でも、停止するつもりは本気でないので、少しずつでも進めてはいきたいと思ってます。
早くネタバレもしたいですしね。
IS学園の文化祭。
色んな意味で最も注目を集めている一年一君のメイド喫茶。
さっきからひっきりなしにお客さんが出たり入ったりして、もう本気で大忙しなんだよね。
流石のヒロインズも私に構っている暇は無いようで、今も教室の中を東奔西走している真っ最中。
「まさか、ここまで忙しくなろうとは……!」
「これも、弥生さんが魅力的過ぎるせいですわね!」
いや、そこでしれっと私のせいにされても困るんですけど。
これは絶対に一夏が原因でしょうに。
だってほら、この学園で唯一無二の男子な訳だし、否が応でも注目はされるでしょ?
「俺の弥生が皆に注目されるのは悪い気分じゃないけど、それはそれで少し複雑だな」
いつ。誰が。お前の女になったんだよバカ一夏。
お前はマジでいっぺん、束さんに頼んで脳の中を洗浄して貰ってきなさい。
「不幸中の幸いは、当たりくじである『弥生の耳かき』を今の所は女性客しか体験してない事だね」
「うむ。もしも不逞の輩が姫様に手を出そうものなら、私は容赦なくネットランチャーを叩き込んで、窓から放り出してやる」
ラ…ラウラ? 気持ちは嬉しいけど、ここは二階だからね?
すぐに銃器を出さない事は偉いけど(偉いのか?)、乱暴は止めましょう。
「あ。またお客さんだよ~」
「またか……」
「なんだか、終わりの無い迷路を只管に走ってる気分になってくるよね……」
皆も本気で疲れてきてるみたい。
そりゃそうか。誰だって、ここまで繁盛するなんて夢にも思ってなかっただろうし。
これはアレだね。交代で休憩を取るしかないね。
「お~? リンリン~?」
「まだその渾名で呼ぶのね……。まぁ、アンタの場合は悪意なんて微塵も感じないからいいんだけど」
え? やって来たお客さんって鈴なの?
暇を見つけて来たいとは言ってたけど、思ってるよりも早かったんだね。
「あ……」
鈴の恰好はいつもの制服じゃなくて、真っ赤でセクシーなチャイナドレスだった。
長いツインテールもまた、お団子で纏めていて、なんだか凄く大人びて見えた。
「ところで本音。弥生はいないの?」
「ちゃんといるよ~。やよっちはイッチーと並ぶ、このお店の看板娘になってるからね~」
「やっぱりね。当然よ」
「なんでそこで鈴が嬉しそうにしてるのさ……」
疲れていても、シャルのツッコみは健在ですな。
きっと、ツッコミ脊髄が反射しちゃうんだろうね。
「やよっち~。ご指名だよ~」
「ん……」
他の客ならいざ知らず、友達に指名されたのならば行かないといけないよね。
そんな訳で、トコトコトコ~……って、鈴と一緒に似たような顔の、サイドテールの女の子が立ってる。鈴の知り合いかな?
「い…らっしゃいま…せ……お嬢…さま……」
一応、スカートの端を抓んでご挨拶。
もう何度もやって来たせいか、羞恥心なんて異次元の彼方へと消えてしまいました。
「ちょ……鈴お姉ちゃん」
「何よ?」
「この人がメールで言ってた『板垣弥生』さんなの?」
「そうよ。あたしの将来のフィアンセ」
誰がじゃい。寝言は寝てから言ってください、お嬢様。
(この人が噂の……。近くで見ると物凄い美少女じゃない! 清楚でスタイルも良くて、なんだか優しそうだし……)
「言っておくけど、弥生に粗相したら洒落にならないから、そのつもりでね」
「ど…どゆこと?」
「あまり大きな声じゃ言えないけど……弥生は、内閣総理大臣の娘なのよ」
「な…内閣総理大j……「し~~~~~!!」んぐ……!」
なんかさっきからコソコソと話してますな~。
取り敢えず、中に入ってからして欲しいんだけど。
「プハッ! じょ…冗談よね?」
「アタシも最初はそう思ったけど、マジなのよ。臨海学校の時、この目で総理を見ちゃったんだから」
(嘘でしょっ!? こんなにも可愛いのに、その上で更に総理の娘ぇっ!? やっぱ……世の中って不公平に出来てるのね……)
この二人、本当に似た者同士なんだな~。
ずっと顔が百面相してるし。
「え…っと……他のお…客さま……の迷惑…になる…から……まずは中…に入ってく…れる……?」
「おっと。それもそうね。それじゃ、席まで案内をお願い出来るかしら? アタシだけのメイドさん♡」
「か…畏ま…りま…しt「「ちょっと待った!!」」……え?」
鈴達の背後から非常に見覚えのある人影が二つ並んでる。
あれは~……彼女達ですね。はい。
一応、鈴達の後ろにはお客さんが並んでないから、割り込みにはならないね。
「ゲ」
「え?」
やって来たのは、いつも通りの爽やかな笑顔を浮かべている、執事の恰好をしたロランさんと、なんでか白い着物を着ている簪。
4組と5組は一体何をやってるのさ……。
「フッフッフッ……鈴くん。抜け駆けはいけないぞ」
「私達を出し抜こうだなんて、10年早いよ」
「べ…別に抜け駆けとか出し抜こうだなんて考えてないわよ……」
なんて言ってるけど、顔はめっちゃ悔しそうだよ?
(チッ! まさか、こいつ等がここまで早くやって来るなんて! 弥生の耳かきを独占出来る数少ないチャンスが……!)
結局、文化祭になってもいつものメンバーが集結する訳なんですね。
お約束も、ここまで行けばもう運命に近いんじゃなかろうか。
「そんな訳で、私達も一緒に案内をお願い出来るかな? 私だけのプリンセス」
しれっとロランさんが前に出てきて、私の手を掴んできた。
その手つきはとても優しいが、その代わりに私の背後から感じる殺気が半端じゃない。
「お客様……」
「おや、箒じゃないか。君のメイド服姿も美しいね」
「当店では、店員へのお触りは禁止されています……!」
ロランさんの殺し文句を完全無視して、顔面に血管を浮かべて注意をする箒。
本気で怖すぎて、さっきから泣きそうです。
「それは残念だ。折角、弥生を抱きしめながら座ろうと思っていたのだが」
「本気でやらせると思うか?」
「そ…それもそうだな……」
ロランさんが馬鹿な発言をした途端、ヒロインズの目が赤く光って暴走しそうになってる。
一夏なんて、今にも飛びかかりそうな勢いだよ?
ここまでやり取りして、ようやく席へと案内出来た。
ここの席は念には念を入れて4~6人ぐらいは座れる広さを設けてあるので、四人で来られても余裕だ。
「これがメニュー…になり…ます」
「どれどれ……むっ!?」
お願いだから、ちゃんとまともな注文をしてよね。
間違っても、他の子達がネタで仕組んだヤツを頼んだりしないでよね!
「「「【メイドにご褒美セット】をください」」」」
チクショ―――――――――――!!!
一瞬も迷う事無く注文しやがった~~~~!!!
「え…ええっと……わ…私はこの【プリンアラモード】をください……」
おぉ! この子はまともな注文をしてくれた!
私の中で、この見知らぬ少女に対する好感度がかなり上がった!
「お! プリンアラモードを注文するなんて、お目が高いね~!」
「え? そうなんですか?」
「うん! 元々が板垣さんが考案した品だし、今なら板垣さんお手製の超絶品のプリンが食べれるわよ~」
「「「弥生のお手製っ!?」」」
近くを通りかかった鷹月さんが何気なく爆弾を置いていく。
本人からすれば善意でやった事なんだろうけど、この状況では完全に逆効果だよ~!
「「「こっちにもお願いします!!!」」」
「はいは~い。メイドにご褒美セットにプリンアラモード4つ頂きました~! ご指名貰ったんだし、板垣さんも一緒に座ってていいよ~」
あ~……行っちゃった。
私の意思はどこにあるのかしら……。
「えっと……」
鈴と簪とロランさんの『ここに座れ』オーラが半端じゃないので、仕方なく座る事に。
でも、座ったのは彼女達の隣じゃなくて、真っ先にプリンを注文してくれた女の子の隣。
「「「クッ……!」」」
そこ、悔しそうにしない。
(う…うわ~! 隣に座られちゃったよ~! 睫毛長っ! 肌白っ! しかも…すっごくいい匂いがする……)
おや? なんか見られてる? 初対面だから緊張させちゃったのかな?
その気持ちは痛い程理解出来るから、ここはそっと笑いかけて安心させてあげますか。
「………っ!」
(笑顔……綺麗……これが本物のヤマトナデシコなんだ……)
あやや。なんか増々緊張させちゃった感じ?
う~ん……マズったな~。
「「「うぅぅ……」」」
んで、そこの三人はどうして顔を抑えてるの?
「「「弥生の笑顔が可愛すぎて生きてるのが辛い……」」」
お前達は本気でどうしたっ!? 文化祭だからいつも以上に羽目を外してるのっ!?
「ところで、さっきから気になっていたんだが、鈴くんと一緒にいる少女は誰なんだい?」
「あ。まだ紹介してなかったっけ。乱」
「う…うん」
乱? それがこの子の名前?
「えっと……台湾の代表候補生の『凰乱音』っていいます。鈴お姉ちゃんとは従妹同士です」
「成る程…従妹か。道理で目元などが似ていると思った」
「うん。でも、鈴とは違って大人しい子」
「いや、こいつの場合は緊張してるだけで、いつもはもっとこう…活発な子よ?」
成る程。初めて来た異国に緊張して『借りて来た猫』状態になってる訳か。
この後、ロランさんと簪もそれぞれに自己紹介をした。
目の前にいる二人も代表候補生だと知って、かなり驚いていたけど。
「日本とオランダの代表候補生……」
「驚くのはまだ早いわよ」
「え?」
「この一組には、イギリスとフランスとドイツの代表候補生もいるんだから」
「……なんで一つのクラスに三人も代表候補生がいるの?」
言っちゃったよ! 誰もがツッコみたくて、でもなんでか言えなかった事をこの子が普通に言っちゃったよ!
「さぁ? お上の都合じゃない?」
んで、鈴も鈴でなんか適当に返してるし!
「にしても、二人のその恰好ってなんなのよ?」
「私がいる5組は1組とは対になる【執事喫茶】をやっていたんだが、矢張り1組には敵わないようでな。すっかり閑古鳥が鳴いているよ」
「それはこっちも同じ。2組は【中華喫茶】をやってたんだけど、場所が悪過ぎたわね。1組の隣じゃ、余りにも分が悪すぎるわ」
「ウチはお化け屋敷。ジャンルが違うから、そこそこお客さんが入ってる」
なんか急に申し訳なくなってきた……。
でも、お蔭で今の皆の恰好にも納得が出来た。
「弥生の女神の如き魅力の前では、私達程度では塵にも等しいということか……」
「そうね。マジで弥生のメイド服姿って可愛いもん」
可愛い可愛いって言わないでよ……本気で照れるじゃんか……。
「弥生」
「簪……?」
「萌え」
超真剣な顔でサムズアップしないでくれるかなっ!?
こっちが反応に困るんだけど!
「本当に仲がいいわよね~。はい、ご注文のプリンアラモード×4とメイドにご褒美セットで~す」
鷹月さんがキャスター付きのトレーに注文の品を乗せて戻ってきた。
確かこの子って、箒と同じ部屋だったよね?
結構、箒と話している場面をよく見るから。
「それじゃ、何か追加注文があればいつでもお申し付けください。お嬢様方」
テーブルの上に並べられたプリンをよく観察する。
うん。気泡も全く無いし、我ながら今回は本当に上手く出来た方だな。
「こ…これ……本当に板垣さん…が作ったんですか?」
「ん……」
乱音ちゃんが驚いた様子で私とプリンを交互に見る。
何か変な所でもあったかな?
(これ……本当に目の前の人が作ったの? 本気で美味しそうなんだけど……。私と少ししか違わないのに、ここまで凄い人だなんて……)
あ…あれ? なんか落ち込んでる? なんで?
「鈴お姉ちゃん……」
「どうしたの?」
「完璧女子って……本当にいるんだね……」
「そうよ~。弥生は、同じ女目線で見ても本当で凄いんだから。ん~♡ このプリン、マジで超おいし~♡」
「激うま……♡」
「これが至高の美味というものか……。まさに感動の味だ……!」
ロランさん。喜んでくれるのは嬉しいけど、少し大げさ過ぎ。
「んで、【メイドにご褒美セット】ってのは何をするのよ?」
「えと……」
なんて説明していいのか私も困ったけど、取り敢えずは前回あった事をそのまま教えた。
「そのまんまじゃない……」
「だが、ナイスアイデアと言わざるえないな」
「アイデア賞……」
いや、そんな大層なもんじゃないからね絶対。
普通に羞恥心を煽るだけのものでしょ。
「ポッキーは結構あるみたいだし、まずは一人一本ずつやりましょうか」
「「賛成」」
しなくていいです。ほら、また乱音ちゃんが困ってるじゃない。
「そ…それでは弥生。その可愛らしいお口を開けてくれたまえ」
「あ~ん……あむ」
どうしてロランさんは、ヅカキャラみたいな口調じゃないと会話できないの?
「モキュモキュモキュモキュ……ごっくん」
「はふぅ……♡」
なんか芝居がかった感じでロランさんが背凭れに体を預けてるし。
「これは……反則だよ……」
どこが?
「弥生……君は一体何処まで私を魅了すれば気が済むんだい?」
知らんがな。
「こ…今度は私がやる……!」
二番目は簪。
今回も私は普通に、差し出されたポッキーを食べた。そう、普通に。
「ヤバ……興奮のし過ぎで鼻血が……」
ちょっとぉぉっ!?
どこをどう興奮して鼻血が出ちゃったのかなぁっ!?
そこの所を詳しく説明求むよ!
「んじゃ……次はあたしが。鈴、行きます」
今から君はどこに出撃するんですかね?
ま、ちゃんと食べるけどさ。
「何よコレ……。あたしのチャイナドレスで魅了して弥生を惚れ直させようと思ってたのに、逆にこっちが惚れ直しちゃったじゃない……」
なんか好き勝手に言ってますにゃ~。
ポッキーとっても美味しいな~♡(現実逃避)
その後も、いつも通りのやりとりを繰り広げ、その度に乱音ちゃんが困惑し、他の皆がちょっかいを出して。
ほんの少しの間だけの楽しい時間が過ぎ去り、遂に運命の時が訪れた。
お会計の時に行われるくじ引き。
どうして、私なんかの耳かきにそこまで躍起になるのかなぁ~……。
訳が分からないよ。
久し振りなのでなんだか懐かしいです。
次回はチャイナガールズ+αの耳かき争奪戦と、二組目のゲストの登場予定です。