はいまた遅いですが、お気に入り300件突破記念!
お話『研究所でロナンが覚醒したときに外科医と遭遇』を書きました。ロー視点です。
リクエストありがとうございました!
今度奴に出会った時はすぐさま「死ね桃鳥野郎」と顔面をぶん殴りながら言おう。
そう思えるほどに、彼は苛立っていた。
「ドフラミンゴの野郎……」
苛立ちどころじゃない。
舌打ちを盛大に鳴らすローの機嫌は最悪だった。
ドフラミンゴが重要視する物があるという情報から、やって来た無法の研究所。
あの男が脅して作らせたわけじゃなく、かのシーザー・クラウンのような協力者でもない人物に『依頼』という形で作らせた代物。
それが、ローの地雷ともいえる、あるクローンの作成だった。
研究所の科学者は逃亡しようとしたが、それを許すつもりはローにはなかった。
死んだ人間と全く同じクローンを作り上げるその技術は世界が許しはしないだろう。
それと同時に、あのドフラミンゴが彼を作り上げろと依頼したことの重大さも見逃せない要因だった。
―――――――彼を見逃せばまた作られてしまう。
恩人ともいえる人を道具のように量産し、俺の目の前に立ちはだかるかもしれない存在になる。
そんなクローンを作り上げる技術を壊さなければならない。
あの科学者と同じく、目の前の彼もやらないといけない。
ドフラミンゴを打倒するためには、彼はある意味足かせになってしまう。
「……あの、あなたは?」
「…………」
「こ、ここは……一体どこなんだ?」
書類から察するに生まれたばかりであるはずだ。
細胞は通常の人間と同じ。体調も良好。
普通の人間の子供と同じ生き物。でも実際には違うクローン体。
記憶を植え付けてあると書類には書かれていた。
だが生まれたばかりだからか、彼は覚えていない。いや、思い出せていないのだろう。
まだ彼は『彼』じゃない。
だから今のうちに―――――――。
(……殺るか)
ドフラミンゴを……ではない。
目の前にいる少年を、殺す。
まだ真っ白で何も覚えていないただの少年。
恩人の、『ロシナンテ』としての色はなにもない。ただの人間の子供。
それぐらいならやれる。
やることの覚悟は、出来ている。
それを少年は察したのか、冷や汗を流しながらも後退し、ローから逃げ出そうとする。
「でぇっっ!!?」
――――――と思った瞬間、急に転んで頭をぶつけて悶絶しやがった。
「ぐぅ……どぉわっっ!!?」
悶絶した先には、書類の山やら本やらが積み上がっている机が置いてある。
その机にまたも身体をぶつけ、降ってきた紙と本の山に押し潰されて目を回している。
たんこぶ並びに打撲数か所。
それぐらいで済んだのは、彼の身体が頑丈だからだろうか。
「……ははっ」
ああ、そういうところはコラさんそっくりだ。
真っ白じゃない。
目覚めた時から彼のままだった。
あの人の色が、残ってた。
「いでででで……」
頭を押さえながら座り込むその少年に近づく。
ハッとローに気づいた少年が、ずりずりと後ろへ逃げる。
立つ余裕もないのだろう。座った状態でもなお、必死に逃げようとする。
殺されるかもしれないと逃げる少年に向かって、『ROOM』と呟く。
ローと少年の周りに薄い膜が覆われ、殺されるんじゃないかと考えているであろう少年が顔を青ざめた。
生まれたばかりだというのに、そういう感情はとっくにあるらしい。
人形じゃなくて良かったと思える。
冷静さを失ったまま殺すところだった。
また失うところだった。
「シャンブルズ」
「ひっ……って、うん?」
ローが持っていた書類と少年の位置が変わる。
優しく抱き上げて、その少年の頭に自分の帽子を乗せたローに彼はただ首を傾けていた。
「……なあ、俺をどうするつもりなんだ?」
「……さぁな」
「こ、殺さない?」
帽子とあのふわふわの金髪のせいでローが彼の目を直接見ることはできないが、少年はまだ怯えていることははっきりと理解できた。
まあ、殺そうとした相手の態度が急変すればそうなるか。
ローは小さく息を吐く。
このドジな少年を、これからどうするべきなのかを考える為にも――――――ー。
「お前はもう俺の物だ。あの野郎に渡すつもりはねえし、殺すつもりもねえ」
「物扱い……」
何故かショックを受けている少年が帽子をより目深にかぶり、ローに抱き上げられることを受け入れた。
それはすなわち、このまま一緒にいることを許容したも同じ。
(ハッ、ざまあみろ。あのピンク毛玉野郎)
ドフラミンゴがコラさんのクローンを作ろうとした理由はきっと自分にある。
自分のせいで、彼は生まれた。
きっと裏切らせないために何かしら利用しようとしていただろう。
その時の扱いは悲惨なものになったかもしれない。
だがそのおかげで出会えた。
「……なあ、これからどこに行くんだ?」
「さぁな」
「またはぐらかすのかよ……」
ふてくされる少年に思わず笑う。
今度は絶対になくさない。
足かせにさせない。
記憶はなくてもいい。
コラさんじゃないとしても、彼を守らないといけない。
そのためならば――――――俺はきっと、なんでもやれそうな気がするから。