とある暗部の暗闘日誌   作:暮易

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episode07:粉塵操作(パウダーダスト)

 

「いいか、"ウルフマン(狼男)"。お前の仕事は1個だけだ。囮になって、"標的(ダスト)"を俺の狙撃地点にまで誘導しろ。そんだけだ。気張れよ。」

 

そう言って、俺に再度確認を促した男の名は、中百舌鳥遊人(なかもずゆうじん)、コールサイン、"スカイウォーカー"。学園都市製のゴツい迷彩スーツを纏い、これまたデカいライフルを手馴れた様子で弄っている。

 

「いいか、"ダスト(標的)"を仕留めるのはコイツだ。MSR-001磁力狙撃銃、初速290m/sとちと頼りないが、ステルス性は抜群だ。俺たちに与えられた役割は、"ダスト"を狙撃して息の根を止めること。その後、ヤツが盗み出した"ブツ"の回収をしなきゃならねえがな。余計なことやらかして、俺たちの足を引っ張るんじゃねえぞ。」

 

これで何回目だろうか。"ウルフマン"こと、俺、雨月景朗は、同僚の際限のない追求に、辟易してため息をついた。

 

「はいはい。わかってますよ、"ユニット3"。」

 

「その意気だぜ、"ウルフマン"。その名の通りに、お前は今回の任務中は、努めて俺の猟犬であれ。それだけでオーケーだ。あと、俺のことは"スカイウォーカー"って呼べと言ってるだろ。いい名前だろ?」

 

「はぁ。了解、"スカイウォーカー"。」

 

「良し。……『こちら"スカイウォーカー"。今からポイントAlfaに向かう。』」

 

強化された聴覚で、彼のヘッドセットから漏れ出る音を拾い、会話を盗み聞きする。

 

『了解、ユニット3。ところで、ユニット4の様子はどうだ?初陣らしいからな。ヘマをやらかされるぐらいなら、お前の判断で処理していい。』

 

「どうやらその必要はなさそうだぜ。全く緊張してるようには見えねえ。そのへんはきっと期待できるさ。」

 

 

上司、と呼ぶべきだろうか。中百舌鳥の会話の相手は、俺の所属する雇われ部隊のリーダーである。部隊名は"ユニット"というらしい。非道くシンプルで、これで問題は生じないのか?と疑問に思ったものだ。

中百舌鳥は、俺に割り当てられた、二人組(ツーマンセル)の片割れだ。認めたくはないが、この暗部世界の住人の中では、付き合いやすい性格をしているほうだろう。

 

本人には、色々とこだわりがある様子で、まだ相当に短い付き合いなのだが、俺にも色々と間の抜けた要求をしてくることがあった。ひとつは、先ほどの"スカイウォーカー"発言。昔の映画のキャラクターの名前らしいが、その"スカイウォーカー"というコールサインは、彼の能力、空中浮遊(レビテーション)能力の一種、"空中歩行(スカイウォーク)(レベル2相当)"と著しく被っていて、それでいいのかと思ってしまう。あ。いや、このことは俺も言えた義理じゃないか。

上司たちからも、作戦中は隊員は各自割り当てられたナンバーで呼び合うように言われているが、それも無視している有様だった。

 

 

今現在、俺たち2人が待機している場所は、第十一学区北東に位置する操車場の近辺である。この周囲には、高い建築物はほとんど存在せず、あちこちに資材運搬用の巨大なクレーンが点在するのみであった。

 

ちょうど今、別動の"ユニット1"・"ユニット2"のペアが、標的である"ダスト(塵くず)"の追跡を行っている。俺たちの任務は、この開けた場所を通過する標的を狙撃し、生殺問わず、標的が持ち出した"とある薬品"を回収することである。

 

中百舌鳥は、極めて高性能な光学迷彩スーツ(わかりやすく言えば、透明になるスーツ)を装備している。専用の対光学迷彩機器をあらかじめ用意されていなければ、彼の姿が敵に察知される可能性は低い。

そして、彼はその能力、"空中走行(スカイウォーク)"を使用し、宙に浮かび上がり、高高度にて待ち伏せ(アンブッシュ)を行う。

辛うじて狙撃から逃れた標的が、咄嗟に周囲のスナイピングポイントに視線を凝らしても、彼の姿を見つけ出すことはない。

 

そこで、今回の任務での俺の役割は、上空にアンブッシュした中百舌鳥の存在を極力気取られないように、"ダスト"の注意を自身に集め続けること、となる訳だ。

 

非常事態に陥れば、俺自身の裁量で"ダスト"への対処を行って良いと言われたものの。他のメンバー達は、ド素人の俺を好き勝手動かせるつもりはないらしい。皆口を揃えて、「命令された以外のことはするな」とさ。

 

 

小銃の調整をようやく終えた中百舌鳥は、表情を引き締めると、俺に合図を送る。

 

「"ウルフマン"、俺はこれから位置につく。お前も予定の位置につけ。時間がないぞ。わざわざお前さん用に誂えたそのヘッドセットの電源、切るんじゃねぇぞ。」

 

「ユニット4、了解。」

 

これからは、各自別行動になる。俺は、所定の位置につく前に、物陰に隠れ、上半身に身につけているものをすべてとっぱらった。

 

そして、黒夜と戦ったあの時のように、両手両足を地につけ、楽な姿勢をとった。

一息で、能力を覚醒させた。すぐさま、俺の体に変化が生じる。

体躯が膨れ上がり、体毛が太く、長く伸び、爪が鋭く伸びる。口が裂け、顎が飛び出し、耳が大きく変形した。

 

"ウルフマン"の名に恥じぬ、正真正銘の"人狼(ライカン)"へと変貌した。

 

この姿になると何時も憂鬱になる。人狼の姿になるのは大した労力ではないのだが、その逆、人間の姿に戻るときは、毎回毎回耐え難い苦痛を味わう羽目になるからだ。

 

ふと、空を見上げた。夕暮れどき。赤い夕焼けが眩しい。"ダスト"は、暗部組織が表立って動きづらい昼間を狙ってことを起こしたらしい。この操車場に"ダスト"を引き込むのも、人払い等の手間を最小限にするためだった。あまり昼間にドンパチをするわけにはいかないらしい。それについては、俺も大賛成だけどね。

 

 

 

しばらくすると"ユニット1"、つまり、リーダーから連絡が入った。いよいよ"ダスト(標的)"がこのエリアへと近づいて来るらしい。

 

"ユニット1"の指示に従って、"ダスト"の進行ルートを制御すべく移動する。任務直前まで一生懸命に頭に叩き込んだ周囲の地図を思い浮かべながら、能力を全開にし、猛スピードで夕暮れの街を駆け抜けた。

 

"ダスト"は移動の足を、オートバイに乗り換えたらしい。そう"ユニット1"から連絡を受ける前に、既にそのことには気づいていた。強化された聴覚が、こちらに近づいてくる、けたたましいエンジンの鼓動を捕まえていたからな。

 

"ダスト"の姿を目視した。人狼化した今の俺なら、オートバイが街中で出せるくらいのスピードならば、追従していくのは容易なことだった。

 

「GROOOOOH!」

 

軽くひと吠えして、待ち伏せ地点への誘導を開始する。近くにあったコンクリート塀をぶっ壊して、瓦礫をひっつかみ、"ダスト"へ向かって投石した。

 

俺の姿に驚いた"ダスト"は、間一髪、飛来した瓦礫を回避すると、こちらの期待通りのルートへと逃走していった。一定の距離を保ったまま、オートバイで走る彼の真後ろに張り付いて、追跡する。

 

そして、なんとか計画通りに、操車場へと"ダスト"をおびき出すことに成功した。そう思った矢先のことだった。"ダスト"が搭乗しているオートバイが、操車場に入った途端、驚くことに、急激に粉塵が舞い上がりだした。

 

その日の朝方に、少量だったが降雨があった。それゆえ、操車場の地面は湿っていて、砂埃など発ちそうもなかったのだが。それこそ、"ダスト"の。標的名、"粉浜薫(こはまかおる)"の能力の真骨頂だったのだろう。

 

ついぞ数秒前に湧き上がった砂埃は、今では"ダスト"を中心に直径10m近い大きさに成長していた。もはや砂埃ではなく、立派な砂嵐の様相を示していた。

 

 

そろそろ、狙撃地点間近という所で、中百舌鳥から緊急の連絡が入った。

 

『クソッ!ネガティブ!繰り返す、ネガティブだ!撃てない。目標を視認できない!サーマルも試したがダメだった!奴め、バイクが巻き上げる高温の粉塵を利用して、周辺に温度の壁を作ってやがる!あんな芸当、初めて見たぞ!』

 

「ナラ、ドウスル!?アンタ、囮役ダケヤッテリャイイッテ言ッテタダロ!?俺ハコレカラドウスリャイイ!アイツヲ見失ワナイヨウニ、コノママ追跡スルガ、カマワナイナ!?」

 

既に、目標の掃討エリアを通り過ぎている。俺の返答に、一瞬、躊躇する間が開いたものの、すぐに中百舌鳥から、奴を逃すな、との返信が響いた。

 

たった1人で、所属していた暗部組織を裏切った、今回の標的。ネームタグ、"ダスト"。砂嵐と化した奴を追跡しながら、俺は任務前のブリーフィングを今一度思い出していた。

 

 

 

 

 

 

「今回の任務は、"カプセル"を裏切り、とある試薬を盗み出した犯人の抹消。そして、その盗まれた試薬の奪還だ。試薬については、我々にも詳細は知らされていない。上からは、"決して破壊せず、元の状態のまま回収を行え"との厳命だ。

標的名は"粉浜薫(こはまかおる)"。強能力(レベル3)相当の念動能力者(テレキネシスト)だ。能力名は"粉塵操作(パウダーダスト)"。能力名の通りに、砂や粉末状の物質を"操作(ハンドリング)"できるらしい。以降、標的は"ダスト(塵くず)"と呼称する。」

 

「ハハッ。"塵くず"ねえ。こりゃあ、チリトリを持ってきゃ任務(ミッション)は楽勝だな。」

 

資料片手に、任務の詳細を語ったリーダーに対して、パイプ椅子を傾け、だらりとした姿勢で虚空を見つめていた中百舌鳥が、合の手を返した。まったくもって緊張感のない男だ。この男が、俺の相棒(バディ)になるらしい。俺の脳裏に一抹の不安が過ぎった。

 

「茶化すな。ユニット3。」

 

リーダーの眉間に皺が寄った。発言しにくい空気だったが、俺は浮かんだ疑問を解消するために、彼に質問する。

 

「ユニット1、"カプセル"とはどういう組織なんだ?ユニット2から受け取った資料には、碌な記述がないんだが。」

 

ユニット2、リーダーと二人組(ツーマンセル)を組んでいる、寡黙な青年のことである。俺の言葉に、足をぶらぶらとさせていた中百舌鳥がニヤリと口を曲げた。

 

「なんだ、"ウルフマン"。オメェ、そんなことも知らなかったのかよ。勉強不足だぜ、坊や。そんなんじゃ、お前さんはこの業界から速攻でオサラバ、ってことになりそうだな。」

 

中百舌鳥の発言を無視して、リーダーの方を見やったが、珍しいことに、彼も中百舌鳥と同意見のようだった。

 

「ユニット4。ユニット3の言う通りだ。もうすこし、自身の置かれている状況に気を配るんだな。"カプセル"についてだが、こいつは、ドラッグの密売組織だ。俺たち"ユニット"と同じ企業傘下のな。簡単に言えば、俺たちの同僚だ。」

 

リーダーの返答に沿って、中百舌鳥も補足した。

 

「お前さんは知らねぇだろうが、"カプセル"の連中の後始末に、俺たちゃよく駆り出されるんだぜ。大抵は、今回の任務みたいに、"(ヤク)"を持ち逃げした売人の抹消(スイープ)だ。ま、今回の任務もいつもの汚れ仕事だな。」

 

そうか。なるほどな。身内の組織だったわけだ。だから、資料に大した説明が載って無かったのか。

 

二人の発言に遅れて、ユニット2が俺の端末に、その"カプセル"とやらの詳細な情報を送信してくれた。

 

"カプセル"は、もともとはしがない武装無能力者集団(スキルアウト)崩れが起こした違法ドラッグの密売グループだったらしい。結成当初は学生にせせこましく脱法ドラッグを売り捌き、小金を稼ぐだけの弱小組織だったが、日に日に販売エリアを拡大させていき、とうとう警備員(アンチスキル)に目をつけられ、潰されそうになった。

 

しかし、とある統括理事会肝入りの研究機関に、その販売エリアの広さと、警備員の目を掻い潜りドラッグを捌くノウハウを惜しまれ、一転して、学園都市暗部の機密組織へと変貌したらしい。

 

現在では、薄暗い研究を行う組織から送られた、通常ならば決して日の目を浴びることのない、危険な薬品を通常のドラッグ類と一緒に直接学生にばら撒き、その効果や動向の調査を行っている、とな。

 

おいおい、クソッタレなベンチャーも有ったもんだな。これじゃ、立派な暗部組織じゃねえか。訳も分からず、小金を稼ぐために関わりを持ったスキルアウト崩れ(チンピラ)が、そうとは知らずにオイタをして寝首を掻かれる羽目になってる訳か。

 

 

気がつけば、残りの3人は俺を放り出し、任務の委細を話し込んでいた。横からその計画(プラン)を見る限り、彼らは"ダスト"の持つ能力に対して、大した警戒をしていないようだった。

それが少し気になった。俺はその理由を尋ねた。

 

「ユニット1、コイツの能力、強能力(レベル3)とあるが、警戒しなくていいのか?」

 

俺の問いに、中百舌鳥が煩わしそうに切り返す。

 

「慎重だな、"ウルフマン"。"カプセル"からの情報によりゃあ、コイツのシケた能力じゃ、せいぜい"粉物"の売人をやるのが精一杯だったそうだぜ。確かに、定石(セオリー)から行きゃあ、"強能力"からは多少の警戒が必要だけどよ。だが、コイツの能力で、オレのライフルをどうにか出来るとは思えねぇぜ。」

 

彼の発言に対し、今までずっと黙っていたユニット2が、俺の前で初めて口を開いた。

 

「…"カプセル"から上がってきた、今回の"標的"の情報が少なすぎる。私はそこが気になります。通常、取るに足らないスキルアウト崩れのプロファイルでも、もう少し情報量が多いですからね。」

 

ユニット2の発言を聞いた、リーダーと中百舌鳥は、多少気にかけた様子であったが、それに対し、リーダーは彼の推論を返した。

 

「"ダスト"が"カプセル"に所属していた期間はわずか半年だ。加えて、彼は主に薬の売人をやっていただけで、組織の幹部との接触もほとんど無かったとある。それが原因だろう。」

 

「オレもそうだと思うぜ。考えすぎだ。何時も通りの"人狩り(マンハント)"で決まりさ。」

 

 

 

 

 

 

 

目の前の砂嵐が、操車場を抜け、オフィス街に入った。まずい状況だな。ぼちぼち、一目につき始める。可能な限り、衆目に俺たちの行動を晒さないようにしなければならない。

 

他の"ユニット"のメンバーからは、"ダスト"に食い付き、消して見失うなと言われていたが、リーダーからは、奴が盗み出した"ブツ"を無事なまま、容易に取り返せそうならば、こちらから仕掛けても良いと許可が下りている。

 

これ以上市街地に入られては流石に不味い。都合の良いことに、相手は砂嵐の中だ。街中で仕掛けても、衆目の視線からは、その砂嵐が守ってくれるだろう。

 

 

覚悟を決めて、仕掛けようとしたその時。視界の端に、奴が載っていたオートバイが乗り捨てられているのが映った。

 

俺は走るのをやめて、その場に止まった。一体どういうことだ?曲がり角を曲がった直後だ。

今まで追跡していた砂嵐は、そのままの勢いで俺の前から遠ざかっていく。あのスピードは、通常の人間には出せない速度だ。しかし、標的のオートバイはそこに打ち捨てられている。

 

周囲を見渡した。近くに、蓋の空いたマンホールがあった。目の前には、遠ざかる砂嵐。

 

一体どっちに逃げた?地下か、砂嵐の中か。

 

俺は、念入りに砂嵐の残り香を嗅いだ。かすかに小麦粉の匂いがする。なぜ小麦粉の匂いが…。刹那、すぐに答えにたどり着く。操車場の貨物に、小麦粉が搬入されていたんだろう。

 

マンホールからも、小麦粉の残り香が漂っていた。決まりだ。"ダスト"は地下へと逃げたんだ。暗い穴の底では、"ダスト"が待ち伏せしているかもしれない。俺は覚悟を決めて、飛び込んだ。

 

 

 

 

地下道へと降りると、地表ではわからなかった、より高密度の小麦の匂いに包まれた。辺り一帯小麦で充満している。"ダスト"の野郎、不必要になった砂埃をここに捨てて行ったんだろうか?

 

今度は、地に耳を付して、奴の足音を探った。距離が少し離れているが、この先に居る。すぐさま、その背中を追いかけようとした、その時。

 

 

 

突然の発光。轟音。衝撃。大きな爆発が起こった。俺を中心にして。

 

 

 

気がつけば、俺は地に横たわっていた。肉の焦げる匂い。辛うじて意識は失われていなかった。だが、ダメージが大きくて、今すぐには動けそうになかった。

 

視界に、何者かがこちらへ歩み寄る姿を捉えた。

 

「ははは。まんまと引っかかってくれたね、ワンちゃん。」

 

"ダスト"こと、粉浜薫の登場だった。

 

「粉塵爆発って言うんだよ。知ってたかな?ワンちゃん。時間がなくてね。すまないが、君との追いかけっこもここまでだ。さようなら。」

 

その声と同時に、パス、パス、パスと3つの破裂音。銃声だった。サプレッサーをつけていたのだろう。

 

俺の体に、弾丸が命中する。辛い追い打ちだったが、幸いにも、致命傷ではなかった。俺にとっては。

 

粉浜が再び逃亡する。俺はせめてもの思いで、必死に奴の匂いを記憶した。

 

 

 

 

 

 

体が再び自由に動くようになったのは、それからしばらく経ってからだった。粉塵爆発の衝撃で、ヘッドセットは壊れてしまっていた。携帯もオシャカになっている。

 

俺は、"ユニット"メンバーと連絡を取り合う術を失っていた。すぐに地上に出る。日が落ちかけていた。外はだいぶ暗くなっているが、この分だと、動けなかったのは10分くらいだろうか。

 

周囲の音がよく聞こえない。鼓膜が完全に破れてしまっていた。痛みを感じないから、こう言うケガに気づきにくくなってしまっている。今から耳の治癒を始めても、聞こえるようになるまでちょっと時間がかかるな。

 

奴の匂いをたどって、俺は再び走り出した。

 

 

 

街を縦横無尽に駆け抜けて、俺は再び粉浜を見つけ出した。奴を観察して、"ブツ"の在り処を探す。あのトラッシュケースがそうだろうか?

 

 

気づかれないうちに飛び掛り、"ブツ"を奪い返そうかと思ったものの、その前に粉浜に感づかれてしまった。

 

「まいったな!しつこいね、ワンちゃん!……そうか!オレの匂いを辿って来たんだな。」

 

再び、粉浜のオートバイの周囲に粉塵が巻き上がりだした。奴が砂嵐を生み出す前にカタをつけようと、俺は飛びかかる。

 

その時、粉浜は懐からビンを取り出し、地面に叩きつけた。宙に浮かんでいた俺は、回避できず、そのビンから溢れ出た粉末をまともに浴びる。

 

そして、粉末が目に入ると同時に、視力を失った。

 

着地に失敗し、道路を転がる。微かな光は感じられるものの、目が全く見えなくなっていた。何かの薬品を使われたらしい。クソッ、さっきから、粉浜相手に間抜けを晒してばかりだ!

 

 

 

音もよく聞こえず、目も見えない。嗅覚のみで、奴を探す。

 

見つけた。いつの間にか。路地裏に移動している。全力で走り寄り、体当たりを仕掛け、組み付こうとした。

 

だが、失敗する。何か得体の知れない、冷たい金属の壁のようなものに阻まれる。

 

粉浜の奴、何時の間にオートバイを降りたんだ?そして、この金属は何なんだ?不審に思うものの、続けてタックルを繰り出し、再び組み付こうと仕掛けた。

 

相手に肉薄する直前に、肩に刃が突き刺さる感触を受けた。咄嗟に後退する。感触を受けた部分を触ると、自身の流血を感じ取った。ナイフを受けたのか?いや、そのような感触ではなかった。もっと大きな、刀で切られた、とでも言われた方がよりふさわしい気がする。

 

埒があかない。気が進まぬものの、俺は痛みをある程度残して闘うことにした。完全に消し去ると、還って後手に回る。

 

今度は、相手から仕掛けられた。足首にするすると硬いロープのようなものを引っ掛けられ、転がされそうになる。

 

力比べなら自信がある。俺は逆に足を振り回し、相手の体制を崩そうとしたが、するりとロープは解けた。その後、今度は腹部に槍状のものが刺し込まれた。

 

その槍を握り締め、相手を引き寄せようとした。が、なんとその槍は、するするとバターのように溶けて、俺の手をこぼれ落ちた。

 

本当に粉浜が相手だろうか?いい加減不安になってきた。奴は拳銃を持っていたはずだ。なぜ撃たない?それ以前に、一体何で俺は攻撃されている?

 

目の前からは、依然粉浜の匂いが漂うが。俺は少しだけ距離を取り、全力で聴覚を再生させる。残念ながら視覚のほうは、目にこびり付いた薬剤を洗浄しなければ、どうにも使えそうになかった。

 

 

「~~~~かッ?~~~~ッ!」

 

だんだんと、相手の声が聞こえるようになってきた。そして愕然とする。先ほど辛うじて耳にした粉浜の声ではない。それどころか、男ですらなかった。女の子だ。どう聞いても、年若い少女の声色だった。

 

 

「~~~~~……おい!急に止まってどうした?」

 

 

誰だこいつは!?

 

いや、俺から攻撃を仕掛けておいてこんな言い方は幅かられるけれども。

 

チクショウッ。ハメられた。なんでコイツから粉浜の匂いがするんだ。

 

マズいマズいマズい!粉浜は今何処だ!?見失ってしまった!急いで追いかけなくては!

そう考えたが、一度冷静になる。ちょっと待て。粉浜の匂いがするこの娘は一体何だ?奴の協力者だと考えた方が妥当だ。

 

目の前の娘は、キャンキャンと子犬のように喚いている。

 

「おい、お前!お前が"ウルフマン"じゃないのか!?とりあえず、オレに攻撃すんのやめろよ!」

 

なんだ?この娘。俺のことをなぜ知ってる?……いや、娘じゃなくて男か?"オレ"だと発言していたからな。声色から勝手に女だと判断したが。

 

「オイ、坊主、ナゼオレノ事ヲシッテル?」

 

「なッ、オッ…~~~!ワタシは女だ!」

 

なんだよ、オレっ娘か。紛らわしいな。

 

「ソンナコトハドウデモイイ!ナゼ俺ノ名ヲ知ッテイル!」

 

「えッ。そ、それは…えーっと……ようやく喋ったかと思ったらッ!」

 

俺の糾問に、少女はあたふたと答えを濁した。互いに相手を警戒し、空間に緊張が走る。しばらくして、少女は吹っ切れたのか、俺に"符丁"の確認を要求してきた。

 

「…んぅ~と……!そうだ!"符丁"!"符丁"の確認だ!えーっと……"びくたあ おすかあ ジュリエット ユニフォーム ゼロ はち いち ゼロ しえら パパ ホテル えこー きゅう きゅう に ゼロ"!」

 

少女が口にした合言葉は、確かに、任務中に協力関係にある人員との間で、確認を取るためのものだった。この少女、友軍かもしれない。

 

「……ナルホド。"R O G D Q D 8 2 5 8 U N I T 5 6 8 2"。コレデドウダ?」

 

「うっ。ん~と。待って、HQと連絡を取るから。……おっけー。確認できた。」

 

 

目の前の少女も、俺が友軍だとわかって落ち着いたようだ。そのあとすぐ、打って変わって、どうして有無を言わさず出会い頭に攻撃したのか、と問い詰めてきた。

 

彼女の話によると、ビルの合間をパルクールのように駆け抜け、彼女らにとっても同じく標的であった粉浜を追跡していたところに、いきなり俺が襲いかかってきたそうだ。

 

どうやら俺がヘッドセットを壊してしまい、本部と通信が取れなくなった後に、この少女の部隊との連携に関する連絡があったらしい。

 

「スマナイ。今、目ヲ潰サレテイテ、何モ見エナインダ。耳モサッキマデ聞コエナカッタ。ダカラ、匂イヲ頼リニ粉浜ヲ追イカケテイタ。ソノ時、イキナリアンタカラ粉浜ノ匂イガシタカラ、勘違イシテシマッタンダ。」

 

「ちょ、ちょっと。目を潰されたって……。大丈夫なの……?」

 

「ダイジョウブ。シバラクスレバ直ニ視力ハ回復スル。モウ既ニ、アンタノ輪郭ガ見エル位ニハ回復シテイルヨ。」

 

縁も縁もない少女に心配されて、調子が狂う気分だった。

 

「トコロデ、アンタノコトハ、ナント呼ベバイイ?」

 

「ああ。オレのことは"スフィア4"って呼んでくれ。もしくは"マーキュリー"。」

 

"マーキュリー"。"水銀"か?…………ん?もしかして、冷たい金属って……。

 

「オイ!マサカ、オ前、アノ俺ヲ何度モ刺シテタアレ、モシカシテ水銀ナンジャネエダロウナ!?」

 

俺の焦りを前にして、少女はきょとんとした顔で肯定の返事をした。

 

「そうだよ。あー。目が見えないのによくわかったね。アタシ…じゃなくて、オレ!オレの能力は"水流操作(ハイドロハンド)"で、水銀を操作できるんだ。」

 

コイツ…ッ!なんてもんを人にズブズブ刺してくれとんじゃ!水銀が体に入り込んでたらシャレにならねぇぞ!

 

「テメェッ!水銀ダッテゴラァッ!人様ニナンテモンブチ込ンデクレトンジャ!オイ!今スグ俺ノ体カラ吸イ出セ!出来ンダロ!?……ッ出来マスヨネッ?」

 

「むう。なんだよ!元はといえばそっちがいきなり攻撃してくるから悪いんだろ!心配しなくてもあんたの体には入ってないよ!」

 

その言葉を聞いて、取りあえず安心した。さておき、もうこんな茶番をやってる暇はないな。だいぶ時間を無駄にしてしまった。

 

オレっ娘に通信機を要求した。ひとまず"ユニット"メンバーと連絡を取らなくては。

 

"ユニット"リーダーから、粉浜の追跡状況の報告を受けた。現在、奴は第十一学区南東、学園都市と外部の検問所近くへと距離を縮めていた。ただ、奴のオートバイは破壊したらしく、徒歩で逃走しているらしい。

 

至急現場に向かわなくては。オレっ娘は慌てたが、俺は一言礼を告げると、彼女を振り切って走り出した。

 

 

 

 

 

 

走りながら考える。どうしてさっきのオレっ娘から粉浜の匂いがしたのだろう。色々可能性を考えたが、一つ、推理できるとすれば。

 

粉浜の奴は、恐らく"匂いの粒子"を操ったのではないだろうか。人間や犬が"匂い"を察するメカニズムは、元をたどれば"匂いの粒子"を鼻の粘膜が感知することで為されている。

 

もしそうならば、粉浜は。土壇場でそんな器用な真似を成し遂げたのか。奴の能力も、報告書とは大違いの規模(スケール)だった。今日この時のために、能力の真価を隠していたのか?

 

だとしたら、奴は機転が効くどころじゃない。強かで、随分と頭のキレる奴だ。

 

リーダーから、また連絡が入った。粉浜は、近くの廃ビルに逃げ込んだらしい。その報告を聞いて、俺は悩んだ。あいつは、本当に逃げの一手でそこへ逃げ込んだのだろうか。強かに、俺たちを一網打尽にする罠を用意している可能性は……。

 

 

 

 

 

粉浜が逃げ込んだ廃ビルに到着した。上階から、発砲音が聞こえてくる。だが、不自然なことにその発砲音の出処が一箇所だけだった。仲間が数人で包囲しているはずなのに。断続的に発砲音が鳴り響いているから、決着は付いていないはず。何が起こっているんだ?

 

 

廃ビルの屋上に到着した。積まれた資材を影に、"ユニット"メンバーと後詰めの戦闘員が、粉浜の奴と対峙していた。辺りは砂煙に包まれ、見通しは最悪だった。

 

粉浜は、装備しているサブマシンガンでこちらに一方的に発砲してきている。なぜこちらは一発も打たないんだ?奴の"試薬"を傷つけないためなのか?

 

俺が疑問を発する前に、中百舌鳥が声を張り上げた。

 

「"ウルフマン"!テメェがヤツを仕留めろ!オレ達の武器は今使いもんにならねぇ!あの野郎、能力を使って、弾薬の火薬に細工しやがった。オレのライフルも、奴に砂を詰められてお釈迦だ。」

 

あいつ、やってくれるな。ほんとに強能力者(レベル3)か?……いや、力の使い方が上手いのか。

 

「了解シタ!」

 

俺の返事を聞いた"ユニット"メンバーたちは、俺に殺せ、とハンドサインを送った。その後すぐに、彼らはリーダーの合図と同時に、一斉に弾幕のさなかを前進し、俺が粉浜に接敵するタイミングを作り出した。

 

 

俺は、今度は匂いに頼らなかった。回復しつつある視力と発砲音を頼りに、粉浜に飛びかかった。そして、なんとか奴に接近し、思い切り胸部を殴ってブッとばした。

 

 

小浜の発砲音の静止を察して、中百舌鳥が俺に呼びかけた。

 

「"ウルフマン"!殺ったか?」

 

「イイヤ。殺シテハイナイ。ダガ、標的ハ制圧シタ。」

 

俺の返答に、中百舌鳥は唾を飛ばして激昂した。

 

「馬鹿ヤロォ!オレは殺せって言っただろうが!クソ!今すぐブッ殺せ!」

 

 

彼がその言葉を言い終わるかどうか、その寸前に。

 

辺り一面に、白い粉末が、まるで粉雪のように舞い上がった。油断し、不覚にもその粉を吸い込んでしまった。

 

その直後だった。突然、能力を自分の意志でコントロールできなくなった。体が自由に動かせなくなった俺は、マズイことに粉浜のすぐそばで倒れ込む。

 

 

他の仲間たちも、皆軒並み呻き声を上げて地を転がっていた。俺は、粉浜の追撃に焦った。同時に、倒れ伏したままの態勢で、ある考えを巡らせてた。

 

自身を包む悪寒に、身に覚えがあった。

あの晩、黒夜と戦った夜。その直前に、俺はこの感覚を味わっていたじゃないか。

落ち着いて、能力を最大限に展開する。

 

 

目の前で粉浜は苦しそうに立ち上がり、俺を憎悪の瞳で睨めつけた。

 

「また君か、ワン公!やってくれたな!おかげで、奥の手を使っちまったよ!…地獄に送ってやる。脳天ブチ抜かれりゃ、さすがにこの世とはお別れだよなぁ!」

 

そう口にした粉浜は、そばに転がっているサブマシンガンを拾おうとしている。

 

焦りに耐え、俺は身体の活性化をひたすら待ち望んだ。

 

粉浜が銃を拾おうとする動作が、スローに映った。奴が銃を手にかけたその時、辛うじて動かせるくらいには体に自由が戻った。

 

 

粉浜が銃口を向ける頃には、俺は既に立ち上がり、奴の真後ろに立ち上がっていた。

 

「ひッ。お、お前……。やッやめッ

 

奴が言葉を発し終える前に、その首を掴み、そのまま吊るし上げた。

粉浜の表情には恐怖が張り付き、その瞳はまるで俺に命乞いをしているようで、絶望に彩られていた。

 

俺の思考の内側で、一つの声が異様な存在を示していた。「殺せ。終わらせろ」と。

 

 

 

 

ここで終わらせなければ、こいつはまたすぐにでも次の手を打ってくるだろう。殺したほうが安全だ。

 

だが、俺はそもそも金が欲しかっただけだ。金のためにこいつを殺していいのか。

 

こいつには殺されかけた。自身の安全のために、殺してしまおう。

 

こいつの目。完全にビビってる。もう終わりだ。ほうっておけ。

 

そんな確証ないはずだ。いつだってこいつは殺しに来るぞ。

 

いいのか、殺しても。こいつにも家族がいて。

 

安全じゃないか。こいつを殺せば。

 

 

 

 

粉浜の、銃を握っていた手が動いた。瞬時に、彼の目に憎悪の念が湧き上がる。俺は反射的に、握っていた手に力を込めてしまった。

 

 

 

頚椎の潰れる音が聞こえた。初めて聞く音だった。

 

 

 

粉浜の体から力が抜け、だらしなくぶらりと俺の手に、静かな重みが蘇った。

 

初めて人を殺した。無意識のうちに能力を使い、湧き上がる後悔と恐れを押し殺していた。

 

 

 

 

 

 

撤収後。"ユニット"メンバーたちは、険しい顔つきをしていた。粉浜が最後に繰り出したあの一手が、回収すべき"試薬"だったのだ。組織の裏切り者に報復を与えはしたものの、クライアントの要求を完全に満たすことはできなかった。

 

任務は失敗扱いだった。他の"ユニット"メンバーは、俺が最後の最後に詰めを誤った責任を追及することはしなかった。もともとは、彼らの見通しの甘さから生まれた不祥事だったからだ。

 

 

 

"ユニット"の拠点であるトレーラーから出て行く際に、リーダーに呼び止められた。ちなみに、中百舌鳥の奴は粉浜の奥の手で病院送りになっていた。あいつは"強能力者"だったから、特別に薬の影響が大きかったんだろう。

 

「"ウルフマン"。お前は今日、良くやった。だが、覚えておけ。この世界じゃ、失敗はそうそう許されん。次は、その甘えを捨てて出直して来い。」

 

「了解。リーダー。」

 

俺の返事に、リーダーは苦笑した。

 

「任務外で"リーダー"呼ばわりは止せ。……さて、それじゃあな。」

 

リーダーは背中に抱えた大きなギターケースを抱え直し、俺に背を向けた。

 

「リーダー!そんなでっかいエモノを抱えて、また任務ですか?」

 

彼は手を左右に振り、否定の意を返した。

 

「まさか。これからバンドの練習さ。"ウルフマン"、お前も死ぬ前に、後悔の無い様にな。」

 

リーダーの楽しそうな声色に、本気で驚いた。あのゴリ、あの老けヅラでまだ学生だったのかよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第七学区。学生の街。長年慣れ親しんだ聖マリア園を離れて、俺が次の棲家に選んだのは、この学区のボロい安アパートだった。第七学区でも指折りに治安の悪い場所に位置し、スキルアウトが警備員(アンチスキル)に連行される風景が、毎日のように繰り還される。

 

 

家への帰りがけに、今日殺してしまった粉浜のことを考えていた。あんな奴が、どうして暗部を裏切ったりしたんだろう。それもたった1人で。

 

暗部に逆らえばあのような結末になる、とそれがわからない愚鈍な奴だとは決して思えなかった。止むに止まれぬ理由があったのだろうか。そんなもん、暗部に属する皆が皆に在りそうじゃないか。

 

俺も、アイツみたいな最後を遂げるんだろうか?

 

 

 

 

 

アパートまで、もうすぐだった。そこで、アパートの前にポツリと佇む人影があった。火澄だった。狼狽して、一瞬逃げようかと思ったが、彼女は既にこちらに気づいていた。冷たい相貌で俺を見つめている。

 

白状しよう。今はもう九月の初めである。五月の終わりに居を移した。それから今まで、彼女に聖マリア園を退園したことすら、一片も伝えていなかったのだ。

 

色々と彼女に説明をするのが面倒くさかった。だって、トラブルになるのが余りに見え透いていたからな。ずるずると連絡するのを後回しにしていた。

 

彼女からはひっきりなしにメールと着信が届いていたが、今まで無視していた。暗部のゴタゴタが少しは落ち着くまで、連絡を控えようと思っていたのだ。

 

その携帯も今日の任務でぶっ壊してしまった。メールの内容も最近のものは確認していなかった。どッどうしよう。今からでもホント逃げようか?逃げるべきか?逃げたいです!

 

 

「景朗。そのボロボロの格好、ケンカでもしたの?」

 

火澄が邂逅一番に告げたのは、その一言だった。

 

「……そうだよ。」

 

怒らせないように、最新の注意を払って返答を考えた。結局思いつかず、ぶっきらぼうな台詞が口から飛び出ていた。

 

「こんなボロボロのアパートに住んでるし……。はぁ~~~~っ……あんたってば、ほ・ん・ッ・と、分かり易いグレ方するのね。」

 

彼女の答えに、なんと返せば良いのかわからない。俺は黙したまま、彼女の方を向いてつっ立っていた。

 

「まさか。まさかね。まさか本当にケンカしてたとは。あの景朗が、こんなグレ方するなんて思わなかったわ。」

 

呆れ声が、暗闇の中の、静かな空間を通り過ぎていく。

 

「景朗。ケガしたとこ、見せて。さ・い・わ・い・にも、ここに手当をする道具がありますから。」

 

怪我の手当か。それは無理な相談だった。今、傷だらけの俺の体には、風穴(銃創)が3つばかし空いてしまっているからな。

 

火澄が歩み寄るものの、俺は彼女に拒絶の意思を見せ、後ずさって距離をとった。

 

「大丈夫だよ。ただの打ち身、あと擦り傷が少々。わざわざ手当する必要はないよ。」

 

俺の態度に、彼女は一瞬、傷ついた表情を見せた。続けて困惑した顔を向けてくる。

 

「景朗、ホントにどうしちゃったの?何があったの?急にクレア先生の所から出て行くし。」

 

火澄の雰囲気は今までにないくらい真剣で、有無を言わせない空気を発していた。俺が唯ならぬ状況下に身を置いているのを、感覚的に察知しているんじゃないか、と、そんな気がしてならなかった。女って、どうしてこんなカンが鋭いんだよ。

 

「大げさだな。別に何もないよ。今のアパートは、節約のために限界まで安いとこを借りただけだし、ケンカだって、今日は本当にたまたまスキルアウトに絡まれただけさ。」

 

苦し紛れの言い訳だった。火澄は当然、俺の言葉を素直に信じた訳も無く、疑いの眼差しを向けつづける。

 

「じゃあ、どうして。どうして、3ヶ月も、私のメールを無視したのよ?」

 

「それは……。最初に怠けちゃって、連絡をするタイミングをずるずると引き伸ばしちゃったんだよ。ごめん。そのことに関しては、怒られても無理はないよ。」

 

俺の拙い言い訳を耳にした火澄は、烈火のごとく怒りを露わにした。肩を怒らせ、俺に近づいてくる。

 

「そう。随分とあっさり言うのね。それじゃあ……これが、人を丸々3ヶ月も無視した分よ!」

 

そう言って、彼女はぎこちなく、俺の左足に、ぺしん、とローキックを放った。能力を解除していたが、その必要は全く無かったようだ。微塵も痛くなかった。

 

「景朗、いつか、ホントのこと話してね。今は聞かないでいてあげる。あんた、今日は随分としんどそうだから。」

 

 

 

その後、大した話もせず、彼女は夜も遅いから帰る、と言い出した。この辺は治安が悪いから送っていこう、と提案するも、火澄は鼻で笑い、勝手にしなさいよ、と言い放った。俺を置いてスタスタと先を歩いて行く。

 

気まずさで、彼女の隣に並んで歩けなかった。ひたすらに、無言で彼女の少し後ろを付いていく。

 

 

 

駅に付いた所で、火澄はようやく口を開いた。

 

「景朗。今日はホントはね、あんたが、どこの高校に進学するつもりなのか。それを聞きに来たかったんだ。」

 

彼女から話しかけてくれて、俺は焦った。下手なことはもう言えないぞ。

 

「第一志望は、長点上機学園だよ。」

 

俺の答えに、火澄は今日一番、驚いた顔を見せた。

 

「なっ、長点上機学園!?学園都市の名実共にトップの学校よ?ちょっと、真面目に答えなさいよ。……まさか、本気、なの?」

 

俺は黙ったまま、彼女にニヤリと笑った。

 

「まあ、目標は高ければ高いほど、人間、成長できるわね。」

 

彼女は、俺が長点上機学園に入学できるとは到底信じていないらしい。良かった。咄嗟に、本当のことを口にしてしまい、内心焦っていた。

 

布束さんから勧められた、暗部の仕事をこなしながら通うのに適した高校。その名を聞いて、俺は大いに納得したものだった。長点上機学園。学園都市No.1の能力開発校だ。当然、闇の深さも抜きん出ていて当然という訳か。

 

俺の能力のレアリティならば、長点上機学園にはストレートで合格できる、と彼女からお墨付きを貰っている。

 

 

最後に火澄に、手纏(たまき)ちゃんと一緒に大覇星祭の観戦をすることを約束させられた。駅へと歩いていく彼女の姿を見送り、再び帰路につく。

 

 

 

 

 

九月の第二週。大覇星祭の記念すべき初日。暗部の野暮用も無かったため、幸いにも火澄の急な呼び出しに応えられた俺は、待ち合わせ場所である第七学区の所定の公園へと急行した。手纏ちゃんとも同席しているらしい。

 

屋台のクレープに舌鼓を打ちながら、此度の大覇星祭の勝者を予想し合った。

 

「どうなの?今年の大覇星祭は。常盤台は今年こそ優勝できそう?」

 

俺の質問に、火澄と手纏ちゃんは目を見合わせ、クスクスと笑い出した。

 

「景朗さん、やっぱりそう言う話には疎いんですね。」

 

「あんた、日頃から友達がいないって言ってたけど、本当なのね。」

 

2人に突然笑われ、友達がいないと論われ、俺は返す言葉もなく、落ち込んだ素振りを見せた。

 

「何がそんなにおかしいんだよ?」

 

「だって、常盤台生の私が言うのも何だけどさ。大覇星祭に関しては、今年は常盤台中学(うち)の話題で持ちきりだと思うわよ。」

 

「景朗さん、もしかして、今年の春に、超能力者《レベル5》の方が2人も常盤台に入学したのを、ご存知ないんですか?」

 

「え。」

 

ものすごいビッグニュースだったじゃないか。そ、そうだったのか。なんで知らなかったんだよ、俺。これは情けないぞ。ていうか友達居ないなんてレベルの話じゃないよね……

 

毎度恒例の火澄の呆れ混じりのツッコミが入る。

 

「し、知りませんでした。マズイですね。」

 

「……はぁ。ええ、そうよ。マズいどころの話じゃないでしょ。あんたの交友関係が本気で心配になってくるわよ。」

 

手纏ちゃんもフォローできない様子でぎこちない笑顔を浮べた。俺は恥ずかしさを甘んじて受け入れるしかなかった。

 

「せっかく私たちが盛夏祭に誘ってあげたのに。去年も来てくれなかったじゃない。そんなんだから、そーいう事態に陥るのよ。」

 

「ま、まあまあ、火澄ちゃん。仕方ないですよ、学校の御用事がお有りだったんですから。」

 

「だって、結局中学1年生の時しか来てくれてないのよ。ずっと誘ってたのに。深咲だって落ち込んでたじゃない。友達が居ないのに、なんのご用事だったんでしょーねー?」

 

頬を膨らませた火澄の発言に、手纏ちゃんは顔を赤くしてあたふたしていた。

 

「ちょ、ちょっと火澄ちゃん!別にそんなに落ち込んでたわけじゃないよぅ!」

 

「えー、そ、そうなのか。そんなに落ち込まなかったんだ……」

 

「はぅあ。ち、ちがっ。」

 

俺がからかうと、手纏ちゃんはさらに慌てている。和むなぁ。

 

「景朗。それ以上深咲をからかったら、炙るわよ。」

 

「おーけーおーけー!やめる。やめるよ。わかった。」

 

何時ものように、火澄は手纏ちゃんを徹底ガード。一瞬でこの有様だ。

 

 

「し、しかし、それなら、やっぱり皆は当然、今年は常盤台の1人勝ちだって予想してるんだろ?」

 

手纏ちゃんはまだ少しリカバリーに時間がかかりそうだった。そこで続けて火澄が相槌を打つ。

 

「その通り。まあ、結局は団結力の勝負になるから、結果はどう転ぶかわからないけど。でも、今年の常盤台は、2人の超能力者(レベル5)の参加を追い風にして、去年より圧倒的に士気が高い、とはハッキリ言えるわね。」

 

「そこで、先輩方自身のお名前を出さないのは、さすがですね。常盤台が誇る"火災旋風(ファイアストーム)"のお姉様方。」

 

突如、俺たちが寛いでいたベンチの裏から、聞き覚えのない少女の声。まあ、実の所、俺は足音で近づかれる前から気づいていたんだけどね。

 

「!……御坂さん。」

「み、御坂さん?!」

 

混乱から回復仕掛けていた手纏ちゃんが、その少女の登場によって再びあたふたし始める。おや、どうやら、手纏ちゃんだけじゃなく、火澄も少し慌てているようだった。珍しいな。

 

御坂と呼ばれた少女は、にこやかな、人懐っこい笑顔で火澄たちに話しかけた。

 

「いやー、まだお気づきじゃなかったとは。周りを見てください、先輩。我らが"火災旋風(ファイアストーム)"のお二人が、殿方と親しげに談笑なされているのを、近くの常盤台生が、まるで真夏の雪を興ずるが如く、興味津々に観察していますよ。」

 

「み、御坂さん、その"単語(火災旋風)"は禁止!禁止!」

 

「?」

 

火澄の制止に、御坂さんは疑問符を浮かべていた。火澄のやつ、御坂さんの話でなんだか慌てているみたいだな。さっきから言ってる"火災旋風"ってなんのことだろ?火澄たちと関係があるみたいだけど。

 

「と、ところで、御坂さん。最近、よく私たちの所に来るわね。御坂さんと話すのは楽しいし、私たちは全く構わないのだけれど。もしかしたら、御坂さんが私たちの"派閥"に入っているんじゃないかって、そういうのに躍起になっている人たちに疎まれてしまうかもしれないわ。気をつけて。御坂さんに迷惑をかけてしまったら、私たちは自分で自分を許せなくなるわ。」

 

その言葉に、御坂さんは、とんでもない、という表情を作った。

 

「そんなことないですよ!むしろ、その逆です。もう九月になるってのに、まだアタシの所に"派閥"の勧誘が来てて。四六時中勧誘されて、なんだか、気づかれするってゆうか……。こほん。そ・こ・で。先輩たち、"火災旋風(ファイアストーム)"のお二人の"派閥"に入ってる、ってことにすれば、その~、なんとかなるかなーって。……やっぱり、ご迷惑ですか?」

 

「そっか。そう言うことなら、仕方ないわね。私たちも、ちょっとだけそう風に思ってたもの。御坂さん、ずっと勧誘されてて大変だろうなーって。もう、そんなすまなそうな顔しなくていいの!"派閥"だなんて下らないものに気を取られている人たちが悪いのよ。遠慮なく、私たちを頼りなさい、御坂さん。」

 

「さっすが、火澄先輩。相変わらず男前ですね!」

「火澄ちゃん、カッコイイです。えへへ。」

 

「ちょっと!男前って、何よ。男前って……」

 

 

あ、あれれ?先程から、野郎が1人置いてけぼりですよー……。気づいてますかー……。いや、会話に入りたいのは山々なんだけど、この3人の中に入っていくのは難しいぜぇ。はぁーあ。

 

 

「あーあ。そうなると、火苗のヤツが絶対いちゃもん付けにくるわね。メンドくさー。」

 

「岩倉さん、ですか。」

 

火澄と手纏ちゃんはそう言って、若干気落ちした空気を醸し出した。どうやら御坂さんもその空気に便乗しているご様子だ。

 

「先輩たちと同じ3年の"溶岩噴流(ラーヴァフロー)"の岩倉火苗(いわくらかなえ)先輩ですか?……あちゃー。最近、あまりにも勧誘が煩わしかったので、キッパリと断っちゃったんですよ。悪いことしちゃったかなぁーって思ってたんですけど。」

 

「大丈夫よ、御坂さん。火苗はそんなヤワなヤツじゃないから。」

 

火澄はそういって御坂さんを慰めた。手纏ちゃんも続けて御坂さんに話しかける。

 

「その話ならお聞きしました。岩倉さん、めげずに、御坂さんの次に食蜂さんを"派閥"にご勧誘なさったそうです。……そのぅ、これはまだ噂なのですけど……。岩倉さん、その後逆に、食蜂さんの"派閥"にご加入なさったそうですぅ……。」

 

「……」

「……」

 

手纏ちゃんの話を聞いて、火澄と御坂さんは何とも言えない表情を浮かべていた。

 

 

 

「ところでー。そろそろ、先輩たちと同席されている方について、ご紹介いただけませんかね?」

 

ナイス!御坂さん、GJすぎるでぇ!ほんまええこやぁ。てかマジで、冗談抜きでグッジョブ!御坂さんって人!

 

火澄とぱちりと目が合ったが、よそよそしく速攻で逸らしやがった。どうやら、俺の存在は都合が悪いらしいなぁ。ククク……。

 

「はじめまして、えーと、御坂…さんでいいのかな?俺は雨月景朗って言います。ちなみに、火澄とは御坂さんがご想像されている以上にディープな関係です。」

 

「なッ!ええッ!先輩!も、も、も、もしかして、この人!」

 

「景朗ぉ~~ッ!どうやら本気で消し炭になりたいようねぇ!」

 

いや、とっくに髪の毛に火が付いてるんですけど!火澄さん!御坂さんは転げまわる俺を見てあわあわしていたが、手纏ちゃんは何時もの光景だと言わんばかりに、にっこり笑顔を浮かべていた。

 

 

 

盛大に顔を赤らめつつ、火澄は俺の冗談を一蹴した。改めて、御坂さんと正面を向き合って挨拶を交わした。

 

「さっきはすみません。改めまして、雨月景朗といいます。火澄も言ってましたが、同じ施設のメンバーだったんですよ。本当の彼女は手纏……いえ、もちろん冗談です。ジョークです。」

 

「あ、あはは……。いえいえ、こちらこそ。"火災旋風(ファイアストーム)"のお二方の後輩の、御坂美琴です。よろしくお願いします。」

 

「どうもどうも。」

 

「いえいえ。」

 

そうやって、表面上はにこやかに、御坂さんと挨拶を交わしたが、内心では俺は彼女と正面に向き合って初めて、彼女の放つ異様な雰囲気に気圧されていた。

 

なんだ、この娘。只者じゃないぞ。なんだか……強い。いやいや、こんな女の子相手に何を考えているんだ。そう思いつつ、頭の中では、なぜか、この少女との戦いをシミュレートしていた。だめだ。勝てそうにない。不思議な子だなぁ。

 

一方、御坂さんはというと、どうやら彼女も同じように、俺に対して若干の警戒心を持っているようだった。

 

「どうしたの?二人共。険しい顔をして。……こほん。御坂さん、さっきも言ったけど、この脳筋男の言うことは、全て無視していいから。」

 

「えっ。あ、いや。そういうわけじゃ……。」

 

御坂さんは何でもない、という表情を返すが、火澄は不審そうな顔を俺に向けてくる。おいおい、なんもしてねえよう。

 

「か、火澄さん。初対面の方にそういう事を吹き込まないでくださいよ。」

 

火澄は俺のクレームに、ジト目で睨み返すだけだった。ち、ちくせう!さっきから厳しいなぁ!よぅし、こうなったら……

 

 

「あのさぁ。ところで、さっきから御坂さんが言ってる"火災旋風(ファイアストーム)"って一体何のことなんだい?2人に関係してるんだろ?」

 

「あれ?景朗さん、知らないんですか?"火災旋風(ファイアストーム)"って言うのは、この仄暗火澄(ほのぐらかすみ)先輩と手纏深咲(たまきみさき)先輩、お二人の"通り名"のことですよ!」

 

視界の端に、何かを諦めた様子の火澄が映った。

 

 

 

 

"火災旋風(ファイアストーム)"、本来の意味は、火災現場などで発生する自然現象である。炎が生み出す上昇気流や、燃焼により消費された酸素の移動によって生じる、火焔の竜巻のことを表しているらしい。

 

炎を操る火澄と酸素を操る手纏ちゃん、2人を的確に表した"通り名"だと思った。しかしまあ、そんな大それた"通り名"が、そもそも一体全体、なぜあの2人に付けられたのだろうか。

 

切っ掛けは、いくつかあるらしい。ひとつは、学舎の園周辺でスキルアウト等に絡まれた女の子たちを、よく火澄たち(主に火澄だな、これは)が助けてあげており、その界隈の、能力のレベルが低かったり、男に免疫のない女の子たちの間で、お助けヒーローばりのノリで噂されるようになっていたらしい。

 

その能力を使うさまを見て、誰かが"火災旋風(ファイアストーム)"と言い出し、それがいつの間にか定着したと。

 

そんな二人組は、大覇星祭で常盤台の看板を背負って大活躍を魅せる。そして、だんだんと知名度が高くなってきたおりに、最後の切っ掛け。常盤台特有の"派閥"争いの勃発。巷で人気急上昇中の二人組を陣営に加えようと、様々な"派閥"が火澄たちへとアプローチを仕掛けたらしい。

 

だが、"火災旋風(ファイアストーム)"の二人組は、決して、いずれかの"派閥"に所属することなく、孤高を保ち続けた。いろいろ嫌がらせを受けたりしたらしいが、それでも"無所属"を貫いて。今では、"火災旋風"の二人組は、常盤台で"派閥"に加わることを良しとしない、"無所属"筆頭、旗頭のような扱いを受けるまでになった、という話だった。

 

 

お、お嬢様学校怖えぇ。怖ぇぇよぉ。能力使ってもこの怖さは消せそうにないんですけど。どうしてくれる!

 

「パねぇーー!パねぇッス!"火災旋風"のお二人さん、カッケェー!マジリスペクトッすwww。ボク、これからは、お二人のことは尊敬の念を込めてファイアアアアアアアアアアアアアアッチィィイイイイイイイイイイイイ!!!」

 

「わかってた!あんたが絶対そうやって茶化してくるのはわかってたのよ!あーもう、今日は厄日だわ!」

 

「景朗さん、恥ずかしいので、やめてください~~ッ!」

 

転げまわる俺を見て、今度は御坂さんも笑っていた。

 

 

 

 

 

火澄が俺の火炙りにいい加減飽きた後。御坂さんはその後も俺たちと会話を楽しんだ。俺が常盤台中学の超能力者(レベル5)を知らなかったことについて、火澄はやたらとからかって来た。

 

初対面の御坂さんに、俺がいかに世俗に疎いか、速攻でバラされてしまったので、俺は照れ隠しに「一体、超能力者(レベル5)ってどんなやつなんだろうなー?俺の勝手な想像だけど、陰険なムッツリガリ勉さんに違いないって思ってるよ。え?俺?いや、俺はしがない強能力者(レベル3)だけどさ。俺の能力?えーっと、"戦闘昂揚(バーサーク)"っていう、火事場の馬鹿力がでるだけのショボい力だよ。」と言って誤魔化した。

 

なんだかんだで、御坂さんは可愛い娘だったから、名残惜しかったけど。競技時間が来たらしく、御坂さんは1人運動場へと走っていった。

 

 

 

 

 

火澄たちの競技時間も迫っていた。先ほどとは打って変わってご機嫌な火澄が気味悪く、俺はその理由を何度も訪ねていた。

 

「うーん。そろそろ、教えたげる。…ぷくく。あはッ、アハハ。笑いをこらえるのが大変だったわ。」

 

手纏ちゃんも、申し訳なさそうに、笑いを我慢していた。

 

「何がそんなにおかしいんだよ?そろそろ教えてくれよ?」

 

「教えてあげましょう。景朗、常盤台中学が誇る超能力者(レベル5)。一人は"心理掌握(メンタルアウト)"の"食蜂操祈(しょくほうみさき)"。」

 

おお。「みさき」とな。手纏ちゃんと同じ名前だな。漢字は違うけど。

 

「もう一人はね、学園都市第三位の超能力者(レベル5)。常盤台の電撃姫、"超電磁砲(レールガン)"こと"御坂美琴(みさかみこと)"よ!」

 

……はぁ?

 

えっ…御坂って…御坂さん……。

 

なんだッてェ?

 

う、嘘だ。

 

すがる思いで手纏ちゃんを見やるも、彼女はどうしようもないくらい、申し訳なさそうな顔をしていた。手纏ちゃんの反応でわかる。嘘じゃない。

 

え、それじゃ、俺、御坂さんの目の前で、あんだけ超能力者(レベル5)をこき下ろして……

 

 

 

うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

先に言えよ、チクショオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうしよう。禁書目録で木原幻生は行方不明だって話だから、勝手に殺しちゃえーってプロットを作ってたんですけど、超電磁砲コミックスで、バリバリ生存。それどころか悪の親玉のごとく盛大にやんちゃしてるじゃないですかーーー。はぁ。
まぁとっくにプロットは木原幻生の生存ルートで修正したんですけどね。嫌な作業でしたよ(笑)
この小説もどき、まだまだ続きます。登場したキャラクターとか、その能力とか、設定が色々あるんですけど、需要なんて無いですよね。お気に入りに登録してくれた方がいてくれてすごいテンション上がってます。こんなオ●ニー小説をお気に入りにしてくれるなんてヤヴァイっすよー!
アンケートなんて大それたもんじゃないんですけど、私はよく、戦闘シーンなんていらねぇ、ラブコメがもっとあったほうが・・・ってほかの方のSSよんでて思ってて、そうした方がいいかなぁ。はぁーあ。

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