フェイクというには程遠い   作:若葉ノ茶

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保護観察対象な彼らの日々
長いようで短い半年


 

 

 

 

 

「ロナンくん、鳩の模様がある書類を持ってきてくれませんか?」

 

 

「うん、分かったよたしぎさん」

 

 

 

 

 どこにどの模様が描かれた書類があるのかを知っているため、スタスタと慣れた足取りで棚の方へ向かって歩き、書類を引っ張り出してたしぎさんの元へ持っていく。

 ついでにコーヒー……は、駄目だ。紙がある場所でコーヒーをドジってひっくり返したら面倒なことになる。

 

 

 

「どわっ!?」

 

 

「なっ!? ロナン君大丈夫ですか!?」

 

 

「へ、へいき……」

 

 

 

 ドジらねえと思ったらこれだ。

 紙を全てひっくり返したせいで頭やら周囲やらに広がる書類に遠い目になった。

 

 でもたしぎさんは怒ることもなく、ただ小さくため息をついて「仕方ないですね」と苦笑してこちらに近づいて書類を集めてくれる。

 そういうところはあのケムリン……スモーカー中将と全然違うな。あの人これやったらとりあえず拳骨してくるから。

 ヴェルゴは――――――うん、思い出したくないな。

 

 

 

 

「よそ見や考え事をするときは歩き出す前にと何度も言ったはずでしょう。ただでさえあなたは転ぶ頻度が多いのですから……特に注意して見て歩かないと駄目ですよ」

 

 

「……たしぎさん、それ俺じゃなくてただの椅子」

 

 

 

 眼鏡かけてないせいだろうけれど、何で書類はちゃんと集められるのに俺の姿を見間違うのだろうか。

 いや、俺も気が付いたらドジるから同じようなもんか。

 

 指摘したらたしぎさんの頬がかーっと赤くなっていくけど……。

 

 

 

 

「っ――――――と、とにかく! 早く書類を終わらせて昼食にしましょう!」

 

 

「ハハハっ……」

 

 

「返事は!?」

 

 

「はーい」

 

 

 

 書類を机の上に並べて、俺ができる必要な分だけ書き記していく。

 それを確認したたしぎさんが判子を押して山となった書類の上に置いていく作業をし、また彼女も別の書類に文字を書き記していく。

 

 

「G-5の海兵の中に事務が出来る人がほとんどいないのが現状ですからね……ロナン君、あなたがいて本当に良かったですよ」

 

 

「ハハハっ……まあ、それぐらいしか俺にはやることないからさ」

 

 

 

 本当は海軍本部に直接行くことになるはずだったらしい。

 だが何やら上が揉めに揉めている状況のようで、本部で海兵として育てるよりもとっとと殺した方が良い派と、きちんと育てて立派な海兵にしてやったほうがいい派が分かれて議題としてあげられている。

 

 俺達を作り上げた科学者もまだ見つかっていないという状況。

 だから、最初に保護したスモーカーとヴェルゴの元へ一時的に新世界のG-5に行くことになるのは必然だった……ということみたいだ。

 

 

 

「保護観察って何時になったら解かれるんだろう。というか解かれたらどうなるんだろう……」

 

 

「大丈夫ですよロナン君。あなたは確かに手配書に載ったことがありますが……あなたはマッドサイエンティストの被害者。ロナン君は危険じゃないと……この半年間一緒にいた私達はちゃんと分かってます。リード君はともかく」

 

 

「ハハッ……ありがとう、たしぎさん」

 

 

「いいえ、どういたしまして」

 

 

 

 半年間。本当に長いようで短い日々だった。いやまだ続いてるけどさ……。

 とりあえずリードが順調に育つまではこのままでいいかなって思うんだよなー。

 

 半年過ぎたことによって、リードはもう1歳2ヶ月ぐらい経っているため、順調に育ってきて今やG-5の海賊みたいな風貌をした海兵たちに突撃してやんちゃしているぐらい元気だ。

 

 ドフィからの連絡もなく、ヴェルゴは揉めている上からの指示とドフィの指示に従って俺を放置しているみたいで……うん。

 嵐の前触れみたいな平穏がすごく怖いって感じる。特にリードを海兵にしてやれと賛成派筆頭が怖い。筆頭のあのお爺ちゃんには会ってないけど、ヴェルゴがやたらと疲れた顔で本部から帰ってきたあの姿を見る限りすごく怖い。

 

 

 

「失礼するぜ大佐ちゃん! お茶持ってきた!」

 

 

「ああ、ありがとうございます」

 

 

「しししっ!」

 

 

 

 

 書類を書いている俺達に向けてきたのはちょっと顔に傷のついた怖そうな風貌の海兵のおっさんと、その足元でにっこりと笑うリード。

 

 

 

 

「ろなーん!」

 

 

「はいはい。どうしたんだリード」

 

 

 

 トテトテと小さな足を元気いっぱいに動かしてこちらへ近づいてきたリードに、慌てて椅子から降りて書類から離れて両手を広げる。

 これでまた転がって書類をぶちまけたら仕事が長引く。とりあえず気を付けねえと……。

 

 両腕を広げて待っていたからか、リードは俺の腕の中に勢いをつけて抱きついてきた。

 

 

 

「ろなん! きょうけむりんとひつじかってきた!」

 

 

「……買ってきた? いや、狩ってきたのか?」

 

 

「おう! ふわふわもふもふのあふろだった! ぶるっくよりもおおきかったぞ!」

 

 

 

 ブルックってやつが誰なのかは知らないけれど、たぶん記憶の中で引っかかってる名前が無意識の中に出てきたんだろう。

 上機嫌なその頭を撫でて抱き上げる。ちょっと重くなったなこいつ……いや、タコ焼きの匂いがリードからほんのりとするから誰かに奢ってもらったな?

 

 

 

「ひつじな! しゅっげーよわかったんだ! おれでもたおせたはずだぞ!」

 

 

「そっかー。羊じゃなくて羊に似た海賊団かー。でもお前に倒せるかなー……じゃねえ! 危ないことしなかったかリード!? 怪我はねえか!?」

 

 

「だいじょーぶ! おれはつよい!」

 

 

「いや1歳児が何言ってんだよ!」

 

 

 

 とりあえず怪我はねえみたいだな。安堵して、苦笑してもう一度頭を撫でる。

 頭を撫でると「もっとー!」というかのようにぐりぐりと手に押し付けてくるのが可愛らしい。

 

 1歳のくせにやたらとはっきりと喋るのと、ちゃんとこちらを理解して話す知能はたぶんクローンとして……うん、本来のオリジナルとしての記憶から成り立っているんだと思うな。運動神経も良いし、スモーカーの肩に飛び乗ろうとしてよく失敗してるのは見たことがある。

 

 こういうのをドフィが言うようにクローンじゃなく、引き継いだとかそういうのじゃないと思いたい。

 エースに会ったことはあるけれど、あいつの弟ってルフィだし、死んでねえし……。

 

 

 ――――――そう思っていた時、リードの腹から急に『ぐぎゅるるるるるっ!』という派手な腹の音が鳴り響いた。

 

 

 

「ろなん! はらへった!」

 

 

「あ、じゃああとは私がやっておきますのでロナン君たちは食堂の方へ行ってて構いませんよ」

 

 

「大佐ちゃんの手伝いは俺がするぜ!」

 

 

「ええ、ですが真剣に! ちゃんと読めるような文字で書いてくださいよ!!」

 

 

「お、おう……」

 

 

 彼女たちのやり取りに苦笑しながらも、抱き上げたリードを連れて扉の方まで行く。

 

 

 

「分かりました。じゃあ昼休憩貰いますね」

 

 

「ええ」

 

 

「またなーメガネ!」

 

 

 

 

 ぶんぶんと手を振るリードに渋い表情で引き攣った顔をするたしぎ大佐の顔が見えたが……気にしないでおこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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