フェイクというには程遠い   作:若葉ノ茶

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ロナンの身体だからドジったのだろうか

 

 

 

 

 爆発が広範囲に広がるとは思いもよらず、どこかへと去っていったアインにスモーカーは舌打ちをする。

 

 

 

「クソッ……アインの野郎どこに行きやがった……!」

 

 

 

 エターナルポースが盗られたのは確実だ。だがまだこの建物のどこかにいる。

 騒ぎが広がっている事と、あの女が外に出たらすぐ気配で分かる。

 

 海兵たちも町中を警戒しうろついているこの島で、アインが逃げ切れることはないと……そう、確信したいものだったが。

 

 

(唯一の幸運は、アインが能力を解除したことか……)

 

 

 あの爆発のショックか、それとも逃げるためにスモーカーを数秒足止めするためなのか。爆発と黒煙の中、追いかけようとしたスモーカーが身体中に違和感を感じて追えなくなったのは事実。

 だが、子供の姿から元に戻ったことで存分に戦いやすくなっているのもある。

 

 

「どこにいようが逃げられねえぞ……アイン!」

 

 

 あの女が海軍を裏切ろうとしているのは事実。

 そして3つのエターナルポース……共通点として、『エンドポイント』が記されたものを持った彼女が何をしようとしているのかを、スモーカーは懸念していた。

 

 

 電伝虫でたしぎに連絡を取るべきか―――――――そうスモーカーが考えた直後だった。

 

 

 

 

「おい、白猟屋」

 

 

 

「……なんだ、トラファルガー・ロー。ずいぶんと険しい表情だが、目当てのモノは見つかったのか?」

 

 

 

 廊下の先にいたローは、いつもとは違う余裕のなさそうな表情でスモーカーを睨みつけている。

 攻撃しようとしているわけじゃない。

 

 ただ、何か想定外のことが起きて苛立っているような表情だった。

 

 

 

 

「そうだが。それはどうでもいい。……それよりも聞きたいことがある」

 

 

「あ?」

 

 

「オリジナルとなった人間をベースにした兵器『パシフィスタ』。その技術を応用した……クローン技術は海軍で使っているのか? それか、クローン技術が外に流出した可能性はないのか?」

 

 

「……てめえ、何が言いたい」

 

 

 

 スモーカーは知っている。

 確かにそういったクローン技術はある。

 

 最近、極秘に研究していた島の研究所が炎上し―――――――そして、あるクローン体が逃げ出したことも知っている。

 それを言うつもりはないが、ローはスモーカーの態度で察したのだろう。小さく鼻で笑って、自嘲のような笑みを浮かべた。

 

 

 

「ああそうか。なら仕方ねえな……」

 

 

 

「……フンっ」

 

 

 

 スモーカーもローの態度で察してしまった。

 あのいかにも怪しい仮面をつけた少年と、どこか見覚えのある赤ん坊。

 彼らが手配書に出ていた逃げ出したクローン体なのだろうと。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 あー……ったく。

 クローンとして生まれた時から覚悟していたことだ。

 こいつがリードじゃないというが、俺から見れば大事に守るべき存在に違いはない。

 

 ……まあ、今の段階で守られてるのは俺だけどさ。

 

 

 でもどっちもリードだと思う。記憶の残骸だとかコピーとか……そう言うのは関係ない。

 だってそうだろう。ずっと一緒にいるのはリードだ。表も裏も関係ない。リードそのものを俺は守っていこうと決めたのだから。

 

 

 

「むー……」

 

 

 

 

 

 

 

 だっこされたまま考える。

 この先こいつは何を考えているのか分からない部分もある。

 表に出る気はないとかも言ってるぐらいだしな。

 

 

 でも信用はできる。

 なんというか、簡単に言えば素直じゃない方の兄のリードと、素直で純粋な弟のリードがいると思えばいいんだろうな。

 

 

 ただ、ローのような無茶をしないのなら……俺は―――――――――。

 

 

 

 

 

「……あーしくった」

 

 

 

 

 これ以上の爆発を危惧してなのかは分からねえけど、素直じゃない方のリードが庭に出た瞬間にどこか空を見上げて嫌そうな顔をする。

 

 

 

 

「りーりょ?」

 

 

 

 どうしたんだろうかと思った。

 何か忘れ物でもしたんだろうかと……。

 

 

 

「もう無理だな。……仕方ねえ」

 

 

「う?」

 

 

「いいか。俺は入れ替わった衝撃で一時的に思い出したリード……いや、エースだと認識しとけよ。兄の方とか変なこと言うんじゃねえぞ」

 

 

 

 エースとは、この素直じゃない兄のリードの事だろうか。

 というか……それって、オリジナルとしての名前だよな?

 

 何で急にそんなことを……。

 

 

 

「にゃんのこちょ?」

 

 

「何のことも……いや、来る―――――」

 

 

「ふぇ?」

 

 

 

 不意に空から大きな影が俺達を覆いつくす。

 

 ――――――素直じゃないリードが見上げた空の先で何かがこちらへ向かって来るのが見えた。

 大きな飛行物体が、俺達を認識して目の前の地面にまで落ちてくる。

 

 

 

「久しぶりねロナン。元気にしてた?」

 

 

「ニーン……おめーその格好どうしたんだ? ボロボロじゃねえか。それにこの建物もぼっろぼろだなー!」

 

 

 

 

「あぁぁ……」

 

 

 

 今なら分かる。

 ローと会った時の衝撃のせいだろうか。オリジナルの記憶が鮮明に蘇る。

 

 こいつらが誰なのか、分かってしまう。

 

 

 ――――――――――ベビー5とバッファローが何でここにいるんだよ!!?

 

 

 

「ニーン……?」

 

 

「どうしたのよ。なんかリードの方が慌てて……ロナン、あなたイメチェンでもしたの?」

 

 

「いや違う。ちょっと入れ替わっただけだ。アンタ等……俺らの正体を知ってるんだろう?」

 

 

「……どういうことよ」

 

 

 

 うわぁぁぁ駄目だって素直じゃない方のリード……いや、エース!

 話したらやばい――――――。

 

 

 

「俺は入れ替わった衝撃で一時的にだが思い出したリードだ。んで、こっちがロナン……」

 

 

「記憶はともかく、入れ替わったって……」

 

 

「なんだーロナン? おめーまたドジってやらかしたのか?」

 

 

「ちぎゃう!!」

 

 

 

 俺が全否定するとベビー5とバッファローが何故か生ぬるい目でこちらを見つめる。

 おいなんだその目。懐かしそうとかそういうのじゃねえな。

 

 

「なにかあったの?」

 

 

「あーっと……なんだ、トラ男が能力を使って一時的に俺達の精神を入れ替えただけだ」

 

 

「トラ男?」

 

 

「りーりょ! しょれは―――――」

 

 

「トラファルガー・ローって言ったっけな……そいつにやられただけだ」

 

 

 

 瞬間、彼女たちの表情が変わる。

 素直じゃない方のリードが思わず一歩後ろへ引いて警戒をしてしまうほどの殺気。こちらへ向けられていないのが分かっているから後ろへ下がっただけの、酷いもの。

 

 

 

「ニーン……あいつ来てんだな」

 

 

「ロナン―――――いえ、今はあなたがリードね。ローの所まで連れてってくれない?」

 

 

 

「あ? まあ、奴に会う必要があるから良いが……」

 

 

 

 

「うぁぁぁぁぁぁぁぁっっ…………」

 

 

 

 ローぉぉぉぉぉっ!!

 ごめん俺は赤ん坊だから止められないんだ!!!!

 だから逃げてくれ!!

 

 今すぐに!!!

 

 

 

 

 

 

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