異世界から戻った俺は銀髪巫女になっていた   作:瀬戸こうへい

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そして、私は

 卒業してからは、子育てに専念する日々が続いた。公園デビューしたり、児童館に行ってみたり。

 

 2冊の母子手帳に書かれる内容が増えていく。成長の様子や、受けた予防接種の記録。そのときどきの疑問などのメモも残っている。

 

 この頃、私が主に悩んでたのは子育てよりも蒼汰と翡翠との関係だった。

 

 翡翠は学校が忙しいので毎日は来れなかったけれど、週に何回かは必ず家に来ていた。

 ときどきは母さんに子供たちを見てもらって、二人でデートするときもある。

 そのときは、鍵を預かったままのマンションで、二人の時間を過ごすこともあった。

 

 そして、蒼汰が長期休暇で地元に帰ってきたとき。

 私は蒼汰から誘われて、初めて子作りという理由のないセックスをした。

 蒼汰へのお礼という建前はあったけど、そんなの関係なしに蒼汰から求められるのは嫌じゃなかった。

 ……自分でも、どうかと思うけど。

 

 蒼汰も翡翠もお互いと私との関係を承知しているけれど、改めてこんな関係を続けていていいのかと本気で悩んだ。

 

 私が悩んでいることは、みんなにはバレバレだったみたいで、私と翡翠と蒼汰と優奈の四人で話し合うことになった。

 

 結論は前と変わらない。私たちは家族として暮らしていくことになるのだから、世間はどうであれ、このままでいいのだと。

 

 それでも、私の迷いは消えなかった。

 けど、疑問に思わなくなったら、それはそれでダメな気もするので、この気持ちは抱えていくことにする。

 結局流されるまま、二人と関係を続けること自体は変わらないんだけれど……

 

 ともあれ、子供は成長していく。

 

 はじめて言葉を喋った日。

 アリシアが私のことをママと呼んでくれた。言葉はアリシアの方が早かった。

 

 ちなみに、アリサは翡翠のことをかーさ(ん)と呼んだのが最初の言葉だった。

 

 言葉が増えて自分の意思を言葉で発するようになる。特にアリシアは物覚えが良い。後から判明したことだけど、彼女は完全記憶能力を受け継いでいた。

 

 そのうち、単語ではなく文章を話すようになる。

 

 意思疎通ができるようになった分、逆に理解されないことがストレスになる。

 私たちが自分のしたいことをわかってくれないと、娘たちは癇癪を起こす。

 こちらが体調が悪かったりしてしんどいときも、要求を止めない娘たちに勘弁してと思うときがある。

 うちは、そういうときは家族みんなに助けてもらって休めるけれど、そうじゃなかったら多分爆発してしまっていたと思う。

 

 自分一人で居る時間の大切さを実感した。

 

 結局、できることは根気よく繰り返して教えるだけ。娘たちのアクションが私たちにどのような感情をもたらすのか。その結果を繰り返し教えるトライアンドエラー。

 

 幸い二人とも知識が理解に変わるのが早かったので、大分楽な方だったのだと思う。

 

 子供たちのことばかり考える日々。

 少しづつ成長に合わせて日常は変化して、子供が自分でできることがひとつづつ増えていった。

 振り返ると、いつの間にこんなに大きくなっていたのかと驚かされる。

 

 年が明けて成人の日。

 神社で祈祷する人はそれなりに居るので、例年は神社の手伝いをするのだけれど、今日は祈祷を受ける方だ。

 私と優奈は朝から祈祷してもらい成人式に行った。

 二人ともレンタルした振袖姿で、普段と違う華やかな姿に子供たちもはしゃいでいた。

 

 ……抱っこはちょっと我慢してね。

 普段着が鼻水やら涙やらで汚れても気にならなくなったけど、この服は高いから。

 

 成人式では、高校の頃の友達とか、懐かしい人から話しかけられることが多かった。

 

 そして、二月が来て、私は二十歳になる。

 誕生日を過ぎたある日、私は父さんと二人でお酒を飲んだ。

 

 ビールは苦いままだったけど……約束を果たせたことを嬉しくて泣いた。父さんも泣いていたと思う、多分。

 

 それからは、ときどきお酒を飲むようになった。子供たちの世話があるので家でだけど。

 ときどきカクテルを少し飲むのが殆どだったけど、蒼汰が帰ってきているときはみんなで私の部屋で飲み会をするときもあった。

 

 けど、何度目かの飲み会のとき、酔ってやらかしたことがある。

 

 優奈が真っ先に潰れて、次に翡翠が眠り、私は残った蒼汰と二人で飲んでいた。

 お酒のせいか、なんだか無性に人肌が恋しくなって、私は蒼汰にくっついて飲んでいた。

 そしたら、蒼汰がその気になってしまった。ただのスキンシップでそんなつもりは全く無かったのに。

 徐々にボディタッチが増えてきて、手つきがいやらしくなっていく。

 みんながいるからダメって言ってるのに。

 けど、そのうち私も気持ちよくなってしまって、そのままずるずると流されてしまった。

 

 そんなとき翡翠が起きてしまいーーそれからはめちゃくちゃだった。

 翡翠と蒼汰が罵りあいながら私を求めてきて、仕舞いには優奈まで……

 

 この日のことは触れないというのが、私たちの間で暗黙の了解となった。

 

 翌朝、私は二日酔いの頭を抱えながら、お酒はほどほどにすることを心に誓った。

 

 3歳になった娘たちは幼稚園に通い始める。

 二人はあまり似ていない双子だった。

 

 アリシアは銀髪のロングヘアーで身長はクラスの中で一番低い。

 好奇心が旺盛で、目に映るもの何でも興味を持ち、新しい友達も積極的に作っていく。

 テレビが好きで、アニメだけじゃなくニュースも難しい顔をして観てたりもする。

 

 アリサは黒髪のロングヘアーをツインテールにしており、身長はクラスでも高い方だ。

 大人しく言葉は少なめで、自分から積極的に他人に話しかけることは少ない。

 と言っても、アリシアに手を引かれて、友達と一緒に遊ぶことが常なので、特に孤立しているという訳でもなかった。

 好きなのは、アンパンさんのカバのモブらしい……なんで?

 

 アリシアは私に似ているけれど、アリサは子供の頃の翡翠に本当によく似ていた。

 幼稚園のお母さんは、アリサが翡翠から生まれたと思っている人も多いだろう。

 

 幼稚園は子供の行事やらで、母親がすることが案外多くて、保護者会やらランチ会やらで話を合わせるのが大変だった。

 

 基本十歳以上歳上の人が殆どだったし、家族の事を話すにも特殊すぎて……別に隠してる訳じゃないから話すけど、驚かれるよね、そりゃ。

 

 多分、いろいろ噂されているのだろうなぁ……まぁ、子供に悪影響がなければ、何を言われようと、私は別に気にしないけども。

 

 うちは母さんが二人いてズルいと言われたりしたみたいだけど……

 

 ちなみに娘たちは私を『ママ』と呼び、翡翠のことを『母さん』と呼んでいる。

 

 優奈は一時期自分のことを『かーちゃん』と呼ばせようとしていたが、今は母親と名乗ること自体やめていた。

 優奈はようやく妹《兄》離れしたらしく、私たち家族とは、別の道を進むことに決めたらしい。

 今は娘たちに『優奈姉』と呼ぶように指示している。

 ちなみに、娘たちが正しい続柄を知って、一度だけ優奈のことをおばさんと呼んだときがある。

 そのときは優奈にものすごい笑顔で諭されて、娘たちは二度とその単語を口にすることは無かった。

 

 時は流れ、大学を卒業した蒼汰が光博おじさんの跡取りとして実家の神社で働くことになった。

 翡翠も地元企業に就職が決まっている。

 

 これを機に私たちの今後を正式に話し合うことになった。

 

 その結果、私、蒼汰、翡翠、アリサ、アリシアの5人はひとつの家族として認められた。

 

 そして、私たち家族はリフォームした蒼汰の実家の社務所に移り住むことになった。

 

 普段は家事や育児をしながら、忙しいときには神社の仕事を手伝ったりするのが日常となる。

 

 縁結びにご利益があるとかいう噂になったりして、地元で有名な銀髪巫女としてテレビに出たりして。

 

 そして翌年、娘たちは幼稚園を卒業し、小学校に入学する。

 

 ランドセルを背負った姿は二人とも愛らしい。

 一人でいるときになんとなく私も背負ってみたら、違和感が無さすぎて鏡の前でドン引きした。他人には見せられない、絶対に。

 

 娘たちはしっかり頼もしく育っている。

 アリサとアリシアで成長の差はあるけれど。

 人見知りをせず明るく前のめりなアリシアと、おとなしく一歩引いて様子を見るしっかり者のアリサは、互いが互いの欠点を補うように支え合っていて、安心して見ていられる。

 

 心配事と言えば魔法のことくらいだ。

 

 そう、娘たちには魔法の素質がある。

 そのことに気づいたのは、二人が無邪気に私に「見て見てー」と水を出す魔法を見せてくれたからで、私は二人のことを褒めながら、他の人には見せないように言い聞かせた。

 

 魔法を教えるかどうか迷った。

 教えない方が良いのではないかとも思った。家族みんなで何度も話し合ったものだ。

 

 魔法の存在が公になったときのリスクは、以前よりも大きく深刻になっている。

 遺伝で受け継がれることが確定したからだ。

 

 けれど、魔法は便利なものである。

 遭難や事故等の深刻な危機に直面したときに、助かる可能性が高くなるメリットは無視できない。

 

 知識のないまま、魔法を使って魔力を暴走させてしまう可能性もある。ちゃんと教育しておくべきだろうという結論になった。

 

 魔法バレだけは本当に気をつけるようにと、二人には真剣に話しておいたから大丈夫ーーだと信じたい。

 

 それから、私は子供たちに魔法を教えるようになった。

 

 アリシアは当然のように水属性の適性が、アリサはなんと全属性の適性があった。

 

 各属性の神官や巫女に教わった魔法を思い出しながら教えていく。

 ひとつだけ教わっていない属性があるけれど、あの男には連絡を取りたくはないので諦める。

 あの男ーーエイモックは、アリシアの魂を移したときから、一度も姿を見ていないし、噂も聞かない。いったい何をしているのやら。

 

 そして、また時は過ぎて、娘たちは小学校を卒業し、中学生に入学する。

 

 思春期に入った二人の娘。

 親の贔屓目を抜いても文句なく美少女で、毎朝巫女姿で家の手伝いをする姿は微笑ましいとバイトの巫女さんや参拝客からの評判も良い。

 

 アリシアは在りし日の彼女と瓜二つに育った。

 つまり、若い日の私とそっくりということになる。アリシアと私は良く姉妹と間違えられた。

 私の身長は高校のときから殆ど伸びず、アリシアとほぼ一緒の身長になっている(私の方が1cm高い)。三十路になるというのに、お酒を買うときには必ず身分証を提示する必要があった。

 

 アリサは実の母親である私よりも翡翠と波長が合うようだった。

 こちらも姉妹に間違われることが多い。

 アリサが大人びているので、中学生と思われないことが多いのだ。

 身長も胸も、アリサが小学生の頃から私より大きくなっていた。

 普段はそんなに気にしてはないけれど、アリサと一緒にいるときに、私が妹だと勘違いされたことには納得していない。

 

 体は子供の体つきから、しなやかな女性らしい物へと変わっていく。

 そして、生理が来るようになる。

 母親としては、ようこそこちら側へと言った感じだ。毎月の物に悩まされるのも既にベテランの域になっている。

 娘たちへアドバイスするのも母親の役目だろう……と思っていたら、アリサは翡翠に相談して、アリシアはアリサに相談したため、私の出番はお赤飯を作るくらいだった。

 

 そして、アリシアが14歳になったある日、アリシアの生まれる前の記憶が戻った。

 

 朝目覚めて青ざめたアリシアはその事を私に告げて、謝罪の言葉を繰り返した。

 酷く混乱していたため、学校を休ませて部屋で休ませた。

 

 私はホットココアとクッキーを持って、アリシアの部屋を訪問して、二人で話をした。

 

 まず、私はアリシアに謝罪をしてから、母親として成長を見守ることができて嬉しかったことを伝える。産まれてきてありがとう、と。

 

 アリシアは、私を産んで、育ててくれてありがとうございます、と敬語で答えた。

 そういえば、以前のアリシアは誰に対しても敬語を使っていたな、と思い出す。

 産まれてからは、普通に話すようになっていたけれど。娘に敬語を使われるというのはちょっと寂しいものだ。

 

 今までの倍以上の人生を一気に思い出したアリシアは混乱していた。

 彼女の完全記憶能力が、それに拍車をかけているのだと思う。

 私は少しだけ話をして、後はアリシアが一人で落ち着けるように部屋から出た。

 

 お昼ご飯を部屋に持って行って、また少し話をする。

 夜も同じようにご飯を持って行き、後はアリシア自身が落ち着くのを待つことにした。

 

 そうしたら、私たちの態度が冷たいとアリサに非難された。

 アリサは事情を知らないので仕方ない。

 

 翌日もアリシアは学校をお休みした。

 ご飯や飲み物を持っていったとき、昨日よりもいろいろ話をした。

 

 私が幾人だった頃のこと。

 私がアリスになってからのこと。

 アリシアが私の娘になってからのこと。

 

 魂を転移させたことについては、やっぱり怒られた。私は謝罪するしかない。

 

 そして感謝された。私の娘として過ごした日々がどれだけ楽しかったか。いろいろなことを私たちと経験して、それがどれだけ幸せだったか。

 家族というのはこんなにも暖かいものだったんですね……と。

 

 笑って、泣いて、そしてまた笑って。

 

 アリサには全部を打ち明けたらしい。

 びっくりはされたけど、あっさりと事実を受け入れてくれたそうだ。

 

 私たち家族が非常識なのは今に始まったことじゃないし、魔法も使えるから異世界くらいあるよね、とのこと。

 

 あなたから本当の姉を奪ってしまったと謝罪するアリシアに、私の姉はあなただけ、と言って抱きしめてくれたらしい。

 むしろ、アリシアが居なかったら自分も生まれなかったと、アリサは言ってくれて。

 二人で抱き合って泣いたそうだ。

 

 それを聞いて、二人ともちゃんと良い子に育っているんだ、と感動した。

 

 アリシアの気持ちは落ち着いて。午後には、父親である蒼汰と、育ての母親である翡翠に改めて挨拶をした。

 

 優奈とは抱きしめあって再会を喜んだ。元々友達感覚の付き合いだったけど、記憶が戻って二人は昔からの親友のような関係になっている。

 

 それからのアリシアは、記憶と経験が増えた分、以前より落ち着いた。

 

 中学生で我が家の特殊な事情を知ったアリサの心情も心配だったけど、あっさり受け入れたみたいだった。

 私たちが大切に育ててくれたことを知ってるからと、アリサは言った。

 アリシアと差がつかないように二人とも大切な娘として接するようにと気をつけていたので、嬉しかった。

 

 変わったのは、アリシアが私と二人きりのときには昔のようにイクトさんと呼ぶようになったのと、以前よりも甘えるようになったくらいで。

 

 そんなある日のこと。

 アリシアの機嫌が非常に悪かった。

 

 アリシアは記憶の戻る前から、当然に蒼汰と翡翠と私との関係を承知している。

 記憶が戻っても、その関係に何か言ったりすることはなかった。

 けど、実際に私が二人としていると意識してしまったらダメだったらしい。

 その日の前日は蒼汰と夜を過ごしていた。

 

 そして、アリシアは私と一緒に夜を過ごすことを望んだ。

 

 正直なところ困った。

 アリシアは私の大切な相手なのは間違いないけど、ずっと娘として接してきたので、性的の対象としては見ることはできなくなっていたからだ。

 

 アリシアはいろいろ理由をつけて押し切られそうになったけれど、私は母親だから、娘とそういうことはできないと強く言うとしぶしぶ諦めた。

 

 恐ろしいことに、蒼汰と翡翠には事前に了承を取って、優奈の協力も得ていたらしい。

 

 アリサも当然相談を受けていたみたいで。

 それとなくそのことをどう思ってるか聞いてみたら、私はアブノーマルな性癖は無いから安心してと言われた。

 元々私たち三人の関係を知ってたから、いまさら我が家の非常識は気にしないと。

 

 複雑だけど、アリサがグレなくて良かった。ママ嬉しい。

 

 逆にママも大変だったんだね……と同情されてしまった。

 いや、まぁ大変だったけど、そのおかげであなたたちに出会えたのだから、幸せだと答えといた。これは本音だ。

 

 ーーそして夏。

 

 みんなで海に行くという話になった。

 蒼汰が運転する車に乗って。

 

 果たせなかった約束がある。

 一緒に海に泳ぎにいくというだけのもの。

 

 その事自体はそれほど特別な訳でもない。

 やり残した夏休み宿題があるくらいの感覚。

 

 実際二人が生まれてから何度も海には行ってるので、果たしたと言ってもいいと思うし。

 

 けれど、記憶が戻ったアリシアと二人で来れたというのはやっぱり感慨深くて。

 

 あの頃とは、いろいろ変わってしまったけれど、二人の時間はずっと繋がっていた。

 

 そして、これからも。

 




エピローグ:そらとうみのあいだ

「ここは……」

 どこだっけ。

 記憶が混濁している。
 昔の夢を見ていたせいだろう。

 アリシアと一緒の体で過ごした約一年間の思い出。

「あれから10年以上経ったんだな……」

 思い返すとあれからいろんなことがあった。
 何度も心が折れそうになったけど、みんなが私を支えてくれて何とか今までやってこれた。

 そして思い出す。
 今、私が居るのは自宅から車で15分ほどのところにある海水浴場――異世界から帰ってきた場所だった。

「だから、あんな夢を見たのかな」

 ビーチベッドに横になったまま視線を下げると海が視界に入ってくる。
 あのときと違い手前に広がる砂浜にはカラフルなパラソルやテントが点在していて、多くの人で賑わっていた。

「もう一度、ここに来られるとは思いませんでした」

 傍らから少女が話しかけてくる。

「これまでも何度か来てたけどね」

「それでも……です」

 彼女の小さな手が胸元でぎゅっと握られる。
 麦わら帽子からすらりと伸びた長い銀色の髪がたなびいた。

「……ようやく、約束を果たすことができました」

「うん」

 それは、他愛もない約束。
 だけど、私達にとっては大切な約束。

「わたしは幸せ者です……ずっと幸せでした。ですが、そのせいであなたに大変な思いをさせてしまいました。後悔してはいませんか?」

「まさか」

 私は迷うことなく否定した。
 本当にいろいろ大変だったのは事実だけど……後悔なんてまったくしていない。

「――!」

 海岸から私達を呼ぶ声がする。私は体を起こして手を振って応えた。
 私は立ち上がり、彼女に向き直る。

「……行こうか」

「はいっ!」

 二人並んで歩き出す。
 彼女と同じ目線で、だけど少しだけ違う世界を見ながら。

 変わってしまったり失ってしまったものがあった。
 だけど、それ以上に得られたものがある。

 眩い光が私達を照らしていた。
 その中を海に向かって。
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