フェイクというには程遠い   作:若葉ノ茶

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人を隠すなら人の中

 

 

 

 

 ミホークに連れて来られたのは、俺達がいた島よりも盛んな島。

 だがその島はある特徴を持っていた。

 それこそが、平和主義の中立国家として知られているということ。

 

 戦いをするための場ではなく、誕生と死が最も近しい国として知られている。

 その島には戦いなんて存在しない。

 海賊と海兵が遭遇しても、海を出る間は見ないふりをしなければならない。

 

 そんな厄介な島。

 医療と墓が多くある国でもあり、中立国家として様々な人の出入りが激しい国。

 何かしらの裏が隠されているようで、そうでないようにも見える花弁が舞う平和な国。

 

 

 ―――――アルカナ諸島のアルメリア国家。

 

 

 そんなシャボンディ諸島に並ぶほどの大きな島に俺達はいた。

 

 

 

「つまり?」

 

 

「ここで島の住人に戦闘行為を見られること自体が罪となる」

 

 

 

 

 海賊行為はもちろん、他の奴等も戦ってはいけない。暴力は全面的に禁止とのこと。

 そんな俺達にとって良い島があるだなんて思わなかった。

 

 いやでも住人に知られること自体がアウトなんだよな。

 それはすなわち、隠れての犯罪行為はされてる可能性が高いということ。ミホークは遠回しにそう忠告してくれたんだろう。

 

 

 

「……島の住人と外から来た奴らとの区別なんてつくのか?」

 

 

「ホロホロホロ! よく見てみろよロナン。船にいる奴らは首にバンダナを巻いてねえけど、町にいる奴の多くが巻いてるぜ」

 

 

「あぶー」

 

 

 

 なるほど、バンダナを首に巻いている人間が住人ということか。

 じゃあそいつらが見ている場所にいるようにした方がいいということだな。中立国家だから、見られない場所で海軍が俺達を捕まえるという可能性もあるし、海賊が俺達を売りとばすという理由で狙う可能性もある。

 

 ドジやらねえようにしねえとやばいな……。

 

 

 

「……ミホーク達はこれからどうするんだ?」

 

 

「医療道具を揃え帰還する。ここでお別れだ」

 

 

「まっ、そういうこった。じゃーな、達者で暮らせよ!」

 

 

「あ、うん……」

 

 

 

 頼りになる人たちが遠ざかっていく。

 ……まあ、別れだなんてあっけないもんだ。寂しいけれど、覚悟を決めたという言葉をミホーク達に向かって言ったんだから、それは全うしなきゃならない。

 そのまま背を向けて町の方ヘ行った彼らに長い一礼をして、町へ入るために歩き出す。

 

 

 

「……さて、ばあさん達のような良い人たちはここにいるかな」

 

 

「あぶぶ!」

 

 

 

 腹抱きしてるリードが上機嫌に俺の斜め上を見上げて町を眺めているのが分かる。

 うん、それにしても平和な町だな。

 ばあさんたちと一緒に暮らした島では歩くごとにドジっては怪我をして、海賊に難癖付けられては逃げてというのを繰り返してたからなー。

 

 

「あぅー」

 

 

 そろそろリードの腹が減る頃だろうからミルクの用意もしなきゃならない。

 ミホーク達に拾われた頃は彼らがいつの間にか用意してくれてたから助かったけどさ。

 それらの道具も旅の餞別として貰ってるから、必要なのはお湯ぐらい。ミルクもまだあるから大丈夫。オムツも平気っと……

 

 

 

 ……いや待て、そういえばこれって誰が用意したんだ?

 普通に考えてミホークじゃなくてペローナが買うような気がするけれど、彼女は確か現段階で霊体だったよな。

 ペローナって物とか動かせたっけ? あのネガティブホロウ以外は何かやれたっけ?

 

 

 まさか、哺乳瓶とかそういうの全部ミホークが買ってきたのか?

 あの真顔で?

 あのピリピリした雰囲気を纏いながらも店に行って「赤子に必要な物を全て」とかなんとか頼んだのか?

 新聞に『鷹の目の子供疑惑!?』とか誤解されたらどうしよう。

 

 

 

「やべえ……想像するだけで寒気が……」

 

 

 

 止めよう。想像するのは止めよう。

 とりあえず現状を考えよう。

 

 

 

「きゃーぅ!!」

 

 

 

 ああはいはい。

 腹が減ったんだなちょっと待ってろー。

 

 

 とりあえず近場にあった店に入ってっと……よし、海軍も海賊もいないし、バンダナのおっさんしかいない。

 

 

「いらっしゃい。どうかしたのかい?」

 

 

「おじさん。赤ちゃんにミルクをあげたいんだけど……お湯って貰えますか!?」

 

 

「お安い御用さ! ちょっと待っててくれ!」

 

 

 ただの子供と赤ん坊に警戒することなくおっさんが奥の扉の向こう側へ姿を消す。

 お湯を沸かしにでも行ったんだろう。良かった。子供が赤子を連れてたってことで怪訝そうな顔されて警戒されなくて。

 

 

「どわっ―――――!!?」

 

 

 

 やべっ!

 壁に寄り掛かろうとして棚にぶつかっちまった!?

 上を見上げると、そこは棚が派手に揺れて中に並べてある木箱がたくさん振り落ちてくるのが見えて。

 

 やばいやばいやばいやばい!

 反射的に身体を丸めて、リードを守らねえと――――――

 

 

 

「いだだだだッッ!!!!???」

 

 

「あぶぅ!!」

 

 

 

 

 頭に直撃した重たい木箱の数々に、視界が揺れる。

 目がチカチカするぅ……。

 

 うぐぐ……普通なら死んでるぞ俺。

 良かった身体が頑丈で。いやドジなのは治したいところだけど!!

 

 

「あーぅ!」

 

 

「……リードは元気だなぁ」

 

 

 怪我はないようでなにより。俺はでっかいたんこぶが出来たけど。

 

 

 棚から落ちた木箱は……よし、無事だな!

 中身も割れ目のものじゃないみたいだし、大丈夫っと。

 

 

 

「……んあ?」

 

 

 

 どうやら棚から落ちてきたのは木箱だけじゃないみたいだ。

 チラシ……みたいな。

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「はいお湯が出来たよ」

 

 

「あ、ああ……ありがとう。あとすいません。ちょっとドジって棚を揺らしちまって……」

 

 

「いやいや。気にしないでおくれ。むしろそれらの木箱は降ろすつもりだったからね」

 

 

 

 優しく俺を許してくれたおっさんが、俺の手にするチラシを見て顔を歪ませる。

 

 

 

「……君はそれに興味があるのかい?」

 

 

「あー。まあ、いろいろと」

 

 

「そうかい。まあ私は止めはしないが……」

 

 

「でも、微妙そうな反応ですね? 失礼ですが……何か嫌なことでも?」

 

 

「……お湯以外に何か必要なものがないのなら出て行ってくれ」

 

 

 

 逃げるように店の奥に去っていく男に首を傾けた。

 

 

「あぶぶぶぶっ!!!」

 

 

「ああはいはい。ちょっと待ってろ。まだひと肌の温度じゃないから!」

 

 

 ドジらないようにミルクを調節して、腹が減ったと大騒ぎなリードの口に咥えさせる。

 勢いよく飲み始めるリードはいつも通りだ。でもさっきの反応は……。

 

 

 

「……まず俺達に必要なのは何だ」

 

 

 

 現時点で必要なのは住処と金、そして情報。

 でもどうしようかな。

 

 追われているのは事実。裏の裏をかくのならこれは良いかもしれない。

 でも見つかったら厄介なことになるしなぁ。リードの刺青と俺の特徴ある金髪をどうにかすればいけるかもしれないけど、いざ見つかったら逃げ切れるかどうかが心配だ。

 

 さっきのおっさんのチラシを見た時の歪んだ顔も気になるし。

 

 

 

 『海軍の雑用募集』を受けるか否か……うむむ……。

 

 

 

 

 

 

 

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