フェイクというには程遠い   作:若葉ノ茶

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すれ違いに勘違いのフレーバーを混ぜ込んで

 

 

「ええっと……俺のことについてはほら、たぶん知ってる人は知ってるだろうから、自分で情報を集めてくれないか? そ、そうすれば分かるはず……だから……」

 

 

「知ってる人って例えば?」

 

 

「……さ、さぁ」

 

 

 

 言い訳のようなたどたどしい言葉に、やはりと思える直感が働いたのをベビー5は感じていた。

 おそらく、彼はあの『コラさん』であってそうでないのだろう。

 

 バッファローも理解していた。彼の中にいる何かを。

 

 まだ確実とは言えない。

 けれど彼があのコラさんの何かなのは分かるから。

 

 若様が話してくれないのは、知らなくても問題はないと判断されているだけのこと。

 それはすなわち、『知りたいのなら好きにしろ』と遠回しに言ってくれているようなものだ。

 

 若様が自分たちに知らせたくないのなら調べるつもりはないが、そうじゃないのなら知りたい。

 若様が話した、ローの切り札となるこの少年を。

 

 

 見た目が少年だったとしても、中身があの時のままならば――――――――。

 

 

 

(ううん、そうじゃないのね)

 

 

 

 中身が同じなら私たちに近づくヘマはしないはず。

 いくら彼がドジだからって、私たちと一時でも行動して、決定的ともいえるあの悪魔の実を食べるようなことはないはず……。

 

 そんなことは……ない……はず?

 

 

 ベビー5は思わずバッファローの顔を見る。

 

 長年の幼馴染だ、何が言いたいのかすぐに理解してくれたと分かった。

 バッファローもまた、同じように考えていたのだから。

 

 

 ――――あのコラさんのドジは致命的なものが多い。

 それで、うっかり自分たちと接触して、やらかしているのならば。

 

 

 

「……ロナン、あなたにたくさん聞きたいことがあるわ」

 

 

「お、俺は……話すようなことなんて何もない」

 

 

「本当に?」

 

 

 じっとロナンの顔を見つめていると、彼は居心地悪く視線を顔ごと逸らす。

 その反応こそ、決定的なような気がした。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 あーっっ!!

 

 コレマジでどう説明したらいいんだよ!?

 俺のオリジナルであるロシナンテ。そのクローンを作ろうとした海賊の仲間の可能性が高いよなこいつら!?

 『ロシナンテ』もしくは『コラソン』と言われてちょっとだけ聞き覚えある感じが身体の中からしたんだもの!

 

 さっきは反応できなかったけど、追及を受けているうちにじわじわとこいつらの言葉が本当だと分かってきた。ロシナンテが『コラソン』と呼ばれていると理解できた!

 

 どうしよう。どう説明したらいい?

 俺は捕まりたくない。このままこいつらと一緒に行くことは出来ない。

 俺がロシナンテのクローンだって知られたら……なんか大変なことになるんだって本能が警報を鳴らしてんだ。だから言えない。話せない。

 

 むしろ自分で調べて来いよ!

 そしたら俺が堂々と逃げてやるからさ!

 

 

 

 

「……あーっと。俺はいない方がいいか?」

 

 

「あぅー!」

 

 

 

 部外者であるパウリーさんが急に席を立とうとしたので慌てて首を何度も横に振る。

 それに苦笑し、吸っていた葉巻を灰皿に入れて――――――それでも立ち上がってくる。

 

 

 

 

「このままじゃ店の迷惑になる。会計に行ってくるから待ってろ」

 

 

「おっと待ったパウリーさん! どうせツケ払いなんだろ!? 俺からも説明しにいくから一緒に行くよ!」

 

 

「うるせー! ツケ払いとか格好悪いこと叫ぶな!」

 

 

「本当にツケ払いのくせによく言う……」

 

 

「あぁ? 置いてくぞクソガキ!」

 

 

「ごめんなさい一緒に行きます!」

 

 

 

 

 会計はこのテーブルから見えない位置にある場所――――――幸運にも出入り口に一番近いところにある。

 そこまで行って、パウリーさんがスタッフに話そうとした腕を引っ張って、彼の耳に口を近づけた。

 

 

 

 

「おいなんだよロシー……」

 

 

「パウリーさん、ここから逃げよう」

 

 

「あぁ?」

 

 

「会計なら迷惑料として彼らが払ってくれるよ。それよりも早くここから逃げよう!」

 

 

「……逃げ切れると思ってんのか?」

 

 

 

 

 ――――――あいつら、半端なく強いだろ。

 

 いつになく真剣な顔で言うパウリーさんは冗談を口にしているわけじゃない。

 店で話しているうちに彼らの戦闘力を感じ取って、逃げ切れるようには思えないと理解できたんだろう。

 

 でも、俺は……。

 

 

 

 

「たぶん……逃げても大丈夫、だと思う」

 

 

「根拠は?」

 

 

「なんとなく」

 

 

 

 彼らはまだ俺がロシナンテのクローンだと察しているわけじゃない。

 ただ疑問に感じ取っているだけだ。

 だから今のうちに逃げておく。

 

 その後追いつかれたとしても……まあ、なんとかする。

 でも今ならば逃げ切れるだろう。

 彼らなら、確実にロシナンテのクローンだと証拠がなければ動かない……と思いたい。

 

 なんか考えてるうちに無理な気がしてきたな……ああくそ!

 

 

 

 

「もういいから逃げようぜ! どうせお金ないんだろ!? 彼らにご馳走になってもらおう!」

 

 

「金がねぇわけじゃねえよこの野郎!」

 

 

「いやツッコむとこそっち!?」

 

 

「いや……ああ分かった。お前がそう言うならそうしよう。次の島に行こうとしたお前らを引き止めてここまで連れてきた責任があるしな」

 

 

 

 ようやく頷いてくれたパウリーさんが、店のスタッフにいろいろと口添えをしてから外へ出る。

 ここの金は払ってもらえてラッキーと思っているのだろうか。ちょっとだけ笑みを浮かべて葉巻を口に咥え、火をつけて煙を吸う。

 

 

 

「事情はいろいろとあるみてえだが……海列車は珍しい乗り物だ。それぐらいは堪能しろよクソガキ」

 

 

「まあ、なるべくそうするよ」

 

 

 

 とにかく今は彼らから離れていろいろと考えておきたいんだ。

 

 

 

 

 






 店から出て行く気配が3つ。
 それはもちろん、先程まで見知った人の気配だった。

 いや、ロナンがリュックを持ってパウリーと一緒に離れた時点でおかしいと思えた。
 そして想像通りに行動した彼らに小さく笑う。



「逃げられたなー」


「逃げられたわね」



 これで決定的になった。
 ロナンはロシナンテに繋がる何かを隠し持っている。
 血縁者か、隠し子か。
 ――――――それともロシナンテ本人が実は悪魔の実の何かによって子供に戻ったか。


 年齢を変えることができる悪魔の実は確かに存在する。
 だがしかし、それでもなお疑問に感じることはたくさんある。

 若様が所望していた『ナギナギの実』がアルメリア国家の宝物庫に隠していたのは確かだ。
 あのロシナンテが食べた悪魔の実もそれだというのは聞いた。
 生きながらえていたのなら、あのナギナギの実はないはず。

 だから生き残っていることはありえない。
 でもロナンとして興味がなかった頃よりも、わけありの子供をこの店でよく見れば、ロシナンテ本人のような懐かしい気配がしたということが疑問点だった。

 小さい子供なのに、コラさんみたいだった。


 ――――あのコラさんならば、何かしらドジってやらかしているのはあり得る。


 食べて能力者となったはずだったが、ドジって悪魔の実を身体から分離した結果があれとか。
 現実的じゃないのに何故かあり得ると思えてしまう。


 ――――――でも、確実な情報を得られなければならない。
 彼がロシナンテの何なのかを知らないといけない。


「調べるだすやん。どうせ闇市場でも得られる情報なんだ。すぐに分かる」


「ええそうね」


 情報を得て、ロシナンテのことを知ることが出来たなら……。
 その時は、彼といっぱい仲良くしてやろう。
 ローの目の前で彼を見せてドヤ顔で自慢してやろう。

 ローがファミリーから戻らない間に、自分たちは彼と仲良くなったんだぞって言って鼻で笑ってやろう。
 そうしたら、彼はまた戻って来るかもしれないから。
 ローが戻って来なくても、ロナンをファミリーの一員にして昔のように楽しくしたいから。


 若様だって、もう二度と裏切らないように何かしらの手を考えているはずだから。


 彼を殺すなと言った。
 自由にさせてやれと言った。

 それはなんとなく、あの時ロシナンテがローを連れて何処かへ行った半年間のように、不穏な何かを感じたのが原因かもしれない。

 不安だった。
 ロナンがファミリーの一員になったらすぐ裏切るかもしれないというのが。

 そうしないように、手を打たないといけない。



「……沢山たくさん、遊びましょう」



  ――――――それが、若様からのご命令ですもの。


 そういったベビー5に、バッファローも頷いた。




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