からかい上手の高木さん~Extra stories~   作:山いもごはん

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アクセスくださりありがとうございます。

筆者的にはわりと実験的な作品です。内容も若干邪道かな、と思っております。

なお、メチャメチャ長いです。読まれる際はお覚悟を。

賛0.5否9.5ぐらいの賛否両論あるかと思いますが、最後までお付き合いくだされば幸いです。

追記:年齢についてご指摘いただきましたので修正しました。


高校2年生

 始業式の今日、オレは無事に高校2年生へと進学した。

 今年の春は寒さが続いているせいか、4月に入って1週間を過ぎてもまだ桜が咲いている。とはいえ、さすがに満開とはいかない。

 

 バスで通える地元の公立高校か、電車で通う私立の進学校。

 オレが通っていた中学校の生徒は、おおむねこのどちらかの高校へ進学していた。言うまでもなく、学力的な問題から、オレは前者へと進学した。

 

 中学校の入学式の日も、今年のように桜の花が咲いていたように思う。むしろ、今年よりもしっかりと咲いていたような記憶すらある。花びらを散らす桜の木を、校舎の2階の廊下の窓から見ながら、そんなことを考えていた。

 中学校の入学式のことを思い出すと、否応なく彼女のことを考えてしまう。中学校の入学式の日に隣の席になったことで知り合い、その後の中学時代の3年間、さんざんオレをからかった彼女。学年10位の成績をキープしていた彼女。おでこで左右に分けた長い髪に、長いまつ毛と大きな目が印象的な彼女。ときどき、ドキッとさせるような表情を、かと思えば、満開の桜のような笑顔を見せる彼女。その彼女は、今は、オレの隣にはいない。そして、オレはもう、からかわれない。

 

「えいっ」

「わははは!」

 誰かにわき腹をつつかれた。オレはわき腹が弱く、つつかれると確実に笑ってしまう。そして、そんなことをするのはただ一人。

「ちょっと高木さん!いきなり何するのさ!」

「ごめんごめん、お待たせ、西片」

「いや、待たせたことじゃなくて、わき腹つついたことを謝ってよ……」

 オレは、隣のクラスの中学生のときからの友人……高木さんと一緒に帰るため、廊下で彼女が出てくるのを待っていた。

「いやぁ、西片が物憂げな顔で外を眺めてたからさ。私についての説明的なモノローグでもしてるのかと思って」

「なに?説明的なモノローグって?普通に考え事してただけだよ?」

「ふーん。じゃあ、何考えてたの?」

「いやぁ、ほら、進路とか……。オレたちももう2年生だしさ」

「まぁ、いいけど。あと、もうからかわれない、みたいな決意表明してなかった?」

 高木さんは時折、オレの心を読んでるんじゃないかと思うようなことを言う。それにしたって詳しく読みすぎだろう。

 ともあれ、先ほどのオレの決意は一瞬で砕けてしまった。

「どうしてそんなこと考えるんだろ。どうせ無駄なのに」

 む……無駄……。オレの、高木さんに対する努力を無駄だというのか……。

 確かに、オレは高木さんに出会ってから、一度も彼女をからかうことに成功したことはない。

 だけど……。

「無駄はちょっと言いすぎじゃないかな。オレだって、絶対にいつか反撃してやるから」

「ふーん。じゃあ、西片は私に反撃するまで、ずっと一緒にいてくれるってこと?」

「なっ……!?な……いや……そういうつもりじゃ……別に……」

 オレの声はどんどんトーンダウンしていった。

「まぁ、とりあえず帰ろうよ。帰りながらでも話はできるし」

 高木さんの言葉をきっかけに、オレたち2人は帰宅することにした。

 それにしても、今の時間だけで何回からかわれたんだろう……。

 

 結局のところ、オレと高木さんは同じ高校に進学していた。

 高木さんの成績ならば、私立に進学すると思っていたから、その話を聞いた時は驚いた。

 理由を尋ねてみると、通学に時間を取られるのが嫌だから、ということだった。その気持ちはわからないでもない。

 同じ高校で別のクラスになったオレたちは、それぞれのクラスで、中学生の頃の友達とも、高校で新たにできた友達とも、それなりに仲良くやっている。お互い、多くはないが仲の良い異性もいる。

 それでもオレたちは、帰るときには待ち合わせて一緒に帰る。付き合っているから、という艶っぽい理由ではなく、中学生のときからの日課のようなものだ。

 

 学校からバス停に向かう道すがら。高木さんは、オレの隣を歩いている。

 高木さんと出会った頃、オレと彼女の身長はほとんど同じだった。しかし、その後の成長期でオレの身体が覚醒したかのように身長が伸び、今では高木さんより20センチほども高くなった。

 加えて、オレは中学生のときから腕立て伏せを日課にしていた。そもそもの発端は、高木さんにからかわれたとき、二度とからかわれないようにするという誓いを立てて行っていたものなので、日課にしたいようなものではなかった。それでもどうやっても毎日からかわれてしまうので、結果として日課になってしまったのだ。

 最初はそんな経緯で始めた腕立て伏せだったけど、毎日続けることでだんだん体を鍛えることが楽しくなってきた。それからは腕立て伏せに加えて腹筋や走り込みなんかも日課になり、今ではそれなりの体格になっていると自分では思う。

 しかし、身長が高くても筋肉があっても、残念ながら高木さんにはからかわれてしまうのだ。

 

「それで?どうするの?」

 バス停に着いたあたりで、高木さんが尋ねてきた。ちょうどバスが出てしまったところらしく、オレたちは誰もいないバス停に立った。

「なにが?」

「進路。さっき考えてたんでしょ?」

 もちろん、考えてなかった。とは、口が裂けても言えない。

「ね、教えてよ」

「うん、いや、でも、まだ他人に話せるほど具体的に決めたわけじゃないし……」

 オレは、自分でもわかるぐらいに、動揺し、言い淀んでいた。

「じゃあ、当ててみようかな。具体的じゃないにしても、方向性ぐらいは決まってるでしょ?」

 当てられるはずがない。もちろんオレだって進路について考えてみたことはある。しかし、翌日になると考えていたことすら忘れているような、その程度のものだ。せいぜいが、自分の特長は体を鍛えていることだから、それを生かした仕事に就きたいと漠然と考えていたぐらいで、それより先に踏み込んで考えたことはない。だから、現状ではなにも決まっていない、むしろなにも考えていないと言っても過言ではない。それゆえに、オレは安心して高木さんの提案に乗ることができた。

「いいよ。まぁ、当てられるといいけどねぇ」

「なんだか自信満々だね。そうだなぁ……」

 高木さんは、あごに人差し指を当てて空を見上げる。考えるときの彼女のクセだ。

「まず、西片は体鍛えて調子に乗ってるから……体を使う関係の仕事だね」

 確かに、オレがイメージしていたのもその程度のことだった。

 その点では、高木さんの推測は当たっていたといえる。だけど……。

「別に、調子には乗ってないよ……」

「そうなの?マッチョなオレ、かっこいー、ぐらい思ってるんだと思ってた」

「オレ、どんなキャラなのさ……」

「あと、西片って結構粘り強いところあるよね」

「え……無視?というか、オレ、粘り強いかな?」

「うん。だって、4年間も私にからかわれてるのに反撃を諦めてないところとか」

 高木さんめぇええ!誉め言葉かと思ったらけなされた。一回持ち上げて落とすところが高木さんらしい。そんなオレの気持ちをさらに無視して彼女は続ける。

「あとは、優しいところかな」

「……」

「……」

「……え?」

「ん?」

「いや、今度はからかってこないのかなって思ってさ」

「だって、西片、優しいでしょ?」

「あ……うん……。そう、かも、知れないけど……」

 こうやって真っ直ぐにほめられると照れてしまう。そして、オレは照れてしまうと例外なく……。

「あはは、西片、顔真っ赤だ」

「うるさいなー、もう」

 これは、高木さんと初めて会った頃から変わらない。彼女には出会った頃から、ありとあらゆる場面で赤面させられっぱなしだ。

「それでね。体鍛えてて、粘り強くて、優しくて、ってなると、体育の先生とかどうかな?」

「体育の先生?」

「うん。体育の先生」

 考えもしなかった。たしかに体を使う仕事ではあるけども、自分が先生になるなんて考えもしなかった。だけど、改めて考えてみると、案外悪くはないような気がした。

「体育の先生かぁ……」

「少しは参考になった?」

「うん、なったよ。ありがとう」

「どういたしまして。でも、他にもいろいろと考えてみた方がいいと思うよ」

 高木さんは、笑顔でそう言った。

 後になって考えてみれば、高木さんは、オレが進路についてなにもイメージができていないことに気付いていたのだろう。

 高木さんにはすべてお見通しだったわけだ。

 

 バスの到着時刻にはまだ時間があったが、オレたちの後ろにも徐々に人が並び始めている。

「じゃあ、今度は西片の番ね」

「へっ?」

「私の進路。当ててくれるんでしょ?」

 そんな約束はしてないけど、と思いつつ、オレはその挑戦を受けることにした。

「西片に当てられるといいけどね」

 まずは高木さんがオレに対してやったように、高木さんの特技を分析することから始めよう。彼女の特技といえば、ずばり、オレをからかうことだ。

 うん、それでなんの仕事に就けるんだろう……。

 いや待て待て。他にも特技はあっただろう。例えば、ポーカーでのイカサマ技術、尾行に気付く鋭敏な感覚、高い身体能力、まるで本人とは思えない変顔……。これらから導き出される答えは1つ……!

「高木さん。高木さんの希望進路は、ずばり、スパイ……だね!?」

「スパイ?」

 高木さんは目を丸くしてオレの顔を見ている。悔しいかい?当てられてさぞ悔しいだろうねぇ高木さん……!

「ぷっ……あははははっ!スパイ!?あはははっ!西片、それ、本気で言ってる?あはははっ!」

 客観的事実と論理的思考から導き出された完璧な回答だったにも関わらず、高木さんは本気で笑っている。

「いやー、まさかスパイとは思わなかったよ。ぷっ。くくくっ……」

「高木さんの特技から推測すると、スパイしか思いつかなかったんだよ……」

 オレはまたしても顔が赤くなっていることだろう。照れているのではなく、恥ずかしくて、だ。

「それにしてもスパイかー。なれるものならなってみたいよね。ぷぷっ。ね、西片。スパイってどうやったらなれるの?」

「知るわけないだろ、そんなの……」

「あれ?知っててスパイって言ったんじゃないの?」

「お願いだからもうやめてよ……」

 オレたちの後ろでバスを待っている人がいるのに、高木さんは楽しそうに笑っている。ほんと、幸せそうでなによりだ。

 

「あー、おかしかった。もー、いい加減にしてよ。珍しく私のこと一生懸命考えてくれてたかと思ったら、スパイって……。ぷぷっ」

「ちょっと高木さん!そんな、高木さんのこと一生懸命になんて……」

「なかった?」

「う……。考えてた……かも……」

「あははは、西片、また顔真っ赤だよ?ほんと、西片といると退屈しないねー」

 赤面するのは体質なんだから仕方がない。4年も付き合いがあるんだから、いちいちからかわないでほしい。

「うれしかったよ」

「え……」

「じゃあ、スパイ……ぷぷっ……スパイは不正解だったから次だね。また、私のことしっかり考えてね」

「だから、そういう言い方は……」

「あははっ。ごめんごめん」

 他に高木さんに向いてそうな進路……職業……。

 正直、オレは考えることをもう放棄していた。だから、出した答えも、あまりにも単純なものだった。

「えーっと、じゃあ、お嫁さん?」

「えっ?」

「えっ?って……」

「いや……なんでわかったのかな、って……」

「え?え?お嫁さんなの?」

「連呼しないでよ……。私だって、ちょっと子どもっぽいかなって思ってるんだから……」

 高木さんはうつむきながらそう言った。確かにお嫁さんというのは高木さんのキャラからはあまりイメージできない。そのせいか、ちょっと恥ずかしそうにしている。これは絶好の攻撃チャンスだ。

「お嫁さんかぁ……。高2になってもお嫁さんになりたいんだ」

「まぁ、ね……。もちろん専業主婦になりたいってわけじゃなくて。仕事もしたいけど、やっぱり好きな人と一緒にいたいから」

「ふーん。高木さんがねぇ。ふーん。ちなみに、高木さんにとって、お嫁さんになりたいような好きな人ってどんな人なの?」

 高木さんが妙に恥ずかしがっている『お嫁さん』というワードで追い打ちをかけていく。

「そうだねー。一緒にいて退屈しない人かな。あとはやっぱり優しい人」

「ふーん。優しくて、一緒にいて退屈しない人」

 ……。

 ……ん?

 なんかさっきこんな会話した覚えが……。

 え?高木さんの結婚したい人って……え?

 と、高木さんの顔を見ると、ニヤニヤとした表情でオレの顔を見ている。

「どうしたの西片?顔、真っ赤だよ?」

 だから、赤面するのは体質なんだからいちいち反応しないでほしい。

 

 バスが到着し、オレたちは後ろの列に押されないようなるべくスムーズに乗り込んだ。

 ほとんどが空席だったため、オレたちは前寄りの2人掛けの席に座った。窓側には高木さんが座っている。

 それにしても、バスの2人席ってどうしてこう狭いんだろう。以前高木さんにその不満を話したところ、『席が狭いんじゃなくて西片が大きいんじゃない?』と一蹴されてしまった。

 席の広さもオレの体格も変えられないため、どうやってもオレと高木さんの体は密着してしまう。

 こういうときは、さすがにオレも、高木さんのことを女性だと意識せざるを得ない。

「高木さん、もうちょっとそっち寄れない?」

「えー、無理だよ。西片こそちょっと小さくなってよ」

「そっちの方が無理じゃないか……」

「じゃあ、このままでいるしかないよ。それとも、このままじゃなにか困ることでもあるの?」

 いつものニヤニヤ顔でオレの顔を見ながら、いけしゃあしゃあと聞いてくる。だからオレも、いけしゃあしゃあとポーカーフェイスで答える。

「別に?なにも」

「ふーん。ならなにも問題ないよね。よかったよかった」

 

 通学のときは、片道20分、バスに揺られている。そして、案の定というか、いつものようにというか、とにかくその時間は毎日高木さんにからかわれている。まるで、クラスが違うことを取り戻すかのように。

 そのからかいの合間に、突然高木さんから提案があった。

「ねぇ、西片。明日ヒマならモール行かない?」

 モールとは、オレたちの家から少し離れたところにあるショッピングモールのことだ。家の近くで遊ぶとしたら、残念ながらそのモールぐらいしかない。

 明日は金曜日。だけど、入学式のため休校だ。休校なんだけど……。

「ごめん、明日はガスだか電気だかの点検が来るから、家にいるように言われてるんだよ」

「そっかぁ。残念。じゃあ、西片のおうちは?」

「あぁ、それならいいよ」

 月に1回か2回ぐらい、高木さんはオレの家に遊びにくる。わざわざ家族に紹介しないで済むように、家族のいない時間を縫って来てくれるようオレがお願いしている。友達とはいえ女の子を紹介すれば、家族がどんな反応をするのか、想像もしたくない。オレは家の中でまでからかわれたくない。

 ちなみに、オレは高木さんの家には一度も行ったことがない。何度か誘ってくれたことはあるけど、女子の部屋に入るということ自体が恥ずかしいのだ。

「じゃあ、時間はまたメールするよ」

「うん、わかった。あー、楽しみだなー」

 とりあえず、帰ったら部屋の片づけをしておこう。

 

 金曜日の13時、インターフォンが鳴る。

 玄関のドアを開けると、高木さんが、白いTシャツにピンクのロングカーディガン、ジーンズにスニーカーという服装で立っていた。とても春らしい、さわやかな出で立ちだ。

「や」

 高木さんが片手を挙げて挨拶をする。

「いらっしゃい。先上がってて」

「おじゃましまーす」

 オレが促すと、高木さんは2階のオレの部屋へ上がっていく。勝手知ったるなんとやら。オレの部屋に入ることに抵抗はなさそうだ。

 オレがお茶を用意して部屋に入ると、高木さんはベッドにもたれて足を伸ばしていた。

 高木さんが頻繁に遊びに来るようになってから購入したちゃぶ台。オレは、その上に持ってきたお茶を置き、高木さんに向かって左側に並んで座る。

「ありがと」

「どういたしまして」

 高木さんが遊びに来るといっても、取り立ててなにかをするというわけでもない。一緒にゲームをすることもあれば、別々に好きなマンガを読んだりもするし、ごくごくまれに勉強することもある。そして今日は少なくとも勉強をする日ではない。

 今は2人とも大人しくマンガを読んでいる。高木さんは少女マンガの『100%片想い』、オレは『爆裂!!最強サッカー!!』で、どちらも5年以上続く長期連載作品だ。

「うーん……。んー?」

「え……?なに唸ってるの?」

「いやぁ、ちょっとね。イケ男とキュン子が気になってさ」

「まぁ、少女マンガだし。主役の2人が気になるのは普通じゃない?」

「そうなんだけど、そうじゃなくてね……。うーん……」

 高木さんは、『100%片想い』のヒーローとヒロインのなにかが引っかかっているようだ。そんな複雑なマンガじゃないと思うんだけど……。

 彼女はマンガに目を向けたまま言葉を続ける。

「ねぇ、西片」

「ん?なに?」

「なんで人はキスするんだろうね?」

「は!?知らないよそんなの!き、キス……なんて、したことないし……」

「私もしたことないよ?」

「あ、そう……」

 高木さんは笑みを浮かべながら、オレの目を真っ直ぐ見て言う。オレはその視線から逃れるように、彼女の顔から目を逸らした。

「そうなんだよ。キスしたことないのに、好きな人とはしたいって思うんだよね。どうしてなのかな?」

「だから……知らないって、そんなこと……」

「してみよっか」

「ぶっ!!はっ……はぁああ!?なに……なに言ってんの!?」

「キスしてみたら、どうしてキスしたくなるのかわかるかも知れないでしょ?逆に、1回すればいいか、ってなるかも知れないし」

「なんだよその理由!そういう理由じゃダメ!キス……とかっていうのは、その……気軽にするものじゃなくて……その、好きな人同士がするものだから……」

「えー?でも私、西片のこと好きだよ?」

「だから、そういう感じじゃなくてさ……」

 少しの沈黙の後、彼女は唐突にオレのシャツの裾を掴み、オレの目を見て言った。

「だったら、どういう感じだったらいいの?」

 オレは彼女の視線を真正面から浴び、なにも言うことができなくなっていた。

「気軽じゃなかったらいいの?」

「その……。それは……その……」

「私、誰にでもキスしたいって言うわけじゃないよ」

「それは……まあ……わかってる、けど……」

「気軽じゃなくて、好き同士だったらいいんだよね?」

「まぁ……そう……言ったけど……」

 オレがそう言うと、彼女はオレのシャツを掴んでいた手に力を入れ、オレの目と部屋の床を交互に見て、何度か深呼吸をし、最後に真っ直ぐオレの目を見て言った。

「私は、西片のこと、ずっと好きだったよ。ずっとずっと、大好きだったよ」

 

 部屋に沈黙が落ちる。どれほどの時間が経ったのだろう。

 高木さんは変わらずオレの目を真っ直ぐ見て、オレのシャツの裾を強く握っている。

 わかっている。オレの答えを待っているのだろう。

 しかし、オレがなにも言わないことに業を煮やしたのか、彼女が言葉を紡ぐ。

「……西片は?」

「へっ?オレ?」

「うん。西片は、私のこと、嫌い?」

 オレは、彼女の質問に答えられないでいた。好きか嫌いかで言えば、もちろん好きだ。じゃないと家に上げたりなんかしない。だけど……。

 オレの脳を、感じたことのない感覚が埋め尽くし、溢れ、オレは思考する力を失った。

 考えられない。なにも考えられない。頭が真っ白になるというのはこういう状態なのかも知れない。

「キスしたいって思えないぐらい、嫌い?」

「そんなこと……」

「じゃあ、嫌いじゃないけど、キスはできない?」

 そう言いながら、彼女は顔を、唇を近付けてくる。オレの目は、ほのかな桜色をした、彼女の薄い唇に釘付けだった。

 オレの方が力は強いはずなのに、魔法にかけられたように抵抗ができない。

 わからない。なにもわからない。もう、どうなってもいい……。

 ちゃぶ台が大きく揺れ、上に置いていたコップが転がり、中のお茶が床にシミを作る。

 高木さんは、なにが起こったのかわからないという表情で、膝を立て、体の後ろに両手をついてへたり込んでいる。

 おそらく、オレも同じ表情をしていたことだろう。

 事ここに至って、ようやく、オレが彼女を突き飛ばしたのだということに気が付いた。

「あっ……。ご……ごめん、その、そういうつもりじゃなくて……。その……ごめん、大丈夫?」

 高木さんは、へたり込んだ体勢のまま、ただ床を見つめていた。

「ごめん、オレ、ちょっと今、混乱してて……。ごめん、その、ただ、ちょっと考える時間がほしいんだ。今は、なにがなんだかわからなくて……」

 オレが話し終わるとともに、部屋は再び沈黙に包まれた。外からは走り回る子どもの声や、鳥のさえずりが聞こえてくるのに、この部屋だけは時間が止まったかのようだった。

 その沈黙を破ったのは、高木さんの声だった。

「そっか。西片は……。西片は、私のことが嫌いかどうか、考えないとわからないんだね」

「そのっ……そういう意味じゃなくて……」

「ごめん、今日はちょっと……帰るね」

 高木さんはそう言うと、1人で部屋を出て階段を下りていった。

 

 翌日の土曜日、オレは滅多に出ない散歩に出ていた。

 昨日あれから、オレは高木さんに連絡していない。そして高木さんからも連絡はきていない。

『私のことが嫌いかどうか、考えないとわからないんだね。』

 そうだ。オレは、高木さんみたいに要領がよいわけではないし、物事にすぐに答えを出せるわけでもない。

 自分のことだからわかる。やっぱりオレには、何事においても考える時間が必要なのだ。

 だからといって、考えたけど嫌いじゃないよ、という答えを彼女が望んでいるとは思えない。

 オレが彼女のことを女の子として好きか、そうでないか。さらに言えば、オレたちの関係が男女としての関係に発展するか、そうでないか。彼女の望んでいる答えはそういったことだろう

 オレは、いまだ答えの出ない問答を繰り返しながら、母校の中学校へ足を向けていた。

 高木さんと一緒に何百回と通った道だ。当然、思い出深い場所もある。公園に駄菓子屋。自転車の2人乗りの練習をした空き地には、一軒家が建っていた。

 同じ道を歩いているのに、隣に高木さんがいない。淋しいといえばいいのか、心細いといえばいいのか、虚しいといえばいいのか。もしかしたら、悲しいと感じているのかもしれない。

 散々歩き回って、最後に着いたのは神社だった。せっかくなので境内に入ってみることにする。

 そこは変わらず、鳥居と本殿があるだけの小さな神社だった。人が常駐している様子もなく、そのおかげで、オレと高木さんはここで雨宿りしたりと、わりと好き勝手やったものだ。

 靴を脱いで、本殿に上がって座ってみる。目に映る見慣れた景色。中学校を卒業してから何年も経ったような気がするけど、実際には1年ほどしか経っていない。きっと、オレたちが変わっても、世界はそうそう簡単に変わるものではないんだろう。

 以前と変わらない景色をひとしきり楽しんだ後、思うところがあり、本殿の裏手にも回ってみる。

 裏手ということもあって、木が生い茂っているけど、さすがに本殿の周りは綺麗に手入れされている。

「西片……?なんで……?」

 言うが早いか、彼女は一目散にオレから逃げ出した。

 突然逃げられたことで、オレは反射的に彼女の後ろ姿を追いかけていた。

 以前、落ち込んだ様子でここに座っている彼女を見たことがある。それで、少し覗いてみようと思ったのだ。

 彼女にとって、ここは、気持ちを落ち着かせることができる特別な場所なのかもしれない。

 オレは逃げる高木さんを追いかける。高木さんも走るのは速い方だけど、本気で走れば当然オレの方が速い。だから追い着くのも時間の問題だった。

 だけど、追い着いたとして、それでオレは彼女になにを言うつもりなんだろう。

 自分でもわからないまま一心不乱に走った。

 やがてオレは彼女に追い着き、その腕を掴んだ。

 彼女は腕を掴まれ、オレを振り返る。大粒の涙を流しながら。

 それは、オレにとって、初めて見る、彼女の涙だった。

 その涙にオレが戸惑っていると、彼女はオレの腕を振り払い、再び走り出した。

 オレにはもう、それ以上彼女を追いかけることはできなかった。

 

 夜、オレは自室にいた。

 昨日この部屋で起こったこと。ここにいると、嫌でも思い出す。

『私は、西片のこと、ずっと好きだったよ。』

 高木さんは、はっきりとそう言った。そう言ってくれた。それに対してオレは、彼女に応えるどころか、彼女を突き飛ばした。

 オレは、彼女のことをどう思っているんだろう。それは、もちろん、友達だ。

 その時、ケータイがメールの受信を告げる。送信者は……高木さん。

 オレは急ぎメールの内容を確認しようとした。しかし、こういうときに限ってタッチパネルがいう事を聞いてくれない。

 同じ画面でタッチすること4度、ようやく彼女のメッセージを開くことができた。

『明日は一日中家にいます』

 今、この状況でこのメール。彼女の真意が計り知れないのは、オレが鈍いせいではないだろう。

『会ってくれるってこと?』

 返信すると、彼女がメールを読んだことの確認はできたものの、10分経っても20分経っても返事はこなかった。

 もしも会ってくれるんなら、オレは、昨日伝えられなかった、オレの気持ちを伝えなければならない。

 ……オレの気持ち?オレの気持ちって、なんだ?

 高木さんは、オレの友達だ。男女ひっくるめても、たぶん、一番仲のいい、一番大事な友達だ。

 だけど、もしも彼女がオレにしたように……他の男子の家に遊びに行ったりしたら。好きだと、キスしたいと言ったとしたら。

 考えるだけでみぞおちの辺りが重くなる。心臓の鼓動が速くなり、それなのに顔だけが冷たくなる。

 これは嫉妬だ。考えるまでもない。ということは、オレは、高木さんのことをただの友達じゃないと……。

 違う。全然違う。オレが伝えたいと思っているのはそんな気持ちじゃない。

 他人は関係ない。オレ自身が、彼女のことをどう思っているのか、それを伝えないと意味がない。

 彼女が好きだと言ってくれた時、オレはどんな気持ちになった?あの時は、頭が真っ白になって、なにも考えられなかった。どうして?今までに感じたことのない感覚が溢れてきた。感覚?感情?オレの脳を、心を満たした感情……。怒りでも、悲しみでもない感情。違う。きっと、好きな人に好きだと言われた喜び。

 そんなに難しいことじゃない。オレは、高木さんの笑顔が好きだ。中学校へ通学するときに、高木さんが自転車を押して一緒に歩いてくれたように、同じ歩幅で歩くのが好きだ。これからも、一緒に歩いていたい。

 薄々、自分でも気が付いていた。それでも、今の関係を壊すのが怖くて、認めたくなくて、見ないフリをしていた。

 それでも、高木さんはその関係を壊すために勇気を出してくれた。

 今度は、オレが勇気を出して、伝えないといけない。

 オレは明日、高木さんの家に行くことにした。

 

 翌日の午後1時、オレは高木さんの家の前にいた。

 行くことはあらかじめメールで伝えている。ただし、相変わらず返信はなかった。

 初めて訪れる高木さんの家。そのインターホンを前にして、オレは躊躇していた。

 これを押しても、押さなくても、もう後には引けなくなる。

 でも、押さないという選択肢はない。オレは、意を決してインターフォンを鳴らした。

『はい。』

 インターホン越しに高木さんの声が聞こえる。

「あの、西片ですけど……」

『あ、西片?ちょっと待っててね。』

 いつもと同じような、明るい声が返ってくる。

 昨日の涙はなんだったのか……。オレは少し戸惑っていた。

 しばらくして玄関のドアが開く。

 高木さんはワンピース姿で現れた。薄い空色の、膝の下まで丈のある、七分袖のワンピース。そのウエスト部分に同じ空色の腰紐を結んでいる。

「いらっしゃい、西片。上がって上がって」

「あ、うん。お邪魔します……」

 そう言って、高木さんは自分の部屋に案内してくれた。

 部屋に入ると、正面に大きな窓が見えた。

 初めて入る、女の子の……高木さんの部屋。正面の窓の下にはベッドがあり、床にはラグが敷いてある。左手には学習机と、それに並んで置かれた洋服ダンス。右手には鏡台があり、改めて高木さんを女の子だと意識させられる。

「飲み物持ってくるから、座ってて」

「あ……うん」

「あ」

「ん?」

「タンスとか、開けてもいいからね?」

「そっ……しないよそんなこと!」

「あははははっ」

 本当に、一昨日のこと、昨日のことが嘘だったかのように思える。オレは、かなりの覚悟を持って、今日ここに来た。正直、どんな顔をして高木さんに会えばいいのか、それすらも迷っていた。

 だけど、高木さんはいつも通りの様子だった。それでも、実際に顔を見れば、かなり無理をしているらしいことは、鈍感なオレにもわかった。

 座ってて、とは言われたけど、初めてお邪魔する部屋でベッドにもたれてあぐらをかけるほど、オレは図太く出来ていない。

 やがて、高木さんが部屋に戻ってきた。

「お待たせ、ごめんね」

「ううん、全然」

「どうして正座してるの?」

「いやぁ、それがね、色々あって……」

「ふーん。楽に座ってくれていいのに」

「えっと……じゃあ、お言葉に甘えて……」

 オレは足を崩し、ベッドにもたれて座った。オレの左側に高木さんが座る。部屋こそ違えど、一昨日と同じ状況だ。

 座ったまま、2人とも押し黙っていた。オレは、どうにも沈黙に耐え切れず、とりあえず言葉を発した。

「きょっ……今日は、いい天気、だね……」

「そうだね。風はちょっと冷たいかな?」

「で……でも、いい天気だよね?」

「うん、そうだね」

 オレは一体、なにを話しているんだろうか……。そうは思いながらも、オレの言葉は続く。

「たっ!高木さんがワンピースなんて、なんだか珍しいよね!中学生のときは時々着てた気がするけど!」

「あ、覚えててくれたんだ。今日はね、西片に、かわいいかっこ見てもらおうと思ってさ」

「そ……そう……」

 かわいいよ、と言った方がよかったのか、言わない方がよかったのか。考えるまでもない。オレには、かわいいよ、なんて言えるはずがない。

 正直なところ、オレはいまだに戸惑っていた。高木さんの態度はもちろんとしても、オレ自身の気持ちに。

 オレは昨日、高木さんに対する自分の気持ちに整理をつけたつもりだった。ごくごく端的に言えば、彼女のことが好きなんだと気付いた。だけど、実際に彼女を目の前にすると、そんな気持ちの整理など簡単に吹き飛んでしまった。彼女のその姿に目を奪われ、その声に耳を奪われ、なによりも彼女のすべてに心を奪われた。自分が思っていた以上に、オレは彼女のことを好きなんだと気付かされた。こうして一緒にいるだけで、心臓が鼓動するごとに彼女のことをますます好きになってしまうような、そんな確信があった。

 オレがオレ自身の気持ちに戸惑っている間にも、部屋には再び沈黙が落ちていた。余計なことは話せても、本題に入れない。どうやって切り出せばいいんだろう……。いざ自分が告白する立場になると、まったく言葉が出てこない。高木さんがどれほどの勇気を振り絞って告白してくれたのかがよくわかる。

 そんなこんなでオレがなかなか言葉にできないでいると、高木さんがぽつりぽつりと話し始めた。

「あのね、西片。私、失恋したんだ」

 彼女は、いつの間にか膝を両手で抱きかかえ、その上に顎を乗せていた。

「中学の1年生のときからね、ずっと好きだった人。同じ高校に入ってもずっと仲良くしてくれてたから、その人も私のこと、好きでいてくれてるんだと思ってた。それで、思い切って告白したんだ」

 彼女は、今にも泣きそうな、でも絶対に泣かないと決めたような表情で話していた。

「すごくどきどきした。その人と、もっと仲良くなれるんだと思ってた。だけどね、ふられちゃった。あはは、バカだよね、私」

 違う。高木さんのせいじゃない。

 オレは、高木さんにそう言いたかった。だけど、嘆くような、歌うような彼女の話に、オレは口を挟めないでいた。

「諦めようとしても、諦められなかった。諦めようとするたびに、その人と一緒にいたときのこと、どんどん思い出しちゃうの」

 鼻をすする音が聞こえてくる。

「西片。今日、来てくれてありがとね」

「あ……ううん。こちらこそ」

「あはは、こちらこそ、だって。おかげで、お礼とお別れがちゃんと言えるや」

 お礼?お別れ?

「あのね、西片。今まで一緒にいてくれてありがとね。とっても楽しかったよ。西片はからかわれるばっかりで楽しくなかったかも知れないけどさ」

「いや……そんなこと……」

「あははっ。西片は優しいね」

「いや……そんなこと……」

「ほんと楽しかった。ずっと一緒にいたかったな……」

 そこまで言うと、高木さんは突然オレに向き直り正座をした。

「だけどね、西片。私は今の気持ちのまま、今までどおりの付き合いなんて、できないんだよ。だからね、お別れしよう?」

「お別れ……って、どういう……?」

「あはは。付き合ってもないのにお別れなんて変だよね。だけどね、苦しいの。一緒にいると。きっと、一緒にいない方が苦しくないから……。ごめんね、全部私のワガママで。西片には、最後の最後まで、たくさんワガママ言っちゃったね」

「そういうことじゃなくて!落ち着いてもっとちゃんと説明してよ!」

「あはははっ。落ち着いた方がいいのは西片の方だよ。うーん、そうだね……」

 高木さんは、あごに人差し指を当てて天井を見上げる。考えるときの彼女のクセだ。だけど、きっと、彼女の中では、考えるまでもなく結論が出ているんだろう。

「お話もしないし、挨拶もしない。お互いにお互いが消えていなくなった……そんな風にしようよ」

 その言葉を聞いて、オレはふと、中学生のとき高木さんに尋ねられたことを思い出した。

『私がいなくなっちゃうのと、一生私にからかわれ続けるの、どっちがいい?』

 その時のオレは確か、消えるというのはいくらなんでも……という理由から、消極的に後者を選んだ。

 もちろん今だって、からかわれたい、というわけじゃない。だけど、オレをからかった後の高木さんの笑顔は、最高にまぶしくて、その笑顔をずっと見せてほしい。

 なにが、どうやって切り出せばいいんだろう、だ。なにが、口を挟めない、だ。

 オレみたいな単細胞がタイミングなんて考えたって、結局先延ばしにするだけだ。このままでは、本当に、もう二度と、高木さんの笑顔に会えなくなってしまう。

 オレの胸と高木さんの胸が密着していた。オレの顔の隣に、高木さんの顔があった。オレの心臓は、破裂しそうなほど鼓動していた。オレは、いまだ正座している高木さんの体を、両手で優しく抱きしめていた。

 

 高木さんは、しばらくの間体を強張らせていたが、緊張が少し解けたのか、オレを威嚇するように低めの声で言った。

「西片」

「なに?」

「離して」

「イヤだ」

「離してよ」

「やだよ」

「なんで?」

「高木さんこそなんで?」

「質問で返さないでよ」

「オレは、こうしたかったからだよ。高木さんは?」

「困るから……」

「なにが困るの?」

「だから……その……こういうことされると……困るから……」

「だったら高木さんから離れたら?オレ、そんなに力入れてないよ」

「…………」

「離れないの?」

「ひどいよ……」

「なにが?」

「だって……わかってるでしょ……?私、バカだから……期待、しちゃうし……。ひどいよ……」

「高木さんがワガママしようとしたから、オレもワガママしただけだよ」

「そんなの……。私が西片のこと好きなの知ってるのに……それなのに、こんないじわる……」

「ひどい?」

「ひどいよ……」

「高木さんの方がひどいよ」

「私、だって……。私だって!苦しかったんだよ!お別れの……ために……一生懸命練習して……泣かないようにがんばろうって……。それに……」

「それに?」

「なんでもない……」

「じゃあ、もうお別れ?」

「や……」

「いや?」

「いや……やだよ……」

「だったらお別れなんてしなきゃいいじゃん」

「だって……にしかた……わたし……のこと、きらいだし……。だから……」

「オレ、高木さんのこと好きだよ」

「なんで……なんでそんなひどいウソつくの……。ひどいよ……」

「ウソじゃないよ……」

「じゃあ……からかってるの……?」

「それも違うよ……」

「だって、にしかた……わたしのこと……」

「高木さん」

「なに?」

「そのまま」

「え……?」

「…………」

「んっ……」

「…………」

「…………」

「信じた?」

「…………」

「高木さん?」

「…………」

「泣いてる?」

「……泣いてる」

「そっか」

 

「ごめんね、西片」

「ううん、オレの方こそ……」

「照れてる?」

「照れてないよ!」

「ほんとに?」

「照れてます……」

「私、今ひどい顔だろうな……。西片のシャツもカピカピだし」

「まぁ、これはしょうがないよ……」

「ほんとに西片は優しいなぁ……」

「ん?なにか言った?」

「西片は優しいな、って言ったんだよ」

「なっ……」

「照れてる?」

「照れてる……」

「あはは。私、ちょっと顔洗ってくるね。お茶でも飲んで待ってて」

「うん」

「………………」

「ごめんね、お待たせしました」

「おかえ……り……」

「どうしたの?様子おかしいよ?タンス開けた?」

「開けてないって!」

「あはははっ。じゃあ、なんでちょっとおかしいの?」

「あの……」

「ん?」

「そのワンピース、かわいいな、って……」

「かわいいのはワンピースだけ?」

「なっ……!その……えーっと……」

「あはは。西片が様子おかしかったから、ちょっとからかっちゃった」

「もう……。やめてよほんとに……」

「西片」

「ん?」

「ほめてくれてありがとね。うれしかったよ」

「えっと……。うん、どういたしまして……」

「顔真っ赤だよ?」

「それは体質なの!さっきまでしおらしかったかと思ったら、もういつもの調子だよ……」

「しおらしい私の方が好き?」

「えっ……なっ……!はっ……はあっ!?なに言ってるの!?」

「私のこと好き?って聞いてるんだよ」

「さっきと言ってること違うじゃん!」

「あはははっ!西片、もう必死なんだもん……。ほんとに……ぷぷっ」

「もう……なんなんだよ……」

「ね、西片」

「今度はなに!?」

「私のこと、好き?」

「あ……えっと……。好き、だけど……」

「ありがと。うれしいよ」

「その……高木さんの方こそ……どうなんだよ……」

「ん?聞きたいの?」

「聞きたいっていうか……その、公平じゃないっていうか……」

「あはははっ。なにその理由」

「い……いいだろ!とにかく」

「好きだよ」

「へっ?」

「好きだよ。大好き」

「あ……ありがとう……」

「照れてる?」

「こ……この部屋暑くってさあ!」

「ふーん」

「いやぁ、暑い暑い」

「手、つないでいい?」

「ちょっ……!なに突然!」

「突然じゃなければいいの?」

「あの……えっと……」

「西片、手、つないでくれる?」

「あ……はい。お願いします……」

「西片」

「……なに?」

「幸せだね」

「うん……」

「暑いの?」

「暑いの!」

「あはははっ!」

「う……うるさいなー。そういえばさ!高木さんってオレのどこが好きなんだい!?」

「どうしたの?急に大声出して」

「いや、別に……」

「ふーん、そう。で、西片のどこが好きか、って?」

「そうそう!ひとつひとつ言ってみてよ!」

「男の人って、それ聞きたがるよね」

「え?え?……え?」

「私の好きな人はそれ聞きたがるんだよね。初恋の人もそうだし」

「え?好きな人って?え?初恋の人って?」

「聞きたい?」

「え……えっと……」

「西片だよ」

「え?え?」

「だから、私の好きな人も、初恋の人も、西片のことだよ」

「え?あー、え……?」

「あはははっ。びっくりした?」

「びっくり……したよ……」

「なんだか、予想外にショックが大きかったみたいだね」

「ああ、そういうことか!なんだよもう!」

「あははっ。復活した。それで、西片は自分の好きなところを私に言わせて、私に恥ずかしい思いをさせようとしてるみたいだけど」

「そっ……そんなことないけど……」

「いいの?」

「な……なにが?」

「私、西片の好きなところいくらでも言えるけど、言ってもいいの?」

「あっ……いや……ちょっと待って!やっぱりなし!今のなし!」

「えー。つまんないの」

「危ない危ない……。自分で自分の首を絞めるところだった……」

「じゃあ、次は西片の番ね」

「えっ!?」

「だって、公平じゃないでしょ?」

「公平って言ったって、そもそも高木さん言ってないじゃないか……」

「私は言ってもいいんだけど」

「ごめん!なし!オレの番!」

「さて、なんて言ってくれるのかなー?」

「その……」

「うん」

「え……笑顔がかわいい……とか?」

「とか?」

「笑顔がかわいい……」

「ありがと。他にもある?」

「ほ……他には、もっと高木さんのこと知らないと、なんとも……」

「ふーん」

「な……なに?」

「私のこと、よく知らないのに好きって言ってくれたの?」

「いや……それは……違う、けど……」

「そもそも、私のことで、西片の知らないことって、ほとんどないと思うよ。ずっと一緒にいたんだから」

「それは……まぁ、そうかも知れないけど……」

「それとも、西片は、西片も知らない私のことを、もっと知りたいってこと?」

「そ……それ!それだよ!」

「ふーん」

「な……なんだよ……」

「なんかやらしー」

「なっ……!違う!決してそんな意味じゃなくて!」

「そんな意味?」

「それは……その……。ほら……」

「ほら?」

「ほら……その……」

「西片、私のこと、もっと知りたいんだ?」

「確かにそう言ったけど、そういう意味じゃ……」

「…………」

「その……」

「エッチ」

「だから!そういう意味じゃなくて!えっと……」

「…………」

「あの……」

「…………」

「高木さん?」

「……いいよ」

「へっ?」

「私は、西片に……私のこと……もっと、知ってほしい、かな、って思ってるよ」

「ちょっ……!たっ!高木さん!?」

「あははは!西片、赤くなってるー」

「なっ……。またそうやってオレをからかって……」

「うーん、からかってるけど、ウソじゃないよ」

「……え?ウソでしょ?」

「だから、ウソじゃないって」

「そ……そう……」

「うん。そうなん……だけど、さすがにちょっと、心の準備、したいかな……」

「そ……そうだよ!お互い心の準備ができるまで、そういうことは……」

「西片」

「えっ!?な……なに!?」

「手、ぎゅってしてくれる?」

「あ……うん……」

「すー。はー。すー。はー」

「なにやってるの?」

「深呼吸」

「え?なんで?」

「心の準備だけど?」

「なんでなのさ!」

「だって、私のこと、もっと知ってほしいから……」

「だから!そういうのは、もっとこう、時間をかけてからにしようよ!」

「西片は、いや?」

「いやとかじゃなくてさ……その……」

「その?」

「その!高木さんのこと!大事にしたいんだよ!好きだから!」

「…………」

「はーっ、はーっ」

「あはは、西片、また大声出してる」

「う……うるさいな!そうでもしないと言えなかったの!」

「顔真っ赤だよ?」

「だから!体質だから!」

「あはは。でも、きっと私も真っ赤だな……」

「は……ハーッハッハッハ!高木さんでも赤面することがあるんだねぇ」

「どうしよう西片。私、泣いちゃいそうなぐらい嬉しいや」

「あ……あれ?え……うん……」

「ね、西片。さっきみたいに、ぎゅってしてくれる?」

「えっ……。さっきのやつ……?」

「うん。してほしいの」

「わかったよ、もう……」

「ありがと」

「……こうでいい?」

「うん。西片って、あったかいね」

「そうかな?自分じゃわからないけど……」

「うん。あったかくて、安心して、どきどきする……。へんな感じ」

「そう……なんだ」

「うん。そうだよ」

「…………」

「西片」

「なに?」

「そのまま」

「…………」

「ん……」

「…………」

「…………」

「ちょっ!なに!?」

「あははっ。びっくりした?」

「そりゃびっくりするよ!当たり前だよ!」

「どきどきした?」

「そりゃ……どきどきするよ……。当たり前だよ……」

「ほんとだ。西片の心臓、すごくどきどきしてるね」

「えっ?そ……そんなにわかるほど、オレ、どきどきしてる?」

「あ。これ、私のどきどきだった。間違えちゃった」

「もう……なんでそんな余計なからかいを入れてくるんだよ……」

「ね、西片。私のどきどき、わかる?」

「そんなのわからないよ……」

「じゃあ、もっとぎゅってしてみてよ」

「うぅ……いいけど……」

「私だってさ、どきどきするんだよ。からかったりしてるけど、西片といるときは、ずっとどきどきしてる」

「うん……」

「西片とは、これからも、ずっと、一緒にどきどきしたいんだ」

「それは……まぁ、オレもだけど……」

「私ね、西片に、私のこと、もっと知ってほしいんだ。それに、西片のことも、もっと知りたい」

「だから高木さん、それは……」

「わかってる。お互いの心の準備ができてから、だよね。私は……少し準備できてきたよ。西片は?」

「えっ……?えぇっと……それは……」

「こうやって、ぎゅってしてる状況にも、少しずつ慣れてきたでしょ?」

「だから……なんで考えてることがわかるのさ……」

「あはは。西片わかりやすいから」

「もう……なんなんだよ……」

「だからさ、その、ね。西片さえよければ、私のこと、知ってほしいし、西片のことも、教えてほしいな」

「うーん……でも……だってなぁ……」

「…………」

「……後悔しても知らないよ?」

「大事にしてくれるんでしょ?」

「それは……まぁ……そうだけど……」

「だったら私、後悔しないよ」

「なんだかオレ、すごく流されてる気がする……」

「あははっ。そんなの、中学生のときからだよ」

「それは自分でもわかってたよ……」

「西片。もっと、ぎゅってしてくれる?力抜けてきてるよ?」

「あっ……。ご……ごめん!」

「あはははっ。別に謝るところじゃないよ」

「なんかもう反射なんだよ……」

「ね、西片。頭なでてくれる?」

「うん……」

「…………」

「こんな感じでいいの?」

「うん。こんな感じがいいの。西片の好きなようにしてほしいから」

「そ……そう……?好きなように……」

「うん。好きなように」

「そ……そうなんだ……。好きなように……ね……」

「西片のエッチ」

「違うよ!そういうんじゃなくて!」

「あはははっ。西片、照れてる?」

「照れてないよ!」

「ふーん。ほんとに?」

「ほ……ほんと……だよ……」

「まぁ、どっちでもいいや」

「なんだよそれ……」

「西片」

「今度はなに?」

「大好きだよ」

「あ……うん……」

「大好きだよ」

「あ……ありがとう……」

「大好きだよ」

「お……オレも好きだよ」

「うん、ありがとう。よくできました」

「だって、すごい圧力かけてくるから……」

「西片」

「だからなに?」

「そのまま……」

「…………」

「…………」

「…………」

「……」

「……」

 

 初めて見る高木さんは、とてもかわいくて、とても綺麗だった。

 

「ね、西片」

「な……なに?」

「なんでこっち見てくれないの?」

「なんだか恥ずかしいというか……気まずいというか……」

「それで私の顔見られないの?」

「だってほら、よく考えたらオレたち、今日付き合い始めたばっかりなのに……」

「私たちって付き合ってたっけ?」

「そりゃ、付き合って……」

「付き合って?」

「ない……」

「でしょ?」

「え?え?オレってば付き合ってもないのに!?」

「あー、西片ひどいんだー」

「た……高木さんだって!」

「あれ?女の子のせいにするの?」

「オレが悪いです……」

「そういえば、私、聞いたことがあるよ」

「な……なにを?」

「男の子って、チャンスがあったら、好きでもない相手のことを好きだって言えるんでしょ?」

「まぁ……そういう人もいるかもね……」

「まさか、西片がそういうタイプの人だとは思わなかったなー」

「え?え!?なんでそうなるの!?」

「だって、付き合ってもないのに……でしょ?」

「まぁ……そう……ですけど……」

「私、毎晩この部屋で寝るたびに、今日のこと思い出すんだろうな……」

「なんでこのタイミングでそういうこと言うの!?」

「じゃあ、教えてよ。西片がそういう人じゃないってこと」

「教えるって……どうやって?」

「それは西片が考えることでしょ。言葉でも行動でもいいから」

「言葉でも行動でも、ねぇ……」

「ほらほら西片。がんばって!」

「うーん。あれでもないし、これでもない……」

「あんまりゆっくりしてると日が暮れちゃうよ?」

「だから……オレがアレで……ソレがコレで……」

「西片、ここちっちゃいニキビできてるよ?痛くない?」

「ちょっと高木さん!静かにしてよ!」

「あはは。怒られちゃった」

「絶対ワザとだろ……」

「さぁ、気を取り直してがんばって!」

「誰のせいだよ……」

「誰のせいだろうね?」

「高木さんのせいだよ!」

「あははははっ!西片は今日もいいリアクションするね」

「もうほっといてよ!あ、高木さん。それはそうと……さ」

「ん?なに?」

「体の方は大丈夫?その……痛いってよく聞くからさ」

「あぁ、うん……。正直、結構……かなり、痛いんだけどね……」

「そりゃそうだよね……」

「心配してくれてるの?」

「そりゃ……心配するでしょ。なんにもできないけど」

「うん。ありがとね。心配してくれるだけでうれしいよ」

「そっか……よかった。じゃあ、ちょっと黙っててね」

「あれ?さっきのじゃないの?」

「さっきの、って?」

「ううん、なんでもないの。じゃあ、がんばって考えてね」

「…………」

「…………」

「あ」

「ん?」

「あ、いや……なんでも……」

「これは……!いくらなんでも言うのが恥ずかしすぎる……!でもオレの気持ちを表すにはこれしか……!」

「だから高木さん!心を読むのはやめてってば!」

「私はずけずけと人の中に入る俗物だからね」

「なに?それ」

「なんだろうね?じゃあ、西片の答えも出たみたいだし、教えてよ。西片が、そういう人じゃないってこと」

「そう言われるとなんだか……。まだ、あんまり言葉としてまとまってないから支離滅裂かもしれないけど、それでもいい?」

「うん。最後までちゃんと聞くから」

「ありがとう。その……オレさ、責任を取って付き合う、っていうのはなんだか違うと思うんだよ。それって、順番が逆だと思うんだよ。まぁ、実際、オレたちは逆なんだけど。だけど、オレたちは逆なんだけど、先にお互いに好きって気持ちがあった。だから、そこは順番どおりなんだよ。……言ってること、わかる?」

「うん、大丈夫だよ」

「だから、オレたちは、順番が逆になったけど、本当は順番どおりで。だから、付き合うって形になる前から、オレは高木さんのことが好きで、きっと高木さんもオレのこと好きでいてくれたんだと思う。だから、これはゴールじゃなくて、スタート地点だって思うんだ。だから、その……これからも、高木さんと一緒にいたいと思ってる」

「うん」

「だから……」

「うん」

「だから、その……。オレの、お嫁さんになってください……」

「……え?」

「だから、オレの、お嫁さんになってください……」

「う……うん……。ありがとう……」

「これが、今のオレの気持ちなんだけど……」

「…………」

「あの……高木さん?」

「あ……ごめん……。えっと……本気で言ってる?」

「もちろん本気だけど……」

「だよね……。なに聞いてるんだろうね、私」

「そんなに痛いの?」

「あ、それはちょっと違うけど、まぁ大丈夫だよ。でも、そういうことじゃなくて……。その、もし私と結婚したとして……そしたら、私、毎日からかうよ?」

「今でも毎日からかわれてるけど」

「朝も夜もないんだよ?」

「今でも朝も夜もないけど」

「そっか……本気なんだ……」

「だから、さっきから……」

「えいっ!」

「ちょっ!突然なんなの!」

「抱きつきたかったんだからしょうがないでしょ」

「抱きつくっていうか、押し倒されてるんだけど……」

「あはははっ。あったかくて気持ちいー。もう少しだけ、このままでいさせてくれる?」

「まぁ……いつまででもいいけど……」

「日が暮れるまででも?」

「ご両親が帰ってくる前にはおいとまするよ!」

「そっか。残念。紹介したかったのに。婚約者です、って」

「あの……悪いけど、しばらくは彼氏彼女にしませんか?」

「えー。西片のうそつき。まぁいいか。いろいろとややこしくなりそうだし」

「だから今度、彼氏としてちゃんと紹介してよ」

「西片のご両親にも紹介してよ」

「もちろん」

「なんだろう……。なんだか、さっきから西片がちょっとかっこいい……」

「普段はオレはかっこ悪いみたいな……」

「…………」

「なんか言ってよ!」

「あはははっ。ごめんごめん」

「高木さんはいつもどおりだね……」

「そんなことないよ。さっきも言ったでしょ?私、今晩もこの部屋で、今日のこと、西片のこと、考えて寝るんだ……って、少しどきどきしてるもん」

「なっ!?」

「あはは。でも、半分は冗談だから」

「半分冗談って……もう半分はなんなの!?なんだかすごく怖いんだけど!」

「怖がるようなことじゃないよ。ほんとは、今までも、寝るときはいつも西片のこと考えて、どきどきしながら寝てるから」

「なっ……!半分でも全部でも、なんか恥ずかしいからもうやめて!」

「西片のくせに生意気にもかっこいいからだよ」

「なにその理不尽な理由!?」

「かっこよかったよ?」

「ありがとうございます……。あ、そうだ。それはそれとして、どうしても聞きたいことあってさ」

「ん?」

「一昨日の、オレの部屋でのことなんだけど……。なんで、突然……その……キス、しようと思ったの?」

「あれはほら、『100%片想い』読んでて、イケ男とキュン子がしてたから、キスってどんなものなのかな、って」

「本当にそれだけ?」

「なんでそう思うの?」

「なんとなく、だけど……。いつもの高木さんと様子が違うなって思ったから……」

「へぇー。西片、結構私のこと見てくれてるんだね。意外と鋭いし」

「えっ!なにそれ!?オレほめられてんの!?けなされてんの!?」

「ほら、私たち、高校2年生でしょ?」

「スルーされたけど……うん、そうだね」

「ってことは、今16歳でしょ?」

「うん」

「だから、進路のこと真面目に考えてみようって思ったの」

「うんうん」

「つまり、そういうこと」

「ふーん。……ん?」

「ん?」

「結局……どういうこと?」

「あははっ。これ以上詳しくは言わないけどね。そうだね……もしも、西片が私に反撃できたら、その時に教えてあげるよ」

「それって、なんだか、一生教えてもらえない気がする……」

「やる前からそんなこと思ってたら、本当に私に反撃できないよ?もっと前向きになろうよ」

「からかおうとしてる相手に励まされるって……なんだか屈辱だよ……」

「あははははっ!そうかも知れないね」

「だから誰のせいだと……!」

「私なの?」

「高木さんだよ!」

「あはははっ!」

「あの……あのさ、高木さん……」

「どしたの?西片」

「その……オレ、その……高木さんのこと、好きだよ……」

「…………」

「な……なに?結構がんばって言ったんだけど……・」

「うん、西片から言ってくれるなんて意外だったから、びっくりして、うれしくて、言葉が出なかったんだよ」

「オレって、そんなヘタレキャラなの?」

「自覚がなかったことにびっくりだよ」

「そんな……いくらなんでもひどい……」

「ねぇ、西片」

「今度はなんだよぅ……」

「そのまま……」

 

 こうして、オレと高木さんの関係は、中学1年生のときから続いていたふわふわとした形のないものから、しっかりと熱を持った形あるものになった。

 それは、少し冷たい風が遅咲きの桜の花びらを散らす、高木さんと出会ってから5回目の春のことだった。




最後までお付き合いくださりありがとうございました。そして、お疲れ様でした。

それにしても、2人の会話は面白いですね。いつまででも書いていられるので、止め時がとても難しかったです。
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