フェイクというには程遠い   作:若葉ノ茶

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逃亡者ロナン達の島めぐり
目的は決まらないままに


 

 

 

 

 

 

 数時間が経過したように思えるが、もしかしたら数分かもしれない。

 破壊音も爆発音も何も聞こえない。

 

 ……もう大丈夫か?

 いや、まだ隠れた方が良いかもしれない。

 

 

 

 

「あぶぶぶぶ!」

 

 

「わっ!? あー……ごめんリード。ミルクとか入ってるリュックは今ないんだ」

 

 

「あぶっ……ふぇぇ……」

 

 

「ああごめんって! すぐに買いに行くから……」

 

 

 

 うるうると涙を込み上げさせるリードに慌てる。こいつの食欲は凄いのは分かってんだ。この騒動の間に泣き叫ばなかったことが珍しいぐらいには、たくさん食べるからな……。

 ああ、リードに我慢させちゃってたのか俺……。

 

 裏路地の大量に積まれた木箱の一つから身体を出して伸びをする。ずっと同じ体勢で隠れていたから身体がバキバキだ。

 

 とにかく早くミルクを作らないと駄目だよな。

 金のコインを持ってるから、離乳食用のものも買えるかもしれないし、まずはそれらを購入してリードを満足させてからこれからどうするかを考えよう。

 

 ……たぶん、あの男女は俺達が島から出ていないのだと分かっているかもしれない。

 だからすぐに見つかる可能性が高い。

 

 見つかったら殺される。だから早く逃げないと。

 

 

「あうー!」

 

 

「ああ、分かってる。急がば回れってな……」

 

 

 

 とりあえず、店がある方を見てみよう。

 えっと……表通りの、ショッピング広場だっけ。そこへ向かえばいいかな。

 

 何も起こらないことを願おう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……まあ、騒いだ後はこうなるよなー」

 

 

「あっぶー!!!!」

 

 

「ああごめんって! ほら、すぐに買うから……」

 

 

 

 町中全体が騒がしい。

 破壊音などは聞こえないが、人の話し声やら怒声やらでお祭り騒ぎだ。

 

 奥の闇市場が倒壊したとかでいろいろと野次馬しに向かっている奴等と、倒壊した中から財宝を探せと騒ぐ盗人どもがいるみたいだな。

 表通りの店。赤ん坊の物も売ってるようなお店の方は……ってか、店にも人がいないってどんだけなんだよ。

 なんか町全体の人間が中央のオークション会場に向かったような感じだ。

 

 町全体があの闇市場を知ってるのか?

 知っていて放置していたのか?

 

 ……それほどまでにもここらは治安が良くないってことなのかな。

 

 

 闇市場という名の大きなオークション会場が町の中心地で行われたぐらいだし、海軍がこの島を知っていても何もしないということはそれなりに理由があるかもしれない。

 

 まあ、あの2人が倒壊してもいいと思える程度のものだったんだ。

 だから無法地帯だとしてもあまり気にするほどの島じゃないに違いない。

 

 ―――――あいつにとっては、そうだろうな。

 

 

 

 

「……だから、あいつって誰だよ」

 

 

 

 頭を軽く振って気持ちを切り替える。

 

 店の中には誰もいないし……これは店を放棄してどっかヘ行った責任ってことで赤ん坊に必要な物は貰っていくとしよう。

 

 あーもう……盗んでもあまり気にしないとか本当に心がこの世界に染まってんのかな。

 あの悪魔の実を食べたせいだ。

 

 アレのせいで、変な気分になるだけだ。

 

 

 

「……ミルク用のお湯も作ろう。見つかっても逃げればいいだけの話だし」

 

 

「あうぅ!」

 

 

「ほーら泣くんじゃないぞー。すぐに作ってやるからなー」

 

 

「あっぶー!」

 

 

 

 店の奥は住宅も兼ねているのかいろいろと部屋があり、その中にはキッチンもあった。

 鍋に水を入れてお湯を作って、哺乳瓶にミルクを入れて残りは店の中にあった大きめのリュックの中へ……オムツとかも必要分以上の物を入れておいて、食料も……。

 

 ……うん、生きるためだ。仕方ないことなんだ。

 

 

 

「あぅー!!」

 

 

「……はいはい。もうちょっと待ってなー」

 

 

 

 温めた湯を哺乳瓶に移し、ミルクをひと肌温度に下がるまで待つ。

 その間に、片手で抱っこしているリードをあやしながらも―――――もう片方の手は外へ通じる扉の方へ。

 

 

 

「……サイレント」

 

 

 

 ああ、聞こえなくなった。

 町の音も何もかも聞こえない。俺の手から出てきた薄い膜があるから、そこを境目として壁になっているんだろう。

 防音壁として、能力が発動したということだろう。

 

 

「……俺は一体何を知ってるんだ?」

 

 

 なんだか懐かしい。

 悪魔の実を食べて出た能力だというのに、昔から使っているような感覚がする。

 

 どういう力なのかも分かる。

 どうやって使えばいいのかも分かる。その使い方のデメリットも分かるんだ。

 

 

 これは悪魔の実を食べたことによる知識なのか?

 なんか違うような……。

 

 

「ふぇぇぇぇっ!!」

 

 

「ああごめん! もう飲んでも大丈夫だから!」

 

 

 本格的に泣き始めたリードをあやしながらも、哺乳瓶を向けてゆっくりと飲ませる。

 いや、ゆっくりなんて速度じゃねえな。一気に減ってる……。

 

 

 

「ごめんな本当に。まだ赤ん坊で、何もできないのに……俺がちゃんと、守ってやるからな」

 

 

「あうー」

 

 

 ミルクを飲んでげっぷをさせ、ご機嫌となったリードの頭を撫でる。

 

 

 ……はやく、この島から去ろう。

 もうこの島は危険だ。手配書に載ってる俺のことを知られたし、あの2人が探してるだろうし。

 

 この島にも船はあるはずだ。

 能力を使ってでもいいから、船に忍び込んでやり過ごして……それで次の島に行こう。

 

 

 

「ん? なんか焦げ臭いような……」

 

 

 

 なんか黒煙が部屋の中に発生しているような……?

 

 ゆっくりと台所全体を見るために振り返る。

 そこはもう火事だった。

 

 というか、火を止めるのを忘れてた……!?

 

 

 

「またやっちまったぁぁ!!!」

 

 

 

 慌てて家から飛び出して逃げる。

 かけて駆けて―――――いろいろと叫びたい衝動を堪える。

 

 ……やっぱり無理! 叫ばなきゃやってらんねえ!!

 

 

 

「ああ畜生! 能力でドジが治ればいいのに!!」

 

 

 

 それが絶対に無理なのは分かってるけどさ!

 ああくそっ! この家の人、いろいろと本当にすいません!!

 

 反省もするし謝罪もするよ! 心の中でさ!!

 

 

 

「よし行くぞ。港の方へ!」

 

 

「だぁ!」

 

 

 

 

 

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