とある暗部の暗闘日誌   作:暮易

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すみません。ギャグ&ちょいえろ?回として
まとまったので、別話として投稿します。


なにせ、次の話がすっごく大きな山なので
この回だけ空気が違い過ぎるので、切り取って投稿いたします。

3~4日後に、次の話を投稿できれば幸いです。
半分以上書けてますので、なんとかやるぞー、と。
発言だけでも前向きに・・・


extraEp04:心理定規(メジャーハート)

 

 

 

 

 

 

 

 場面は少し飛ぶ。

 

 場所はラ○ホテルの一室だ。

 

 ベッドの上。重なるシルエット。

 アヤカと名乗ったドレス女にひざまくらをされていた景朗には、当然意識があった。

 だが、その突飛な質問に押し黙った。

 押し黙るしかなかった。

 

 

「えっちなこと、する?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 操歯さんが逃げ帰った後、すぐさま景朗と源氏名アヤカことドレス女はホテルに入り、予約していた部屋へ。

 

 ホテルのフロントや廊下で勝手のわからない景朗の様をいくどもDT扱いしてご満悦(に決まっている)のドレス女は、部屋に入るなり名刺の裏のメモを見せつけ、こう厳命した。

 

[ 今から私と貴方はセラピストとお客よ。60分コースの間、しっかり役に徹すること ]

 

 うんうん、とうなづいた景朗は、そうだろうなぁ~という予感はあったものの、ラ○ホテル一室の"クイーンサイズベッドの上に垣根帝督が寝そべっていないこと"に心底ほっとした。

 

 "第二位"との面会をこんなケバケバしいカラーリングの場所で行うなど、想像するだけで嫌になる。

 ラブホのベッドで待っている相手に「お久しぶりです」なんて言える空気感じゃねえから。

 ゼッテエ違うから。

 

 やはりドレス女1人が相手だ。

 他にも彼女のバックアップなどが近くに隠れている可能性はもちろんあるので油断はできないが、そういった襲撃への心構えは無くしてはならない。

 

「シャワー浴びる?」

 

 ブンブン、と景朗は首を振った。

 

「え、緊張してるの? ぷっ」

 

「んなわけあるか! ゆっくりしてるは時間ねえんだよ、はやく要件を済ませよう」

 

「えー、こっちは仕事終わりだから浴びたいんだけど」

 

「いいからはやくしろよ」

 

 ちょっと本気メで睨みつけると、仕方なさそうにため息を吐かれた。

 

「はぁ。いるのよねー、嗅覚が鋭い能力者に。そういう性癖のヒト」

 

 ダメだった。ドレス女には通じない。普段から"第二位"という殺傷力の高い人間と行動を共にしているだけはある。

 しかしもはや景朗とて我慢の限界だった。効き目がなさそうだったが、それでも小声で怒鳴り付けずにはいられない。

 

「だいたい、何でなんで悠長にごっこ遊びするんだよ! 目的があんだろ目的がッ!」

 

「貴方そんなこともわからないの? これからこうやって私が貴方との連絡役になるんだから、貴方は極力"一般の利用客のフリ"して来なさいよ。そのくらいの頭は働かせられるって期待してたのだけれど、完璧に期待外れだったわ」

 

「……むぅぅぅ。わかったよ。やるよ、でも今日は時間が無いんだ。手早く済ませてくれ。本業とやらも」

 

 合理的すぎる理由にぐうの音も出ずYESと答えさせられた景朗だった。

 要するに密会していても、両者の関係を疑われないように念には念を入れてセラピストの仕事を隠れ蓑にしろ、ということなのだろう。

 それならば偽装工作として、これから実際にそのセラピーも受けねばならないわけだ。

 時間がどれほどかかるのか。いや、最初に60分コースと言われた以上、一時間は持って行かれるわけだ。

 

(くっそお、ダーシャ! もっと短い時間とか無かったのかよ。これが最短コースだったのか?)

 

 よくよく考えれば、幼女に微エロサービスの指名予約まで代行させておいて、あげくコースの時間指定まで忖度させようとは、この男、鬼畜に勝る所業を働いているのにその自覚がまるでないのではなかろうか。これは一種のバチだと考えてもらいたいものである。

 

「はいはい。仕方ないわねぇ。準備したらいくから、ベッドで待ってて」

 

 すたすたと最後まで話を聞かずに移動を始めていた景朗は、いかにもなクイーンサイズのベッドを前にして、億劫そうにそろそろとその上に腕を置いた。

 

 何しろ今の景朗の体重は200kgを超えている。サイズがサイズなので人間が複数乗っても大丈夫な設計ではあるはずだが、景朗の場合、小さい面積にかなりの重量が集まる。

 うっかり穴でも空けたら面倒なので(この場合ドレス女に小言を言われることが主な要因であるのが少々悲しいが)おずおずと力加減を確かめつつベッドの上に乗ろうとした。が。

 

「ウフフッ、ねえそんなに緊張しないで? 可愛いトコあるじゃない」

 

 真後ろでドレス女が笑っている。

 

「!? ちッがッ! ぁぁもう、クソ~……」

 

 景朗はまたしても敗北感を味わった。言い訳が機能しない。

 そわそわとベッドの上にゆっくり乗っていく童貞疑惑の男子高校生。

 場所が場所、ラブホである。

 客観的にみて、一体全体、ソイツのどこが緊張してないように見えると言うのだ。

 

 非常に悔しいが、緊張しまくりのDT小僧にしか見えない構図なのだった。

 

「壊さねえように気を付けてたんだよ……」

「はぁい。そういうことにしておきまぁす」

「……クッ……キッ……グゥ……」

 

 

 嗚呼、過去にしてやられた能力者を相手に思う存分からかい返すことができてなんて幸せなのかしら。

 そんなカンジで鼻唄でもでてきそうな塩梅のドレス女は、しかしポーチに手を突っ込むと、珍しくもやや照れ気味でコホン、と前置きをしてきたのである。

 

「……ま、ギクシャクに緊張してるみたいだから、ニオイは特別サービスにしておいてあげましょう」

 

「サービスにカウントしなくても嗅覚はオフにしてやらぁ。はよ始めてくれって」

 

「そういうわけにはいかないもの。ほら、コレを使うの」

 

 そういって、ポーチから取り出したのは一枚の見覚えのあるカード。

 インディアン・ポーカーだった。

 景朗も納得だった。これでは嗅覚をオフにすることなど不可能だ。

 というか嫌でもドレス女の匂いも意識せざるを得ない……。

 正直、彼女が照れるのも無理はない。景朗の嗅覚の優秀さを予想できているだろうから。

 

「ほら、はやく横になりなさい。膝枕してあげるから」

 

 頬をほんのり赤く染められると、こっちも申し訳ない事をさせている気になってしまう。

 

 たしかに。確かに、"こういうサービス"をするという名目でホテルに入っておいて、かたや一方はベッドで寝て、もう一方が何にもせずに近くで待機する、なんてのは不自然かもしれない。

 もしかしたら、遠距離感知系能力者の盗視などに引っかかる可能性もある以上、不自然さは少しでも隠すのが鉄則である。

 

「俺、重いから無理しなくてどうぞ」

 

「緊張されるとこっちが緊張するんだけど」

 

「してませんから」

 

「なんで敬語なの?」

 

 景朗は黙ってドレス女の太腿に頭をのっけてやった。

 

 

 

 

 結論から言おう。一度、ダーリヤと一緒にインディアン・ポーカーの使い方を実践しておいて、本当に、本当に本当に良かった。心の底から景朗は思った。

 なぜなら、アレがなければ、今頃この少女の太腿の上で、なかなかインディアンポーカーを読み取ることができずに四苦八苦して、どうせ苦情が飛んでいただろう。

 

 『60分コースなのよ? 私の膝を堪能する時間はいくらでもあるのに、そこまで必死に演技しなくても(勝者の嘲笑)』

 

 

「ふぅ」

 

 真上からのため息。

 あっさりと眠りについた景朗に対し、ドレス女はそれはそれで暇になって退屈そうである。

 

 

 夢の中。

 景朗がやってきたのは、どこかの高層ビルの上層階。

 ガラス張りの壁一面から、周りの景色が見える。

 いかにもどこかの企業がロビーに使っていたところをそのまま再利用しました、なんて内装のフロアだった。

 出迎えたのは、頭に土星の輪っかみたいなものをくっ付けた地味顔の青年だった。

 

「単刀直入に言います。我々と面会の意思があるのなら、明日か明後日に時間を作ってください。あなたが想定している以上に、この街には盗聴・盗視のリスクがある。これから我々が確保しているシェルターの一部をお伝えします。詳しい話はそこで。

 分り易い名前や地名を口に出すことは避けます。かわりに、これから実際にその場所の近くを通り過ぎますので、あとは自力で探し当ててください。あなたなら苦も無く見つけられるでしょう。

 これは私の夢ですので、リラックスしてついて来てください。そのかわり、しっかり道を覚えてくださいね」

 

 そういって、ジミメン君は歩きだし、ビルの外へ。景朗は夢の中の街を彼とともに歩き出す。

 これなインディアン・ポーカーの見せる夢。このジミメン君が話しかけてこない限り会話はないし、話しかけても何も返事は帰ってこない。

 はっきりいって、まだまだ時間はかかりそうだった。

 

 

 

 この状況では、景朗だって退屈である。

 景朗は能力を器用に使った。半覚醒・半睡眠状態のまま、薄目を開ける。

 片目で街の景色を、もう片目で真上の少女をそれぞれ監視できる。

 

 

 

 

 

 その瞬間に映ったのは、景朗の上腕や腹部の筋肉の感触を物珍しそうに物色しているドレス女の油断した表情だった。

 流石に寝ている相手に最大値の警戒心を向け続けるほど疲れ知らずではなかったようだ。

 素に近い反応で楽しそうにイジられている分には、まあ文句を言いだす気にもならない。

 眠ったふりをしておいてやろう。

 親切心でそう思った直後に、彼女の手が下半身に伸び始めたので、さっそくその気が霧散した。

 

「おひ……やめひょ……」

 

「あら! 起きてたの? ちょっともう、どれだけ演技する気よ……」

 

 ドン引きの声。だが、断じて違う。断じて違うと主張したい。

 フトモモの上に長時間アタマを乗せていたいがために寝たふりなんかしていない。

 これだけは真実だ。だと言うのに、ドレス女を納得させられる言い訳が、またも存在しない。

 なんという敗北感なのだ……。

 

「ちやう……ぅぅ」

 

「はぁ、やれやれ。どれだけ私の膝が気に入ったのよ。時間が無いって焦らせといて。お楽しみは後にしてちょうだいな。60分もあるんだから」

 

「ちやう……ねへるんだよ……」

 

「うふふ。苦しすぎる言い訳ね(はぁと)」

 

「のうりょくで……ねむひながりゃ…はなせる……ひゃんと…ジミメンくん……みてりゅ……」

 

「へぇ。便利ねー貴方のチカラ」

 

 ジミメン発言であっさりと景朗の言いたい人物に理解が及ぶとは、仲間からもそのような評価を受けているのか。ジミメン君とは仲良くしてあげよう。

 

 

「感触はあるのかしら? ほら、ほら、これとかどう?」

「ひゃめりょ…ぉ…」

「はいはい。やめます」

 

 寝ぼけたような声が口から出る。流石に体を動かすのは億劫だ。

 なんとか口から声を出す景朗の様子から、躰を動かせるまでには至っていないことを察したのか、ドレス女はほっぺたを遠慮なくつついている。

 

 しばらくイジられたが、景朗が我慢して無反応になれば飽きるのは少女が先である。

 

 

 ケータイをイジり始めたが、それも数分で終わってしまい。

 

 顔面全体で退屈さをアピールしていたドレス女はその時、景朗の薄目に眼を合わせ、突拍子もないことを口走った。

 

 

「えっちなこと、する?」

 

「……ちっ」

 

 景朗は舌打ちだけを返した。さもありなむ。

 

(これ、俺がどう答えてもまたDTやらどうだのと難癖つけられるのが確定の、敗北確定クイズじゃねえか)

 

 YESと言っても盛大にからかわれ。NOといってもまた盛大にからかわれる。

 この女はどうしてこう、YESorNOのどちらを答えられても勝利できる質問しかしてこないのだろうか。

 

 黙る。無視する。はぐらかす。

 そういう方向性で対応しないとホテルに入室する前の、常時からかわれ状態にまた逆戻りだ。

 

「舌打ちって便利よねぇ。こっちの"カレ"もそんなカエシばっかりで、つまらないわー……えいっ」

 

 ドレス女は思いついたように前かがみに。

 インディアンポーカーのカード越しに、むにゅっとした感触が景朗の顔面へ襲って来る。

 

(これ?!)

 

 ふよふよの柔らかい重量。

 健康的な汗の匂いが、ぐんと強くなる。

 

「ねえねえ。もういい加減(カードに記録された夢)終わってるんじゃないの? こんなにお楽しみされると追加料金をもらいたくなってくるんだけど?」

 

「…やめひょ……やめりょ…っへ……」

 

(まだ無言のまま街中を歩いてるよ! このへんな輪っかつけてるジミメン君はぁ!!)

 

 エモノを追い詰めたようなカオである。

 

「本当かしらぁ? ずいぶんお喋りじゃない?」

 

「おわっはら……かってにどくひょ……」

 

「はいはい。そういうことにしておいてあげましょう」

 

 すくっ、と顔に乗っていた重みが消えた。

 これでいい。これでいいのだ。景朗は必死にダーリヤの事を思い浮かべて、そう思い込むことにした。

 

 

 

 

 

 カードの夢が終わった。ジミメン君は「わからなければ何度でも観てください」と言ってくれたが、1回で十分だった。予想はついた。

 恐らくは、ルート上にあった理事のシェルターである。それが一番の有力候補だ。"スクール"の政治力なら間借りすることもできそうだ。

 

 ドレス少女の膝枕からむくりと起き上った景朗は、さっそくとばかりに部屋から退出しようと立ち上がった。

 いつの間にかはだけていたシャツのボタンもしっかり留める。

 苦々しい。今日あったことは忘れよう。

 まあ、このドレス女とは今後もずっと定期的に会う事になるのだろうけれども。

 

 

「疲れたわぁ。貴方、自分で言うだけあって重かったし?」

 

「まあ、そこは礼を言っておくよ。ありがとう、耐えてくれて」

 

「そうそう、素直なのはいいことよ。あぁ、そうだ。ねえ、次も私ひとりをご指名? それとも複数ご指名のご予定かしら?」

 

 意味ありげの流し目。景朗も彼女の質問の意図に気づいた。

 夢の中で、ジミメン君は明日か明後日と言っていた。

 そのチャンスに間に合わなければ、恐らく彼らは今いる拠点から移動するのだろう。

 彼女ひとりの指名だと答えれば、また今日あったことのやり直し。

 複数なら、次に会うのはスクールの面々と、ということだろう。

 

「複数の指名で」

 

「あらら。随分と"せいよく"が強いのね。さっきも必死で女の子をナンパしてたしね?」

 

 まとめていた髪をほどく仕草が女性的で、何ともいたたまれない気持ちになってくる。

 

「ちっが! ちっげーよ! あれはちゃんとした思惑があったんですー! そっちこそ無意味に邪魔するなよな」

 

 まぁ思惑があったにはあったが、それよりも学校帰りという事もあって、青髪クンを演技していたときのノリが抜けきっていなかったことも理由にあるかもしれない。

 

 ムキになった景朗に、はは~ん、とわかったようなカオでドレス女はベッドの上にしな垂れた。

 

「念のため、えっちなこともしておく? 偽装工作と・し・て(はぁと)」

 

 いいけど? みたいな気軽さである。

 虎の目つきみたいな獰猛さもセットで付いて来ているが。

 

「いい加減うぜーよ」

 

 この景朗の興味全然ありません発言には、ついに彼女もムスッときたらしい。

 

「あー。はい減点。まったく、少しは演技に徹しなさいよ」

 

「……ぅ」

 

「貴方はこれからも"私の猛烈な追っかけ客"として何度もまた何度も、こうやって私と会っていくんだから。もっと入れ込んでくれないと不自然でしょ?」

 

「"入れ込みなさい"って、直球すぎないッスかね」

 

「毎回、貴方の方からガッついてくれないと。それが私に会う理由がなんだから、当然でしょ? そういうケンカ腰は金輪際やめてちょうだいな」

 

「……すごくヨカッタので、また指名します。すぐ会いにくるから、マタネ」

 

「はぁーい、ニオイフェチの変態さん。待ってるからネ♡」

 

「……くッ」

 

 はやくダーリヤに会いたい。

 

 

 

 

 

 






うーむ。


ここ数話の景朗がナンパすぎて、読者の皆さま、引いていらっしゃる・・・?


どんな感触なのか、わからないのが不安だぁ……

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