さよなら、ガフガリオン。   作:詠むひと

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修正しました。私の考えが間違っていたんだろうと思います。

史実の百年戦争を調べつつ、テンプル騎士団の末路とか色々見ながら。百年戦争をモデルにしたならばと言う件で思う所があったので。


フールーダとの会談(下)

「不死で思い出したンだが、こっちのアンデッドは倒した後に復活して来ないンだな。」

 

 フールーダは首を傾げつつ返答する。

 

「復活?どういう事だ。倒したらまた復活するような物言いだが。」

 

「物言いも何も言葉通りだよ。こっちじゃアンデッドは倒しても時間が経つと復活してくる事がある。復活に関する法則があると言われてるがよく知らン、復活しない奴と二度三度と復活してくる者もいるしよく分からン。」

 

 疲れた様にため息をつくフールーダ。

 

「お主の世界はまるで、地獄だな。生者も死者も倒れても倒れても再び立ち上がって襲いかかって来るなど、地獄その物だ。もしこの世界でもそうなら、カッツェ平野に面した国は今ごろ滅びとるだろう。」

 

 酷い言い様だが、あながち外れでも無いのが痛い所だ。

 

「地獄か、こんなもんは序の口だよ。本当に恐ろしいのは何時だって人間さ。」

 

 

 脳裏によぎるのは戦争中の事。追い詰められた人間ほど恐い物は無い、生き残る為にはどんな非道にも眉一つしかめる事も無くなる。

 

 

 

「今日お前が討伐したデュラハンはお前の世界だと、どの程度の強さになる?こちらではまず通常人間では勝ち目が無い部類に入るのだが。」

 

 アレはたぶん、レベル27前後くらいじゃないンかな、だとすると…。

 

「そこらの山にいるゴブリンにでも倒されるくらいだな。強さなんてピンキリだが、山賊にもアレよりも強いのは居るし、アレより弱いドラゴンも居る。個体で違うから何とも言えンが、ただ硬いだけの雑魚だな。今の俺より強いモンスターなンぞイヴァリースにはゴロゴロ居るしな。」

 

 赤黒チョコボの群れやベヒーモスを思い浮かべつつ言うガフガリオン。

 

「アレが雑魚だと…しかもガフ、お前よりも強いモンスターがゴロゴロ居るだと…。」

 

 何とも言えない表情でフールーダが見てくるが、事実だ。アレくらいなら密猟のいいカモ程度でしか無いだろう。特にアイツ等ならレアアイテム目当てに乱獲するだろうな。

 

「世界が違うとか。もう、そう言う問題では無いな。お前の世界はどうなっとるんだ…。私から見ればお前も常識の外側の強さなのにその上だとか…もう。何も言わんよ…。」

 

 そんな呆れた様な目で見てくンじゃねえよ。こっちじゃ常識だっての。

 

「ふぅ、些か疲れたわ…。今日はもう遅い、続きは明日にしよう。部屋を用意してある、そこに泊まって行ってくれ。続きは明日の午後からにしたい。遣いの者を行かせるから何かあればその者に言うとよい。」

 

 宿か?と聞くと、魔法省内には来客用の客室があるらしくそこに泊まると言った。フールーダがベルを鳴らすと直ぐに部屋の入り口が開き、ローブを身に纏った若い女が来た。その女に案内されるままガフガリオンは部屋に入った。

 

 女は言う、必要な物や用があればベルを鳴らせば直ぐに来るとの事。

 

 扉を閉め足音が遠ざかって行くのを聞くと、鎧を脱ぎ簡素なローブに着替えたガフガリオンはベッドに横になった。

 

「疲れた…。色々あったし、ここが異世界とか…でも俺が死んだのは確かだしな。もうよく分からン。」

 

 一日を振り帰ってみる。

 

「活気があって笑顔が溢れる街、治安が保たれて女が一人歩き出来る都市、改革を推し進める若く力のある皇帝…。イヴァリースとは大違いだな。商人も色々な事を試してより良くしようとしてるし、飯が旨いし酒も旨い。どうやってンのか知らンが、冷えたエールが出てきた酒場。」

 

「羨ましい…どれもこれもルザリアには無かったし、きっとイヴァリースには何処にも無い…。良いなぁ、羨ましい。こんな国に仕える騎士は幸せ者だろ、俺達には…何も無い。」

 

「何もかも、五十年戦争で灰になっちまった…。あのくらいで地獄とか…フールーダは甘えよ。そんなんじゃ、イヴァリースじゃあんなに長生きする前に頭のオカシイ奴等に殺されるだろうな。」

 

「あー、肉は、食ったな。酒が足りねえ。言えば持ってきてくれるンかな…。」

 

 ベッドから起き上がり、机上にあるベルを鳴らすガフガリオン。

 

 鳴らして30秒程度経ったらノックがあり。

「何かご用でしょうか?」

 

「あー、悪いンだが。ちょっと腹が減ってな、何か摘まめるような物と酒を貰えないだろうか?」

 

 酒の種類を問われ、エールが良いと言うと笑顔でお待ち下さいと言った後去っていった。面倒だから立ったまま待って居ると直ぐに台車にエールの瓶とグラス、チーズとサンドイッチ等を持ってきた。

 

瓶を受けとると、これも冷えている。どうなっているのだろうか。

 

「なあ、このエールを冷やしているのはどうやっているンだ?」

 

「これは、物を冷やす為のマジックアイテムが有るのです。それによって、いつでも冷えたエールをご提供出来るようになっています。」

 

 便利な物が有ると感心していると、彼女は言う。

 

「またご用命が有りましたらいつでも何なりと申し付け下さい。」

 

 そんな事を言われ、つい冗談めかして言ってしまった。

 

「じゃあ、お嬢さんにお酌して貰えないかな?」

 

 お嬢さんみたいな美人にお酌して貰えると嬉しい、等と笑いながら言ってみたら。

 

「ふふ、わかりました。美人だなんて言われたら、お酌しなきゃいけませんね。」

 

 彼女も微笑みながら乗ってきた。冗談に乗ってくれるとは話が分かるお嬢さんだ、と言いながら彼女を部屋に招き入れた。

 

 歳は二十代前半、身長は170あるか無いか、長身で出てる所は出て引っ込む所は引っ込むとスタイルが良い。金髪で肩口までのクセの無いストレートな髪をしている。

 紺色のローブを着ているが伸縮性のある生地の様で身体のラインが出ている。生地について聞くと新素材だと言うので試しに買ってみたら着心地が良いと言っていた。

 彼女も魔法省の職員だそうで、来客の対応と事務手続き等を担当していると言う。彼女は第二位階魔力系魔法詠唱者だと言っていた。まだこちらでの分類に馴染みが無いが、彼女曰く魔法省では最低ラインだ。と苦笑いしながら話してくれた。

 

 来客の中には酒を飲みながら世間話をしたがる者も時々居ると言い、帝都について聞いてみた。広くて迷う事も有るが飽きないし楽しいと。闘技場には一度は行くべきと熱弁し、休日には時折冒険者同士での戦闘の観戦に行くのが楽しいと話していた。

 

 エールも無くなったので、名残惜しいがお開きとなった。明日は彼女が俺の案内をしてフールーダとの会談の続きへと行くようだ。

 

 彼女が部屋から出たので、ベッドに横になるガフガリオン。

 

「ああ、美人にお酌してもらって満足だ。もう寝よう、考えたってもうどうにもならン。」

 

 直ぐに寝息を立てガフガリオンは眠りについた。

 

 

 

 

■■■■■

 

 ガフガリオンが退室し、フールーダと弟子達はそのまま会議室に居る。

 

「さて、諸君。今のうちに今日の会談の内容を纏めよう。明日は朝から陛下への報告だ。」

 

 ラーニングに成功した弟子の一人が言う。

「師よ、私は明日の朝イチで他の者にプロテジャを掛けどの程度軽減されるか。また、消費魔力及び持続時間の確認を行います。」

 

 また、別の弟子は言う。

「私は今日の映像を編集し陛下にお見せ出来る状態にします。他には…。」

 

 弟子達は次々にすべき事の報告をし承諾を得ていく。

 

 

「諸君。今日と言う日を決して忘れるでない。未知との遭遇とはとても得難い物だ。ガフガリオンと言う未知の世界からの来訪者、ラーニングと言う未知の現象そして未知の魔法の習得。チャクラと言うとても素晴らしい技術。異世界の様子。どれをとっても、まず経験する事が難しい。それを経験出来たと言う奇跡。そして彼との協力関係を築けると言う奇跡。私も長く生きてきたが、あれほどの強者は13英雄以来だ。他の者にとっては伝承の中の人物でしか無いが、我々は匹敵する人物に出会えた。」

 

 フールーダは全員を見回し、一呼吸してから言った。

 

「私のタレントで彼を見た所、魔法体系が違うせいか明確には判断出来なかった…。」

 

「だが、その魔力は。おおよそ、六十年前の私に匹敵するだろう。そう、第6位階到達直前の私にだ。」

 

 一同はゴクリと唾を飲み込む。

 

「魔法体系の違いを考慮して、私とほぼ同格であると言う事だ。彼の持つ知識や技術を共有しラーニングを位階魔法でも再現出来れば、私も彼も諸君も全ての帝国の魔法詠唱者は更なる高みへと至れるだろう。」

 

 誰も声を出さないが、空気が熱を帯びていく。

 

「同じ物を見ても、より多くの視線で見る事が出来る。なればより深く理解する事が出来る。理解が深まれば今まで見えなかった法則もきっと見えるだろう。それを足掛かりに高位へと至れば、次へ次へとより高みへ行けるだろう。」

 

「ここが正念場だぞ、諸君。ここで下手を打てば彼を逃してしまう。何としても彼を帝国に取り込まねばならない。各々、持てる全てを持って彼を取り込むのだ!」

 

「ここで、私の計画を話そう。これを中核とすれば誰も表立って反対しないし損もしないだろう。」

 

・ガフガリオンを取り込み、彼の目指す技術者の継承に協力する

・技術継承により帝国の騎士、魔法詠唱者の力の底上げとなる

・研究者の実力向上に繋がる

・陛下の望みである国力の増強に一役買える

・法国と竜王国から再三の要請のある義勇兵に戦力を割ける

・法国との連携強化により、今まで開示されなかった情報の開示の可能性

・ビーストマンを退け、新たなる人類の生存圏を広げる

・人類救済の大義名分を得る

・開拓が行われれば資材の発注諸々で帝国に仕事が増え、民は潤う

・神の遺産や未知の遺跡の調査に赴ける

・未知の地を既知へと変えられる。

 

「これに沿って動けば法国からもとやかく言われないだろう。今後はこれを中核として我々は動く。明日の事だが、ガフガリオンには四騎士との模擬戦を行わせたい。訓練場を確保しておけ。午後からの会談でガフガリオンには伝える。」

 

 以上、解散。とフールーダが宣言し弟子達は退室した。

 

「私と同格か、彼に位階魔法を習得させ。禁術も習得させ、ゆくゆくは私と共に未知への探求に着いて来て貰いたいものだ。」

 

 

「ああ、これからの日々が楽しみだ。」

 

 

 




イヴァリースは地獄。

ただ、史実も大概だなと。人が思い付く非道なんて大体は昔の人が実際にやった事だし。

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