外伝を書かないとは、言っていない……!
つまり、ネタが降りて来さえすれば……
じゅ…
……いや、それは無理か(素に戻った)
あ、外伝始まります。
我輩は目の前の光景をただ眺めながら、回想するネコである。
久々なので、ちょっと名乗ってみた。
今。我輩の目の前では、白面さんの分身に対して、まさに突撃せんとする軍勢がある。
てんでバラバラな鎧兜で、槍やら馬上槍、剣に鈍器の、やはりバラバラな武器を持って。
並びだってちゃんとはしていなくて、陣も薄かったり厚かったりする、そんな寄せ集めの軍勢だ。
されども彼らの心と魂は一つだ。
そんな彼らを率いるのは、一人の男。
一国の騎士の中核をなす、騎士の長。今はもう亡き国の王族の末裔である、貴種。
だが彼が軍勢の長なのは、そんな理由ではない。
彼は伝説を追い、少女を求め、少年と出会い、我輩らの手の者らと対決した。
その中で、少年は愛と使命に目覚め、少女は逃げるだけではなく立ち向かう事を覚え、仲間を増やした。
そんな彼らと対立し、戦い、時に共闘し。
多くの者が巻き込まれ、あるいは自ら渦中へと身を投じて。
そして今――――
――――――――全ての者が、彼の元へと、集った。
「喜べ、諸君。なんと、この絶望的だった戦いに、勝機が見えたぞ?」
軍勢を前に。ニヤニヤと、ふざけた笑みを浮かべてそう言う彼に、ヤジが飛ぶ。
――嘘付けコラー―― ――むしろ正気かコラー―― ――お前の作戦、失敗のが多いんじゃコラー――
「はっはっはっは…… 黙れ!! いいからまずは聞け!!」
ヤジを笑い飛ばした後に一喝して黙らせ、彼は演説を再開した。
「諸君も、やるべき事はわかってるだろう? 時間稼ぎだ。そう、我々は時間を稼ぐだけでいい」
その相手は、白面さんの分身だ。容易いはずなど、あるわけもない。
だが、ヤジは入らない。誰も絶望もしていないし、文句一つ漏れてはこない。
……死なないと、思っているわけでもない。
そこには命を懸けて、何かを成す。その意思の輝きがあった。
自分のためではなく、誰かのためにと、命を使う。その尊さがあった。
愚かな事ではあるのだろう。
だって彼らにも家族があり、生活もあるし、人生がある。
だが彼らを馬鹿にできるものなど居まい。居てはならない。
彼らは笑って滅びへと進み、誇りを胸にゆくのだから。
「総勢334名。ここに集い、戦う勇者たちへ敬意と感謝を。栄光と神の恩寵のあらん事を」
騎士らしく敬礼をする彼に、勇者たちが応える。
騎士や傭兵だけではなく、中にはツルハシを持った炭鉱夫や、鋤を持った農夫。果ては棍棒をかついだパン屋のオヤジまでいたが。
もはや彼らの中に、それを気にするものなど居ない。
あらためてそれを確認して、彼の笑みが変わる。
どこか悪い意味で貴族的な面のある笑みから、伝説を信じて夢を見て走る冒険家の笑みへ。
あるいは酒場の威勢のいい酔っ払いの笑みへと変わる。
諸君! メシは腹いっぱい詰め込んだか!?
武器は持ったな? 弓矢が無いやつは石でも持っておけ。
家族に別れの挨拶を忘れたのなら、そいつは生きて帰るように必死で努力したまえ!
彼の言葉に応えて、一つ一つ歓声が上がる。
固くまとまっていた魂たちが、集まりはそのままに温度を上げていく。
あのガキどものために! ここに至るまでに亡くなった者たちのために!
これ以上、あのバケモノに泣かされる誰かを出さないために!
そして我々のプライドのために!
さて。
何からどう話したものかと思うのであるが。
まずは端的に、簡潔に言うのであれば。
これ、 ムスカ です。
うん。またなのである。
ここまで長らく、我輩に付き合ってくれた察しの良い方々にはもう、お分かりだと思うのであるが。
うん。これね。うん。あの、ね?
ここまでの何もかもが、ね?
全部。我輩たちの仕掛けた、 茶番 の結果だったりするのだな。これが。
待って。怒らないで。
落ち着いて、聞いて欲しい。
茶番の、はずだったのだ。ほんの、お遊びであったのだ。
白面さんと我輩の暇つぶしを兼ねて、欧州へと海外旅行をしたのが、始まりであった。
そこでたまたま、我輩は奇跡と巡りあう。
パズー、シータ、そしてムスカ。
そんな名前を持った人間を、たまたま。本当にたまたま、偶然にも見つけてしまったのだ。
そうすると、なんだ。うん。
ほら、こう。
つい、我輩の悪戯心が、疼いてしまって。
こう、勢いのままに、白面さんを巻き込んで。
ラピュタは本当にあったんだ伝説 を、見切り発車で始めてしまってね?
違うのだ。
白面さんがいるのだし、最終決戦もやろうとか、そんなつもりは無かったのだ。
飛行石的な物の付いた首飾りを巡る、ちょっとした物語。
その程度の規模の。旅先での、ほんのお遊びのつもりであったのだ。
ただこちらの予想以上に、ムスカ騎士長が優秀で。
裏側で暗躍していた我輩らの存在が、バレてしまったり。
ただの孤児のはずのパズーが、本当の主人公のような活躍をして。
そのムスカを出し抜いたり、一般人たちを組織化して自前の騎士団のようなものを立ち上げたり。
ちょっといい商家のお嬢様だったはずのシータにいたっては。
なぜか荒くれどもの姫になって、戦力としてまとめあげ、他の集団からの支持も厚いというヒロインに。
どうしてこうなった。
白面さんなぞ、まさか自分が敵対すると、人間は強くなるのだろうかと悩んでいたぞ。
いや麦じゃないんだから、踏んだら強くなるとかねーのである。と言ってはみたが。
実のところ、自信は無い。
まあ、それでも。
天空の城を婢妖を使って、でっち上げて。
白面さんに、分身出してもらってラスボスをやってもらって――なお意外と楽しそうだった模様――
ラピュタにある超兵器、ラピュタのイカヅチを使えば、白面さん(の分身)は倒せるという設定を、何とか信じさせて。
たった今 「バルス!」 という掛け声と共に放たれた、天からの光りに合わせて、白面さんが分身を消した事だし。
あとはゆっくりとラピュタを崩壊させて、締めであるかな。
ただちょっと。ローマの皇帝とかが騒動の巻き添えになって、お亡くなりになったりもしていたが。
我輩たちが直接手を下したわけでもなく。しかも、背教者とか言われてたらしい人でもあるし。
きっとセーフでいいのである。
大丈夫。歴史の修正力先輩がきっとなんとかしてくれる。
ならなくても、
まあ、そういうわけで。
この伝説は。少年らの活躍により、めでたしで終わるのである。
というわけで白面さん。我輩たちも日本へ帰りましょうか。
それとも、アメリカかオーストラリアか、どっちか寄って行きます?
それとも生まれ故郷? のインドを見ていきましょうか?
ああ、そうそう。どこへ行くにしろ。
次も、愉快なことにするとしましょうか!
>背教者と言われたローマ皇帝
ユリアヌスさん。フルネームはフラウィウス・クラウディウス・ユリアヌス。
ギリシャ・ローマ神話の神々とか、太陽神いいよね、とキリスト教優遇からそっち復興へと舵を切ったら、そう呼ばれるようになっちゃった人。
幼少時、当時の皇帝に兄以外の家族を謀殺され、自国内なのに竹千代時代の家康バリの人質生活に突入。
同じ生活してた兄は宮仕えに。副帝まで取り立てられたが、処刑。そこまで有能じゃなかったという理由だが、じゃあそこそこで出世止めとけば……あっ(察し)
ユリアヌスさんはそれを横目に、ニート生活、学習三昧の日々。
かーらーの、疑われたり、許されて副帝になったり、外国遠征で功績立てまくったら兵たちに皇帝扱いされたりという波乱万丈生活。
そうして皇帝と対立しつつ数年。
とうとう腰をあげた皇帝が軍を率いてユリアヌスさんを……という途上で突如死亡。
遺言で後継者に指名された……という設定。かどうかはわからないけど皇帝就任した人。
ローマはドラマが多いね。
なお彼も、メソポタミアへの遠征の中で陣没している。先代皇帝と因果がカラみまくった人生であるなあ。