フェイクというには程遠い   作:若葉ノ茶

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 ―――――夢を見る。

 大好きだった人を目の前で失った夢を見る。
 後悔した。止められない弱い自分を憎んだ。

 だがそれでも世界は何も変わらない。

 強くならないと意味がない。
 そうしないと、守れないと気付く男がいた。

 その夢を、彼はただの夢だと錯覚していた。




フラグというのは常に転がっている

 

 

 

 ウォーターセブンという島は、ほとんど海水が町に浸かっていて能力者の俺にとって凄く不便な町だった。

 といっても、陸地もあるし、水辺を渡るためのヤガラブルもいる。

 

 それになにより、寝食付きで働ける場所がある。

 まあ働けることができたのはパウリーの紹介があったからなんだけどさ。

 

 だからこそ、こうして平和に暮らしていける時間が何より大事だと思うんだ。

 

 

 

「ロシー! そろそろ買い出し行ってきてほしいわいな!」

 

 

「わかったー!」

 

 

 

 俺が働くモズとキウイの酒場から裏口に入り、ヤガラがある場所へ向かう。

 リードを抱っこひもで結んでいるのでいつもの買い出し用の鞄に金を入れてっと……。

 

 

 

「じゃあ頼んだぜ。ヤーくん」

 

 

「ニーッ!」

 

 

「にぅー!」

 

 

 

 ヤガラブルのヤーくんの荷台。

 その後ろ側はモズとキウイの発案によって作られたベビーチェアとなっているため、そこにリードを座らせる。

 ついでに前の荷台に鞄を置いて、落とさないようにしておく。

 

 ……ってか、なんかリードの奴いつもよりはしゃいでんな。

 ご機嫌なのはいいことだけど、なんかやったっけ?

 

 

 

 

「ろなー!」

 

 

「ハイハイ。ほら、大人しく座ってろよ。海にでも落ちたらっっ――――――んのっ!!?」

 

 

 

 

 不意にずるっと足が滑って陸地から水路へドボンと落ちる。

 息が苦しい……身体が……

 

 力がぬけるぅ……!

 

 

 

「ニーっ!」

 

 

「ぶはっ!?」

 

 

 

 ――――――何かに背中を引っ張られ、陸地へ戻される。

 何かと思ったら、ヤーくんが顔だけ水路に突っ込み、俺の背中の服を口に咥えて助けてくれたみたいだ。

 

 

 

「あ、ありがとうヤーくん……マジでいつもありがとう……」

 

 

「ニー」

 

 

 

 ヤーくんがやれやれとでもいうかのような顔で呆れている。

 まあヤーくんと買い出しとなるといつも落ちてたからな……さすがに救出するのも慣れるよな……。

 そんな俺のドジッぷりを見てモズとキウイが赤ん坊が水路に落ちないようにとベビーチェアを用意してくれたぐらいだから……はぁ。

 

 

 

「びちょー!」

 

 

「ああ、びっしょびしょだな……まあいつものことだし。そろそろ行くかな」

 

 

「いう!」

 

 

「いう。じゃなくて『行く』だろ?」

 

 

「いーきゅー!」

 

 

「……まあいっか。じゃあ頼むぞヤーくん、いつもの商店街へ!」

 

 

「ニー!」

 

 

 

 

 前へと動き出し、そのまま商店街へ進む。

 落ちないようにしながら……リードのはしゃぐ声に後ろを振り返りながらも。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

「おいモズ! キウイ!」

 

 

 酒場から現れたのはいつもの常連客。

 昼間でも酒場は開店しているため、手を動かしながらも出入り口付近に現れた男――――パウリーを見る。

 

 

 

「なんだわいな」

 

 

「どうしたんだわいな?」

 

 

「おい! あのガキ……ロシーはどうした!?」

 

 

 店の中を遠慮なく隅々まで見てロシー……いや、ロナンを探すパウリーに2人は首を傾けた。

 

 

「ロシーなら買い出しに―――――――――」

 

 

「なんだと!? いつもの商店街かっ!?」

 

 

「あ、ああ……」

 

 

 

 慌てている態度のパウリーに怪訝そうな顔を向ける2人。

 何かロシーがドジってやらかしたんだろうか?

 

 ロシーのドジはもはや呪いか何かと思えるほどに日常茶飯事で行われるものだ。

 客たちもそんなロシーのドジに慣れ、酒の肴として楽しむような珍客までいるほどに騒がしい少年。そしてよく腹減ったー! というかのように騒ぐ赤ん坊のリードもそこに追加されている。

 

 そんな少年たちを探しているパウリーに、モズたちは疑問しか浮かばない。

 

 

 

「一体どうしたんだわいな?」

 

 

「海軍が来てんだ! それもかなり厄介そうな奴らがな!」

 

 

「なっ……!?」

 

 

 

 モズとキウイは絶句した。

 そしてパウリーが慌てている理由を理解した。

 

 ロシーの本名『ロナン』は、手配書で珍しく生け捕りのみと記された人物。

 犯罪を犯したわけじゃない。だが何かしらわけありの少年と赤子に、かつて共に過ごした兄貴のように何も聞かずに傍に置いておくことを決めたのは何時だったか。

 

 パウリー達もロシーが手配書の人物だということは知っている。

 だからこそ、海軍は駄目だ。

 捕まってしまう恐れがあるから、危険だ。

 

 

 ロシーはそれを察して隠れるかもしれないが―――――あのドジさ加減でやらかす恐れがあった。

 それを彼らは心配していた。

 

 

 

「商店街っていったな!? 俺はそっちに向かうから……お前ら、あいつが帰ってきたら教えてくれ!」

 

 

「わ、分かったわいな!」

 

 

「そっちも……もしも見つけたら教えてほしいわいな!」

 

 

「ああ!」

 

 

 

 パウリーは駆けていく。

 商店街へ目指して、走る。

 

 

 

「無事でいてくれよ……!!」

 

 

 

 

 思わず呟いたパウリーの言葉。

 ―――――――世間ではそれを『フラグ』というのだが、パウリーは全く無自覚にフラグを立て、ただ無事を願って駆けていった。

 

 

 

 

 

 






 その海軍は、ある海賊たちとの戦いによって船を大破させていた。
 船大工はいるが、それはほぼ船としての原型がなくなっているんじゃないかと思えるほどの惨状。

 新しく船を作り上げた方が良いとのことで彼らはいた。


「何で儂のせいになるんじゃ……センゴクの奴め……」



 その男が目指す先は――――――――


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