ソードアート・レジェンド   作:にゃはっふー

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SAOを舞台にしたお話は今回の話で終わりです。

クレハ、レイン、ユウキの三人をピックアップした最終回です。どうぞ。


最終回・勇者の力を得た者は

 それは少しだけ勇気を出して、メールを出した。

 

 バイトのお休み、少し買い物を手伝ってもらう約束だ。

 

 店のガラスに映る自分を見ながら、少しだけ不安になる。

 

(あたし変じゃないかな?)

 

「紅葉」

 

 そう言ってお兄さんが現れた。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 色々買い物した後はGGO。お兄さんことテイルには大切な相棒が二人いて、いまでは賑やかにこのゲームを楽しむ。

 

「クレハ、うちの子たちがツェリスカに連れ去られた。予定が無くなって暇になったよ」

 

「あはは………」

 

 苦笑しながらテイルの話を聞き、一緒にクエストを受ける。

 

 正直テイル、彼がこの世界。仮想世界で遊んでいるのは、キリトさんやユウキたちのためだろうけど、テイル自身も強化などは良くしている。だって………

 

「ピンクの悪魔って言うけど、本当の悪魔ってのはレインやシノンのように怒りの矛先を受ける人の事を言うんと思うんだ」

 

「この危機的状況で言う事はそれっ!? 二人に話すわよッ!」

 

 いま現在、あたしたちはGGOで有名なプレイヤーたちに狙われている。スナイパー使いの人がいるが、それは彼がガラスの破片を使い、ポジションを確認したところ。

 

「屋上からスナイパーで狙って、グレネードでけん制しつつ、光剣とサブマシンガンで高速移動か。少しピンチだな」

 

「テイル少し暢気過ぎない? このままじゃゲームオーバーよっ!!」

 

「ドロップしてもただのレア銃だけで済むからね。いまヒカリとフェリサはツェリスカの物にされたから」

 

「まずその辺りもどうなったのか詳しく聞きたいわねあたしは………」

 

 いま光剣使いとサブマシンガンのピンクの悪魔に狙われている。正直彼女たちの狙いはテイルが持つ銃、いまだサーバ内で実装されていないUFG狙いだ。

 

 ともかくどうするべきか………

 

「クレハ、少しいいか?」

 

「なによ」

 

「俺に手はある」

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 幼少期ではお兄ちゃん的な人だ。だけど引っ越してからは電話を少しする程度でどれほど仲が良いか分からない。

 

 だけどGGOを通じてお兄さんは色々あったのが分かる。そして普通じゃないのも分かる。

 

「まさかあの後、グレネードのプレイヤーの居場所を予測してグレネードを遠くに投げ飛ばすなんて」

 

「スリング、投石紐って言うんだ。ぽんぽん撃つから狙いやすかった」

 

 そう言って紐で作った即席スリングを見せる。こんなもの作れたんだ………

 

 それでグレネードを遠く、グレネードを放つ相手に向けて投げた。

 

「その後まさかの抱きしめてからのUFGで逃げるなんて………」

 

「あれで地面に触れずにフィールド動き回れないか、よく試したから」

 

「それで」

 

 あたしは睨むようにテイルを見ながら、そのホームでお菓子を食べる。

 

「あたしの胸を触った感想は?」

 

「すいませんごめんなさい、どうかみんなには内緒にしてください」

 

 セクハラハラスメントを押してやろうかと思った。

 

 まさかこんな突拍子の無い事を平然として、いつの間にかクールな物静かなお兄さんから、可愛い女の人にほいほい手を出す人になるなんて………

 

 アスナさんたち曰く、キリトさんが移ったと言うが………

 

「はあ~まあいいわよもう」

 

「ありがとうクレハ」

 

 お菓子を食べながらテレビを見る。色々な事、仮想世界の事や現実世界の事など。

 

「旅行か。その内、みんなで行きたいな」

 

「みんなって、ユウキたちはどうするの?」

 

「色々方法はあるし、仮想ばかりじゃなく、現実だって楽しいじゃないか?」

 

 ………あたしはどうだろうか?

 

 あたしの現実は苦しい。あたしの姉は、あたしよりも完璧な人であり、そんな姉を嫌いになりたくないから、あたしは姉の居ないこの世界に来た。

 

 今ではもう苦手意識は無いが、かと言ってあたしと姉を比べる人間が居なくなったわけでは無い。いや、もしかしたらあたしがそう思っているだけで、そんなにいないのかもしれない。

 

 少なくてもあたしの大切な人たちはそんなことしない。彼らだってきっとしないのだろう。

 

「けど、現実のあたし、あまり可愛くないし………」

 

 そうあたしが呟くと………

 

「そうか? しばらく見ないうちに、可愛かったよ紅葉」

 

「っ!?」

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

『拝啓、アスナへ。

 

 マスターがキリトに感染したらしいです。クレハがそう言ってました。

 

 マスターはとりあえずズタボロになっているのです。クレハはタコよりも真っ赤になっていました。キリトが移るってどういう意味ですか? 教えてください』

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 とあるライブ会場、そこのとある席で学生たちは席に座る。

 

「ほら、そろそろ始まるぞ」

 

「ん………」

 

 一人だけ時間ぎりぎりまで寝ているため、青年、桐ケ谷和人はゆすって起こす。

 

 結城明日奈たちも少しだけ緊張する。友人、枳殻虹架ことレインのコンサートだ。

 

「眠ったりしたらまた怒られるわよ?」

 

「さすがに現実でも怒られたくないな」

 

「あはは……しっかりしないとな」

 

 そう和人が言う中、時間が来てコンサートが始まる。

 

 何人も友人が来る中、そんな中で仮想世界でテイルと名乗る青年は苦笑した。

 

(まったく………)

 

 舞台の上で満面の笑みを浮かべる彼女を見ながら、その前日を思い出す………

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「全く、気分転換にしては凝ったクエストだったな」

 

「文句言わない。あんたの剣の材料なんだからねっ!!」

 

 そう言いながらレインは手に入れたインゴットを用意して、剣を打つ為の準備をする。

 

 それを壁にもたれかかり、様子を見るテイルを横目でちらっと見るレイン。

 

「もうここからはわたしだけでいいよ?」

 

「別にいいだろう? 休ませてくれ」

 

 そう言ってテイルは椅子に座り、壁にもたれる。

 

 レインはそれに呆れながらも火の様子を見ながら考え込む。

 

(なんかSAO時代みたい………)

 

 そう思いながら、少しだけ思い出しながら鉄を打ち始める。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 ライブが終わり、みんなと共に楽屋で話している。竹宮琴音を初めとしたみんなと嬉しそうに話し合う。そこには虹架の実の妹である七色もいる。

 

 彼女らの話では、両親もお互い話し合うくらいには関係が回復しているらしい。こうして姉妹揃って話し合える日々が続けばいいな。そう彼は思う。

 

「テイル、ちゃんとわたしの歌、聴いてたの?」

 

「ん? 聞いてたよレイン」

 

 そう彼は何でもないように答える。里香たちは現実のコンサートでテンションが上がっているが、彼だけはいつもの変わらずの反応。

 

「なによもう、せっかく頑張ったのに………。なんか別の反応無いのかな~?」

 

 そうレインが言うと、彼は静かに………

 

「レインの歌は子守歌の、鍛治している時の方が好きだからな……なにより、いつも寝ながら聞いてるし………」

 

 その時、控え室の空気が変わったことに気づき、またなにかしたのかと言葉の途中で気づく。

 

 レインは顔を真っ赤にして、明日奈たちは和人を冷ややかな目で見る。七色だけはイタズラっぽく微笑み、どういう状況か事細かく聞きだそうとする。

 

 和人だけはよく分からず、一発虹架に殴られるテイル。なにげに彼だけリアルネームで呼ばれる。ちゃんと名前を呼ばれる日が来るのだろうかと、テイルは遠い目になった………

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 そんな日々の中、ALO。新生アインクラッド第22層、キリトのマイホームでお祝いだ。内容はユウキの回復に向かい、ついに無菌室から出られた。

 

 いまだ《メディキュボイド》は必要だが、後は体力の回復など。もう彼女は病気に犯されていない。そう先生がはっきりと言ったのだ。

 

 それを聞いた結城明日奈が涙して、和人では無くテイルの胸を借りた事を、本人はかなり気にしている。どうしてもユウキの病気の詳しい話を聞く時は、彼か彼の家族しかいないのだから仕方ない。

 

 病気の治りは骨髄移植によるケースか新薬によるものか、いまだ色々検査はあるものの、紺野木綿季は病気を乗り越えたのは確定された。

 

「元気になったら、いっぱい、いっぱい遊ぼうね♪」

 

「うん♪」

 

 アスナは嬉しそうにユウキを抱きしめ、テイルもそれを微笑ましく見つめる。

 

 仲間たちも大いに騒ぎ、エギルの店から散々買いまくった飲み物や、たくさん作った料理を食べ始めた。

 

 テイルは嬉しそうにユウキに抱き着かれたり、みんなの嬉しさがおかしいのか、やはりみんなゲーマーだからか知らないが………

 

「それじゃ、みんなで新生アインクラッドの新階層、ボス攻略戦成功させようぜっ!!」

 

 キリトの号令で全員が返事する。アスナの返事、闘志だけはケタ違いであり、バーサクヒーラーの名前がより広まった一戦となる。

 

 精一杯楽しみ、精一杯遊び、喜びを分かち合う。

 

 勝利してみんなが喜ぶ中、ユウキはふと、彼を見る。

 

 彼はけして変わらずいつも通り、それでも………

 

 とても穏やかな顔で微笑み、ユウキたちを見守っている。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「むにゃ………あれ……?」

 

 眠っていたのだろうか? ボクは身体を半分起こして目をこする。

 

「そうか、あの後次の階層に行って、その後はどうしたっけ?」

 

 そう思いながら頭がボーとする。寝落ちしたのかなと首を傾げたけど、そうでは無い。

 

 なぜならば彼がいる。側にいるのは、いつも見守るようにいる、大切な人だ。

 

「テイル………」

 

 テイルが隣で寝ているのだから、寝落ちはしてないだろう。何か忘れている気がするがボクはそう思い、その顔を覗き込む。

 

 最初に出会った時は疲れ切った顔。

 

 二回目は人との会話の苦手なお兄さん。

 

 そしてボクの病気の治すドナーとして現れた。

 

 それから色々な事があり、この人が必死にこの世界に生きて、運命、未来に抗おうとしたのをボクは知っている。

 

 面と向かって話した事は無い。それでも、未来に起きるかも知れない事を知り、それに抗い、誰かを救いたいと願った優しい人。

 

 その為に必死になり、ボロボロになった人だ。

 

(この人はどうすれば幸せになれるんだろう………)

 

 時々考えてしまう。この人は自分の幸せを考えていない。この人にとって幸せは、他人が笑顔でいられることだ。少なくても、今の彼はそう言う人間だ。

 

 そんな人間を幸せにできるのだろうか?

 

「………テイル」

 

 疲れ切っているのか、すっかり寝ている。ボクがどれだけ抱き着いたりしても、この顔は変わらない。

 

「………ボクは幸せだよ。みんなに出会えて、テイルに出会えて、幸せだから………」

 

 あなたも幸せになってください。

 

 そう思いながら、なんとなく、本当になんとなく、理由なんて分からない。

 

 そう、だってボクはテイルの顔を見ていると、なんとなく〝それ〟をしたくなった。理由なんて存在しないのだ。

 

 微かにちゅと言う音がなり、すぐに顔を引っ込めた。

 

 なんとなく気恥ずかしいけど、どこか心がぽかぽかする。そんな気持ち………

 

「って、あれ?」

 

 その時、ボクはあることに気づく。

 

 テイルは素顔だ。テイルの現実の顔(・・・・)なのだ。

 

「へっ?」

 

 ボクは困惑して、頭を抱えようとした時、何かに触れた。

 

 恐る恐るそれを外すと、それは《アミュスフィア(・・・・・・・)》だ。

 

「………えっ……?」

 

 よく周りを見る。ここはボクの病室だ。

 

 テイルは良く見れば隣に入るものの、一緒にベットを使っているわけでは無い。ただ倒れて横顔を向いているだけ。

 

 ボクは現実のボクで、ユウキのボクではない。

 

「あっ………あれ………」

 

 身体はぽかぽかから熱くなり、頭を抱えて顔から火が出そうになる。

 

 ボクはいまなにをした? ボクってそんな子?

 

 どんなに考えてもまとまらず、ボクは寝たふりをすることでテイルと会話せず、今日を過ごした。




「人使いの荒いなったく………」

 そう言い、どの時代、どの世界、どこのなんなのか調べるために歩き出す。

 森の中を歩く。昔は無機質に何も感じず、ただ思考する事も何もかも放棄して歩いていた。

 SAOも何もかもそんなものだ。だが、いまは何もかも違う。

 自分が選び、自分で進むと選んだ。

 正直勘弁願いたいがどうでもいい。もうどんと来い。

「さてと、とっとと終わらして、ユウキと話して帰ろうか………」

 そう言い一気に走り出す。

 異世界だろうと現実世界だろうと、仮想世界だろうと………

「止まっていられないからなっ!!」

 そう叫び、俺はこの世界の物語に殴り込む。

 さすがに早く終わらせないと、神様は本気でシノンに嫌われてしまうからね。

 そう思い、俺こと物語の勇者テイルは、世界を駆け巡った。
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