流れ着いた先のエンジュ島にて慌てて逃げる際にかっさらって来た資料と赤ん坊を手にとある老人夫婦の元でお世話になっている俺である。
名前は一応何となく本能に従って選んだものと、適当なものをチョイスしてやっておいた。
そのおかげで俺はロナン。赤ん坊はリードという名前になったが、まあいい名前なんじゃねえかなって思う。
問題は俺がついでにと持ってきた資料に書かれていたモノである。
悪魔の実の能力者のクローン体に関する資料。
過去において死人となった者や、生者の細胞と資料提供図。
有力な海賊の生物兵器計画。
そして、それら全ての結末にDr.ベガパンクなる者による却下指示が出されたとの記載。
そしてそれらを覆すために俺達を作り上げた科学者が逃亡し、シーザー・クラウンなる者とは違った方向においてやらかしていることの記載が書かれていた。
――――――だからこそわかる。
この世界は俺が前世で漫画として読んだことのあるワンピースの世界なんだってことを。
そして記載されている俺たちの情報がヤバかった。
いや、一部しか資料を持ってきてない為、俺の事情しか分からないけど……。
でもちょっとだけ嫌な予感はする。本能というべきだろうか。
とある海賊の船長によって希望されて生み出されたただの生き物が俺ということ。
俺が連れてきた赤ん坊はたぶん資料の後半に載っていた『有力な海賊の生物兵器計画』に基づいて行っているのだろう。
俺は違う。ただ海賊によって希望されて作られたんだ。
王下七武海という名前しか書かれてないが、七武海の誰が科学者に俺を作れって言ったんだ?
……なんか、それを考えると頭が痛くなるし、ピンクっぽい何かが浮かんでは消えてくのが妙に怖いから止めよう。
たぶん俺の身体に染み込んだ何かの記憶だろうけど、誰なのか分からないから止めておこう。
「ああ、ロナンくん。その瓶が入った木箱は捨てておいて構わないよ」
「分かったよばあさん。じゃあそれ以外に何か捨てておくものはないか? ついでに捨てておくけど」
「いいや大丈夫だよ。リードちゃんのこともあるからね」
「いやこいつ赤ん坊の割に度胸あり過ぎるくらいなだけだから」
「あぶー」
大きな魚を見ても笑い、俺がドジって危うく崖から落ちかけても笑い、そして腹減った時やオムツを汚した時にだけ泣くような赤ん坊だ。痛みには滅多に泣かないが、大食らいでもある。
まあ普通じゃないのは確かだな。
俺の言葉が分かっているんだろうか。小さなベッドに寝転びながらも赤い頬を膨らませてちょっといじけてる赤ん坊のリードに近づいて、その頭を撫でながらも苦笑する。
とりあえずばあさんの頼まれたことはやり遂げよう。
瓶入りの木箱を……っと、結構重いな。
よし、しっかりと持って一歩を踏み出して―――――――。
「どぉっっ!!?」
「あぶぶぶ!」
「うわ、大丈夫かいロナン君!?」
「だ、大丈夫……」
ずるっと背中からこけて、中に飛び上がった木箱が俺の顔面を強打する。木箱の中で瓶が割れる音がする。
ああ、木箱に蓋して頑丈に閉めておいて良かった……!
顔が痛いが、この程度の怪我ならば生まれ変わってから何度かやらかしたし大丈夫だ。
この島にやって来る前も小舟から落ちかけたぐらいだしな。
リードが俺を見て笑ってるのはいつものことだ、気にするな。
「まったく、ロナン君はドジだねぇ」
「ごめんごめん。でもこの瓶全部捨てるものだから良かったよ……」
「そりゃあね。じゃあ頼んだよロナン君」
「おー」
「あぶー」
「捨てる先で転ぶんじゃないよ! あと迷子になったり犬に噛みつかれそうになったりしないように気を付けるんだよ!」
「お、おう。できるだけ努力する!」
でもごめんばあさん。
俺のドジはこの身体になってから生まれつきなんだ。
・・・・・・・・・・・・・
ああこれは厄日だ。
否、あの時逃げ出した私にとっての厄日も同然かもしれない。
「…………で?」
「す、すまないジョーカー。だが手は尽くそう。アレはまだ生きているし、逃げただけのことだ」
クローン体が私を殴り飛ばした先はごみを捨てる際に使用していたダクトの中。
アレは気づいていなかったようだが……その先が問題だった。
私が気づいた時にはもう全てが燃えていた。生きていることが奇跡なぐらいに、
「フッフッフ。言いたいことはそれだけか?」
「何を言って……!?」
何かで身体中を縛り付けられて、動けなくなる。
殺気によって恐怖で身体が強張る。
ジョーカーは、本気だ。
本気で俺を殺す気だ!
「ま、待ってくれジョーカー! 君の希望通りのものは作り上げたつもりだ。クローン体にはあの死体の細胞によって採取されたすべての記憶を植え付けてある。力なんかは全て死亡前の通りだが……それも君の希望通りだったはずだろう! 何故私を殺す……わ、私が死んだら困ることがあるはずだ……!」
「いいや、てめえがいなくてもそれを引き継げる男がいる」
私と同程度の頭脳を持ち、その技術力を誇るがジョーカーに協力を惜しまない男。
シーザー・クラウンの事か……!!
「だがジョーカー! アレは私の最高傑作を持って逃亡して―――――――」
「言っただろう。てめえはもう終わりだ」
私の言葉を遮ったジョーカーが、歪んだ笑みを浮かべている。
「あの爆発で海軍が動いた。それはもう全て露呈したも同じなんだよ」
許されないと言われている。私の全てを否定される。
ああ本当に、厄日だ。