いつもの番外編IFです!
テーマ『ロナンがもしもリードである赤ん坊を気づかず、また起爆スイッチを押さずに逃げ出したら?』
リクエストありがとうございます!!!
その日、全ての運命が決定付けられたともいえる。
彼は何も気づかないまま、逃げ出した。ただ科学者を殴って気絶させて、混乱のままに逃げ出した。
研究所の起爆スイッチも何も気づかず、ただその足で外へ駆けてしまった。
それこそが、彼の最大のドジ。
壊れた一つの歯車は、やがて全てを歪ませてしまう。
「それで、こんな失敗作を叩き起こして何をやってるかと思ったら……」
「やかましい! あれは貴様とは違い成功作の一つだぞ! それもかのドフラミンゴに渡す方のな!!」
「私のように制御装置でも付ければ良かったんだよ。変なところで気を抜くだなんて馬鹿だなー」
「なぁー?」
「ええい、黙れ!」
女と赤ん坊が笑う。
それを咎める男―――すなわち、科学者の方は、ただ己の失態に苛立ちを隠せないまま、盛大に舌打ちをする。
「いいかオルタナティブ。貴様には多く働いてもらうからな」
「その逃げた奴を追うために?」
「ああそうだとも! だが海軍に見つかるような真似はするな。貴様は戦闘能力だけは優秀だから廃棄処分を延長しているに過ぎないことも忘れるなよ!!」
「へいへい、わかりやしたぁー」
「やる気をだせオルタナティブ! これが失敗すれば、あのドフラミンゴに殺されるのは私だ。それすなわち貴様も同じことを忘れるなよ!!」
「アイアイサー」
「あっぶー」
赤子はただ笑う。
懐かしき気配を身に纏う少女―――オルタナティブを見て笑う。
「久々に海に出るだなんて不幸だ。あー……肉が食いたい……野菜の方がいいけど、身体が肉を欲してる……」
オルタナティブは高性能かつ完璧なものを作り上げようとする科学者にとっては失敗作。
全ての反対。男ではなく女。冒険を嫌い、命令には従うがじっとしていることの方が好きな、少し残虐な14歳の身体年齢をしている少女。
クローンとも呼べず、記憶は植え付けてあるのに性質などは変わっている部分がある。
だがしかし、その力はオリジナルに近い存在だった。
オルタナティブのオリジナル―――その名を、麦わらのルフィと呼ぶ。
・・・・・・・・・・・
これマジでどういうことなんだろうか。
普通に婆さん達の家でのんびりと買い出しに出かけていたはずだ。
なのになーんで商店街の建物がいろいろと壊れてるんだよ!?
あと鷹の目とかいるのなんで!?
それにあいつ誰だよ!
にやにやと笑っている……何故か麦わら帽子が似合いそうな女の子が、目に闘志を宿したまま鷹の目を見る。
女の子と鷹の目が、戦ってる?
「ひっさびさに外に出て、私の後輩を追ってみるのもいいもんだ。面白いのに出会えたじゃねーか。なあ鷹の目!」
「なるほど、少々訳ありの娘か」
「げぇ……む、麦わらにそっくりな……女ぁ!?」
あとあのピンク髪の宙に浮いてる女も誰ですか?
というか何だこのシュールな光景……。
鷹の目は剣を振り下ろす。それに瞬時に対応して、女の子が鷹の目に殴りかかる。
だが鷹の目はそれに対応して――――ああくそ。素早すぎてよくわかんねえ。
というか、あの女の子って……。
「もしかして、あいつも俺と同じでクローンなんかな……」
「……あっ」
「え?」
こちらを振り向いた少女と目が合う。
戦いをやめて、一気にこちらへ興味を移してる?
何か嫌な予感が……。
物陰に隠れる俺を見て、奴はニヤリと笑う。
「みーつけた! 鷹の目、戦いはまた今度な! 私は私なりの目的があるからさー!」
「えっ、ちょっっ!!?」
やべえ、逃げないとっ!!
・・・・・・・
その日、ロナンとオルタナティブの追いかけっこが始まった頃。
科学者の男はベッドに寝転がる赤ん坊を抱き上げ、ある場所へ向かうために歩いていた。
「お前は私の成功作。だがな、その赤ん坊の姿のままではやれることもない」
そう言いながら、男は赤ん坊をある機械の中へと移す。
その機械はドーム型に出来ており、大の男一人が入れるほどの大きさをしていた。
そのなかにちょこんと寝転がる赤ん坊を、ただ笑ってみている。
「赤子から育てれば人となる身体を無理やり成長させる行為だ。あのオルタナティブと同じく寿命は半減する。だが、絶大な戦力を手にすることになる」
機械の扉を閉めて、科学者がスイッチを押す。
「どうせいくらでも作れるようになる。私は優秀だからな」
機械が光り輝き、何かの液体が閉められたドーム型の機械の中に満たされる。
赤ん坊の泣き声は聞こえない。ただ、機械の歯車の音がするだけだ。
―――やがて、その機械から扉が開かれる。
そこにいたのは、全裸の男だった。
「いいか、お前はオルタナティブと同じくドフラミンゴの依頼されたクローンを連れ戻してもらうぞ、分かったな」
「……ああ、了解」
少しだけダルそうな顔をした男は、あの赤ん坊の面影を残したクローンだった。
「さぁ、早く連れ戻せ。そしてお前の成功作としての優秀さを私に見せろ!!」
研究所にて高笑いが響く。
それが、全ての始まりだとでもいうかのように。
壊れた歯車は、正しく戻ることはない。
研究所が海軍に知られないまま。海賊にもそのクローンを知らぬまま。
―――ロナンに名付けられるはずだった『リード』という名ですらない男が敵になってしまったほどに、もう何も、変えられることはない。