七つの感情ストラトス   作:銀の巨人

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嵐の予兆

その頃エマの解除を待っているノア達は何も出来ることが無く、せめてエマの気を散らさないように少し離れた場所で固まっていた。

 

ノア「(くっ・・・何が国家錬金術師だ。あれだけ言っておいて、結局エマに頼るしか無かった・・・!)」

 

スロウス(気にするのも・・・めんどくせぇ)

 

ノア(スロウス・・・!?)

 

スロウス(ZZZ.....)

 

ノア(ふふっ・・・まさかスロウスに励まされる何てね・・・そうだよな、気にしてる場合じゃないよな!)

 

エンヴィー(あれは励ましって言うのか・・・?)

 

ラスト(ノアがそう捉えたなら、それで良いんじゃない?)

 

 

ホムンクルスの一人、スロウスに励まされたと感じたノアはスロウスにお礼を言ってエマが直してくれるのを待つ。

 

シャル「ノア、ISが直ったらすぐに福音の所へ行くの?」

 

ノア「あぁ、箒達が心配だ。織斑は言わずもがなだが、箒はまだ紅椿を扱いきれていない上に全身が展開装甲だ。とてつもなく強い分エネルギーの消費も激しい筈・・・」

 

ラウラ「経験が浅い篠ノ之なら、ガンガン飛ばしてエネルギー切れになることを可能性に入れると、とても全員分の解除をまで待ってはいられないな」

 

皆が箒達の心配をして、最悪なの事を視野に入れながら話し合っていた。その少し離れた木の影に隠れる兎が一匹。

 

 

束「う~ん、流石エーちゃん。この程度のハッキングなら簡単に突破しちゃうよね~。でもその時間があればいっくんと箒ちゃんは福音の所へ行けるので~す」

 

ディスプレイに映された情報から後どれくらいで解除されるかが束には分かった。ここでエマが解除しようとしているISを更に掻き回し、より難解なコードに書き換えることも可能だが、敢えてやらない。その理由は単純に箒と一夏をノアに助けさせる為だ。

 

実はこの福音暴走事件の犯人は束で、箒と紅椿が華々しくデビュー出来る場を設けたのだ。そして一夏の白式は紅椿と対を成す存在なので余計な者は要らなかったと判断する。

しかしそれだと勝てないと察した束は敢えて手加減し少しでも一夏と箒が”2人で”戦える時間を稼いで、良い頃合いに助けさせようと言うのが束の目的だ。

つまりここまでは束のシナリオ通りに動いているという事だ。

 

束「させと・・・後はこれで”魚”が釣れると良いんだけどね~」

 

この暴走事件は箒のデビュー戦以外にも目的はあった。以前タッグマッチトーナメントでVTシステムが発動した時、明らかにISとは別の”力”を感じた束はその正体を追っていた。

そして辿り着いた答えは”錬金術”が関係している可能性があると言う事だ。これまでアメストリス国の中枢を調べてもこれが軍事機密なのかと疑うレベルの何でもない情報しか出て来なかった。

 

以前調べた際”アメストリス最強のアップルパイの作り方”と言うのが出て来た時は、流石の束も目が点になったそうだ。

 

話しは逸れたが今回の目的はあわよくばその尻尾を掴む事だ。尤もデビュー戦のついで感覚だが。

 

束「おや? もう解除したんだ。さっすがエーちゃん、束さんの次に天才だね!」

 

予想よりも早い解除に嬉しそうに驚きつつエマを褒める。そして満足したように一瞬でその場からフェードアウトする。

 

視点はノア達に戻り、エマがノアISを直した事で全員が立ち上がり、他の教師に指示を出していた千冬もそれに気づく。

 

エマ「お兄ちゃん、ISを展開して見て!」

 

ノア「あぁ・・・来てくれ!《ディザイア・ストライク》!!」

 

思わず機体の名前をフルネームで呼ぶ程力が入る。エマの技術を信じ意識を集中させISを呼び出す。

ノアの体は光に包まれディザイアが姿を現した。

 

ノア「ーーーエマ・・・成功だ!」

 

エマ「当然♪」

 

褒めるノアに胸を張って答えるエマ。その様子を見ていたシャル達は喜びの声を上げる。

 

エマ「お兄ちゃん、これを目に付けて」

 

ポケットから小型の薄いケースを取り出し、それを開けるとコンタクトレンズの様なものが一組出て来た。

 

ノア「エマ、これは?」

 

エマ「今は時間が惜しいから調整や説明は移動している時にするよ!」

 

コンタクトレンズを目に入れるが、不思議な事に全く違和感が無かった。特に視力は上がったわけでは無いようで、調整して初めて本領発揮するようだ。

そして千冬が改めてノアの前に立つ。

 

ノア「織斑先生、指示を!」

 

千冬「うむ。ノア・エルリックに任務を与える。目的は篠ノ之、織斑を救出し即刻戦線を離脱させた後、福音の足止めをしろ。しかし、危なかったら迷わず逃げてくれ」

 

ノア「はい!!」

 

千冬「ではエルリック、あの2人を頼む!」

 

ノア「織斑先生・・・任せてください。必ず救出して来ます!」

 

頭を下げる千冬に尋常ではない覚悟感じたノアは必ず任務を成し遂げる事を誓うと、スラスターを噴かせて飛ぶ準備をする。

 

シャル「ノア、必ず無事に帰って来てね!」

 

ラウラ「信じているぞ・・・ノア!」

 

鈴「あたしは心配なんてしないわよ?だって、あんたの実力は嫌という程わかってるからね」

 

セシリア「ノアさん、ご武運を・・・!」

 

ノア「ありがとう、皆!」

 

激励の言葉を言ったシャル達は邪魔にならないように下がる。

 

エマ「お兄ちゃん・・・約束、だよ?」

 

ノア「あぁ、約束だ!」

 

ノアの言葉を聞いたエマは満足そうに微笑み1歩後ずさる。

 

ノア「じゃあ皆、行ってくる!!」

 

勢い良く出発するノアの背中を見送る千冬達、そしてその横で通信機の装着しノアと連絡を取るエマがいた。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

上空では既に衛星から福音の居場所をキャッチし向かっていた。

 

エマ『ーーお兄ちゃん、聞こえる?』

 

ノア「あぁ、聞こえるよ。それよりもこのレンズの説明を頼む」

 

道中エマから通信が入ったので先程のコンタクトレンズの説明を求めた。

 

エマ『うん。そのコンタクトレンズは簡単に言うと簡易的超高感度ハイパーセンサーなの』

 

ノア「簡易的超高感度ハイパーセンサー!?」

 

エマ『そう、そのコンタクトレンズを入れて、その機体と操縦者に合わせて調整するだけで簡易的に超高感度ハイパーセンサーを得ることが出来るの。でも時間の都合上この機能を入れるだけで精一杯だった・・・』

 

「いや十分凄いよ!」と言うシャルの声が聞こえて来たが、今はそれ所ではなかった。

因みにエマは現在進行形で説明しながら調整を行っている。予め遠隔で調整出来るようレンズに細工をしていて良かったとエマは内心ほっとしていた。しかし電波が届く距離にも限界はあるのでほっとする反面焦ってもいた。

 

エマ『後、名前も付けてないからお兄ちゃんが付けていいよ』

 

ノア「ぼ、僕が!?」

 

エマ『その代わり、とってもかっこいい名前にしてよね! いつものナンセンスネームを発揮したら埋めるよ?』

 

ノア「よーし! 任せてくれ!!」

 

エマ『その自信は何処から来るんだか・・・』

 

本人はかっこいいと思って付けた名前の全てをエマに一蹴されている。しかしノアは特に根拠の無い自信に溢れていた。

 

ノア「エマ、少し待った方が良いか?」

 

エマ『お兄ちゃん、私を舐めないでよ。これくらい余裕!』

 

内心焦る気持ちを抑えてエマはキーボードを打つ。正直な話しをすればとても間に合わないが、その絶望的な状況下で逆に気持ちが昂り、エマのタイピング捌きは加速する。

 

圏外に突入するまで後10秒、本当に間に合うのかと心配するノアとは裏腹にエマの脳は過去最高で冴えていた。

 

エマ『・・・・間に・・・合ったよ・・・お兄ちゃん!』

 

ノア「エマ・・・良くやった!」

 

電波が悪くなっていたせいかエマの声は途切れ途切れだが、ノアには聞こえていた。そしてノアは《怠惰》を発動させ一気に超加速で箒達の下へ向かう。残り時間僅か2秒のところで完成させた簡易的超高感度ハイパーセンサーは、視覚情報の処理能力が格段に上がっており、最速を使用しても周りがはっきり見えていた。

従来のハイパーセンサーでははっきり見える範囲は非常に狭く周りはぼやけて見えていたと言う弱点を克服した。これによって制御出来なかったスピードは多少ではあるが改善された。

 

そしてノアの目は既に福音を捉えていた。その戦況は今まさに一夏を庇って撃墜された箒に更に追撃を加えんと砲口を向ける。

 

 

ーーーその瞬間ノアは、心の中の何かが静かに切れた・・・

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

ノアが出撃する数分前、一夏は福音に雪片弐型で攻撃を仕掛けた。その攻撃は容易に弾かれる。

 

一夏「くそっ!」

 

直ぐに零落白夜を発動させ連斬するが全て避けられ福音の後ろ回し蹴りが顔面に炸裂する。

 

一夏「ぐあっ!」

 

福音「La・・・♪」

 

蹴られた一夏は一旦後ろに下がろうとするが、福音はそれよりも速く一夏の腹に蹴りを食らわす。

 

福音「《銀の鐘(シルバー・ベル)》稼働開ーーー「はあっ!!」ーーッ!」

 

大型スラスターと広域射撃武器を融合させた新型システム。36の砲口をもつウィングスラスターから放たれる高密度のエネルギー弾だ。

早々と一夏撃墜されると思った所で箒が間一髪助ける。

 

箒「一夏、無事か!?」

 

一夏「ほ、箒!あぁ、俺は大丈夫だ!」

 

箒「良しそれでは、とにかく逃げーー「戦うぞ、箒!!」・・・え?」

 

空裂によるエネルギー刃を福音に向けて無数に放たれ、福音はそれを躱しながら高速で下がる。

そんな中一夏は零落白夜を解除しながら2人で福音と戦うと言うので箒は困惑していた。

 

箒「し、しかし、織斑先生からは防御に徹しろと・・・」

 

一夏「千冬姉が・・・!?なら尚更逃げる訳には行かねぇ!!あいつを倒して俺も出来るって証明しないと・・・!!」

 

拳を強く握った一夏は下がる福音に接近して無策な攻撃を仕掛けるが、当然の如く避けられ反撃される。この時点で力の差は歴然なのだが、それでも立ち向かって行く姿が箒の目にはかっこよく見えていた。

実際は力の差を一夏が理解していないだけで、無策無謀な特攻を繰り返しているだけなのだが・・・恋は盲目と言うやつだろう。

 

一夏「はぁ・・はぁ・・箒、手伝ってくれ!”2人で”一緒にこいつを倒すぞ!!」

 

箒「ふ、2人で・・・!?」

 

思えば箒は1度も一夏と共闘した事が無かった。しかし今はその憧れが叶うと思った時、箒の恋心に更に火をつけ冷静な判断が出来なくなり・・・

 

箒「一夏、2人で戦うぞ!!」

 

一夏「おう!!」

 

ついに箒は千冬との約束を忘れて戦闘を選んでしまった。

そこからは2人で福音に攻撃を仕掛けるが、戦況はあまり変わらなかった。その理由は福音が先程見た箒の武装を脅威に感じ、常に一夏に近接して攻撃を行っているからだ。

しかも箒に背中を取られないように一夏を盾にして遠距離攻撃をさせないようにする徹底ぶりだ。その為、敢えて福音は一夏を倒さない。

かと言って箒も近接攻撃を行うと2人の連携は拙いもので特に一夏の実力が不足している為、箒も一夏のフォローに追われイマイチ決定打に欠けていた。

 

箒「一夏、一旦離れて私の雨月と空裂の遠距離攻撃で攻める!」

 

一夏「わ、わかった!」

 

箒は福音のヘイトを稼いでいる間に一夏を離脱させ、福音の回し蹴りを飛翔する事によって回避した箒は、雨月によるエネルギー弾を真下にいる福音へ向けて放とうとするが、その手を止めた。

 

一夏「ど、どうしたんだよ。箒!」

 

箒「ふ、船が・・・あれは密漁船か?」

 

海上は教師達が封鎖した筈、しかしここは本来福音と接触する筈のない場所だ。完全に教師達の範囲外だった。もちろん千冬はこれを予測していたのでその地域の責任者に連絡し事情を説明したが、まだ避難しきれていない船があったようだ。

 

一夏「密漁船・・・って事はあいつらは犯罪者だ!そんな奴らは放っておけ!それよりもーー「一夏・・・?」・・・ッ!」

 

箒「何故そんな事を言うんだ・・・?お前は、皆を・・・全てを守るんじゃなかったのか・・・?そこに犯罪者は入っていないのか・・・?」

 

一夏「そ、それは・・・!!」

 

箒「確かに奴らは悪人かもしれん・・・でも、だからと言って更生の機会も与えず見捨てるなんて、幾ら何でも・・・」

 

一夏「っ・・・!」

 

一夏の心無い言葉に箒は思わず目を見開いて驚く。そして悲しい目で一夏に問い掛ける。箒がそんな顔をするとは思わなかったので一夏も驚く。

そんなやり取りをしていたので福音も体勢を立て直し、一夏に向けて《銀の鐘(シルバー・ベル)》を放つ。

 

それに気づいた一夏は避けようとするもいきなりの事でまごついていた。このままでは撃墜は免れないだけで無く、人体にも被害を及ぼしかねない攻撃だ。しかしその攻撃は一夏に着弾する事は無かった、箒が一夏を抱きしめる様に庇ったのだ。

そのおかげで一夏は無傷で済んだが、箒はSEは一瞬で溶けそれでも相殺しきれない程のダメージを受ける。それは生身にも影響を及ぼしアーマーや筋肉が破壊され、熱で肌が焼ける。やがて意識は遠くなりついに気を失った。

 

一夏「ほ、ほう・・・き・・・?おい、箒!箒!!」

 

そのまま体重に身を任せて近くの崖の上に箒の体を支えながら降りる。一夏の必死の呼び掛けも虚しく、箒の意識は戻らない。

 

福音「La・・・♪」

 

その様子を見ていた福音は2人をロックオンし再び砲口を向ける。エネルギーを充填させて箒ごと一夏を撃とうとした時、突如静かに聞こえた声は、確かに怒りを宿していた。

 

「おい・・・僕の友達に、何してんだ・・・・お前・・・」

 

その声に反応して振り返る福音の顔面に右ストレートが炸裂する。

突然殴られた福音はよろめき困惑している。

 

ノア「誰だと言いたげだな・・・僕は《感情の錬金術師》ノア・エルリックだ・・・!」

 

 

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