フェイクというには程遠い   作:若葉ノ茶

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海軍からの情報伝達 前編

 

 

 

 

 

 

「……良いんですか、俺達を庇って」

 

 

「否、庇ったわけではない。おれが行く先にお前たちがいただけのことだ」

 

 

 

 いやそれでも船に乗せてくれただけでもありがたい。

 海軍たちはまだエンジュ島に俺達がいるのだと思い込んで探しているに違いないから良かった。何の意味もなく捕まることだけは避けたいし、いくら俺達が誰かのクローンだからといって、実験体になるつもりはない。

 

 でも何も言わずに慌てるように島から出て行ったから、ばあさんやじいさんには本当に悪いことをしたと思ってるけれどさ。

 いつかまたこの島に来ることがあったら謝罪と感謝を言いに行きたいな。

 

 というか、彼らは何故か畑仕事のための道具を購入するためにこの島にやって来たみたいだが。

 この人が畑仕事ってするのか?

 なんか全然イメージが湧かねえんだけど……。

 

 

 

「エンジュ島だけではない。別の島にも用がある。ついでに送ろう」

 

 

 

「……ありがとうございます」

 

 

 

 

 男は畑道具であるクワ等を船の隅っこに固定して椅子に座った。俺はその傍の床に座って船に揺らぎながらもリードを抱いて遠い目をする。

 この人が畑仕事……。

 七武海の大剣豪といわれた鷹の目が畑仕事……?

 

 

 いや、無駄なことを考えていても仕方ないか。

 ワールドなんちゃらが七武海のバギー一味と海軍によって敗北したっていう一面が載った新聞を読んでいるミホークは俺達を特に気にしていないようだし。

 海軍へ向けて俺達を連れていくとかはないみたいだから。

 

 

 

 

「っておい! 何で私を見ようとしねえんだよ!」

 

 

 

 

 ホロホロホロホロ! と特徴的な笑い声を言いながらもふよふよと船の傍で浮かんでいるゴスロリ少女。どっかで見たことあるような気がするが……ううん、忘れた。

 たぶん彼女は漫画のどっかに出ていたキャラなんだろう。でも忘れたってことは重要人物じゃない気がする。うん、ミホークと比べたら微妙だな。

 

 それに見ないのも彼女の髪色がピンク……ああ、言いたくない。

 あの男を何故か思い出して汗が噴き出るんだよ。あれもうトラウマになってねえか?

 

 俺……というよりも、オリジナルの俺って何かあの男に対してやらかしてたのかな。

 前世での漫画の記憶で見たような記憶があるけれど、この女と比べて思い出したくないって言う気持ちの方が強くて忘れてるような感じがするな。

 

 

 

 

「あぶー」

 

 

「むっ、私に対して悪口を言いやがったな!?」

 

 

「え、いや言ってねえけど―――――――」

 

 

 

 ちょっと思っただけだけど!?

 

 

 

「嘘をつくんじゃねえ! ネガティブホロウ!」

 

 

「うぉっ!?」

 

 

 

 女の身体から透明の特徴的な何かが飛び出して俺の身体を突き抜けて――――――――。

 

 ああ、俺って何でここにいるんだろう。何でこうして逃げ延びているんだろう。

 どうせ俺なんて有力海賊のクローン体じゃないし、生きていても仕方ないのに……。

 

 

 

「うぅ……生まれ変わったらノミになりたい。そうして太陽に焼き焦がされて死んでしまえばいいんだ……」

 

 

「ホロホロホロ。ざまあみろ!」

 

 

「あぶぶー」

 

 

 

 

 両膝をついてすべてに懺悔する。

 俺なんて死んで……?

 

 あれ、何で俺そこまでテンションが下がってんだ?

 というかノミになりたいって何で思ったんだ?

 

 まだ気持ちが沈んでる。

 リードが俺の頬を撫でながら笑いかけてくるのは嬉しいけれど、そんな幸せ貰っていいのかなって思うんだ。

 うぐぐ……いや、これはあの女の能力。あの女……確かペローナだっけ?

 いや、覚えるのは止めよう。

 とにかくピンク色をした人間はみんな怖い生き物。そう覚えておこう。

 

 

 

 

「新聞にはお前たちのことは載っていないようだが、海軍から情報は貰っている」

 

 

「……はい?」

 

 

「お前は何故海軍に追われているのが知っているか?」

 

 

「いや……知らないけど……」

 

 

「あうー」

 

 

 

 ミホークがこちらを見て、そしてリードをじっと見つめる。

 

 

 

「その赤ん坊の刺青の意味を知っているか?」

 

 

「肩の刺青のこと? いや、意味なんて知らない」

 

 

 

 赤ん坊の肩には小さな刺青がある。

 本当は背中にも刺青があるんだが、それは服を着ているため誰かに見られることはない。

 刺青はあの変態科学者がやった所業の一つだと思っていたけれど、ミホークはそうじゃないと言いたいのだろうか。

 

 なんかあのピンク男と出会った時と同じ嫌な予感がする。

 ミホークは一体何を知っているんだろうか。

 

 

 

「あぅー」

 

 

 

 

 赤ん坊のリードはいつも通り、海を見つめながら声を出して笑っていた。

 

 

 

 

 

 

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