 

「「その通り!!」」

 

 

 

 何ともまあ扱いにくい爺共だ。

 だが、情があるのは確かだろう。言いたいことは山ほどあるが、危害を加えるわけではないので良しとする。

 

 おつるもまた、彼らが被害者だと知ってはいる。知っているが手を出すような立場ではないのは確かだからだ。

 この爺共の方が自由に行動できる。手配書に載った子供を守る程度には勝手にやらかすだろう。その結果今の元帥からキレられようとも、あの頃の迷いも何もなく、覚悟が決まった爺はテコでも動かないだろうから。

 

 ――――――それを恨めしいとは思わないが。

 

 

「運が向くかは彼ら次第だ」

 

 

 

 この爺共が捕まえたら保護する! と叫ぶ程度には海軍は一枚岩ではない。

 だから、誰に捕まるかによって子供たちの未来は決まる。

 

 生け捕りのみにした輩がどう考えているのかもまだ確信したわけではないからこそ、おつるはこの先の不穏にため息を吐いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

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