フェイクというには程遠い   作:若葉ノ茶

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早足で次へと駆けて

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……」

 

 

 

 船から脱出したのは奇跡だ。

 でも次はそうはいかないだろうから気を抜かないようにしないといけない。

 

 ってか、脱出には成功したっていうのに、何でこんなに海兵がたくさんいるんだよ!?

 

 

 

「ロナンだ。見つけたぞ捕まえろ!!」

 

 

「くそっ!」

 

 

「あぅー!」

 

 

 

 子供の体力なめんなよ! こちとらもう限界なんだぞ!

 町を駆けて、海列車まで行くのは本当につらいっての!

 

 背後にいる大量の海兵が、俺達を捕まえるために追ってくる。

 あーでも……こちらを捕まえる気ではいるが、傷つける気はないのだろう。

 拳銃などを向けて放つような気配はない。

 

 たぶん……あの人がいろいろと配慮して指示してくれたかもしれない。

 

 

 

 ――――って、うわっっ!!!?

 

 

 

 

「しまったぁぁ!?」

 

 

「きゃーぅ!」

 

 

 

 足がずるっと滑って、身体が水路へ落ちていく。

 もちろんいつものように助けてくれる誰かはいないまま、身体が落ちて――――。

 

 

 やばいやばい……このままだと……!!

 

 

 

「ニーっ!」

 

 

「うぇ……や、ヤーくん!?」

 

 

「ニー!」

 

 

 

 何故か落ちた先にヤーくんがいて、俺たちを荷台に入れたまま何処かへ向かう。

 

 

 

「ヤーくん! このまま海列車の方に向かってくれ!」

 

 

「ニーッ!」

 

 

 

 当然だと言うような頼もしい声に思わず笑う。

 後ろを振り返ってみて……ってやっぱり流石は海軍!?

 

 普通に陸地から追いかけてきてるのに、距離が全然遠ざからねえ……だと!?

 

 

 

「待てロナン! ―――――っ!?」

 

 

「うわっ、おいなんだこれは!?」

 

 

「誰の仕業だ!?」

 

 

 

 

 後ろの方にいた海兵達が何故か全員こけて、そのまま立ち上がれずにいる。

 どうしてなのかと思ったら……海兵達の足にロープが引っ掛かり、身体をそのロープでぐるぐる巻きにされているのが見えた。

 

 

 路地から出てきたのは、葉巻を加えたパウリーで……。

 

 

 

 

「あーあー。アンタら、橋を作ってる最中に飛び出してきちゃ駄目でしょうに」

 

 

「なっ、貴様の仕業か! 早くこの縄を解け!!」

 

 

「いやいや、俺のせいじゃなくて勝手に絡まったのが原因ですよ。ほら、邪魔だからさっさとどっかに行った」

 

 

「なら解かんかい!!」

 

 

 

 

 遠ざかる声。それと、こちらを一度も見ることなく海兵を足止めする音。

 

 あんな場所に橋を作る必要がないことを俺は知っている。

 ロープが偶然海兵達の足に引っ掛かるだなんてミスを、パウリーがするわけないのを知っている。

 

 

 

 

「……パウリーさんも、この事を知ってるんだな」

 

 

「ニーッ」

 

 

「手紙……モズさん達だけじゃなくて、あの人も読んだんだ」

 

 

「ニーッ!」

 

 

 

 あー……なんか、すごく恥ずかしい。

 でもそれ以上に嬉しい。

 

 やっぱりあの人優しいな。それと格好いいな。

 

 

 

「なあリード、またここに来ることが出来たらさ……パウリーさんにお礼しないといけないなぁ」

 

 

「あぃー!」

 

 

 

 両手を伸ばして返事をするリードの頭を撫でやった。

 

 

 

「ニーッ!」

 

 

「ああ。海列車の駅だな!」

 

 

 

 見えてきた海列車の駅――――――ブルーステーション。

 その駅には幸運にも海列車が止まっていた。

 

 まだ発車する気配もなく止まっており、ヤーくんの頭を撫でて陸地へと飛び移る。

 

 

 

 

「ありがとうヤーくん! また会えたら……その時は水水肉でも奢るからな!」

 

 

「ニーッ!」

 

 

「ばいー!」

 

 

「じゃあまたな、ヤーくん!」

 

 

「ンニー!!」

 

 

 

 首を大きく振っているヤーくんに、手を軽く振ってから、駅の中に入るために走り出す。

 あと少しで次の島へ行ける。

 

 

 海列車に乗って、次に――――――。

 

 

 

「待つんだわいな!」

 

 

「ロナン!忘れ物だわいな!」

 

 

「えっ? も、モズさんにキウイさん!?」

 

 

 

 海列車駅の近くで待ち伏せていたのだろうか。

 俺たちに近づいてきたモズさん達が、見覚えのあるリュックを渡してくる。

 

 

 

「今までのバイト代も入ってるわいな」

 

 

「オムツやミルク、軽い食料なんかもいっぱい入れたわいな!」

 

 

 

 

「「気をつけて行ってくるんだよ!!」」

 

 

 

 

 二人が声を揃えて俺に言い、身体を抱き締めてきた。

 リードが苦しそうに呻いているが、優しい苦しさだと思う。

 

 

 

 

「ありがとう二人とも……本当に、ありがとう!」

 

 

「ほら、海列車が出発しちゃうわいな!」

 

 

「うん!」

 

 

 

 汽笛と煙が海列車から立ち上る。

 動き出しそうな海列車の後方―――扉を閉めなくていい所へ乗り込み、モズさんとキウイさんを振り返った。

 

 

 

「またこの島に……絶対に立ち寄るから!」

 

 

「その時はちゃんと店に寄るんだわいな!」

 

 

「そしたらアイスバーグの奴に会わせてやるわいな! その頃にはもう秘書も決まってるから、たくさん話もできるわいな!」

 

 

「うん、分かった! ありがとう!」

 

 

 

 動く海列車から、手を伸ばして何度も左右に振っていく。

 彼女達の姿が見えなくなるまで、ずっと。

 

 

 

「また来ような、ウォーターセブンに」

 

 

「なー!」

 

 

 

 いや、絶対に来よう。

 リードが成長した姿を見せるためにも。

 

 

 

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