フェイクというには程遠い   作:若葉ノ茶

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三つ巴の小さな共闘戦
海列車の先の惨事


 

 

 

 

 

 一息つけたというのは、まさに今の状況を言うのだろう。

 最後部の扉を開けて列車の中へ入り、椅子へ座る。

 

 人はほとんどおらず……うん、リュックを隣の椅子に置いて、リードを座らせても良いと思えるぐらいには誰もいない。列車の後ろの方に座っているからか、それともあまり乗車する人はいなかったのか。

 まあそれはどうでもいいか。リードが椅子に座った先から外を眺めてとても楽しそうだし、落ちないように気を付けておこう。

 

 

「これからどうするべきか……いや、何をするべきなのかな……」

 

 

「うー?」

 

 

 あの時、あの人を見た瞬間に感じた強烈な懐かしさと悲しさはどういう意味なのか……今の俺にははっきりと分かる。

 不意に口にした言葉も全て――――――あれは、俺の言葉じゃない。

 

 だが、本心から口にした言葉だという自覚もあった。

 

 

 

「……クローンとして、記憶が目覚めてるってことか」

 

 

 

 鷹の目が言っていた言葉を思い出す。

 オリジナルとしての記憶が目覚めれば、クローンとしての俺が消えてしまうかもしれないという言葉を。

 

 ……でももう手遅れな気がするんだよな。

 それに、思い出しても大丈夫な予感もある。感情や記憶のせいで俺が俺じゃないような言葉を吐くときもあるけれど。

 

 でも、あの人……センゴクさんに会って思い出さないといけない感情に芽生えたんだ。

 何故か、そうしないといけない気がして……。

 

 

 

「……問題は思い出せるか否か。なんだよな」

 

 

「あーうー!」

 

 

 

「っておいリード。お前何やってんだよ?」

 

 

 

 置いておいたリュックの中を探っているリードに苦笑する。

 外の光景にはもう飽きたんだろうか。それとも腹が減ったのか?

 

 

 

「……あれ、なんだこれ」

 

 

「こりぇー」

 

 

 

 リードが手に持ってぶんぶん振り回していたのは、ウォーターセブンでよく見かけていた仮面。

 子供用の仮面で、顔を隠せるようなもの。

 

 ……なんか仮面の裏に手紙が張り付けてあるな?

 

 

 

「なになに……えっと、『仮面なら海軍に見つかっても顔を隠すことができるわいな!』……って、モズさんにキウイさん……」

 

 

 

 この怪しげな仮面で顔を隠しても、海軍に怪しまれるのは確実なんじゃないのかな。

 余計に怪しまれて仮面を剥ぎとられたらどうすればいいんだろうか。

 

 ……あーいや、好意は受け取っておきます。

 使える時が来るといいのだけれど。

 

 

 

「いや、ないよなー」

 

 

「なー?」

 

 

 

 リードが首を傾けて笑ったので、その頭を撫でておいた。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 海列車が進む、次の島。

 春の女王の町セント・ポプラ。

 

 最近では、よく分からない歌舞伎の人やら石鹸人間やら動物の……キリンや狼などによって襲ってきた海賊の危機から救ってくれたとかいう話がある。その感謝も込めて祭りを開いているんだとか。

 

 それ以外にも―――――――祭りの中であるいろんな海の貴重な掘り出し物が売られるとかいう話もある。例えば空から降ってきた不思議な貝。能力者を封じることのできる石。それ以外にもあると言われる。

 

 俺が逃げた日は、その祭りが数日開催される最中だった。

 

 そのはずだった。

 

 

 

 

「……なんだこれ」

 

 

 

 

 海列車から降りて駅から見えた先には、爆発でもあったかのような惨状。

 地面が割れ、ぱっくりと外灯が真っ二つに切れ、家が所々破壊されている。

 海賊の奇襲でもあったのだろうか。

 

 町全体が何やらボロボロで、海兵たちがそこらに歩いているのが見えた。

 

 

 

「スモーカーさん! スモーカーさん、どこに居るんですかー!!」

 

 

 

「やべっ……」

 

 

 

 物陰に隠れて様子を窺う。

 剣を腰にさした女性だが、嫌な予感しかしないのはなぜだろうか。それにあの女性って見たことあるような気がするんだよなぁ。

 これは前世の記憶か、それともオリジナルとしての記憶なのか。

 

 ……最近どっちがどっちなのかぐっちゃぐちゃなんだよな。

 はっきり思い出せたなら分かると思うんだけど。

 

 

 

「……とりあえず、仮面の出番かな」

 

 

 

 すいませんモズさんにキウイさん。仮面が使う日は来ないとか言って……。

 顔を隠す必要が出たので使います。

 

 

 

「あぶー!」

 

 

「俺の顔が仮面で隠れて面白いか、リード?」

 

 

「あいー!」

 

 

 

 リードが手を伸ばして俺の仮面を触ってくる。

 まあそれは好きにさせておくとして……。

 

 

 

「とっとと次の島に行こう」

 

 

 

 海列車はしばらく出ないから船で行こう。

 どうせ海列車の次の島は美食の町プッチだし、あの俺達を追ってきていた男女がまだいる可能性だってある。

 

 能力を駆使すれば船の中で隠れることもできるだろうし……よし、そうしよう。

 裏路地を通って、海兵たちから隠れながらも船があると思える港を目指す。

 

 

 

「……あれ」

 

 

「うー?」

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……」

 

 

 

 

 青髪の女の人が腹から血を流して座っているのが見える。

 両手で袋を大事に抱えて――――――誰だあの人?

 

 

 

「海賊……いや、一般人か?」

 

 

 

 

 なんにしても、このままにしておくわけにはいかない。

 一応リュックの中には包帯とかもあるし……助けるか。

 

 

 

「リード、大人しくしとけよー」

 

 

「あぶー!」

 

 

 

 

 

 

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