フェイクというには程遠い   作:若葉ノ茶

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かつてそう言った誰かがいた

 

 

 

 

 

 かけて駆けて、海兵たちが集団で立ち止まり警戒している先を見つけて隅に隠れて様子を窺う。

 ああいう場合の時の対処は……えっと、誘導をすればいいんだ。

 

 

 いったん後ろに下がって、すこし遠めの……俺と鉢合わせしないような部屋に入って能力を解除して、海軍基地に置いてあった物で火をつけてっと……。

 扉を開けて廊下に出てから能力を発動させ、すぐに先程いた場所へ戻る。

 

 隠れながらも先へ進んで、先程いた場所へ―――――

 

 

 

「おい! 書斎室で火事が発生した! 原因は謎だがガープさんに続いてこれ以上船が壊されるわけにはいかない! お前たちも手伝え! 消火するぞ!」

 

 

「ハッ!」

 

 

 ドタドタと海兵たちが慌ただしく駆けていく。

 そうして残るのは警戒なき誰もいない廊下のみ。俺が通っても大丈夫。周りを見てもトラップも何もないし、いける。

 

 

 

「そういえば、何で誘導って思いついて……」

 

 

 

 前にもやったような記憶があるのは何で……いやいや、考えるのは後でにしようって決めただろうがロナン。

 俺は俺の目的を達成して無事に逃げ出したらその時に考えよう。

 

 

 

「――――――ぁ」

 

 

 

「うん?」

 

 

 

 聞き覚えのある声が聞こえてくる。

 頭痛の合間に聞こえる幻聴ではない。いつもの聞き慣れた声がする。

 

 

 

「ろなぁー!」

 

 

 

 やはり幻聴ではない。

 これは、いつものリードの声だ!

 

 

 

「リード……!」

 

 

 

 駆けていく先にリードがいる。

 その先にあいつがいるから……っ!

 

 

 

「おら、見つけたぞ!」

 

 

「あのロナンという子供はいないみたいだな……まさか赤ん坊だけで逃げ出したのか?」

 

 

「それはどうでもいい! とにかくガープさんの所へ……」

 

 

「やぁー!!」

 

 

 

 聞こえてきた声に思わず隠れる。

 ゆっくりと曲がり角の様子を見て、どうすればいいのかを計算する。

 

 

 海兵は2人。

 1人は抵抗しているリードを抱えて奥にいる。もう1人は手前。

 こちらには気づいていないが、子供の力で2人を相手にするのはきつい。

 

 

 だがそれでもやらないといけない。

 

 

 

「んぐっ……!」

 

 

「とにかく、赤ん坊はガープさんの――――――ぐはっ!?」

 

 

 

 

 こちらを見ていない手前の海兵の頭を思いっきり武器庫からとってきた細長いライフル銃でぶん殴る。

 殺すつもりはない。強打させるのに鈍器が必要だっただけのこと。

 

 だが、突然音が途絶えたことに疑問に思ったのか、もう一人の海兵がこちらへ向かって振り向く。

 

 その前に駆ける――――――。

 

 

 

「あ? おいどうした……なっ、貴様!?」

 

 

 

 

 こちらを見て警戒し、捕まえようとするがもう遅い!

 

 思いっきり振り下げたライフル銃が、そいつの目標めがけて攻撃へ移って……。

 

 

 

「サヨナラホームラン……ってな!」

 

 

「ぐぉぉっ!!?」

 

 

 

 思いっきり海兵の股間をライフル銃で強打させてやったら、男は涙目で悶絶し、そのままゆっくりと床に倒れて気絶した。

 ……まあ、男なら痛いのは分かるぜ。でもそうしないと倒れないと思ったから……ごめんな。

 

 

 ライフル銃を捨てて、リードの方を見た。

 

 

 

「ろなー!」

 

 

「良かった……リード、一人にさせてごめんな。すぐ脱出しような」

 

 

「あぃー!」

 

 

 

 男の腕から出てきたリードがこちらへ向かって勢いよくハイハイして近づいてくる。

 そんな上機嫌で笑顔のリードを抱き上げて……よし、このまま脱出すりゃあいい。

 

 

 

「さあ行くぞ。外へ出て……次の島へ!」

 

 

「ぼきぇーん!」

 

 

「はっ?……ああ、冒険な。……お前そんないろいろ喋れたっけ?」

 

 

「めちー!」

 

 

「次は腹減ったかよ。お前なぁ……いや、成長が早いことは喜ばしいことか」

 

 

 

 なんかまだ海軍の軍艦内だというのにいつも通りだ。

 

 ちょっとだけ笑って、その先の扉へ手をかけて――――――。

 

 

 

「ぬっ……お前は」

 

 

 

 はぁぁ!

 しまった、気を抜きすぎた!!

 

 やべえドジった。

 リードに会う前までは扉の先も警戒してたのに……!!

 

 

 

「ぐっ……」

 

 

「待て、少し話をさせてくれ!」

 

 

 

 逃げようとした俺を止める声が聞こえて――――――何故か身体が動かなくなる。

 どうしてだ。いつものように逃げればいいのに何で逃げない。逃げられない……?

 

 

「ろなー?」

 

 

「……ふむ、その赤ん坊はやはりお前に懐いているようだ。その子供の名前を聞いてもいいかな?」

 

 

「……知ってるはずだろ」

 

 

「お前の口から聞きたい。教えてくれないか?」

 

 

 

 

 何故だろうか。

 その言葉に頷いてしまう自分がいるのは。

 

 

 ……この人は、俺が知ってる人?

 いや違う。俺は知らない。

 でも知ってる人だ。

 

 頭痛がする。

 

 

 

 

「……リードっていうんだ」

 

 

「そうか。リードか……お前は、いやお前たちは海軍に保護される気はないのか? 私達に保護されるというのなら必ず処刑や実験などの処置は行わないと約束しよう。私達が保護者となって、君たちを平穏に育ててみせると約束する。海兵になることは必須だが……どうだ?」

 

 

「それは……」

 

 

「ロナン、私は君を―――――――」

 

 

 

 

 不意に近づいてきた海兵の男が、俺を捕まえるのではなく頭を撫でてくる。

 撫でられたことがあるような懐かしい感触。

 

 また会えたと何故か涙が……いや俺は……。

 

 

 

 

「俺は海兵にならない!」

 

 

「……何故」

 

 

 

 

 衝動のままに叫ぶ。

 リードを抱きしめたまま、心の奥底で響く言葉を口にする。

 

 何も考えず、その意味を知らずに声が出る。

 

 

 

 

「俺はもう海兵になれない。……だって、海兵を嫌った子供がいる。政府に関わる人間を心底嫌っている奴を知ってる。その子の為にも、俺は海兵にはならない! 死んでからも、そう心から決めてるんだ!」

 

 

「っ……ロナン、それはお前の感情では……」

 

 

「それに俺は、自分で平穏な場所を見つけるって決めてる! いくらあなたでも俺は……やりたいことだってあるんだ。それにリードがちゃんと育つまで……だからまだ、保護されるわけにはいかない!」

 

 

「お前は……」

 

 

「だからすいませんセンゴクさん! 俺はもう、あなたの傍には――――――」

 

 

 

 

「あっぶー!」

 

 

「痛っでぇぇ!!? 何すんだリード! ……って、俺……うん?」

 

 

 

 赤ん坊らしからぬ急なアッパーに顎が直撃して我に返る。

 俺は一体何を言ったんだろうか。

 

 男が呆然とこちらを見ている。

 いや……目に水が張って……?

 

 

 

「ロナンよ、これだけは答えてくれ」

 

 

「え?」

 

 

「お前は生きたいか?」

 

 

「っ……ああ、ちゃんと生きたい。リードと一緒に、生きてみたい!」

 

 

「あぅー!」

 

 

「そうか……」

 

 

 

 その言葉に、何故か男が俺に向かって背を向けた。

 背中から攻撃されるかもしれないと思わず、警戒もせずにただ背を向けてポケットからおかきを取り出して食べる。

 

 ええっと、どういうつもりで……。

 

 

 

「一度だけ、お前たちを見逃そう」

 

 

「うぇ!?」

 

 

「一度きりだ! それ以上は見つければ追いかけるし、強制的に保護もしよう……お前の我儘を聞くのは今回限りだ。良いなロナン、うまく逃げ出してみせろ」

 

 

 

 

 ――――――海兵が、手配書の俺相手にそんなことを言っていいのだろうか。

 いや、違う。男は何かを覚悟したような感じがする。

 

 でももうこれ以上は何も用はない。

 男の横を通り、扉を開けて、ただ逃げるために行くことを決意して――――――。

 

 

 

 

「生まれてきてくれて、ありがとう。ロナン」

 

 

「っ……こちらこそ、ごめんなさい。ありがとう」

 

 

 

 何故かそう、言いたくなった。

 

 

 

 

 

 







「なんじゃと!? 船から逃げ出す子供と赤子を見たじゃと!? ばっかもーん! そいつらがロナン達じゃ! すぐに捕まえろ!」


「は、ハッ!!」



「おやおや、うまく子供達に出し抜かれたようだね。まあ気を抜いて対応していたんだ。仕方が……ってどうしたんだいセンゴク。あんた泣いてるのかい!?」


「違う。泣いているのではない! ……ただ顔に水がかかっただけだ!」





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