フェイクというには程遠い   作:若葉ノ茶

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彼はとっくにドジってる

 

 

 

 

 

 腹の怪我に応急処置をしていく。

 血はかなり出ているが、深手ではないみたいだ。

 といっても、前世的な思考で見れば重傷なのは確かだろう。

 

 ……ああ、こういう時に限って記憶が混合してるって実感するな畜生。

 応急処置だって普通ならできないのに、どうすればいいのか分かるのだから。

 

 

 包帯を彼女の腹に巻き、目覚めるのを待つ。

 医者の所へ連れて行きたいが、彼女を支えて何処かへ行くことなんて俺にはできない。

 

 

 

 

「あぅー」

 

 

「リード。その人の持ち物に手を伸ばしちゃだめだ―――――どぉ!?」

 

 

 

「うだぁー!」

 

 

 

 派手に背中から転がり、壁に頭をぶつけて激痛で身体が震えるぅ……!

 いだだだだっ!

 

 頭に直撃はマジで痛い……ああくそ……!

 リードは笑ってるけど、こっちは泣けてくるんだからな。一日に何回か転がるけど、頭へ直接ダメージがいくのはかなり辛いんだからな!

 

 

 

 

「うっ……」

 

 

 

「うぐぐっ……ん……?」

 

 

 

 瞼を震えさせ、うめき声を上げながらも目を開けてくれた女の人が、こちらを見た。

 

 

 

「だ、誰。海賊っ!?」

 

 

 

 あっ、やべ。

 もしかして海兵がいた時からずっと仮面かぶってるから変な奴だと思われたか!?

 

 こちらを警戒し、何故か片手を淡く光らせてきた女性に向かって何度も首を横に振る。

 

 

 

「ち、違う違う! お祭りだって聞いて……ほら、仮面付けていろいろと遊ぼうと思って! それで、お姉さんが腹から血を出して倒れてるのを見つけて応急処置だけど手当てして助けたんだ。俺は海賊なんかじゃないよ!」

 

 

「あぶー!」

 

 

 何でリードは微妙に不機嫌なんだよ!

 変に思われるからそこは笑っとけって!

 

 いや、そういうことは言えないから……とりあえずリードの頭を撫でて女性から一歩だけ下がる。

 

 

 俺達をじっと見つめている女性は何も言わない。

 仮面をずっとかぶったままでいる俺に対して、怪しいと思っているのだろうか。

 

 ―――――いや、どう考えても怪しいよな!

 いくらなんでも変な仮面かぶって応急手当てする少年って怪しさ満点だよな!

 

 ああドジった……って言えるのか?

 

 手配書を見られていたんなら俺を攻撃しようとするかもしれないし……でも、助けたことに悔いはないし……。

 

 

 そう思っているうちに、淡く光っていたはずの女性の片手が下げられる。

 こちらを見て小さくため息をついて、ゆっくりと口を開いた。

 

 

 

「……悪かったわね坊や達。この島に海賊がいたからとっさにそう思ってしまって……それと、手当てしてくれてありがとう……うっ……」

 

 

「お姉さん、無理しない方が! ほら、医者に行った方が良いと思うぜ!」

 

 

 

 立ち上がった女性が怪我の痛みでふらつき、地面に片膝をついて荒く呼吸している。

 今は命に問題はないとしても、このまま出血し続けているといずれ死んでしまうだろう。

 

 無理やり立とうとして包帯の隙間から出血しているんだから相当な痛みのはずだ。

 

 

 

「大丈夫よ坊や。私には……私達にはやらないといけないことがある。奥にあるもう一つの……あれを手にするために、襲撃しないと……」

 

 

 

 だが女性は頑なだった。何かをぶつぶつと呟きながらも、必死に前へ進もうとしていた。

 倒れた時から持っていた袋を大事そうに抱えたまま、さらに路地裏の奥へ入ろうとする。

 

 何かの目的を持って、その信念を貫こうとする。

 

 

 

「あと一つです、先生。あと少しで……」

 

 

 

 何となく、邪魔しちゃいけないような気がした。

 それぐらい彼女の瞳はまっすぐで、それで死ぬのも本望というような感じがした。

 

 

 

「ろなー!」

 

 

「……応急処置はしてある。でも医者に行かず、どこかへ行こうとするのなら……その責任は彼女にある」

 

 

 

 俺を初めて見た瞬間に海賊と言って険しい表情を浮かべたぐらいだ。

 彼女は悪じゃない……と思う。

 

 路地裏の奥へ進み、彼女の姿が見えなくなるまで思わず見送ってしまったが……本当にこれで良かったんだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よぉ……ちょっといいか」

 

 

「え?」

 

 

 

 急に俺の背後から、少々声色の高い少年の声が聞こえた。

 幼い声だから海兵ではないはず。乱暴そうな声だから海賊の子供とかかもしれない。

 ……でも、なんかピリピリしたような声だ。

 

 

 それに聞いたことのあるような声がする。

 何となく、振り返っちゃいけない。でも振り返らないといけないような気が……。

 

 

 

「ここに女がいなかったか? 青髪をした女だ。俺はそいつを探してる」

 

 

 

「えっと、彼女が何か―――――――」

 

 

 

 

 振り返った先にいたのは、刀をこちらへ向けている子供だった。

 リード以上の刺青が、少年の半袖から覗く腕に描かれているのが見える。

 何度か徹夜したんじゃないかと思えるような隈。そして少し顔色が悪そうな白い肌。

 

 モフモフの帽子をかぶった少年に――――――見覚えがある……ような……。

 

 

 

 

「トラファルガーっ……ロー!!」

 

 

 

 

 路地裏の真上。

 煙を身体に纏いながら落ちてきた彼と同じ年齢ぐらいの少年が十手を手に持ったまま襲いかかってくる。

 それをモフモフ帽子の少年が、その幼い身体には似合わない長身の刀を自在に操って抵抗して火花が出て……。

 

 

 

「きゃーぅ!」

 

 

「いやいやいや。喜んでる場合じゃねーぞリード!」

 

 

 

 ってかなにこれ。なんだこれ!?

 

 なんかリードも変に喜んでるし!!?

 

 

 

 

「チッ、なかなかしぶといな白猟屋。おいお前ちょっと来い」

 

 

「え?」

 

 

 

 

 腕を引っ張られ、何故か抵抗できずにそのままモフモフ帽子の少年の言うがまま連れて行かれる。

 というよりは、後ろにいる険しい顔をした少年から逃げる。

 片手を引っ張られて―――――――

 

 なんか……それも懐かしいような……?

 

 

 

「けむりゃーん! とりゃ……あぅ。とりゃおー!」

 

 

「誰がケムリンだクソガキ!」

 

 

「いや俺が言ったんじゃねーよ!!」

 

 

「その赤ん坊よく喋るようだな。健康そのものだ」

 

 

「お、おう……ありがとな」

 

 

「何逃げながら照れてやがるクソガキどもがっっ!!」

 

 

「ハッ、今はお前もクソガキだろうが白猟屋。ここで戦うのはお互いの為にならないと分かっているはずだ」

 

 

「ハンデはいらねえか? あぁ?」

 

 

 

 えー。マジでなにこれ……?

 

 ってか2人とも、喧嘩しながら逃げたり追いかけたりするのやめようぜ……。

 どっかで足を躓けて転んでも知らないからな! 俺が!!

 

 

 

 

 

 

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