救えた子供と、救えなかった子供。
建物の中にいるのは海兵と……たぶん青髪の女性の仲間かな。
それと野次馬しにきた人間か、混乱に乗じて盗もうとしている海賊たちか。
そいつらが俺達に向かって襲いかかってくることが何度かあったが……まあ、それは全て退けられた。
主に何故かこの島の――――俺達の元まで来やがった2人のおかげで。
「ってかおめー、記憶あるんだな。赤ん坊だから分かんなかったぞ」
「……ああ、これは一時的なものだ。ショックでオリジナルとして『完全』になれただけ。さっきも言っただろ。元の身体に戻りゃあ記憶も消えるってな。というよりも、だ――――――」
訝しげな表情を浮かべる素直じゃない方の兄のリード……いや、エースが二人を見た。
2人はそれぞれこちらに対しての警戒は……まあ多少はあるけれど、敵対はせずに歩いている。
そんな彼らに対して、エースは思うところがあるようだ。
「何でてめえらここにいやがる。美食の町にいたはずだろ?」
「あうっ! しょれ、おりぇもきにぃにゃった!」
ああそれ、俺も気になってたんだ!
マジで運が悪いような出会いだったような……。
いや、俺達がここにいることを知っているかのような再会だったしな。
つまり俺達の居場所を知っていたってことなのだろうか。
それを問いかけると、ベビー5がタバコを吸いながらも言う。
「ああそれはね。私達も情報を集めていろいろと動いていたのよ」
「主におめーの事だけどな、ロナン?」
「あぅ……」
バッファローが大きな手で俺の頭をぐりぐりとしてくる。
赤ん坊だから抵抗する暇もなくぐるぐるとされながらも、いろんな意味で遠い目になる。
さっきエースも感づいてたみたいなこと言ってたけど、やっぱりこいつら俺たちがクローンだってことを知ったのか。
あー……まあ、そうだよなー。じゃなければあんな生ぬるいような目しないよなー。
―――――それでも、俺達に対して敵対をするような意思は見られない。
むしろローに対して何かしら思うことはあるような感じだ。
「あの闇市場が得ていた情報を――――私達が集めるのに特に苦労はなかったわ。若様も許可してくれたし……」
「リード、おめーがあの火拳のエースのクローン体だってことも……ロナンのオリジナルがあの人だってこともわかってんだよ」
「そうかい…………」
エースは少しだけ嫌そうな顔を浮かべて遠くを見つめていた。
オリジナルについて言われるのが嫌なのだろうか。
いやでも、さっき自分が一時的に思い出した方のエースだっていうことを言ってたもんな。だからエースと呼ばれることについてはあまり気にしてなかったはずだ。
クローンと呼ばれるのが嫌なんじゃ……ってうん?
「ちょっと、ずっと立ち止まってるけどどうしたのよ?」
訝しげにベビー5が問いかける。
襲いかかってくる奴らはいない。
だから、バッファローも真っ直ぐエースの方を見て―――――――。
「ぐぉーっっ」
大きな鼻ちょうちん?
それと、いびき?
おい待て待て。まさかこいつ……。
「って寝てるだすやん!? しかも直立に!!? おい起きろ!!」
「ハッ、いけねえ。寝てた!」
「こんな状況でよく寝られるわね!?」
「あぶー!?」
それぞれが驚愕した顔をしている間にも、我が道を行くエースがバッファローたちを見た。
「で、俺達がここにいるって何でわかったんだ?」
「話を続けるのかよ!? おめーすげーな!!?」
「いいから俺の質問に答えろ」
ギロリと睨んだエースに対して頷いたのはベビー5だった。
「海列車で行ける島は3つ。手配書に載ってるロナンが乗船するにしてもいろいろと手間がかかるし……それに、島にやって来た船はほぼ海軍のモノばかり。海賊船はほとんど海軍にやられたわ。大目付やおつる中将の乗ってる船にね」
「しぇんごくしゃん……」
センゴクさん達は、まだあのウォーターセブンにいるのだろうか。
オリジナルとしての記憶が蘇る。まだまだぼんやりとした部分が多くあるが、それでもセンゴクさんが大事だっていうのは分かる。
会いたいという気持ちだってまた出てきて……。
いやでも……うん、俺はやるべきことがあるから会うのは駄目だ。
「それで、美食の町から海列車で別の島――――ウォーターセブンへ出たのは私達も知ってるわ。そしてその島に大目付の船があったのも知ってるし、彼らが『子連れ狼ロナン』を捕まえようとしていたのも知っていた。そして出る船はないなら……」
「ああ、それでこの島にいるって分かったのか」
「にゃるほりょ……」
つまり自動的に選択の余地はないまま、この島にいると分かって俺達を探しに来たのか。
「あのトラ男はともかく……お前らの目的はなんだ。何故俺達を探した? クローン体だからか?」
「何言ってんだおめー」
「あ?」
「う?」
首を傾けた俺達に対して、バッファローとベビー5は面白そうなものを見たというような笑みを浮かべた。
「あの美食の町でも言ったでしょう。遊びましょうって」
「俺達はおめーらと仲良くなりてーだけなんだ。だから、遊ぼうぜ」
「追いかけっこでもなんでも。もちろん私が必要なら、なんでもやるわ!」
微妙に頬を赤く染めたベビー5は良いとして……うん、その言葉は何となく今なら信じられるような気がする。
「あぅ……」
そうか、こいつらもローと同じで子供だったな。
オリジナルの記憶で思い浮かぶのは、楽しそうな表情をした小さな子供達。
彼らもまた、ローと同じだ。
ロシナンテの行動によってはローと同じくドフラミンゴの手から救えたかもしれない子供達。
成長して大人になっても……いや、これは俺の感情じゃない。
「ああでも、そうね……」
「ああそうだなー」
幼馴染であろう2人が、それぞれ顔を見合わせてにんまりと笑う。
「ローとは別の意味で遊びたいわね」
「そうだなー。おめー何やってんだっていろいろと言わなきゃいけねーこともあるもんなー」
…………うん。
なんかもう、何も言えない。