Fate/White Christmas   作:カタストさん

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剣二本、槍一本 《後》

野鳥は羽を広げた。 鼬は野を駆けた。

その思考の所以は一つ、この場から逃げるために。

剣が舞い、槍が走る。その度に爆発にも似た音と衝撃を奏でて轟く。

その音を聞いた動物は、根源的な本能が生命の危機を告げる。この場所では植物でさえ身を竦ませた。

そうなるまでに、この場所は戦場としても超一級なのだ。死線があるとすれば、それはここだった。

“光”のセイバー、“闇”のランサー。ステータスはサーヴァントとしても最大級を誇る彼ら二人がぶつかり合い、戦いはこれ以上無い程に激化していた。

しかし、時間と共に、戦況は少しずつ色を帯びてきた。

セイバーの体に、また一つ傷が刻まれる。剣で軌道を逸らしたといえど、肩に槍を受けては、無傷と笑い飛ばすことは難しい。既にセイバーの体は、出来損ないの甜瓜(メロン)の様に傷を負っていた。

対する相手、ランサーはピンピンしたものだ。セイバーが疑わしく思うのも仕方ないこと。

セイバーの剣は、いずれも苛烈なものだ。大地を抉り、風をも斬る。そんな剣に幾度となく掠っているのは間違いない。セイバーも確かに手応えを感じているのだ。証拠としてランサーの衣服には切れ込みが幾つも入っている。しかし、ランサーの体には一つとして傷が残っていない。笑いながら突撃してくるランサーに、違和感を覚えるのはどんなに愚鈍でも当たり前のことだ。

その理由には、セイバーでも心当たりが有った。詳細には行き当たっておらずとも、その原理には見当はついている。それはほぼ確実に正解だ。

マスターは近くには居ない、即ち治癒術式を使われているなんてことは有り得ない。ならば、残された物が真実だ。

「神からの寵愛か? それとも、因果崩壊か? なんにせよ、()()()()()()を持っているようだな?」

「はっ、敵に褒められるなんてな。 こんな体に生まれた甲斐があったってもんだ!」

そのランサーははぐらかしながらも、言外に、それは正解だ、と告げていた。

言えないのは理由がある。この頑丈さだからこそ、ランサーは自らのマスターの支援を受けないというリスクと天秤で測るまでもなく、“闇”のセイバーの分断作戦に付き合ったのだから。

無燃無双の薪(ドクサ・サタナース)』。“闇”のランサー、メレアグロスがそうたる所以こそ、この宝具である。彼と同時に召喚された薪が、薪としての形を保っていられるならば。壊されたり、燃やされたりすることがなければ、彼は死ぬことはない。

神を殺す一撃であろうと、世界を滅ぼす炎であろうと、彼には無意味。Aランク以上の神性、或いは神性特効という極度に達成が難しい条件を満たしたとしても、彼に通るダメージはその五割にまで減衰される。アキレウスの祝福にも並ぶ、ギリシャ神話に名高い英雄の不死性の極致こそがこの宝具だ。

ただし、逆も然り。伝承の通り、薪を燃やされてしまえば彼は二度目の死を遂げる。だからこそ、彼は分断作戦を選んだのだ。真流を護るために居残るという選択肢もあったろうが、真流があの触手に倒されるようならばランサーは彼女を信用した自分の判断を恨むだけだろう。セイバーのマスターと二人がかりになって尚あの程度の試練に打ち勝てぬようなら、どの道我らに勝利の目はない。だとしたら、苦難を伴いそうな、より勝利に困難がつきまとうこちらを選択するべきだ。これはランサーの狩人としての勘であり、彼がこの世で一番信頼しているものの内一つだった。

事実、こちらのセイバーでは、あの悪魔の腕に善戦することは出来ようと、完膚無きまでの勝利は無理だった。筋力・耐久性に長けたランサーが前線で戦い、小手先の技量で翻弄するセイバーが支援に回る判断は、この場において最善手であった。

誤算があるとすれば、それは“光”のセイバーの能力が想定より高かったことだろうか。彼もまた何者かの寵愛を受けている可能性がある、そう思えるほどの実力の拮抗。しかし、“闇”のセイバーとの共闘。そして、宝具の存在があるために、“光”のセイバーの敗北は時間の問題だった。

ここから勝敗が逆転する要素があるならば、それは―――。

この中で唯一、戦闘力においては大きく劣るものがある“闇”のセイバーだけだろう。

 

対する“光”のセイバーは死力を尽かせ、限界はとうに超えていた。

“闇”のランサーでさえそうだが、セイバーのは度が越えている。おそらく霊格からして違うのだろう。相手が神話に踊る英雄だとするならば、こちらは卑賤なことこの上ない。知名度・基礎の力でさえ、自分とは段違いだ。

宝具の効果があるから力量そのものは追いついているとはいえ、生前積み上げた技術や、生まれの差までは今更埋められるものではない。いいや、最初から埋められる歴史(もの)では無かったのだろうか。

きっと、目の前にいる二人は人類史に刻まれた、名立たる英雄の内二人なのだろう。

ならば、自分に()()()()()()()()()()()()()。元来ならば、英霊として抑止の環に登録されるまでもないこの賤しき身では、矢張り届くはずもない世界なのか。

――――いいや、そのはずはない。

既に千回剣を振るい、万回槍を受けたではないか。これこそ、名もなき自分が英雄と戦いを繰り広げることが出来た証左ではないか。

一回だけで良い。 この体を動かすに足る好機を、私に授けてくれ。

もしも、この戦いを見ていてくださっているのなら。 主よ―――

 

時間が経つごとに、次第に“光”のセイバーは劣勢を強いられていた。

だが、それでさえも。ある一点さえ過ぎ去ってしまえば、奇跡的なまでに持ちこたえるセイバーの姿があった。

ランサーの猛攻、セイバーの追撃にさえ、背筋を曲げずに受け切るセイバーの耐久力に、互いに二人はしびれを切らしていたのは確かだった。

爆風は吹き荒れ、火花はさながら太陽のようにこの戦場を照らす。異常なこの場にあっても、三人は半ば食傷気味になっていた。

こんな世界において、先に均衡を崩そうとしたのはランサーだった。

螺旋のように繰り出される斬撃の嵐、その中に一糸の隙を見つけたのはランサーに特有の狩猟者の眼に拠るものであって、両セイバーに割り込む事が出来るようなものではなかった。

毫釐(ごうり)な意識の空白。

その程度の時間を利用して、ランサーは自分の手槍を繰り、セイバーの剣を一際強く弾いた。

ランサーが全力を以て、身の丈以上の岩壁さえも打ち砕くような一撃だ。“闇”のセイバーであっても俄に耐えきれるものではないのか、剣は拍子に宙を舞った。

その剣が落ち始めるよりも速く、風よりも疾く、“闇”のセイバーは地を駆けた。

そして、文字通り一閃。首を駆るように、細剣は振り下ろされる。この場において“力”や“速さ”では勝るものは何一つなくとも、“技”においては彼らに勝らないとも劣らぬ力量を持っていた。

故に、必然的に、過たず首を切り落とし、詩の余韻のように頭と体が分かれるのを待つのみだ。

―――少なくとも、それが“闇”の二人の理想の結果だった。理想は覆されるものだと判っていても、薄紙がやったように、もう一度容易に覆し返せるものだと思っていた。 

“光”のセイバーの鋼鉄の意志を、真に測りそこねたのは、彼女たちの最も大きな失態だったのだ。

剣は受け止められた。 その意志のごとく硬い()()()に握りしめられて。

「負けるわけには、いかぬのだ・・・。 私の、この腕に掛けて!」

“光”のセイバーの、それは魂の叫びと形容してもいいほどに、激昂にも近い咆哮だった。

そして、その叫びと同時。“闇”のセイバーの手が握っていた剣を無造作に奪い取る。女の細腕ではその怪力に適うはずもなく、寧ろ剣と一緒に吹き飛ばされないようにすることに注力しなけれはならなかったぐらいだ。

しかし、それでさえも却って仇になる。 続いて繰り出される手に反応しきれず、“闇”のセイバーは糸のように細い首を乱暴に掴まれる。そのまま、子供をそうするように、“光”のセイバーは簡単に片手で彼女を持ち上げた。

今、彼女は首のみを掴まれた状態で宙吊りになっている状態。苦痛が伴わないはずもない。

しかし、彼女が幾ら尽力しても“光”のセイバーが手を離す素振りを見せることはない。叩けど、抓れど、表情を一切変えずに持ち上げたままだ。

「セイバー!」

ランサーの叫びが轟く。それはどちらに向かっての叫びか、その疑問を置き去りにランサーは駆けた。

そして、槍がセイバーの腕に届くその寸前。 持っていた剣を地面に突き立て、“光”のセイバーは持ち上げた腕とは反対の拳を握りしめ、そのまま()()()()()()()()()()()()()()()()()

その攻撃にランサーは止まらずを得ない。そのままセイバーはランサーの頭を掴み、地面に叩きつける。

ランサーはその運動に逆らうことが出来ず、ただ(うつぶ)せにに地に伏すのみだった。そして、ランサーの肢体を踏みつけ、彼の動きを封じる。

ランサーも、その体をもう一度、文字通り立て直そうと力を込める。だが、彼が全身の力を結集させたとしても、“光”のセイバーの脚力を押し返すことは出来なかった。

「今はこうなってしまったが。もしもの話だ」

ランサーの頭上から声が響く。 その声は、奇妙なことに哀愁にも似た熱が籠もっていた。

「もしも、君の槍が、“闇”のセイバーを助けるためでなく、“光”のセイバー(わたし)を倒すために突き出されたのならば。今頃転がっていたのは私の方だったのかも知れない。」

英雄に力で劣る自分、英霊に技で劣る自分。 もしも、英雄に正面から挑まれたなら、健闘はすれど勝利はない。

自分は、相手が英雄故に苦戦を強いられた。だが、

「君にそれが判っていたとしても、君は彼女を助けるために槍を構えただろう。それが、英雄の素質。それが私と君の差だ。

魂の奥底に刻まれた、英雄としての心構えは。 君自身にさえ、覆せるものではないのだから」

ランサーは何処までも英雄だ。 それは不可侵の理。 “光”のセイバーは、そこを突いたに過ぎない。

“闇”は、英雄であるが故に有利であったが、英雄であるが故に敗北を喫したのだ。

「それでは、この勝負を終わらせるとしよう。 私に君を倒すことは出来ないから、こうするしかない」

そういって、“光”のセイバーは傍らに突き立てた、“闇”のセイバーが持っていた細剣を、彼の心臓に刺し直した。

ランサーの肺から空気が漏れる。 心臓を貫かれた程度の攻撃では、彼に痛みは産まれることはない。だが、体勢からして、彼は自分の心臓に突き刺さった剣に手を着けることが出来ない。セイバーの怪力も合わさり、ランサーでさえ身じろぎ出来ない状況となった。

「これで、死ななかったとしても動くことは出来まい。 生きていたとしたら、君には伝書鳩となってもらおう。

聖杯大戦の開戦、そして、“光”の軍勢の強大さを語るための礎となって頂く。そのために、彼女の首は頂いていこう」

“光”のセイバーの手に力が加わる。 このままでは、剣を奪い取るのと同じ様に、彼女の首も簡単に手折られるだろう。

その光景を見て、ランサーは歯噛みすることしか出来なかった。 自分に手出しすることは出来ず、ただ見ているだけ。

逆転の一糸は、この場には無かった。ただ約束された結末、開戦直ぐに“闇”のセイバーが落命で緒戦を飾るのみ。

この場で、“闇”のセイバーの敗北を防げるものが有ったとしたらそれは、この世の人間全ての想像力を上回る奇跡か或いは、

この場の登場人物全員を出し抜く機転か伏線だけだ。

―――“光”のセイバーの腕がだらしなく下がる。肩口に小さく空いた穴から鮮やかな赤い血が滴り落ちる。 この場の誰もが起こった事象に説明をつけられなかった。魔術? 或いは宝具か? 幾つもの仮説が“光”のセイバーを駆け巡る。

一瞬遅れて、彼女が手に一つの塊を持っている事に気がつく。黒く、手のひらに丁度収まらないような大きさの、金属の塊。 だが、それが何を引き起こしたかなんて見当もつかない

だが、“闇”のランサーには、彼女が持っていた塊に見覚えが有った。 だが、なぜここに有るのかが分からない。

・・・あれは確か、スズカが持っていた物じゃなかったのか。

「私のスキルの影響なのでしょうか、それとも、これを生前私は持っていたのでしょうか? 自分でも判りません。私は、()()()使()()()()()()()()()()()

手の中で、静かに回される銃は、その言葉の証明であるかのように滑らかだった。

「勘違いなさらないように言いましょう。 (これ)そのものは私の宝具ではありません。私は、これを持って現界した訳ではなく、拝借だけのこと」

「おかしいだろう・・・では、なぜ、私にダメージを与えることが出来る・・・?それが君の武器でないというのなら、他のサーヴァントから借り受けたものだというのか?」

“光”のセイバーの疑問は尤もだ。 サーヴァントは、霊体(サーヴァント)であるからこそ干渉できる。仮に核兵器のように強大な破壊力で立ち向かったとしても、単に物理的な干渉ではサーヴァントに対して意味をなさない。

だが、彼女はその問いに対する答えを持っていないからこそ、首を横に振りながらランサーに歩み寄る。

「さぁ。 私に有ったのは、()()()()()()()()()という確信だけでしたよ」

“闇”のセイバーは、ランサーに突き刺さっていた剣を抜き取る。そして、彼女は構え直した。

剣と銃。 歪な組み合わせであるというのに、彼女の構えには一切の迷いがなく、出処が分からない威圧感さえ感じさせた。

“闇”のセイバーは、紫石(アメジスト)の様に鋭い目つきで見つめる。 “光”のセイバーは剣を拾い直し、構えを取る。

最優のサーヴァントとされる剣士(セイバー)。 二人が真の意味で向かい合うところを倒れながら見つめていたランサーは、彼女がこの場で毅然と立てる理由を理解した。

彼女は、この場に立つべき力量を持っていない。 それはこの場にいる誰もが全会一致で賛同する意見であろう。彼女自身であってもそれは変わらない。

かと言って、この場で畏れなく立ち向かうには、圧倒的に足りない力量を埋め合わせるものが必要だ。ランサーや、“光”のセイバーは、それは彼女の剣技だと思っていたのだ。

だがそれは違った。 剣技という基準(バロメータ)でさえ些細な違い。決して越えられない壁ではないという事。

ならば、彼女を直立させる所以とは? それは体技(フィジカル)で敵わないであるが故の、冴え渡る作戦、身を捨つる覚悟。そういった類の物は、辛くも彼らが不要と切り捨ててきたものだった。

拳銃が火を噴く、剣が残光と共に空を裂く。 それらを同時に、勝手知ったる自らの身体であるかのように振り回す“闇”のセイバーの姿は、この場の誰よりも美しく、この場の誰よりも異常だった。

数回の剣戟、ランサーのそれと比べれば、遥かに弱々しいそれが、響くと言うよりは単に発せられた。

しかし、長い時間を経たせる事なく、戦場の最後の光景は、“闇”が“光”をこれ以上無い程に追い詰めた姿。

細剣は首筋に当てられて、銃口は眉間に突きつけられて、哀れにもただ跪くことしか出来ない“光”のセイバーの姿が、この戦いの終焉を物語っていた。

「どうした? 私は命乞いをするような、殊勝なサーヴァントでは無いんでね。殺すなら今に限るぞ。マスターが気づいて令呪を使わない内にな」

“光”のセイバーは、心の底からそう思って台詞を出す。だが、“闇”のセイバーはそうは行かないと首を振った。

「いいえ。貴方には質問に答えていただきます。 それまで、貴方のことは殺しません」

「質問?」

「はい」

そのやり取りの後、彼女は顔を思いっきり近づけて、脅すというよりは囁くようにして問いかけた。

「貴方は、私の事を知っているのですか?」

暫く、沈黙がこの場を支配した。 如何に百戦錬磨のサーヴァントと言えど、このシチュエーションになるとは思えなかったのだろう。

「・・・いえ、言い方を変えましょう。 貴方は生前私に会ったことが有るのですか?」

戦闘中と同じく、ごく真面目な顔つきでそう問いかける彼女は、ともすれば滑稽に見えなくもなかった。

風が野原を撫でる音がさざめいた後に、ランサーが吹き出す音がこの場に聞こえた次の音だった。

「くはっ! なんだそりゃ! それを訊くにしても、もっと良い時と場所があっただろうに!」

「えっと・・・あの、いけなかったでしょうか?」

ふとすれば泣いてしまいそうな表情だ。 致し方ない、彼女が真面目に質問していたからこそランサーも我慢が効かなかったのだ。

「いや、良いんじゃねぇの? 敗者を支配できんのは、勝者の特権ってやつだ。セイバーさんよ、オレからも頼まぁ。敵に会うたびこんな事やられたんじゃ、オレの腹筋が持たねぇからな」

「それってどういう事ですか・・・」

戦闘直後とは思えない、穏やかな雰囲気が徐々に場を整えつつ有った。次第に“光”のセイバーも毒気を抜かれた上に、ランサーの言葉にも一理あるだろうと、返答するために自分の生前の記憶を洗い出してみる。

そして、導き出した回答は。

「すまんな。 私では君の力になれそうにない」

該当する人間が居なかった。

それを聞いた彼女は、顔に影を落とした。 どうやら本気でショックだったようである。

「そうですか・・・残念です」

「気を落とすなって。 世の中そんな事ばかりだ。 答えてくれただけ良しとしようぜ?」

静かにうなずく“闇”のセイバー。 それに対して、ランサーは気軽に返した。

彼女はもう一度頷いて、力を少しずつ込めていく。“光”のセイバーの首に、段々と深く赤い線が彫られていく。

後数秒もすれば、彼女の勝利は決定したのだろう。

そこに、この場を支配するほどの閃光がきらめいた。青くも力強い光は、燃え盛る恒星の中に放り込まれたような錯覚を彼らに与えた。

“闇”の二人はそれに対して目を腕で覆うぐらいの抵抗しかできず、対して“光”のセイバーは冷静に彼女を蹴り飛ばし、瞬時に距離をとった。

閃光が終わった時、そこには戦いの始まりと同じ様に、お互いの距離感を図るようにして立ち尽くす三人の姿があった。

「仕切り直し、とさせて頂こう。どうやら私一人では君たちの相手には力不足なようだ」

“光”のセイバーが半ば一方的に告げた。

二人は返事をしようとするが、それを待たずにセイバーは霊体となる。こうなってしまえば、お互いに干渉することは不可能となり、彼の思惑通りに仕切り直しとするしかなくなる。

「一体何が・・・」

どちらが言ったか、だがそれは残された二人に共通した遺憾の思いだった。

何が起こったか分からないまま取り残された二人は、互いに互いを見合わせた。

一瞬、と言うには長すぎた光輝。それの原因を探りたい気持ちが湧き上がる。

だが、二人は心を立て直す。ここで何が起こっていたとしても、戦いが一旦収まったのだ、マスターの所に戻ったほうが良いのだろう。その思いは一致し、二人は夜の野原を駆け抜けた。

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