ザナック・ヴァルレオン・イガナ・ライル・ヴァイセルフ 次男
ラナー・ティエール・シャルドロン・ライル・ヴァイセルフ 三女
ランポッサⅢ世 リ・エスティーゼ王国国王、父親
ここは……、リ・エスティーゼ王国、ロ・レンテ城……。俺は……、バルブロ・アンドレアン・イエルド・ライル・ヴァイセルフ。国王ランポッサⅢ世の長男で……。ふむ、なるほど、いきなり詰んだ気がする……。
鏡の前でメイドに身だしなみを整えられながら今までの自分の記憶をたどって現状把握に勤しんだが、この時点ですでにやばい……。神様に転生先聞かれて、1stガンダムって答えたし、特典もニュータイプ能力と答えたはずなんだが、なにを間違えたかオーバーロード。ガンダムシリーズですらない。SFですらない剣と魔法の混沌とした世界。
うん、ニュータイプ能力意味なかったNE☆ミ しかも転生先が無能な死亡キャラとか、悪意の塊ではなかろうか。今この場に俺一人ならこのままうずくまりたいくらいだ。しかし、無能な死亡確定キャラとはいえ、折角この世界に来れたのだから、原作キャラに会うくらいの役得は享受しよう。
ええっとー……? 弟のザナックは、順調に体重を増やしておられるようで、妹のラナーは……まだ5歳……だと……!? つまるところ原作までは10年以上! そして俺はまだ12歳……。そういえば鏡に映る俺の姿はまだ幼い気がする。これはもしかして何とかできるのか?
少し考えてみよう。
第一王子の俺がそれなりの生活を維持でき、内外から暗殺する価値すら見出させず、ナザリックが転移してきてからも生き残れる。そんな未来を手繰り寄せられればあとはアインズ様がすべて解決してくれるだろう。
つまりナザリックが転移してくるまでにアインズ様に喧嘩を売るような奴らをある程度掃除し、ナザリックにそれなりの価値を見出させつつ属国ポジションに入れれば俺の将来は安泰なのではなかろうか。王国の価値をどの程度にするかの匙加減はとても難しいが、希望がわいてきた……。
うむ、玉座など狙わねばよいのだ。幸い弟のザナックは頭がいいし話がわかるはず(予定)だ。そして、末の妹のラナーは原作では最高の頭脳の持ち主。ラナーに全て任せれば王国の未来も明るい。ラナーを影の支配者に仕立て、ザナックを飾りに据え、俺と父上は楽隠居。これが王国の(俺の)最強の布陣ではなかろうか。
思いついたが吉日。さっそく行動開始だ!
「俺は王位継承権を捨てるぞ父上!」と、突撃した所までは問題なかったんだが、ただ単に乱心したと思われて近衛兵に拘束された上に追い出された。本来は勉強の時間なので部屋に連行されそうになったが、前世ではそこそこいい大学出てるし弟の優秀さを引き立てないと今後に影響するだろうからパス。ぶっちゃけ数学以外の勉強嫌いだし……。というわけで近衛兵に俺を受け渡された兵士やメイドを振り切った。この身体のスペックは案外いいのかもしれない。
次点で原作キャラの中でも今会える一番の美貌を持つであろう第三王女ラナーの下に来た。ラナーは弱冠5歳にしてかわいいとしか言いようがない! サラサラの金髪! どろりとした目つき! 消えた瞳のハイライト! 歪んだ表情! 取り繕う事を知らない無垢な心! ちょっと痩せすぎな気もするけど多分気にしてはいけない! そう、かわいいは正義なのだから……。
ロリコンだって? うん、否定はしないけど残念ながら血のつながった妹なんだ。義母兄妹ならまだギリギリセーフかもしれない。だが、クライム君もいるだろうし色々と完全にアウトだろう。むしろ竜王国あたりに政略結婚で放出してもらった方が趣向的には最高ではなかろうか。
「ラナーはかわいいなぁ」とか考えながら軽いスキンシップと共に愚痴をこぼしつつナザリック関連を省いて王国とか俺の将来について相談してみたんだけど、5歳にしてすでに会話が成り立つとかマジラナー天才!
「なるほど、それでお兄様は王位継承権をお捨てになりたいと……」
「うん、ラナーは頭がよくてかわいいね。なでなで」
「それでわたくしを実質的な王に据えたいと……」
「うんうん、でもそれなりの生活はさせてね。さわさわ」
「わかりましたわ! お任せくださいませ。でもお兄様にも協力してもらいますわよ?」
え? わかったの? 任せちゃっていいの!? ラナーマジすげぇ! 当然YESと答えたよ!
とりあえず好きな事をしていていいけど一日一回は相談に来るように言われた。心強いことこの上ない。そう、最初からラナーのところに来れば良かったのだ。あっという間にすべて解決してしまった。父上の王権にすがる必要なんてなかったんや。
そういえばクライムくんはどこにいるんだろう。彼によくしていればラナーも裏切りづらくなる安全間違いなしのボーナスキャラなのだがラナーの部屋にはいなかった。まぁラナーより年下だろうし、拾われたばかりで訓練とか研修で忙しいのだろう。まぁ会えたら声かけて聞こえのいいことを言っておこう。
しかし身も心も軽くなった俺にようやくこの世界を楽しむゆとりが生まれた。
とりあえず、興味のあるところを散策しようとお城を探検したのだが、やはり古い時代のお城はすばらしい。博物館にあるようなものが現役で使われていたので色々眺めたりさわってみたり、壁にかかっている絵を鑑賞したり、練兵場を視察したり、馬に乗ってみたり……。
初めての乗馬体験だったんだけど意外と簡単に乗れた。人馬一体とはこの事だろうか、馬の挙動もわかるし思った通り動いてくれる。さすがは王国お抱えのお馬さんである。そして馬と言ったらランスチャージ。実はちょっと憧れてたんだよね。調子に乗って置いてあった長い木の棒を脇に抱えてそれっぽい事しただけだけどテンション上がりまくって脳汁出た!
うむ、これを生き甲斐にしよう!
side ラナー・ティエール・シャルドロン・ライル・ヴァイセルフ
はぁ……、バルブロお兄様。あんなに純粋な目でわたくしを見るなんて……、なんてステキなのでしょう。以前お会いしたときとはまるで別人のよう。いえ、別人なのかもしれませんわね。それでも全くかまいませんわ。あの瞳でわたくしを見つめてくれてあの手でわたくしにさわってくださるだけでこんなに幸せな気分になれるんですもの。
頼ってくる
まずはお兄様の好みを探って、お兄様の望むように……―――
いかがでしたでしょうか。お気に召したら光栄ですが、お気に召さなかったら記憶を消してそっとブラウザバックでお願いします。