フェイクというには程遠い   作:若葉ノ茶

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一部の舞台は整った。






ドジって騒がれ逃げていく

 

 

 

 

 

 店の舞台上の横に移動し、手錠に鎖を繋いでそのままの状態で立たされる。

 司会役の人が俺と繋がった鎖を持ったまま、マイク片手に大きな声で叫んだ。

 

 

 

 

「レディースアーンドジェントルマーン!!! さあさあご来場の皆さま。お待たせいたしました! オークションを開始いたします!」

 

 

 

 

 その声に合わせて様々な歓喜の声が響き渡る。

 通常の状態だったら、その声と様々な趣向を合わせたライトアップに感嘆の声を出したかもしれない。

 

 

 

「……んぐ」

 

 

「あっぶー!」

 

 

 

 リードが笑うが、俺は笑えない状態だ。

 俺達が逃げ出さないように店側の人間が横に待機しているせいで口に隠した悪魔の実を出すことは難しい。

 

 悪魔の実って口に含んでも大丈夫なんだよな?

 確か、呑み込んだら駄目なんだよな?

 ……呑み込まないように気を付けておこう。大丈夫だ俺ならできる。

 

 ドジることが多くても、これぐらいなら簡単だ。

 

 

 

「さあ行け!」

 

 

 

「ぐっっ……!!?」

 

 

「だぅー!」

 

 

 

 手錠に繋がった鎖を引っ張られ、横にいる人間に背中を叩かれて反射的に飲み込みそうになってしまうが耐える。大丈夫。ちょっとヤバかったけどまだ大丈夫だ!

 

 でもいい加減口から出したい……!

 ああくそ、早く終わってくれ。

 

 

 

「さあさあ、まず最初に見せます商品はこちらの少年と赤子になります!」

 

 

 

 中央の位置に立たされ、司会者が話す。

 お客の中を確認してっと……よし、あの男女はいるな。

 

 あの男女も俺を見て、口をパクパクと動かしながら仕草で「悪魔の実は持ってるな?」と言っているように見えたので頷いておく。

 そうすると、男女が立ち上がって会場ごと破壊しようと動き出す。

 

 これで多分、彼らが動いてすべてを破壊してくれるだろう――――――。

 

 

 

「さあ、この少年と赤子が普通に見えますかな? 実はそうじゃないんですよー! なんとなんと、彼らは政府によってつい最近、手配書に載ったのです!!」

 

 

 

 男女の動きが止まった。

 止まらないでほしいのに、司会者の話に興味を持ってしまった。

 なんだろうか。何を言うつもりなんだろうか。

 

 

「手配書! 【ONLY ALIVE 『“子連れ狼”ロナン』 懸賞金5500万ベリー】となる人物!」

 

 

 あー……うぁー……。

 いや、でもあの男女は海賊のようなもの。

 何かしらの理由があって追われているということは分かっているはずだ。

 だから手配書とかあってもあまり興味ないはず。大丈夫……。

 

 

 

「何故少年と赤子に対して生け捕りのみにしたいのか!? 政府が生け捕りにしたい何かをこの少年と赤子が隠しているのだろうか! それに興味はないだろうか! それを我々はとある情報網によって極秘に入手することに成功したのだーっ!!」

 

 

 やめて。

 お願いマジでやめて。

 

 なんかヤバい。あの男女に知られるのはヤバい気がする。

 それだけは駄目だと思う衝動が込み上げてるんだ……だからやめて。止めてくれ!

 

 

 

「だがしかーし! この『商品』に関する情報は買わないと教えることは不可能! さあ100万ベリーからスタートだぁ! 我こそはという者は手を上げてくれーい!!」

 

 

 

 あ、ああ……良かった。

 クローン体とか知られなくて良かった。

 というか海軍の情報網ってもはや周知の事実って感じじゃないのか?

 一部口止めされてる?

 

 いやでも……鷹の目にはクローンに関しては喋ったしなぁ。七武海で少年と赤子を探せという命令が下ってるのは知ってるけど、それだけの可能性もある。鷹の目は必要以上のことは話してくれなかったし、情報によっては俺達の身の危険はもっと悪い方でやばいことになる。

 それに、この店の情報がどこまで裏に繋がっているのかが心配でならない。

 

 もしも……■■■に知られたら……。

 

 

 心臓がバクバクと言っている。

 

 思わずごくりと唾を呑み込んで……飲み……っ!!?

 

 

 

 

「あっ……」

 

 

 

 

 やべえドジった! やっちまった!!

 唾を呑み込むどころか悪魔の実も丸ごと飲んじまった!!?

 

 

 

 

「あぶー?」

 

 

「やばい……殺される……」

 

 

 

 

 身体に異常はない。だがしかし、あの悪魔の実は彼らが取り返そうとしている大事な物。

 俺がドジって食べてしまったと知られたら、絶対に殺されてしまう。

 だってここまで来ることになったのも俺のせいだし……最終的に俺がやらかしたと知られたら怒るだろうからなぁ。

 

 

 

「な、何だ貴様ら……!!?」

 

 

「おいやめ――――――ゴフッ!!?」

 

 

 

 司会者の話に興味が薄れたのか、それとも後で話を聞こうと思っているのか―――――男女が観客席から周囲へ向けていろいろと破壊している。

 

 それに対して騒ぐ魚人とか、店側の黒服の人間とかが戦いを挑んでは吹っ飛んでいるのが見える。

 

 

 

「……逃げよう」

 

 

「だうー」

 

 

 

 リードの頭を撫でて、これが夢だったら良かったのにと願う。

 まあ現実逃避しても遅いよなぁ。

 身体に異常は何もないし、あの悪魔の実が偽物で本物があの商品がたくさんあった場所にあれば良いと願おう。

 

 とりあえず鍵……っと、女に撃たれて吹っ飛ばされた司会者の胸ポケットにあるな。

 よし、これで手錠を外して逃げられる!

 

 

 

「おい待て貴様!」

 

 

「ちょっ!?」

 

 

「あぶぶ!」

 

 

 

 不意に背中を掴まれて思わず抵抗する。

 リードをギュッと抱きしめて、何度も身体を暴れさせていく……!

 

 くそっ。早く離せ!

 あの二人にバレる前に逃げないといけないんだよ!!

 

 

 

「離せ!」

 

 

 

「っ! ―――――っ!!?」

 

 

 

 男が急に俺の背中を離した。

 何故かよく分からないが、男が口をパクパクと魚のように開けているのに声が出ていない……?

 慌てたように男がどこかへ行ってしまう。

 ……あ、爆発に巻き込まれて吹っ飛んだな。でも悲鳴も何も聞こえなかったぞ。

 

 

「……なんだ。この懐かしさ」

 

 

 

 これってなんか……見たことある気がする。

 いや、気がするんじゃない。確かに俺は見たことがあるんだ。

 

 知ってる。

 この悪魔の実を、俺は知ってる。

 

 どう使えばいいのかを、俺は知ってる。

 

 

 

「あっぶー!」

 

 

「……ああ、そうだな。今はそんなことしてる場合じゃないな」

 

 

 

 両手を伸ばしたリードに合わせて赤子の手をギュッと握りしめて。

 ……よし、逃げよう。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

「おいベビー5! あのガキと赤ん坊がいねえだすやん!!」

 

 

 

「え、何で!? まさか逃げたって言うの!?」

 

 

 

 いつの間にか消えている少年たちに戸惑いと怒りが込み上げる。

 もしかしたら悪魔の実を置いて逃げたという可能性もあったが、崩壊した建物をかきわけて探しても何もなかった。それはすなわち、持っていったということ。

 

 裏切ったんだとしたら、彼らを見つけて殺さないといけない。

 

 悪魔の実を盗んで逃げたんだ。それぐらいはしないと――――――。

 

 

 

 ――――――ぷるぷるぷる。

 

 突然なりだした電伝虫にビクリと肩が跳ねる。

 それはベビー5やバッファロー、どちらも同じく動きを止めてその電伝虫を見る。

 

 鳴り出したそれは、あのロナンという少年が持っているのと繋がっているからじゃない。

 それは、専用のもの。

 彼らにとって、親に等しい大切な人のもの。

 

 

 

「わ、若様……」

 

 

『……連絡がずっと途絶えていたが、悪魔の実はどうした?』

 

 

 

 聞こえてくるのは男の声。

 電伝虫の目も吊り上がり、その先で誰が話しているのかを理解したベビー5達は思わず頭を下げた。

 

 電伝虫は離すためもの。

 見ているわけじゃないが、それでもやりきれない気持ちでいっぱいだった。

 

 

 

「すまねえ若様! 油断した! あのガキ……ロナンってガキに奪われちまった!」

 

 

『あぁ? ロナンだと?』

 

 

「あ、ああ……手配書の子連れ狼ロナンっていうガキが持っていって―――――」

 

 

『フッ……フッフッフッフッフ!』

 

 

「若様?」

 

 

 

 若様が所望する悪魔の実。それを奪え切れなかったことに関して説教はあれど、本気で許されないことはないと身内であるベビー5達は知っている。

 だが通常ならば、もう少し落胆の声を上げているはずだ。

 

 仕方ないとため息をあげて……それで、帰還するようにと命令が下されるだろうと予測していた。

 もちろん追って奪い返せと言われても彼らは対応する。何かしらの罰を受けることになっても受け入れる。

 

 ベビー5達は、そう思っていたのだ。

 

 

 

「わ、若様……どうする? ガキどもを殺して奪い返すか?」

 

 

『いや、殺さなくていい。むしろ適当に追いかけて遊んでやれ』

 

 

「遊ぶ……?」

 

 

『ああそうさ。どうせガキの手に落ちたというのなら、もうとっくに食べてるだろうな。あいつはかなりのドジだ。……むしろ都合が良い』

 

 

 

 フッフッフ、と上機嫌なまま笑う男にベビー5とバッファローはそれぞれ顔を見合わせて首を傾ける。

 あの子供たちのことを理解しているのだろうかと、特にベビー5は考えていた。

 ドジなのはしばらく一緒にいたから分かること。それを若様は調べて理解している? 一度あの子供たちと知り合ったことがある? それとも……

 

 だがしかし、それを聞くつもりは彼女たちにはない。

 遊べと言われたらその通りにするしかない。それだけだ。

 

 

 

『言っておくが、殺すなよ。奴は家出しやがったあのガキを連れ戻す良いカードになる』

 

 

「なら、適当に遊んだらそっちに連れて戻った方が良いかしら?」

 

 

『いいや、放置しろ。どうせ何もしなくても俺の手に戻ってくる。適当に遊んで、適当に帰って来い』

 

 

 

 笑う男に疑問は浮かぶが、ベビー5達は頷く。

 

 彼が何を考えていようとも―――――追いかけることは決定事項になっているのだから。

 

 

 

 

 

 

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