ローが捕まえたリードをスモーカーが奪還することは出来なかった。
なんせ戦っている最中にやってきたパンクハザードに住んでいる元海賊の一人────その男の大きな背中に座る形で近くに来た麦わらの一味数人。その中のルフィへ投げ渡されたからだ。
話したいことがあるから、後で合流しようとローは言っていた。
命の恩人だからか、ルフィは簡単に頷く。
しかし投げ渡されたリードはそうじゃない。
「おみゃーらはなしぇ! おれはろなんをさがしにいくんだ!」
「こいつってなんか……」
「ああ、似てるな」
「誰だお前?」
「おれはりーど! ……よくみればおまえらしってるぞ! うそっぷとろびんとぞろだ! あとおれだ!」
「あら、驚いたわ」
「ひぃぃ!? お前なんで俺の名前知ってんだよぉー!?」
「おい、こいつ今ルフィを見て俺って言わなかったか?」
「言ってたな」
ゾロとウソップが顔を見合わせる。ルフィは珍しく真剣な顔でその幼子を見ていた。
「……お前、エースを知ってるか?」
「えーすじゃない、おれはりーど! えーすじゃない。かんけいにゃい。ただのりーどだ!」
そう言われてもリードの面影はエースに似ている。そっくりすぎてリードの言葉が信じ切れない。
しかし、いろいろ思うことがあったようだけれど、ルフィはその印象をかみ砕いたらしい。
笑って「そうか!」と言ってリードの頭を撫でたのだ。
「なあ、ろなんをみにゃかったか?」
「ロナンって誰だ?」
「ろなんはおれの……おれの、なんだろ?」
「いや分からねーのかよ!」
「んん? にいちゃんでもねえし、とうちゃんじゃねえもん……じいちゃんはやだ……」
首を傾けた瞬間、その身体もコロンと転がる。
クスクスと微笑ましそうに見ていたロビンが能力で手を咲かせてリードが落ちないよう支えた。
「あのトラファルガー・ロー……トラ男君に詳しい話を聞いた方が良いわね。この子まるでルフィにそっくりよ」
「お、おお。俺もそう思う!」
「そうか?」
「そうかぁー?」
「二人して同じこと言ってんじゃねえ」
ゾロたちが呆れたように笑う。
幼子の容姿とその中身。そして言動がいささか不気味だが────まあ、何とかなるだろう。そういう判断を下したのだった。
どんな騒動であろうともルフィなら仕方がない。そう思う程度には彼らは訓練されているから。
そうして、一味が合流した先ではカオスが待ち構えていたらしい。
トラファルガー・ローの能力のせいか、ルフィとゾロ、ロビン、ウソップ以外の仲間の精神が入れ替わっていたのだ。
そのせいでナミの身体に入ったサンジが興奮するわ、フランキーの身体に入ったナミが号泣しているわと面白い事態になっている。
そうしてお互い顔を見合わせて笑うルフィとリードに、ナミ(身体がフランキー)は気づく。
「ちょっとルフィ! 何よその子供!」
「こいつはリード。友達になったんだ!」
「にしし!」
「こっちはそれどころじゃないのに! あーもう!!」
「フランキーナミおもしれえな」
「おもちれ―な、おれ!」
「おう!」
「呑気に笑ってる場合か!」
げんこつがルフィに襲い掛かり気絶する。それにリードが泣きながら「だいじょーぶかおれー!」と叫んでいた。
一応の現状説明。子供達のこと。ローの事。そしてスモーカーたちの事を話す。
「……それで、お前は誰だ?」
「おれはりーど! るふぃじゃなくて、えーすでもにゃい。りーどだ!」
それだけしか言わないリードに、彼らはその問題を隅に置くことにした。
どうせ幼子だし、今はこの幼子を気にしている暇はない。
やるべきことはいっぱいあった。ローですら、ドフラミンゴ打倒のもと、この工場をぶっ潰すという目的を優先することにしたのだ。
合流した後は「後で話すから先にやるべきことをやれ」と、それだけを麦わらの一味に伝える。
なんせリードが現れたのは本当に偶然だったのだから。
リードはロナンを探すという目標を胸にルフィと一緒に行動することにした。背中にしがみつき、一緒に寒空を駆けた。
まるで仲のいい親子みたいな光景だったが、それを誰も口にしない。
ローの目的はシーザーを誘拐すること。それを麦わらに頼んだ。
しかし計画は失敗し、捕まってしまった。
その中には海軍たるスモーカーとたしぎも含まれていた。まあ彼らはローによって精神を入れ替えられていたせいで捕まったようなものだが。
檻の中で楽しそうに彼らを見るシーザーは笑う。
そうして、ルフィ―と一緒に居るせいで共に捕まったリードの方を見た。
「海軍本部に送られるはずだったクローンもいるのか。シュロロロロ」
「クローン?」
檻に捕まるロビンが疑問を口にする。
捕まっている麦わらの一味数人がリードを見た。ローは何も言わずシーザーを睨み続ける。スモーカーは何も言わずに、たしぎは複雑そうな顔で。
「シュロロロロ! なんだてめえらまだ知らねえのか! こいつは戦場に落ちた血を使い、火拳のエースを再現したクローン。このシーザー様よりは下だが、珍しくいいものを作った変態科学者の失敗作だ!」
「こいつはエースじゃない!」
「そうだぞ! おれはにいちゃんじゃない!」
「言っただろ失敗作だと。見た目はともかく中身は麦わら。くだらない贋作だ。シュロロロロ!」
その言葉にぶちギレたのは誰だったのか。
「こいつはリードだ。贋作でもクローンでもない。俺の友達のリードだ!!!」
ルフィが怒鳴る。
空気がビリビリと揺れるぐらい、リードの事を案じて、シーザーを睨みつけた。
しかし檻の中にいるから怖くはないのか、苛立ったような顔をしつつ言うのだ。
「失敗作なんざどうでもいい。そうだろう、トラファルガー・ロー?」
「……」
「ドフラミンゴから伝言だぜ。『ロシナンテはヴェルゴにあず────』」
「ろにゃん!」
「あぁ?」
シーザーが言おうとした声を遮るように、リードが叫んだ。
「ろなんはいるんだな! いきてるんだ!」
「うるせえぞクソガキ!」
怒鳴られたって気にしない。
リードはただ身体を震わせて歓喜に胸がいっぱいだった。
(にいちゃん! ろなんにあいたい!)
────今の弱い俺じゃ何もできない、だから手伝ってくれと。そう心の中で叫びながらも。
お待たせしました。次からロナン視点入ります。しばらく出番なしといったなアレは嘘だ。原作沿いで書くの難しいね(フラグ)