フェイクというには程遠い   作:若葉ノ茶

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拾われ奪われ逃げられて

 

 

 

 

 

 海に落とした物がちゃぷんと揺れて、周りに波状が出来ながらもゆっくりと沈んで消えていく。それを唖然とした様子で眺める俺達。

 

 

 ――――――悪魔の実が海に消えていった光景を眺めていた男女だったが、一気に俺へと詰め寄ってきた。

 

 

 

「お前が落としたんだ! 取ってこい!」

 

 

「ええ、それぐらいの責任は取りなさい!!」

 

 

 

「うぐっ……」

 

 

 

 責任をとれという言葉に喉が詰まる。

 彼らはあの戦いからして悪魔の実の能力者だ。

 海に嫌われているから、海に落ちて沈んでいった実を拾うことは出来ない。

 

 だから俺が拾うしかない。拾うしかないのだが……。

 

 

 ―――――ちょうどその時、空を飛んでいるカモメが海から現れた化け物……いや、船よりも大きそうな海王類が顔を出して俺達よりも高い位置にいたはずのカモメに噛みついて来たのが見えた。

 当然カモメは食われ、海王類が海に消えた瞬間船が大きく揺れたのが分かる。

 

 

 

「あぶー!」

 

 

 

 そう言えばここってグランドライン前半の海。

 男女が俺に言った、その化け物がいるであろう海を、潜らないといけないという。

 

 

 

 

「ちょーっと落ち着け! 俺に責任取れとか言われても無理だし!」

 

 

「何が無理だってぇー! 落としたのはおめーじゃねえか!」

 

 

「いやだから落ち着こう。この海に落ちたものを取りに戻るのは分かってるし、俺も責任は取りたいって思ってる! だがしかし!! この海王類がたくさんいるであろう危険な海に飛び込んで悪魔の実を取ってくるという責任を俺が果たせるとお思いか!? この、ただのちっぽけな子供である、俺が!!」

 

 

「おめー言ってて悲しくならねえのかよ!!」

 

 

「うるせぇ! こちとら生まれてからずっとドジっ子なんだよ!」

 

 

「逆ギレすんなし!」

 

 

 

 ぜぇ、はぁ……よし、言ってやったぞ。

 それに彼らも納得してくれてはいる。

 

 

 

「じゃあ私達が海王類から守れるように上から援護するわ。命綱の縄でも付けて潜って……それで死にかけたら縄を引っ張れば大丈夫じゃないの?」

 

 

「そりゃあいい! 早速やるだすやん!」

 

 

 納得してくれてるわけじゃなかった。

 

 

「いやでも……おれ……」

 

 

「逃げんじゃねえ。お前が落としたんだからお前が拾え」

 

 

「ええそうよ。この赤ん坊は私達が預かるから、早く拾って帰って来なさい」

 

 

「あぶぶぅー」

 

 

 それってリードが人質になるフラグ……ああクソ。

 あっけなく俺の腕からひょいっと抱き上げられてはもうなすすべもない。

 

 

 

「まったく、ドジっ子だなんて誰かさんのようね……そう言えばあなた、よく似てるわね?」

 

 

 ジロジロと俺を見てくる女の方に何故か嫌な予感がしたので顔ごと視線を逸らしておく。

 

 ……もしかしてこいつら、俺のオリジナルを知ってる?

 いや気のせいだと思われてるみたいだから、ただ好奇心で見ているだけだろうか。

 

 ちょっと考えを変えよう。早く終わらせてこいつらから離れた方が良いかもしれない。

 即席だが渡される命綱を握りしめて、腰に巻きつけて幸運を祈る。

 

 

 

「あぶぶ!」

 

 

「……ちょっと待ってろよ。すぐに終わらせて帰って来るからな!」

 

 

 

 リードに向かって微笑みながらも頭を撫でてから、勢いでそのまま海へ飛び込んだ。

 海王類は……さっきのあのでかい奴はちょっと遠めの方を泳いでるな。

 

 鮫とかもいないみたいだし、早く終わらせよう。

 

 

 

「すぅ……はぁ……よし」

 

 

 

 すこしだけ潜って、悪魔の実が沈んだであろう場所を探す。

 ちょっと白めのぐるぐる模様をした悪魔の実だったから、覚えてる。

 

 薄暗い海の中。澄んではいるがいろいろと危険な海で小さな実を探す危険性にバクバクと心臓が鳴る。

 このまま死にたくはない。でもこのまま逃げれば男女が怒ってリードの命が危ないかもしれない。

 

 

 

「むぐ……?」

 

 

 

 あれ、なんか海の奥で提灯みたいな輝きを放つ船が見えるんだけど……沈んだ船?

 いやでも動いて―――――――

 

 

 

「ジャーッババババッ! よく見つけたなぁ。弟よ! これをお頭に届けるぞ! 悪魔の実は億ベリーもの価値を持つ者が多い。大儲けのチャンスだ!」

 

 

「おうともさ! いやー悪魔の実が落ちてくるだなんて幸運だったなー! さあ行こうぜ、売り払いによ! お頭たち、同胞たちがあそこで待ってるからなぁ!」

 

 

 

 

「んぐっ!!?」

 

 

 

 俺が見たことある実を手に持ってるのは――――魚人か?

 それでもって、船に積み上げている金銀財宝の他に置いたのは悪魔の実!?

 

 

 ぶはっ……っと海から浮上すると、俺を見降ろしていた男が命綱の縄を引っ張り上げてくる。

 

 

 

 

「どうしただすやん。悪魔の実は?」

 

 

「それが、深海に魚人がいてそいつらが持っていって……なんか、売っぱらうって言ってて!!」

 

 

「また厄介ごとかよ!」

 

 

 

 

 舌打ちをしている男と女が、慌てて荷物を持って動き出す。

 もちろん女がリードを抱き上げたままなので、慌てて俺も追いかけるが……。

 

 

 

「追いましょう。ほら、この船じゃなくてボートの方に乗りなさい! ……ああ、あなたは海の中を見て、魚人たちがどこへ行くのかを見てて!」

 

 

「んにーん……ここから売り払うってーとあそこっきゃねーがなー」

 

 

「万が一の為よ。分かってるでしょう!」

 

 

 

 ああもう! 俺のドジでどこまで騒ぎは大きくなるんだよ!!

 

 

 

 

 

 

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