フェイクというには程遠い   作:若葉ノ茶

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知らせて隠して懐かしく

 

 

 

 

 

 

 手錠付きで移動するのはかなり疲れる。

 それに一応檻の中に全てが収納されているといっても、外の見張りに見つからないようにするのはとても神経を使う。

 

 だが……なんだかやれそうな気がしてきた。

 何だろうか。以前にも似たようなことをやったような気がする。

 

 

「あぅー」

 

 

「……ちょっと待ってろ」

 

 

 

 まず見張りをどうにかして誘導しなければならない。

 それをやるのは俺の役目じゃないが。

 

 あーでも……

 それにしても、同じ商品だからこうも一緒にまとめてんのか。それか海楼石が使われてるのはここらへんの壁なのか?

 まあいいか。

 

 

 見つけた。宝の山に積まれた、あの見慣れた悪魔の実。

 俺の手のひらに収まるサイズだから微妙に悪魔の実だって分かりにくい。

 

 

 

 

「あぶぶぅ」

 

 

「さーって……」

 

 

 男が前もって渡してきたかけっぱなしの子電伝虫にトントントンと、三回ほど音を鳴らす。

 

 事前に音を鳴らすとか打ち合わせなんてしてないけれど、余計な言葉を言って外の連中にばれたくないのもある。

 

 でも、これで奴らは分かってくれるはず……分かって……

 

 

 ―――あれ、俺なんでそう思ったんだ?

 

 何でトントントンとやるだけで分かってくれるって思ったんだ?

 

 

 

 

「うみぅーー!」

 

 

 

 リードの声にハッと我に返った。

 ……いや、今は考えるのは止めよう。

 とにかく悪魔の実を持ってそのまま俺が会場へ行き売られるのを待つのみだ。

 

 会場へいけば、彼らはすべてを壊してくれる。

 手錠とかはまぁ……鍵を取りに戻れば良いとして、いつも持っていたリュックは店の奴らに捨てられたからなぁ。

 

 金目のもんが入ってねえから要らねえとか言いやがって……リードのオムツとか入ってたのに。

 

 なんか思い出したらイラついてきた。

 よし、その分の金はここから奪うか。俺のポケットは悪魔の実は入らないが、金のコインとかは入る。大量だとバレるから数枚入れてっと。

 

 あー……悪いことしてるけどこれは正当防衛だよな。よしそう考えよう。

 

 

 それで、悪魔の実はどうするべきかな。

 手の中の悪魔の実を見ながらも、思考を回す。

 

 

 

 

 

「おいガキ!そこで何をしている!?」

 

 

「っっ!!!?」

 

 

 

 ――――反射的に悪魔の実を口に含んで隠した。

 

 

 

「何か悪戯でもしてやがったのかクソガキ……いや、後で分かることだ。それよりも出番だぞ。さっさと行け!!」

 

 

 

 背中をバシッと叩かれて思わず飲み込みそうになった。

 でも必死に耐える。

 

 

 

「きゃうーー!!」

 

 

 

 ごめんリード。

 冷や汗だらだらな俺の顔を見て面白いと笑ってるみたいだけどそれどころじゃねぇんだ。

 

 

 

 

・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「ギャーッバババ!!いいか野郎共!今日は大量間違いなしだ!!飲むぞ!」

 

 

「「「「うぉぉぉぉっ!!!」」」」

 

 

 

 階下にいる魚人共に目を細める。

 おそらくあいつらが悪魔の実を持っていったんだろうと予測したからだ。

 

 あいつらは重点的に潰そうと決めた瞬間でもあった。

 

 

 

「ニーン……返事が来たみたいだぞ、ベビー5」

 

 

「返事?」

 

 

 

 少年に渡した子電伝虫と繋がる、灰色の子電伝虫。

 それに男はなんとも複雑そうな表情で見つめている。どうしたのかと見つめていると、数秒してからまた音が聞こえてきた。

 

 

 ―――トントントン。

 

 

 なんだか懐かしいような音。

 昔聞いていたような気がするもの。

 

 

 

「あいつ使い方知らねーって言ってたよなー?」

 

 

「……ええ、そう聞いたわ」

 

 

 

 少年が子電伝虫の使い方を知らないと言ってきたので仕方なくかけっぱなしであの子供の服の裏に隠したのだ。

 リュックなどの分かりやすい荷物は捨てられていたみたいだが、商品となる物をくまなく検査するよりも早めに売り払ってしまうのがその闇市場の特徴なんだろう。

 

 だから、声を出して「あったぞ」と言われると思っていた。

 どうせすべて破壊するつもりなんだし、悪魔の実を少年が持っているのなら、それ以外は倒せばいいのだと……何も気にしていなかった。

 

 

 三回の合図は、肯定の証。

 トントントンという音は、もうこの世にはいない男が電伝虫の先でやっていたもの。

 

 

 

 ただの偶然。

 音を鳴らしてあったと知らせただけのことだろう。

 

 そう思いたいのに、何故か違うと思える直感がある。

 そういえば見た目も似ているような気がする。メイクをして、あの特徴的な服を着たらきっと――――。

 

 

 

 

「あの子は一体……なんであの人にあんなにも似て……」

 

 

「考えても仕方ねえだすやん。問い詰めれば分かるぜ。どうせ悪魔の実を持ってのこのこやって来るんだからよぅ」

 

 

「……そうね、バッファローの言う通りだわ」

 

 

 

 複雑そうな顔をしている二人を含めて、まさにタイミング良く部屋が薄暗くなる。

 正面の会場から現れたのは、店の司会者であった。

 

 

 

 

 

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