「ニッー!」
「……あそこか」
ヤーくんはある程度誰がやったのかを想定していたらしい。
気絶していても、さすがはモズとキウイのヤガラ。
ウォーターセブンのどんな場所でも連れて行ってくれるヤーくんだからこそ、できたこと。
ヤーくんによって連れて来られた場所は海軍の軍艦。
やはりというか、予想していた通りというか……。
「くそっ……俺の考えが甘かった……」
手配書には、俺だけではなくリードも載っている。
それの意味する答えを俺はちゃんと分かっていなかった。
奴らはリードを保護という名の捕獲をしたんだ。
手配書の生け捕りオンリーであるからこそ、酷い目にあっていないと願っているけれど……でもそうはいっていられない事態だよな。
「リードが連れていかれたらもう終わりだ」
そうなったら、たぶん死ぬだろう。
実験台にされながら死ぬか、そのまま死ぬかどっちか。
リードを危険視し追いかける連中が海軍で、俺を何故か追いかけているのが海賊なのだから。
買い物用の鞄をごそごそと探ってみる。
よし……紙はあるし、ペンもある。
「ヤーくん、手紙をモズさんとキウイさんに渡してくれ」
「ニー?」
「ここでお別れだ」
「ニッ!?」
ヤーくんは驚いた顔で俺を見つめている。手紙を受け取れないと必死に首を横に振っていて、こっちも寂しい気分になっちまう。
でももう決めたことだ。
買い物鞄もヤーくんの中にあるし……まあ、ちゃんと買い出しできなかったのは俺の責任だけど。
俺が背負っているいつものリュックは店に置いてあるけれど、それを取りに行くような時間はない。リードを連れ戻したら、すぐに次の島に行かないと……。
「俺たちがこの島にいると海兵たちに知られた。だからモズさん達に迷惑をかけないようにしたいんだ」
「ニッ、二ー!」
「頼むよヤーくん。俺をちゃんと前へ進ませてくれ。お前が手紙を渡してくれないと……俺は後ろが気になっちまって思わずドジって海兵に見つかるかもしれないから」
「………ニー」
俺の説得を聞いてくれたヤーくんが、悲しそうな顔をしながらも手紙をちゃんと口に咥えて荷台の中へ入れてくれた。
手紙を渡すためにゆっくりと裏路地の水路を通って、モズさん達の店まで戻ろうとしてくれる。
何度も俺の方を見てくれるから手を振ってさよならを口にして―――――――
「
やるべきことは分かってるつもりだ。
ただの軍艦相手ならば、隠れて探せばいい。
海兵に見つかる危険性を避けながら行こう。
――――――なんとなく、このままどうすればいいのか分かっているつもりだから。
・・・・・・・・・・・・・・・・
「……大変ですおつる中将殿!」
「なんだい慌てて……?」
「それが……あの赤ん坊がどこかへ消えてしまいまして……!」
「なんじゃと!? ベビーベッドの中にいたはずじゃろ!?」
あのベビーベッドは高さがある。
ただの赤ん坊が逃げられるような代物ではない。
つまり、その場所から赤ん坊が姿を消すということは――――――――。
「……ロナンが来ているということか」
「……ああ、そうだろうね」
誰もがそう理解する。
もうこの軍艦の中に入り込み、逃げ出したとされるロナンの姿を。
センゴクの瞳に、元帥として活動していた時の燃えるような色が戻った。
「軍艦の出入り口を封鎖しろ! 絶対に外へ出すな! 見つけたら連絡。殺すなよ!」
「ハッ!!」
海兵たちが指示に応じて行動を開始する。
当然それらを見つめるだけで終わらせる気は、爺共である彼らにはない。
「行くぞガープ!」
「当然じゃあ! 待っとれよー儂の曾孫ぉぉ!!」
「はぁ……やれやれ、元気良すぎる爺共には困ったもんだよ……」
・・・・・・・・・・・・
「どこだ。どこに居る!?」
「探せ! 必ずこの船の中にいるぞー!!」
「はぁ……はぁ……くそっ、何で俺がいるってばれてんだよ……いや、ドジってるわけじゃない。まだ見つかってない!」
海兵たちから身を隠して前へ進む。
隠れて忍び込んで。その後どう逃げればいいのか何故か分かる。
それを疑問に思うのは後回しだ。
とにかく今は捕まるよりは動ける状況の方が良い。
「右に……いや、左?」
分かれ道で立ち止まり、どうすればいいのか考える。
俺の傍に部屋へと通じる扉がある。
廊下の先は左右に分かれており、そこから先はどうなっているのかは分からない。とにかく隅々まで探すしかない。
能力が発動しているので俺が原因で音がすることはないから、とにかく考える。
「もっとよく探せ!」
「―――――っ!?」
でも姿が見つかったらヤバいから、部屋の中へ入って隠れなきゃいけないよな!
よし、扉を閉めて隠れてっと……。
「中将だけではない、センゴク大目付殿も探してくれている! 分かってるかその重要性を! 逃がしたらどうなるか分かっているなお前ら!」
「「「おぉー!!!」」」
聞こえてきた声に、ふと身体が硬直した。
「……センゴクさん?」
心臓がドクリと鳴ったのが聞こえた気がした。
――――――あれ、その名前ってすごく懐かしい……ような……?
「……気のせいだ」
今は気にする状況じゃない。
中将という言葉も聞こえたし、戦力的にも強い海兵がいるのは確かなんだから。
「早くリードを見つけて、逃げないと……」
――――――センゴクさん!
――――――おお、ロシナンテ。何かあったのか?
――――――見てください。これ!
――――――おっ、おおぉ!? な、なかなか個性的な……だが凄いな。流石だぞロシナンテ。
――――――えへへ……。
幻聴が聞こえる。
子供のような俺の声が、誰かと一緒にいる声が聞こえる。
「……やめろ。これはただの幻だ」
頬を思いっきり叩いて目を覚まそうとする。
とにかく今はリードの事だ。
いろいろと考えるのは後だ!