さよなら、ガフガリオン。   作:詠むひと

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魔法談義まで到達出来なかった。

会話のみ。
だけどある意味、これがやりたかった為に書き始めたとも言えるシーン。


誓い

 魔法省の一室、小会議室とでも言うべき場所。そこには楕円形のテーブルに着く7人の姿がある。ガフガリオンの正面にフールーダ、その横に計6人の弟子達がいる。

 

「さて、ガフガリオン殿急遽お呼び立てして申し訳無いがまずコレを見て欲しい。」

 

 映像記録の水晶からはガフガリオンとデュラハンとの戦いの一部始終が映し出されている。

 

「この騎士は君で間違いは無いな?」

 

 ガフガリオンは頷き次の言葉を促す。

 

「単刀直入に言おう、君は何者だ。私はこれでも帝国最高の魔法詠唱者であると言う自負がある。その私が知らぬ魔法を使い、単騎でしかもこれほどの短時間でデュラハンを討った。以前、我々は帝国騎士の精鋭と弟子達を伴って討伐を行った。」

 

 言葉を紡ぎつつ、その眼はどこか熱を帯びている様にも感じられる。

 

「その我々よりも遥かに早く討伐して見せた君と言う実力者と言う情報等、何処からも上がっていない。私達の情報網に掛からぬ存在が突如現れこの帝都へ訪れた。」

 

 君は何故帝都に来た。と問われつつも本音で言えば特に理由も無く、死した筈の己が生き延び見知らぬ地を歩いていた。そんな理由にならぬ理由をどう言うか迷いつつ。この人物の前には誤魔化しは通用しないだろうと、感覚的に確信し口を開く事にした。

 

「俺がここへ来た理由は、手掛かりを探す為だ。」

 

 フールーダから眼を逸らす事無く、己が知る真実を語る事にした。この老人達ならば、何かを知っているかもと言う期待を籠めつつ。

 

「俺はイヴァリースから来た。この地名に聞き覚えは?・・・無いか。俺はそこである男と戦い、敗れて死ンだ。そう、死ンだ筈なんだ。」

 

 反応を見つつ、かい摘まんで事情を話した。意識が途切れ、気が付いたら濃霧の中を歩いていた事。死んだ時の事は覚えている、その生々しい感覚を忘れていない。3人の少年と会い帝都までの道案内を頼み、その道中デュラハンと交戦し打ち破って帝都へ来て酒場で出頭を命じられた事。

 

「以上だ。何故こうなったのか原因はわからンし、こんな事例も聞いた事がない。」

 

 我ながら荒唐無稽な事を話している自覚はある。狂人の類いと思われても仕方ないとも思い自嘲した。

 

「うむ、事情は分かった。君の身に起こった事については幾らか心当たりがある。ただしこれには過去の事例から推測した事もあるので、正確とも言い切れない。」

 

 フールーダは記憶を探る様にしつつ、片手で白く長い髭を撫でつつ口を開いた。

 

「カッツェ平野の霧は霧で無く、異なる世界の冥界同士が重なり合った影が霧に見える。そういう伝承がある。」

 

 曰く、

 

 霧が冥界への扉となり、迷える亡者が生ある者を妬み現世へ現れる。だが扉は不完全で力の弱い者しか現れる事は出来ない。だが亡者が集まれば亡者を媒介しより強大な亡者が現世へ引きずり出される。

 霧が極限まで濃い日は重なりが大きく異界への扉が完全に開かれ、そこから力ある強大な死者の魂が呼び出される。いや世界の意識その物に召喚され、召喚されし者は受肉し新たなる命を得る。

 

「受肉の為に必要なのは欠けの無い魂と莫大な魔力だと言われている。これ等の説はいつから伝わったものかも定かでは無い。だが事実として霧の中では何処からともかくアンデッドが発生し、放置すれば強大なアンデッドが発生するのは事実である。」

 

 一度フールーダは言葉を切り。こちらを見つめながら言う。

 

「君は恐らくそうして異なる世界から来たのだと思う。」

 

 言葉にすれば、異世界から来た。ただそれだけだが、そんなものはお伽噺や伝説で聞くものであり、自身がそうである等と容易に信じられるものではない。

 ダテレポで何処かに転移させられたと言われた方が納得出来る。だがしかし、己の死を覚えている。これが偽りの記憶では無いと言う確信もある。上手く消化出来ないままにガフガリオンは口を開く。

 

「もし、もしもだが。この世界から元の世界へ帰る事は出来るのか?」

 

 半信半疑のままであるが、聞かずには居られない。もし自身が生きているのならば、やり残した事をしたい。そう思う程度には未練がある、僅かな期待と共に聞く。

 

「残念ながら世界を渡る術はない。いや、少なくとも現代にはその方法があるかどうかすら知るものは居ない。」

 

 首を振りながら否定し、フールーダは語りだした。

 

「この世界にはかつて神が降臨した。そう言われている。」

 

 約600年前、人類の存亡の危機に神々が降臨し人類を救い法国を作った。人類を庇護し繁栄を願った神は約500年前に現れた破壊神とでも言うべき8人の悪しき者と戦い双方とも滅び去った。

 神々の振るった力は世界の理を崩し再構築したとも言われている。

 

「神ならぬ私達には、世界の外に異なる世界があると言う事を観測すら出来ない。よって方法があるかどうかすらわからぬのだ。」

 

 悩ましげに残念そうにフールーダは言った。

 

「故に私は魔法の深淵を覗きたいのだよ。」

 

 フールーダは力ある瞳でこちらを見た。まるで心の奥底まで覗く様な感覚を覚える、何か自身の中に彼の求める手掛かりがあるとでも言うのだろうか。

 

「古の神々の残した奇跡。魔法の深淵を覗くのが私の望みなのだ。」

 

「ガフガリオン殿。貴方が知る私の知らぬ法則、そしてそこから生まれる魔法を私に見せてくれないか。」

 

 その瞳には様々な感情が見える。期待、不安、焦り、悲しみ。そして大きな歓喜。200年を越える執念の成就が一歩近付くのだ無理もない。

 

 

「帰れないか・・・死ンだ身だしな。俺は、俺は何故この世界は、俺はを呼ンだんだ。」

 

 大きな落胆を感じつつ、納得をしている自分が居る。失った命を再び与えられた、それだけでも奇跡ではあるが何処か釈然としない。

 

「フールーダ殿、俺は今どうしたら良いのかもわからン。あンたに協力するのは別に構わン、だが違う世界の魔法なンて、その魔法の深淵とやらを見る為に役に立つのか?」

 

「ああ、もちろんだ。魔法の深淵は遥かに遠い、今私に使える方法ではそこまで届かぬ。だが複数の見る角度、方法を試して行けば今まで見えなかったものが見えると確信している。これまでずっと手探りで探して来たのだ。ならばガフガリオン殿の力は新たなる可能性なのだ。是非ともこの老骨に力を貸していただきたい。」

 

 

 その瞳にはもう負の感情は見えない、見えるのは夢への熱望とでも言うべき熱い思い。ずっと手掛かりを探し求め続けていた、そこへ現れた異界からの来訪者。

 自身の影響が及ぶ範囲で自身と帝国の情報網を駆使しても見付からなかった手掛かりを、何が何でも逃してなるものかと言う強い意思の光は道を見失った男へと届いた。

 

 今その力強い瞳は、ガフガリオンにだけ向けられている。無意識に息を止めていた事に気付き、深呼吸をし答えた。

 

「フールーダ殿、俺にはこの辺りの情勢は分からン。だがやってみたい事がある。頼み事なンて出来る立場じゃあ無いンだろうが、それへの助力をして貰えるならば、俺に出来る限りの協力をすると約束する。」

 

 ガフガリオンはフールーダの熱い瞳を見ていると、自身が捨て去った物を思い出していた。

 自身が何故剣を取ろうと思ったのか、何故騎士を目指したのかを。若き熱意は現実に冷却され、いつしか何処かに無くしたと思っていた。

 

「(こンな爺が夢を語って熱くなれるンなら、俺だって。)」

 

 フールーダは眼で続きを促してくる。

 

 ガフガリオンは自らの思いを語りだした。

 

「俺は、力の無い者達が強者に蹂躙されるのが嫌で、故郷を家族を敵から護る為に剣を取った。」

 

「(だから俺は)」

 

「正義とか今更俺が語っちゃいけねえンだろうが、俺は人々を護る為の剣で居たい。力無き者の盾であり、剣となって護りたいンだ。」

 

「(自身が強いだけでは駄目だ、肩を並べる戦友も力を着けなきゃ駄目なんだ。自分が強ければ仲間を守れると、敵を討って故郷を守れるだなンて思ってた。騎士だったら足並み揃えて力を合わせ無きゃならンかったンだ。)」

 

「後進の育成なんて大層な事は言わねえ、俺の持つ技術と知識を若い奴に伝えて行く事だ。剣技でも魔法でも戦い方でもいい、若い奴が先に死んで行くなンてあっちゃいけねえンだ。」

 

 一度死んだ身だ。もう失う物は無い、この世界に故郷も家族も居ない。有るのはこの身ひとつ。ならば未練など、これだけだ。

 

 

 

 互いに眼を合わせ会い、真意を読み取ろうとすれど互いに真実を口にしていると言う確信が得られる。

 

「フールーダ殿」

 

「ガフガリオン殿」

 

「「宜しく頼む。」」

 

 テーブルを挟み二人は熱い握手をした。

 互いに己が夢を実現する為に。

 

 

 

 

 




設定が多いのは
生い立ちやなんやかんやの設定組まないと、書けないので。
キャラを掘り下げて想像していく時が一番楽しい。

思うに今の所男ばっかりで、しかもオッサンと爺が大半と言う…。
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