黒い切り札「因縁の相手に先手を取られた。ここから巻き返しを図ろうと思う。……あ、アイツの被害者見つけた。助けなきゃ」
――こんな2人が顔を会わせるまでの話。
※長編用に作った設定で書いたプロトタイプ的な作品です。
※単発です。
※この設定をうまく発展させれば長編になると思われますが、長編化した場合、細かい設定が変わるかもしれません。
・単発。設定を纏められたら長編になる予定。今回はプロトタイプ版。
・デビルチルドレン黒・赤⇒白、真女神転生シリーズとのクロスオーバー。
・主人公魔改造モノ。名前は
・明智先天性TS+魔改造モノ。名前は明智
・オリジナル設定乱舞。
・ある種の勘違いもの。詳しくは中で。
正直な話、仕事で必要な情報でなければ一切興味を持たなかっただろう。情報収集の一環として手に取り読んでみたが、どれもこれも似たようなテンプレートで、惹き込まれる要素は皆無だったように思う。
実際、
自分のコンプレックスを投影してのめり込む対象としては、ライトノベルは余りにも幼稚過ぎたのだ。
『お手軽で読みやすい。何より、主人公が気持ちよく無双するから、このジャンルに惹かれるのだ』という共演者の意見には、うっかり同意しかけたが。
何故僕――
僕は一度死んでいる。ペルソナという異形の力を得た僕は、実の父親に復讐するため――僕を捨てたことを後悔させてやりたくて、「よくやった」という賞賛を聞きたくて、どんな形でもいいから父に認めてもらいたくて、愛してもらいたくて人殺しを繰り返した。僕と同じペルソナの力を持つ怪盗団のリーダー・
最初は利用して捨ててやるために近づいた。何の疑いもなく好意を向けてくる暁斗のことを、内心ずっと馬鹿にしていた。だけど、恋人として接するうちに――彼の善性や暗い過去と打算のない真摯な愛情に触れていくにつれ、僕の方があいつに惹かれてしまっていた。18年という人生の中で一番楽しかったのは、暁斗の恋人として振る舞っていたときだったと胸を張って言える。もっと早く出会えていたら、名実ともに本物になれたのではないかと思ってしまうくらいには。
『恋人を幸せにしたいと願うのは、当たり前のことだろ?』
暁斗は至極当たり前のように微笑んだ。だけど僕は、そこまで愛されたことなんかない。ひたむきに、一途に、身を挺してまで庇ってもらったことなんかない。つまらない世界を美しいものに変えてくれた唯一の人が、賀陽暁斗だった。
明智唯花は“獅童への復讐と賀陽暁斗を二股し、天秤にかけ、暁斗を捨てた”酷い女だ。そうして、彼に冤罪を着せた獅童正義の忠実な部下で、奴の実の娘なのだ。事実を知った暁斗が怒り、僕を捨てたとしても文句は言えない。詰られて罵倒されて当然だった。もう二度と、暁斗は僕に笑いかけてくれないだろう。
復讐のために人を殺した。復讐と最愛の人を天秤にかけ、最愛の人を復讐成就のために生贄にした。明智唯花が望んだものすべてを惜しみなく手渡してくれた賀陽暁斗に、何1つとして返さなかった。
『キミの人生、全部無駄だった。……本当に、キミは何のために生まれてきたんだろうね?』
『お前と出会うためだ』
11月20日、僕と君しかいない取調室。本性をあらわにした僕を見た暁斗は、何の躊躇いもなくそう答えた。文字通りの即答だった。
『お前と出会い、お前に恋をして、お前を愛した。それが俺の人生だ』
『だから、俺の人生は無駄じゃない』
筋金入りの馬鹿だった。救いようのない阿呆だった。裏切られても尚、暁斗は笑う。『明智唯花を愛したことがすべてだった』なんて、悲しいことを言う。
だってそれじゃあ、不公平じゃないか。明智唯花は、賀陽暁斗が与えてくれたものに見合う対価を返していない。彼は僕への愛に殉じたのに、僕はそれに応えないのだ。
僕がしたことは、彼を傷つけた。彼から多くのものを奪った上で、不幸にした。散々幸せにしてもらったのに、愛してもらったのに、そのすべてを仇で返した。
今更返せるとは思わなかった。報いることができるとは思わなかった。弁解できるとも思わないし、素直になるにはあまりにも遅すぎた。
だからせめて、これ以上悲劇を巻き散らかしてはいけないと思った。復讐も、罪も、全部この手で終わらせなくてはと思っていた。
――刺し違えることになっても、この手で終わらせることが、僕にできる唯一のことなのだと。
……後でそれが認知世界の仕組みによって造り上げられた偽物――暁斗の言動がすべて演技だったと分かって怒りを覚えたのは、僕が持っていた数少ない本物を否定されたような心地になったためだと思う。
自分のことを棚上げした理不尽であることは百も承知で、僕は彼に怒りをぶつけた。彼と接触した当初に抱いていた嫉妬や憎悪という熨斗も付けて、恥も外聞も投げ捨てて、散々喚き散らした。感情任せに振りかざした刃は届くことなく、僕は彼に負けたのだ。
『俺だってお前のこと、ずっと好きなんだ! 裏切られたって分かった後も、俺を騙してるんだって分かった後も、今この瞬間だって! ずっとずっと好きなんだよ!』
『だから死ぬわけにはいかなかった。生きて、すべてのしがらみからお前を盗み出すって決めたからな!』
こんなカウンターをしてくるジョーカーに対して、僕のような卑怯者が勝てるはずがなかった。都合のいい未来を思い浮かべてしまうくらい、眩い光に照らされる。
でも、世界はそれを許さない。僕の手にこびり付いた罪の記憶が、それを許さない。獅童の認知によって作り上げられた処刑人によって齎された危機が、それを許さない。
僕は他人を切り捨てて危機を乗り越えてきた人間だから、この場で誰を切り捨てるべきか瞬時に判断が付いた。――これが、僕へ下された罰なのだと。
固く閉ざされた防壁。向うから響く暁斗の声を背にして、僕はひっそり苦笑した。
『最期の相手が“人形だった俺自身”か。……悪くない』
最初で最後の初恋は、僕の死という形で幕を下ろした。最低な裏切り者の末路には相応しい、自業自得な結末だった。
来るはずのない夢想――
その結果、僕は母が亡くなった直後の時間に戻っていた。目を覚まして時計とカレンダーを見たときの驚きようったら、本当にない。
『あの子どもの面倒はどうするんだ? 施設に入れるのは外聞が悪い』
『貴方の家裕福でしょ? 引き取ってよ』
『無茶言うな。あんな穀潰しを飼うのか? 冗談じゃないぜ』
僕の扱いをどうするかで阿鼻叫喚となっている親戚どもを尻目に、僕は考えた。父親に復讐しようと試みようが、
罪を重ねなければ本物の恋人になれただろうか、賀陽暁斗とずっと一緒にいられただろうか――そんなことだけが、ずっと心の中にこびり付いていた。賀陽暁斗と出会って恋人同士になるためには、父の罪――賀陽暁斗に背負わされる冤罪と、それに伴う悲劇を黙認するのと同義だと理解したうえで、尚。
暁斗が冤罪を着せられた直後、彼の養父母は自分と暁斗の本当の関係を暴露し、「お前が生まれてこなければ姉は死ななかった。悪魔の子どもなんていらない」と罵倒した上で養子縁組を解消している。僕と彼が出会った20XX年の時点では、養子縁組の解消が間に合わなくて賀陽姓を名乗っていたらしい。本来の姓は
最低だと分かっていても、僕には賀陽暁斗と再会すること以外何もなかった。もう1度彼に会えるなら、あの豪華客船で死ぬという結末になっても構わないとさえ思ってしまった。暁斗に会いたいという願いがなかったら、今すぐ高いところから飛び降りて死ぬくらいのことをしていてもおかしくないレベルだった。僕には開き直る以外の選択肢はなかったのだ。
獅童相手に鍛えた対人スキルを駆使し、僕は上手い具合に立ち回った。クソみたいな趣味を持った親戚から合法的に逃げる算段を立てるのも、悪意に晒されても笑顔でやり過ごすのも、コネクションを結ぶことになった冴さんにこき使われることになっても、暁斗ともう一度会いたいから我慢できた。進学する高校のランクを秀尽に下げたのも、彼と一緒にいられる時間が欲しかったからだ。
――ただ、
僕が獅童と関わらなくとも、廃人化に関する事件は発生している。
そのことに気づいたのは、ペルソナに目覚めてからすぐのことだった。
テレビに視線を向けた僕は、事故を起こして亡くなった有力政治家の顔を見て息を飲んだ。件の政治家は、僕が獅童に認められるために殺した1番最初のターゲットだったからだ。僕以外の誰かが、嘗ての僕と同じ手段を用いて廃人化を起こしている――それを見過ごすことは、どうしてもできなかった。
しかし、単身で事件を追いかけるような愚行はしない。前回の轍を踏むのはこりごりだった僕は、どうにかして冴さんとコネクションを結べないかと思案していた。僕は彼女とコンタクトを取り、彼女を無理矢理メメントスに放り込むという暴挙に出る。新島冴という人間には、実物/証拠を見せるのが一番手っ取り早い。
さすがのカタブツも――最初は発狂するだろうが――納得せざるを得ないだろうと考えていた。しかし、冴さんは『ああ成程。ペルソナね』と、僕が思った以上にあっさりと納得したのだ。
『頭が爆発するような理不尽は、高校2年生の頃に体験済みなのよ。特にペルソナに関してはね』
げんなりした顔でそう語った冴さんは、珠閒瑠にいた頃の話をしてくれた。こめかみに青筋を立てた彼女は、何かあるとしきりに『珠閒瑠が空を飛ぶよりマシ』と呟いて頭を抱えていたのだ。海に面した地方都市が丸ごと空に浮くとは、何がどうなればそうなってしまうのだろう。
おまけに、冴さんには意中の人がいるらしい。冴さんを事件に巻き込んだ張本人であり、頭が爆発する系の案件を調べる際に頼りになる“先輩”なのだという。肩書は確か、南条コンツェルンの特務研究機関に所属している調査員だったか。
完璧主義の鉄の女VS生まれてきたことが間違いだったレベルの失敗作(自称)による駆け引きは、なかなかうまい具合にいかないらしい。因みに、冴さんの妹――新島真は、最初は件の青年を敵視していたが、最終的には姉の幸せを応援することにしたという。閑話休題。
廃人化事件を引き起こしている実行犯を捕まえるため――
特に、佐倉双葉の実母だった一色若葉のケースに至っては、彼女が車に撥ねられる現場を眼前で目撃することになった。泣き叫ぶ双葉の姿を見て、無事に助けられなかったと歯を食いしばったことは今でも忘れられない。幸い死ぬことはなかったが、彼女は未だに目覚めていなかった。
獅童はこの世界でも同じようなことをしたらしい。一色双葉は喫茶店のマスターに養女として引き取られ、今でも部屋に閉じこもったまま出てこないという。『母親が死んだのはお前のせいだ』と言われたことがある人間として、彼女の気持ちは痛いほどわかる。自分の存在価値に悩みながらも、生きていかねばならなかったから。
実行犯を早く捕まえて事態の収束化を目指しつつ、賀陽暁斗に関することには目をつぶる。
規模の大小を鑑みなければ、僕が防げなかった事件は大きく2つある。1つは一色若葉の交通事故、2つめは地下鉄で発生した事故だ。
どちらも廃人化に関連している事件であり、前者は認知訶学の基礎理論、後者は廃人化事件が民衆や一部の司法関係者に周知される事件だったから。
――そして、後者の事件が起きると言うことは、もう1つの意味がある。賀陽暁斗に関する、重要な案件だ。
***
日々忙しく駆け回る中、ついに今日この日――20XX年の4月11日がやってきた。
賀陽暁斗が秀尽学園高校に転校してくる日が。
「ねえ知ってる? 2年生に前科持ちがやって来るらしいよ」
「地元で暴力事件を起こしたんでしょう? 万引きや恐喝の常習犯だって聞いたよ。なんでそんな危険な奴を受け入れたんだろう?」
「犯罪者は犯罪者らしく、少年院にぶち込まれてりゃあいいのになあ」
学年違いの僕のクラスでも、暁斗のことは話題になっていた。学年違いという他人事感があってもこのレベルなら、彼が所属することになったクラスはどれ程の騒ぎになっていることだろう。僕は思わず眉間にしわを寄せる。――敵意渦巻く場所に、彼はたった1人で立たねばならなかった。
僕が獅童を野放しにしなければ、彼は平穏な人生を歩んでいたのだろうか。養父母と仲睦まじく幸せに暮らしながら、地元の高校で勉学に励んでいたのだろうか。
自分の我儘を通すことにした僕だけれど、こんな身勝手な願いを叶えるために、彼へ苦痛を強いるべきだったのか――後悔を募らせても後の祭りだってことは、僕が一番知っている。
人間とは不思議なもので、考え事をしていても慣れたことは平然とこなせるようだ。気づけば昼休みになっており、弁当を食べ終えたばかりの時間帯となっていた。
(午前中の休み時間内に校舎内を見回ってみたけど、暁斗はまだ来てないんだ……)
初っ端から遅刻するとは、一体何があったのだろう。今日は彼の顔が見れると思って、結構気合い入れて来たのに。
心配だという気持ちと、学校のルールに抵触しない程度のおしゃれをしてきたのにと不満に思う気持ちが交錯する。
良くも悪くもはやる気持ちを抑え、僕は再び2年生の教室と職員室周辺を散策しに行った。そんなとき、彼のクラス担任である川上先生の後ろ姿が見えた。彼女の背中の向こう側にいた人物に、僕は目を奪われる。
くせ毛の強い黒髪のウルフヘア、顔を隠すようにしてつけられた野暮ったい伊達眼鏡、静かな面持ちを見せる鋭い瞳――間違いない。
「――
「――え?」
川上先生の言葉に、僕は反射的に声を漏らしていた。
目の前にいる青年は、まごうことなき賀陽暁斗だ。なのに、川上先生は彼のことを高城と呼んでいる。
……養子縁組の解除がスムーズにいけば、彼の名前は高城暁斗だったことを思い出し、僕は思わず2人の会話に耳を傾けた。
「申し訳ありません。以前働いていたバイト先の関係者から『引継ぎがうまくいかなかったらしく、結果、東京の方で厄介事が発生したので対処に当たってほしい』と頭を下げられまして。現場が電波の届かない場所だったために、先生へ連絡できなかったんです」
暁斗は深々と頭を下げた。川上先生は暁斗の言い分を信用している様子はなく――むしろ、前科者のレッテルから虚偽であると睨んでいるらしい――、眉間の皺を深めている。
しかし、暁斗に着せられた濡れ衣――傷害事件の犯人という観点から、川上先生は事態の穏便化を図り、自分の身を守ることを選んだようだ。特に追及することなく暁斗を解放する。
川上先生が持ちだした無言の取引に従ったのだろう。暁斗は深々と頭を下げ、謝罪と感謝の言葉を口にした。川上先生はそのまま立ち去っていく。
――そうして、僕と彼の目が合った。
僕が見ていることに気づいた暁斗は小さく目を見張り、不思議そうに首をかしげる。幸か不幸か、彼は僕と違って
安堵する半面、寂しさを感じて胸が痛む。自分の心にひっそり蓋をした僕は、暁斗と向き直った。何かを話したくて口を開いたのに、言葉は一切出てこない。
「どうかしましたか?」
「えっ!? あ、その…………か、髪にゴミついてるよ?」
我ながら、苦しい言い訳であることは重々承知している。だが、お人好しの暁斗は初対面である僕の言葉を疑うことなく、ごみを払うために髪を整え始めた。一通り髪の毛に手櫛を通した後、こちらに向き直る。
「落ちましたか?」
「う、うん。大丈夫」
「そうですか。わざわざ指摘して頂き、ありがとうございました。……何分、俺は訳ありな人間なものでして、貴女のように指摘してくれる相手がいないんですよね」
どこか暗い笑みを浮かべた暁斗の姿に、胸が痛くなった。異質なものは常に遠巻きにされ、必要な情報が回ってこないなどの嫌がらせを受けることがある。
しかも、相手側が情報が回らないように根回ししたくせに、それによるミスを引き起こした人物を、そのミスを出汁にして更に遠巻きにするのだ。
真正面から指摘してくれる相手がいるということは、実は一番幸せな部類だったりする。「好きの反対は嫌いではなく無関心だ」とはよく言ったものだ。
僕が思わず俯いたのと、廊下をうろついていた生徒たちが教室へ戻り始めたのはほぼ同時。時計を確認すれば、もうすぐ次の授業が始まる時間帯だ。そろそろ教室に戻らないと遅刻扱いにされてしまう。
「それじゃあ、そろそろ時間ですから。俺はこれで」
「うん。それじゃあね」
「またね」と言うことができなかったのは、こちらを気遣うようにして、暁斗が踵を返したためだ。周りの生徒たちは、ピリピリとした眼差しで暁斗を監視している。
冤罪とはいえ、暁斗には傷害という汚名が着せられていた。いつどこで誰に暴力を振るうのか分からない――周囲の人間はそんな色眼鏡で彼を見ている。
今だって、『明智唯花の心配』という名目よりも、『高城暁斗が暴力行為をするのではないかという危惧』という名目のウエイトが大きいのだろう。――あるいは、前科持ちに興味を持って接触してきた人間である僕に対する色眼鏡もあるのか。
僕が周囲を一瞥すると、彼らは蜘蛛の子を散らすようにして去っていく。色々言いたいことはあったが、もうすぐ授業が始まる時間だ。僕は全ての言葉を飲み込んで、3年生の教室へと戻っていった。チャイムが鳴る前に教室内へ戻り、席につく。
程なくして教師がやってきた。いつもと変わらぬルーチンワークが始まり、退屈な授業は続く。今日は特に問題が起きることはなく、暁斗と顔を合わせることなく、学校生活という1日が終わりを告げた。
僕は鞄に荷物を詰め込み、暁斗の背中を探した。声をかけられたら儲けものだが、今は無性に彼に会いたかった。話したいことを考える余裕もなく、校内を散策する。
(――あ)
暁斗は1人、学校の脇にある路地裏にいた。誰かと話し込んでいるようだ。
偽物とはいえ、探偵として培った経験は伊達ではない。耳を傍立たせる。
「――……を見つけた。幸か不幸か、本人はまだ何も知らないらしい」
「それじゃあ、オレが護衛役につけばいいんだな?」
「ああ、頼む。できる限り、本人に知られないようにしてくれよ?」
「任せてくれマスター。うまくやるさ」
相手の姿を確認しようと僕が身を乗り出したとき、不意に寒気を感じて振り返る。普段と変わらぬ景色――夕焼け色に染まった東京の街並みが広がっていた。……
――ヒヒヒヒッ。
何処からか笑い声が響いた。僕は反射的に身構える。イセカイナビを使おうかとスマホを手に取ったが、ナビはエラー画面を吐き出したっきり動かない。ここは現実世界という扱いらしく、僕の服装が変わる様子はなかった。怪盗としての力も発揮されていない。
こんな状態で異常事態に引きずり込まれてしまったのだ。シャドウのような敵が出てきた場合、今の僕には対抗手段がない。かといって逃げようにも、ペルソナによるナビゲート能力がない状態では、安全な場所や出口を見つけることは不可能だった。
逃げる算段を立てていた僕の思考回路は、何者かに足を引っかけられたことで中断された。視界が反転し、僕はそのまま地面に尻もちをつく。
その隙を逃すことなく、何者かは僕を押さえつけてマウントを取った。抵抗しようと手足をばたつかせるが、動きを封じられてしまう。
夕焼けの光が逆光となったせいか、明るいはずなのに、相手の顔には影がかかっていた。それがかえって、相手の異質性を倍増させている。
人間の肌の色にはあり得ない青。触った感触を例えるとするなら、爬虫類が近いのかもしれない。皮膚の特徴から毛は一本も生えておらず、ほぼ全裸である。背中には蝙蝠のような羽が生えていた。黒目が細い三白眼は、僕に対して下卑たことを考えていた親戚と同じ気配を感じさせる。
化け物。僕は咄嗟に口走る。
それを聞いた異形はニィと笑った。
「ほうほう。コイツが、“あのお方”が仰っていたお人形かぁ。――確かに上玉じゃねえか」
異形の下卑た手つきが僕の頬を撫でる。悍ましさと悪寒に体が震えた。逃げなければならないと分かっているのに、人外離れした力によって身動きが取れない。
「なーに、コイツはどうせ“あのお方”の玩具になるんだ。結末が一緒なら、今ここで俺様が手をつけても構わねえよな。『ちょっとの味見』はOKっつー条件だったし」
“あのお方”、お人形、玩具、結末、『ちょっとの味見』――飛び出してきた情報を理解する余裕は皆無。情報過多すぎて、頭の回転は鈍いままだ。
だが、異形の眼差しと欲望を滾らせた証を示されたことで、僕は自分の末路を一発で割り出すことができた。――否、「できてしまった」という表現の方が正しい。
(コイツ、僕のことを犯すつもりなんだ……!)
しかも、奴の話からして、何か組織的な存在が動いていることは明らかだ。この異形はあくまでも末端であり、奴の目的は「僕を拉致して主に献上する」こと。
「今この場で僕を犯す」のはあくまでもコイツの趣味であり、このまま拉致されて黒幕に献上された先でも「コイツの趣味」と遜色ない地獄が待ち構えている。
見知らぬ男に犯されるのは恐ろしい。同姓異性問わず、人間同士ですら襲われたことがトラウマになるというのに、人間ですらない異形に犯される恐怖は計り知れない。
知らなかった。こんな異形が現実世界にいたことなんてない。ペルソナを行使できない場所で、一般人と変わらぬ状態で、圧倒的力を持つ異形に組み敷かれる羽目になったこともない。――そもそも、僕を狙って現れた組織なるモノだって存在していなかったはずだ。
そんな僕を見て異形は何を考えたのか、ニタニタと不気味に嗤いながら肌に触れてくる。舌なめずりしながら荒い呼吸を繰り返す異形の口腔内は、皮膚の色に反して真っ赤だ。
「ひ……ッ!」
「ああ、いいねぇその表情。実にそそる」
異形は慣れた手つきで、僕が着ているブレザーのボタンを外していく。/――いやだ。
ボタンは難なく外され、次はキャミソールごとインナーの前部分をたくし上げる。/――いやだ。
レース細工が施されたブラジャーを見て、異形は鼻息を荒くした。/――いやだ。
逃れようと体をばたつかせても、化け物によって難なく押さえつけられてしまう。/――いやだ。
守るものを失った僕の腰部をなぞるようにして、化け物の手が滑る。/――いやだ!!
「助けて、助けて! ――誰か助けて!!」
僕は耐え切れず、声を上げていた。動かない身体に力を込めて、頭を振り乱しながら叫んでいた。
助けを求めて伸ばした手は誰からも握り返してもらえなかった。今回だってそうだと分かっていたのに、居もしない誰かに助けを求めて泣き叫んでいた。
案の定、助けなんて来ない。当たり前のことだったけど、その事実が辛かった。もう駄目なのだと理解した僕に許されたのは、涙を流して震えることのみ――
「――コール!」
――聞き覚えのある声がした。
間髪入れず青白い光が巻き起こり、轟くような音を立てて突風を発生させる。異形は驚いたように声を上げて、力の発生源に視線を向けた。
釣られて僕も視線を向ける。夕焼けの向こう側に佇む人影を見た。逆光の中でも、その人物が誰なのか、僕にははっきりと理解できる。
「……暁斗、くん……!?」
「馬鹿な! “デビルチルドレン”だと!? もう嗅ぎつけたのか!?」
異形の顔に怯えが走る。同時に、僕には聞き慣れぬ言葉が響いた。
“デビルチルドレン”――単語をそのまま直訳すれば“悪魔の子”という意味になる。そんな物騒な単語が、何故異形の口から出て来たのかは分からない。その言葉が何を意味しているかも知る術はなかった。
呆気にとられる僕らを前にしても、暁斗は鋭い気配を絶やさない。僕が愛した
「……『本人に気づかれないように』と言ったばかりなのに、こういう落ちか。まったく、あのクソ天使は仕事が早い」
冷淡な言葉の中に秘められたのは、絶対零度/怒髪天を衝く程の怒りだ。異形は怯えるように身じろぎするも、恐怖を振り払うようにしてかぶりを振った。やぶれかぶれだと言わんばかりに、暁斗へ向かって襲い掛かる。しかし、異形の拳は暁斗に振り下ろされることはなかった。
文字通りの
耳が垂れた犬を思わせるような紫色の生き物が、同じ紫基調のナイトキャップとパジャマを身に纏っている。左手には火のついた蝋燭を乗せた小さな燭台が握りしめられていた。
ナイトキャップとパジャマには、黄色い星が無数に描かれている。ややきついツリ目であるにもかかわらず、件の生き物の目はつぶらであった。……場違いな話だが。閑話休題。
どうやら、暁斗が連れてきたと思しき生き物と僕を犯そうとした異形との間には、相当な練度差が存在しているようだ。僕は思わず生唾を飲む。暁斗は異形の胸倉を掴んだ。
「た、助けてくれ! 俺様は頼まれただけで、詳しいことは何にも知らないんだ!」
「だろうな。お前は『人間の女を犯せるならそれでいい』と言って、あのクソ天使の悪事に便乗しただけに過ぎない小物だ。――最も、似たような調子でクソ天使に迎合した連中は、魔界にも天界にもごまんといる。つい先日、そういう奴を取り締まる合同部署が出来上がったばかりだ。……吐けるだけ吐いてもらおうじゃないか」
彼が何を言っているのか、僕にはさっぱり理解できなかった。そこから先は暁斗たちの独壇場で、彼らは異形を威嚇しながら誰かに連絡を取り始める。
すると、即座に別な異形が姿を現した。鳥を連想させるような翼が生えた機械のような生き物と、蝙蝠を連想させるような翼が生えた生き物は、僕を犯そうとした異形を引っ立てて虚空へ消える。超常現象に混乱する僕を気遣ってくれたのか、暁斗は自分の制服の上着を僕に被せ、僕が落ち着くまで待ってくれた。
微かに香る洗剤の匂い。嗅ぎ慣れたコーヒーの香りと違うことに違和感を覚えた僕だが、今日の日付を思い出して納得する。東京に来たばかりの暁斗はまだ、喫茶店のマスターである佐倉惣治郎氏からコーヒーに関する手ほどきを受けていない。
嗅ぎ慣れた香りとは違うけれど、暁斗に抱きしめられているような気持ちに浸ることには些細な問題だった。閑話休題。
4月と言っても、この時期は寒暖差が安定しない。特に、昼間と夕方の温度の差は歴然で、上着一枚の差でも体感温度は大きく違ってくる。
案の定、少し寒いのか、暁斗はしきりに自分の腕をさすっていた。上着を握り締めて離そうとしない僕を気遣ってくれているのだろう。
ああ好きだな、と、心の中でひっそり呟く。大変名残惜しいが、暁斗に風邪をひかせてまでこの状況を堪能したいとは思えなかった。
「助けてくれてありがとう。大分落ち着いたよ。……上着、返すね」
「ああ、どうも。……でも、やっぱり顔色が悪いですよ。どこか落ち着ける場所に座れればいいんでしょうけど……」
「こうなってしまった以上、きちんと説明しなければならないでしょうし」と呟き、暁斗は顎に手を当てて考え込む。真剣な面持ちは、
東京に来たばかりで馴染みがないせいか、暁斗はこの近隣にある店事情に詳しくなかった。かくいう僕も、この近隣にある店を利用する機会には恵まれていない。
何か手ごろな店はないかとスマホで調べて見れば、近隣にファーストフード店が営業していた。あそこなら常に人の気配があり、小声で密談する分には何とかなる。僕の説明に納得した暁斗も頷き、僕たちは場所を移動することとなった。
先程まで人気のなかった夕焼けの街には、いつの間にか賑わいが戻っている。
人気がなかったのが嘘みたいに、帰宅途中の生徒や仕事帰りの大人たちで溢れていた。
「さっきまで誰もいなかったのに、どうして……」
「相手を自分の領域に引きずり込む――悪魔の得意手段ですよ。……あの個体は“そう言うのが得意な奴”の配下だから、余計に精度が高いんです」
「……悪魔?」
「そういうモノの説明も含めて、お話します」
何やら、ペルソナと認知世界以上にカルトな雰囲気が漂っている。「歩けますか?」と問われ、僕は頷き返した。
◆
留置場の面会室。透明なガラスを挟んで、面会者と向かい合う。
「サキュバスに搾り取られて死にかけていた頭の禿げたオッサンと、インキュバスに襲われかかってた女の人を助けたら、禿げたオッサンが『お楽しみを邪魔された』と怒り出して冤罪着せてきた」
何を言っているのか分からないと思うが、実体験をする羽目になった俺――
昔から理不尽な目にあってきたけれど、今回の一件は輪をかけて酷かった。親父(褐色緑髪赤目エスニック風パーカー合法ショタ)が一瞬無表情になるレベルには。
「助けた女の人もグルになって偽の証言でっちあげられて、後は権力でスピード有罪。ついでに、頭の禿げたオッサンには、あいつの手駒であることを示すマーキングが施されてた」
「クソが!!」
親父は俺がこんな結末に至る原因を察したのか、可愛らしい顔を醜悪に歪めて机を叩いた。派手な音と一緒に火花が散り、一筋の煙が立ち上る。親父の拳は机にめり込み、拳より3周り以上の大きさでクレーターを形成していた。……ちょっとアタックに振りすぎたかもしれない。
尚、他の人間たちは親父の存在を知覚できておらず、俺が親父と会話をしていることなど気づいちゃいない。こういうとき、自分の生まれ――かなり特殊な事情があるが故に――が便利だとつくづく思う。親父は暫く机に八つ当たりをしていたが、深々とため息をついた。
「不覚だった。まさか、あのクソ天使に先手を取られるとはね……」
「面目ない。近くにいたバンジーが泣き喚いていた本当の理由に気づかなかったことが迂闊だったんだ」
「いや、暁斗は悪くないよ。これはボクの失態だ。もっと早く、キミに情報を伝えることさえできていたら……」
過ぎたことは変えられないことを重々理解して、それでもやっぱり納得できなくて、親父は額に手を当てて項垂れた。いつの間にか、親父の姿はエスニック風パーカーを着た合法ショタから超高級ブランドスーツを着こなす実業家風の青年へと変わっている。瞬きする間の変化であった。
親父がこの姿をとるようになったのは、つい4年ほど前からだったか。『合法ショタ状態では、授業参観や三者面談に呼べない。伯父さんに頼むしかなくなる』とぼやいたら、即座にこの姿に変身した。大人としてのエトセトラや保護者が必要なとき、親父はこちらのガワを取って行動している。
……まあ、俺の知り合いの別個体には、ある目的の為に女子高生の姿をとった奴がいたか。結果、俺の知り合いの方の個体が緊急家族会議を開くこととなったらしい。年頃の少年少女には、父親の別個体が女子高生の姿をとったという事実は中々にキツかったのだろう。
実際、俺も似たような目に合ったから分かる。しかもかなり美人だったから、尚更分かる。別個体と分かっていても、なんだかこう、居たたまれない気持ちになってしまうのだ。
親父とその関係者、あるいは彼らの別個体たちは、理論上、どんな姿をとることができる。男性の姿をとって女性と添い遂げることもあれば、女性の姿になって男性と交際することもある。
但し、そういう奴らの特異上、現実世界で本来の姿をとることは滅多にない。人間の姿のままでも凄まじい怪異性を持っているし、破壊力だって折り紙付きなのだ。現実世界を滅ぼせるくらいには。
――最も、
「――多分、これが、奴との最終決戦になるだろう」
親父の言葉に、俺は頷いた。
「俺もそう思う。寧ろ、ここで止めないと、魔界も天界も現実世界も連鎖的に崩壊する。……
脳裏に浮かんだのは、俺が今まで出会ってきた人々だ。東京に住んでいた頃に出会った戦友――甲斐刹那、要未来、甲斐永久、葛葉将来、王城嵩治、王城翔。5年前に起きた2つの“とある事件”では協力し、人知れず、3つの世界を救うために駆けずり回ることとなった。
1回目は魔界を治める悪魔たちを中心としたお家騒動に天使が横やりを入れてきて、2回目は天使たちの派閥抗争のために力を授かった少年たちが翻弄され、結果的に3世界すべてが滅ぶ寸前まで行った。どちらの主犯も、最終的にはボコボコにされて然るべき罰を受けている。
しかし、『その悪事に加担しながら、自分の野望を叶えようと暗躍していた天使』には悉く逃げられていた。俺は手を強く握りしめる。
(デミウルゴス……!)
母を天界へ拉致し、エンゼルチルドレンを生み落す機械として凌辱し尽くした挙句、失敗作の烙印を押してディープホール――魔界における牢獄にして廃棄物処理場と称しても過言ではない――に投棄した張本人。悪魔や人間を飼い殺しにすることで、天使の支配を強固にしようとした派閥を率いる天使の1体だ。
因みに、デミウルゴスの同盟相手のラグエルも、やり方は違うが同じ目的を持って行動していた。5年前に発生した天使の派閥争い時、デミウルゴスはラグエルの支援に力を入れている。……最も、ラグエルが不利になった途端、奴を見捨てて逃げおおせてしまったが。思い出すだけでイライラする。いい加減ぶん殴ってやりたい。
更に蛇足であるが、魔界の王位争いの時点ではアゼルやミカエルと組んで襲い掛かってきたか。奴らが差し向けた刺客のせいで、俺は自分が両親だと信じていた人物が養父母/叔母夫婦であることを突きつけられ、養父母たちが命乞いをする際に生贄として差し出され、悪魔の撃退に成功後は「化け物」と詰られて追い出されている。
デミウルゴスの悪意によって、俺の人生は大幅に変わってしまった。
大好きだった両親――否、実際は義理の両親にして叔母夫婦からは拒絶された。自分のルーツと父親を探すため、そして世界を救うため、齢12歳で魔界に足を踏み入れた。
旅をサポートしてくれた少年が実の父親だったことを知って、母の死の真相を知った。母の死の真相を知り、手を貸してくれた天使の協力者もいた。戦友もできた。
何事もなければ、俺は
……あの野郎のことだから、『今のお前の栄光を形作るものは、すべて私が与えたものだ』と言ってふんぞり返っていてもおかしくなさそうである。
良いこともあったとは認めよう。かけがえのない戦友を得ることができたのは、否定できない事実だ。――だが、それとこれとは別問題だろう。
母と俺の人生を滅茶苦茶にするだけでは飽き足らず、他の人々の人生も弄んでいるのだ。今回の事件だって、デミウルゴスの悪意の被害者は、他にもたくさんいるはず。
「十中八九、俺以外にも、似たような被害にあっている奴がいるはずだ。母さんのように、あいつのオモチャにされかかってる人が」
「だろうね。あのクソ天使ならやりかねない」
「だからこそ、3度目の正直を勝ち取らなきゃいけない。これ以上俺の人生を滅茶苦茶にされるのはこりごりだし、俺と同じ思いをする人が増えるのも嫌だから」
「暁斗……」
親父は少し驚いたように目を丸くした後、すぐに柔らかな笑みを浮かべた。
「――なら、できる限りの準備をしないとね」
「現時点でヤツは姿を現していないが、俺が東京で保護観察処分を受けている期間、どこかできっと仕掛けてくるハズ。そのときまでに、こっちの戦力を揃えておかなきゃ」
だから。
そこから先の言葉を予測できたのだろう。笑顔だった父親が、きょとんとした顔になり、みるみるうちに端正な顔を悲壮に歪ませた。
今にも泣き出してしまいそうな情けない顔を晒して、親父は縋りつくように俺を見返す。俺はニッコリ笑って、告げた。
「――当面の間、親父には訓練所に行ってもらおうと思って」
「うわあああああああああああああああああああん!!!」
親父はわっと泣き出した。青年実業家風の男性がするような顔ではない。小学生が宿題の山を突きつけられた結果泣き出したような泣き方だった。心なしか、親父の被っているガワが幼くなった――顔の特徴が少年のガワに寄ったように思う。
そんなに泣くようなことではないだろう。ルシファーも息子と娘から似たような扱いを受けているのだ。刹那は父親を容赦なく訓練所にぶち込み、未来は父親を躊躇いなくヴィネセンター――悪魔の預り所送りにしようとした有様である。
ルシファーが2人の仲魔として加わった直後、刹那と未来から『うわっ!? 父さん/パパ、弱すぎ……!?』と驚かれドン引かれていた。実際、俺もルシファーのパラメータを見て納得した。これは確実に訓練所送り案件だろうとさえ思った。
別個体による純血合体が容易にできないのだから、ルシファーの能力を上げるには訓練所以外ないのである。流石に閣下の個体と合体させるわけにはいかない。
それは、親父にも言えた話だった。一歩間違えれば、俺の親父が性転換して赤の他人になる危険性もはらんでいる。どんな形であれど、身内を失うのはもうこりごりだ。
「息子に訓練所送りにされる父親なんて」と嘆きを叫ぶ父には悪いが、勝利の布石には必要最低限のことなので頑張って頂きたい。俺にとっての最終兵器的存在は親父なのだから。
――蛇足であるが、後日。
訓練所に行ったら、ルシファーとミカエルを訓練所送りにしたばかりの刹那と永久に鉢合わせした。考えることはみんな一緒らしい。
隣り合った檻の中で体育座りをする父親たちを尻目に、俺たちはデミウルゴスを止めるために行動を開始したのである。
今回のコンセプトは「攻略本なし2周目プレイヤー明智♀と、デビルチルドレンシリーズをクリアした1周目プレイヤー高城暁斗による黒幕フルボッコ計画スタート」。
ある一定方面に特化した舞台設定とその他諸々の要素だけで書き上げたプロトタイプ的なお話。長編にすることを視野に入れた短編で、正式な長編になった場合は設定が変動している部分があるかもしれません。