さよなら、ガフガリオン。   作:詠むひと

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ルビは雰囲気か気分。

途中半分寝ながら書いていたので、ちょっとアレ。




 

 思うに、若さとはそれだけで宝であり。

 

 無限の可能性だ。

 

 それが才有る者なら、価値は大きい。

 

 

 

 

 

 

「死なせるものか…。」

 

 

 

 可能性を秘めた若き騎士を、この短い戦いの中で成長を見せた者を。

 

 

 

 世界が異なるならば、理も違う筈。魂の欠片でもその身体に残っていれば…。イヴァリースでは完全に死亡したら蘇らない。だが、ここは異界だ。

 

 事切れ、でもどこか満足げな顔をした乙女(レイナース)。お前の道は俺と違ってまだまだ長いンだぞ!

 

 

 死なせるもンか。帰って来い!

 

 

「生命をもたらしたる精霊よ、今一度我等がもとに!」

 

 この手は離さンからな!先達として伝える(暗黒剣)は他にも有るンだ。

 

 

「レイズ!」

 

 

 光が降り注ぐ。

 

 胸に抱いた騎士(レイナース)へと。柔らかくも眩しい輝きが体に溶け込む様に。

 

 

 だが、身動ぎもせず骸は横たわる。

 

 

 まだだ、一回で諦める訳無いだろう。

 

 

「生命をもたらしたる精霊よ、今一度我等がもとに!」

 

 お前は、俺と違って闇から眼を背けず、諦めずに受け入れたンだろう。まだ終わるな、帰って来てくれ。

 

 

「レイズ!」

 

 

 再び降り注ぐ光の中でガフガリオンはレイナースを強く抱き締めていた。さっきあったばかりの者に対する物よりも、深い感情を向けていた。それは戦友や、部下の様に。同じ暗黒騎士となった者として、そして闇に正面から立ち向かった者への敬意を持って。

 

 

 抱き締めたその身体から、鼓動を感じた

 

 弱々しくも、確かな呼吸を。

 

 小さくも呻く声と息遣い。

 

 

 弱った身体を癒す為には、体力だけでも。魔力だけでも足りない。生命の灯火を燃やすには足りない。

 

 

 ガフガリオンは自らの内に精神を集中し、(チャクラ)を練る。練り上げ増幅し、胸の中で眠るか弱き乙女に注ぎ込む。

 

 生命の灯火は注ぎ込まれた(チャクラ)により、再び強く燃え上がる。

 

 眠れる姫君(レイナース)王子(ガフガリオン)キス(チャクラ)によって目覚めるが如く。

 

 その(まなこ)を開いた。

 

 姫君には聞こえていた。自らを呼ぶ声を。自らを必要だと訴える声を。

 

 帰って来い!と言う力強い声を。

 

 

 気恥ずかしいが、言いたい。言わねば為らぬと己が(女心)が叫ぶ。

 

 

「ただいま、戻りました。」

 

 奇しくもそれは、自らが描く夢その物。他人には打ち明けられぬ、乙女の夢。

 

 夢の一つは果たされた。

 

 恥ずかしさに、顔を手で覆おうとし。その違和感に気付く。

 

 違和感、いや。違和感の無さ、あの忌々しい鈍痛と半面を蝕む醜い物。

 

 無い。

 

 無い。

 

 無い。

 

 この為に全てを捧げ、この身を皇帝に尽くしてまで探し出そうとした解呪法。それが、叶えられている。

 

 

 何故?

 

 

 疑問を抱くレイナースを他所に、周囲は慌ただしく動き出していた。

 

 

 周囲では、救護班とフールーダーが駆け付け見守り、魔道具で様子を伺う皇帝と三人の騎士が食い入る様に見詰めている。

 

 

 レイナースを抱いたままガフガリオンは立ち上がり歩いて行く。その姿はまるで胸の中の姫君を守る騎士の様で、実に様になっていた。

 

 

 我に返ったレイナースだが、もう遅い。

 

 周囲の者の目に写ったのは、初老の騎士にお姫様抱っこされる姫騎士と言う図。

 

 

 慣れぬ事態で羞恥に赤くなるレイナース。周囲は暖かい目で見送った。

 

 恥ずかしさに、顔を埋めるレイナース。その姿は常の冷徹な女騎士ではなく初心(うぶ)な少女のようだった。

 

 レイナースは救護班が敷いていたマットに身体を横たえられた。直ぐ脇にはガフガリオンが居る。

 

「痛む所は無いか?」

 

 首を振り無いと言う。恥ずかしさで口を開け無い等、自身でも情けないと思う。

 

「そうか。」

 

 そう言ったきり、横に座り黙ったままのガフガリオン。

 

 二人きり、いやフールーダーが来た。

 

「ガフよ、魔法の…」

 

 ガフガリオンは静かにするようジェスチャーする。回復させたとは言え、死亡し蘇生させたばかりだ。安静にさせてやりたい。

 

ガフガリオンとフールーダーは小声で会話を交わす。レイナースには断片的にしか聞こえ無いが、今日、終わり、戻ると途切れ途切れで聞こえた。

 

 どこか寂しさを感じる自分が居た。自身の心に強烈な出会いをもたらした相手だ。

 

「また、会えますか?」

 

 声を出すのも辛い。だが伝えねば、また会いたいと。胸が高鳴る。

 

「ああ、また会えるとも。」

 

 教えがいのある若き騎士として。

 

 噛み合うようで噛み合わない会話。二人の胸中は違えど、直ぐにまた会うだろう。

 

 

 ガフガリオンとフールーダーは去り、レイナースは担架で運ばれて行った。

 

 レイナースの心は青空の様に晴れていた。これからの夢の実現についての明るい夢で。

 

 

 

 

 

 

 皇帝は思い悩み頭痛を感じる。

 

 解呪を餌に配下に置いていたレイナースは、もう忠誠心など期待は出来ないだろうと。

 

 かの騎士は強すぎて制する術も無い。他の騎士達の教導には使えるだろうが、フールーダーと同じくコントロールは無理だろう。何か、縛る方法を見付けるのが急務だと。

 

 

 三者三様の思いを余所に、フールーダーと弟子達だけは見た情報を整理しながらもひたすらに嬉しそうにしていた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




レイナース×ガフガリオン悪く無いと思うんだよなぁ…。

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