新しい道に進みたい雪ノ下雪乃。

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雪乃のお話。

原作未読ですので、文体、口調が曖昧です。

暖かい目でお読みください。


雪ノ下雪乃は進みたい。

時は元旦、1月1日の午前11時。八幡はソファーでゴロゴロしながら正月番組を見ていた。

 比企谷家の猫───カマクラも寒さには逆らえず、八幡の胸元で丸まっている。

 

 

「正月。それは社畜が年末の忙しい時期を終え、年を越し、やっとの思いで手に入れる休みだ。多くの人がこたつの中に入り、TVを見ながら普段より豪華なご飯を食べる。まさに正月は、普段奉仕部で働いている社畜の俺の為にあると言っても過言ではない。そういうわけで俺は絶賛正月満喫中である。誰にも俺の邪魔はさせん!」

 

 

 珍しくテンションが上がっている八幡に対して、小町は昼ご飯の準備をしながらこう言った。

 

 

「何ブツブツ言ってるのお兄ちゃん、ちょっとキモいよ。そんなことより、餅と醤油が足りなくなりそうだから、ちょっと今のうちに買ってきてくれない?」

「ぐはっ!……こ、小町、俺は今正月を満喫するという仕事が忙しくてだな……大変なんだ。だから少し待ってくれ。具体的には、やる気が出るまで待っt」

「は?」

「はい。やる気出ました。行ってきます。今すぐ買ってきます。」

 

 

 八幡は上着を1枚羽織り、玄関へ向かう。

 カマクラは相変わらず寝たままだ。猫は年中休みでいいなぁ、と八幡は思ったのであった。

 

 

 小町が玄関へ見送りに来る。

 

 

「ご近所さんとか知り合いにあったらちゃんと挨拶するんだよー!」

「何言ってるんだ小町、俺が挨拶とかしたら明らかに不審者だと思われて、すぐ通報されるに決まってるだろ。周りの人とは関わらないに越したことはない。」

「またそんなこと捻くれたこと言って……その腐った目を何とかすればイケメンお兄ちゃんなんだけどなぁ……あっ、今の小町的にポイント高い!」

「最後のが無ければ八幡的にもポイント高かったんだけどなぁ……ま、いってきます」

「いってらっしゃーい!」

 

 

 八幡は上着のファスナーを1番上まで閉め、ポケットに手を入れながら、外に出る。

 

 

「太陽も正月休みかよ……やっぱさみぃなー、フード被りたいけど、不審者に見られて通報されそうだし、やめとくか。」

 

 

 そう言って八幡は曇り空の中、ゆっくり歩いて店に向かった。

 

 

__________________

 

 

 八幡は店に着くと、入る前に手を合わせながら一言こう言った。

 

 

「知り合いに会いませんように」

 

 

 横を通り過ぎて怪訝な顔をしていた主婦っぽい人と目が合った。八幡は気まずくなりながら再度ポケットに手を入れ、店の中に入る。

 醤油ボトルと餅のパック、暖かいいつもの黄色の缶を手に取りレジへ行く。

 買い物を終え、外に出ると八幡は店に入ってこようとする1人の美しい女性と目が合った。

 八幡と目が合った彼女は目を見開く。

 

 

「驚いたわ、この寒空の中でも貴方の目を見ると一瞬で寒さを忘れるわね。」

「いやそこは目が合って更に寒気が来る所じゃねえのかよ。てか、相変わらず出会い頭にひでぇこと言ってくるな」

「何を言っているのかしら、危機感を覚えると体の血流が活発になるのは人間の生存本能の常識なのだけれど」

「え、俺の目は人間の生存本能を呼び覚ますほど危険なの?魔眼なの?封印されし魔眼なの?」

「また訳の分からないことを……ところで、あけましておめでとう。比企谷君」

「お、おう、あけましておめでとう。雪ノ下」

「ここでは他人の邪魔になるし、話は外でどうかしら」

「お、おう、そうだな────」

 

 

 八幡が店の外のベンチに座ると雪乃も後から着いてきて15cm程隙間を開けて横に座った。すると八幡が口を開く。

 

 

「てかなんで雪ノ下は元旦からこんなところに来たんだ?」

「本当は実家へ帰って近しい人に挨拶周りする予定だったのだけれど、姉さんが全部私の仕事も請け負ってくれるみたいなの。だから暇も出来たことだし、マンションでお雑煮でも作ろうかと思って買い物に来たところよ」

 

 

 どうやら雪ノ下姉妹の中は悪くは無いようだ。

 

 

「へぇー、そうなのか。俺にはどうもその挨拶周りとかよく分からんけど、休み、良かったな」

「ええ、有難いことにね。姉さんも少しは丸くなったのよ」

「あの魔王みたいな人がなぁ……あっ、早くマッ缶飲まないと覚めちまう」

 

 

 八幡は袋から黄色の缶を取り出し、景気のいい音をたててプルタブを開けた。マッ缶を1口飲む。

 

 

「あぁ〜、冷めた体にマッ缶が染み渡るぜ」

「貴方は相変わらずその甘ったるい飲み物が好きなのね。体に悪そうだわ」

「うるせえ、人生は苦いからコーヒーぐらいは甘い方が良いんだよ」

「ふふ、そうね……あなたにはそれぐらいの甘さが丁度良いかもしれないわね」

 

 

 雪乃は珍しく優しい眼差しを八幡に向ける。

 八幡が怪訝に感じていると、ふと、どこからかやって来た猫が2人に近づいてきた。猫が小さい声で鳴く。

 

 

「にゃ〜」

 

 

 雪乃は猫と八幡を1度交互に見た。雪乃は手こそ伸ばさないが、体が前のめりになっており猫に興味津々である。八幡は手を伸ばし、ちっちっちと言って猫を誘ってみる。

 

 

「のっ、野良猫かしら」

「そうかもな。でも結構人に慣れてるな」

 

 

 猫は八幡を無視し雪乃に擦り寄ると、ぴょんと雪乃の膝元に飛び乗った。

 八幡は目を濁らせ、空を見上げながらこう言った。

 

 

「俺は猫にも無視される。あゝ無情。」

 

 

 雪乃は、八幡の独り言に耳も貸さず、八幡が近くに居ることも忘れ、頬を桃色に染めながら猫に話しかける。

 

 

「どうしたのかにゃ〜?お腹が空いたのかにゃ〜?」

 

「……」

 

「……」

 

「………………おい雪ノ下」

「なにかしら盗み聞き谷君。女性の話を盗み聞きするなんて、貴方はやはり私に対して汚らわしい劣情を抱いているようね。待ってなさい。すぐに迎えが来るわ。」

 

 

 そう言って雪乃は携帯を取り出すと[1][1]と入力する。

 

 

「待て待て雪ノ下、通報だけは辞めてください。お願いします。」

「しょ、しょうがないわね。不本意だけれど、この可愛い猫に免じて今回だけは許してあげましょう」

「いや、許すも何も、俺は何もしてねえんだけどな?」

「何か言ったかしら?」

「いえ、なんでもありません。許して頂きありがとうございます」

 

 

 八幡は焦りながらも、いつもの雪乃とのやり取りに少しこそばゆいものを感じ、肩の力を抜いた。

 

 

 雪乃が猫を撫でていると、猫は雪乃の膝の上ですぅすぅと寝息をたてて寝始めた。

 雪乃は満足そうな表情をした後、少し真面目な顔をして、こう話し始めた。

 

 

「比企谷君、少し相談があるのだけれど」

「え、いきなり何、雪ノ下が俺に相談とか、今から雪でも降るんじゃねえか?てか、由比ヶ浜でいいんじゃね。由比ヶ浜はあれでも真剣に人の話を聞くやつだろ、知らんけど」

「あら、私が貴方に相談してはいけないのかしら?あと、由比ヶ浜さんでは駄目よ。これは貴方に対する相談だもの」

「お、おう、そうか。まあ俺が雪ノ下に出来ることなんて何もねえけど一応話だけは聞いてやるよ」

「ふふ、相変わらず捻くれてるわね」

「うるせ、俺が捻くれてるんじゃない。周りが素直過ぎるから俺が捻くれて見えてるだけだ」

 

 

 八幡はマッ缶の最後の1口を飲み込むと、雪乃を見据える。

 雪乃は1度目を瞑って、思考を巡らせてから口を開ける。

 

 

「最近、姉さんや母さんが少しずつだけれど私に歩み寄ってくれようとしてるのが分かるの。その事はとても嬉しいし、仲良くなりたいと思っているわ。だから私も歩み寄ろうと思っているのだけれど、どうしても目の前にすると突っ張ってしまうの。だから、まず知人の前で少し素直になってみようかしら、と思っているの」

「おう」

 

 

 その時、曇り空から晴れ間が指した。太陽の光に照らされ、優しい笑顔をした雪ノ下雪乃がそこに居た。

 

 

「────だから、差し当っては比企谷君、私と友達になってくれないかしら?」

 

「………………は?」

 

「あら、人の話を盗み聞くのが得意な盗み聞き谷くんなのに聞こえなかったのかしら、もう一度言うわよ。私と友達になってくれないかしら?」

「いや、聞こえてはいたんだが、意味がよく理解出来なくて思考停止してたわ。てか俺、前雪ノ下に友達になってくれないかって言った時断られてるんだが」

「もちろん覚えてるわよ。でも、その時はその時、今は今よ。私は今素直になると言っているの」

「お、おう、そうだな。まあ、その、なんだ、友達になってくれるんだったら、ならない事も無いな」

「そう。それは良かったわ。じゃあ、これからよろしくお願いするわ」

「お、おう、よろしくな」

 

 

 2人は握手をする。すると八幡は目を逸らし、そっぽを向いてしまった。

 

 

「まあ、貴方と友達になったからと言っても、これといって意識することは無いのだけれどね」

「そう、かもしれないな」

 

 

 2人は手を離した。八幡は気恥ずかしくなり、立ち上がる。

 

 

「それじゃ、家で小町が昼ご飯作って待ってるから、俺そろそろ帰るわ」

「分かったわ」

「じゃあな、また今度」

「ええ」

 

 

 八幡は片手を軽くあげてから歩いて去っていった。

 

 

 雪乃は膝で寝ている猫を撫でながらこう呟いた。

 

 

 

「やっぱり、彼の前でも素直になれなかったわね……『友達』じゃなくて『彼女』と言えたら良かったのだけれど……」

 

 


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