フェイクというには程遠い   作:若葉ノ茶

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行きたくないけど、そうはいかない

 

 

 

 

 

 

 

「いくなぁぁぁ!!」

 

 

「大丈夫だから。ほら、良い子にして待っててくれよぉ」

 

 

「やぁぁぁぁっっ!!!」

 

 

「なあ、リードも一緒に行くことは――――――」

 

 

「却下だ」

 

 

 

 現在時刻は早朝。海賊などに巻き込まれず早めに海軍本部へ行くとのことで太陽が昇る直前を選んだんだが、それはある意味失敗だったかもしれない。

 寝起きのリードはいつもならふらふらしながらもまた二度寝ぐらいはするはずだ。

 

 でも今は違う。

 普通に俺との別れを悲しんで大号泣し、周りの海賊よりも海賊みたいな海兵のおっさんたちが思わず涙してしまうほど嫌がって俺の脚に引っ付いて離れようとしない。

 

 

 

「大丈夫だってリード。すぐに帰って来るから……」

 

 

「だめだ! ろなんぜってーどじるだろ!」

 

 

「いくらなんでも帰れなくなるようなドジはしねえよ!」

 

 

「うそだ!」

 

 

「嘘……じゃない!」

 

 

 

 訝しげな目で俺をじろっと見つめるリードから顔ごと逸らして口笛を吹く。それに騙されるような頭をしているわけはなく、さらにギュッと抱きついてきて、絶対に離さないという意思を感じられた。

 それほどまでにも一緒にいたいというのは分かる。凄く嬉しい気持ちが込み上げてくるのも分かるんだけどさ……。

 

 

 

「リード。お前はここで留守番だ。俺も共に行き、必ず戻って来るから心配するな。あいつもそこまでドジらねえよ」

 

 

「……ぶぅ」

 

 

 

 なんというか……「んなわけねえだろ。だから余計心配なんだ!」というような目でヴェルゴを睨みつけるが、他の海兵がいるからか乱暴にリードの頭を撫でるだけに留めた。

 本当は無理やり離してとっとと連れていきたいのかもしれない。でもそれをすれば海兵たちに不審に思われる。優しいヴェルゴ中将も大変そうだよな……。

 まあ、俺は何も言うつもりはねえし、同情も何もないけれど。

 

 そう思っていると、俺達の傍へ寄ってきたたしぎさんがリードの手をギュッと握りしめて優しく俺の脚から離していく。

 

 

 

「ロナン君の身体の調子を調べるのが目的で海軍本部へ行くことになっただけですからね。用事が終わればすぐに帰って来れますよ」

 

 

「……ほんとうだな? ぜったいにかえってくるよな?」

 

 

「ええ、もちろん!」

 

 

 

 舌っ足らずだが真剣な顔をするリードと、綺麗な笑みを浮かべるたしぎさんにほのぼのとした空気を感じる。

 なんというか凄く平和だ。海兵たちが小さな声で話す「大佐ちゃん可愛い」とか、「リードのクソガキいいなー。大佐ちゃんの笑顔を直視出来て」とかいうのが聞こえたけどまあスルーで良いだろう。

 

 ヴェルゴをチラッと見たが、奴はただスモーカーさんにこの場を任せるというような話をしていた。

 

 

 

「いいか! ぜったいにすぐもどってこいよ!」

 

 

「……ああ、分かってる。すぐ終わらせて帰って来るから待ってろよ」

 

 

 

 あの時のように二度と会えない状況にはしない。

 これは覚悟だ。同じことは繰り返さない。

 

 でもそれを伝えればリードはまた余計に心配して俺から離れようとしないだろう。

 だから話題を逸らさねえと……よし。

 

 

 

「……最近海難事故が多いから、海に行くときは絶対に一人で行動するんじゃねえぞ!!」

 

 

「おう! ろなんもどじってうみからおちるなよー!」

 

 

「うるせえ! 俺はドジって海に落ちたことは………………じゃあなリード! またあとでなー!」

 

 

「はぐらかすな!!」

 

 

 

 いやはぐらかしてはいない。ただ何となく自信満々な声で言ったら後でフラグになって海に落ちそうな気がするから止めただけだ。それを言うつもりはないけれど。

 

 船の中へ入って行き、すぐに出発となった俺達へ向けて、小さな足でトコトコと走ってくるリードに手を振ってまたすぐに帰って来るとお別れを言う。

 

 

 

「リード! 絶対にスモーカーさん達の言うこと聞くんだぞ! あと拾い食いはすんなよ!」

 

 

「おー!!」

 

 

 

 

「あと腹は出して寝るな! おねしょするから寝る前に飲み物は控えろ! 深夜に何か食おうとするな! 特に地面に生えてるような野生のキノコは食べるなよ、絶対に!!」

 

 

「お前はリードの母親か」

 

 

「うるせえよヴェルゴ……じゃあな、リード!! 風邪ひくなよー!!」

 

 

 

 

 両手を広げて、島が見えなくなるまでずっと甲板に立っていた。

 俺が逃げるんじゃないかってヴェルゴが傍にいたけれど、それを気にする暇がないほど俺に向かってぶんぶんと手を振るリードを見送った。

 

 その無事な姿を目に収めて――――――――昨夜の出来事を思い出す。

 ヴェルゴが監視に付き、リードと一緒に服を買って話をして……俺が海軍本部入りになってからの夜の数時間の出来事が夢であればと思いたい。思いたかった。

 

 ああいやだ。リードと一緒にたしぎさんたちの仕事を手伝いたかった。

 海軍本部入りなんて……いや、センゴクさんに会えるなら良いけどさ。もう無理なんだろう。

 

 

 海軍本部から来た海兵たちはもう仕事を進めている。

 G-5の見知った顔はヴェルゴしかいない。

 

 何も知らない海兵たちが助かる確率は、この新世界の海では低いだろう。

 もちろんそれは俺もだけれど……。

 

 

 

「……で、どうするんだよこれから」

 

 

「気にするな」

 

 

「気にするよ。どうせお前らはこの軍艦を沈めるつもりなんだろ?」

 

 

 

 俺の言葉にヴェルゴは何も言わなかった。

 それはすなわち、沈黙は肯定ということになる。

 

 

 

「余計な手出しはするな。すればお前を半殺しにして、その後にリードを殺す」

 

 

「……うっせえ」

 

 

 

 どこまでが本当の海軍で、どこまでがドフィの策略なんだろうか。

 それを考えるだけで吐き気がする。

 

 

 センゴクさんに知らせたいけれど、彼は元帥じゃない。

 俺が知る伝電虫に話しても、もう彼は出ないだろう。

 

 

 

「……どうか何も起こらず、無事でいてくれ」

 

 

 

 どうせ叶わないことだと分かっていても、願わずにはいられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

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