ラナー:ヒロイン。父とレェブン候のせいで出番が消えた。ご立腹中
騎士アントン:宮中でやらかした事を気に病んでる
騎士ドゥリアン:団旗以外どうでもいい
騎士トロワ:頭脳派枠に昇進しそう
パナソレイ・グルーゼ・デイ・レッテンマイア:エ・ランテルの都市長。おデブな体型とブルドッグのような容姿でぷひーぷひー言いながら微妙な会話法で相手を油断させるのが好き。9年前から都市長だったかは不明
プルトン・アインザック:エ・ランテル冒険者組合の組合長。元冒険者。今回の被害者。9年前から組合長だったかは不明
イシュペン:Web版に登場した受付嬢。彼女なりの価値観を持っている。何となく受付嬢と言ったらこの人だったので9年後の世界から時空を越えて参加
冒険者ごっこをするからには絶対必要なものがひとつある。そう、冒険者プレートだ。
最低ランクの初心者
8階級に分けられるわけだが、最初は誰でも
つまり、第一王子の俺でも冒険者になれる……ハズだ。
勅命はエ・ランテル近郊の警備とカッツェ平野でアンデット間引きというかなりほんわかした内容だ。これこれをいつまでにといったものではないので飽きるか物資が無くなるまでという事でいいだろう。
はっ!? 冒険者ごっこの傍らで冒険者ギルドを使ってお小遣いを荒稼ぎするチャンスでもあるのか! 我々は通常の冒険者と違って活動費用はすべて国の負担だ。しかし国から冒険者ギルドへ依頼し、その依頼料を冒険者ギルドと我々がいただく事になるが、国家予算と我々のお小遣いは別なのでそういったことは気にしてはいけない。
国としては赤字確定だが俺や遊び仲間、さらに冒険者ギルドにとっては黒字確定のビッグチャンス! 冒険者ギルドも快く協力してくれる事だろう。
これは急がねばなるまいて……。この際できる限り稼いでラナー様に何かプレゼントを買うことにしよう。
いつもの訓練場に着くとすでにエ・ランテル遠征の準備がされていた。何日か前から内々に命令があったそうだ。ただ、従者用の馬が普通の王国のお馬さんだったので全てスレイプニールに変更させた。基本的に従者もお馬さんに乗れる。つまりスレイプニールも乗れるハズだ。
ここに残る馬のほとんどが普通のお馬さんになってしまうが、どうせスレイプニールに乗るのはここで遊ぶメンバー。つまり10頭も残っていれば充分なのである。
全員フル装備。天幕やなんやかんやは降ろして水食料と予備の武具やランスにくっつける予備のアタッチメントを持たせた。準備が整う間に騎士アントンと騎士ドゥリアン、そして騎士トロワ(最近覚えた)を呼んで軍議だ。情報のすり合わせ、及び目的意識をひとつにするのは大切である。
「というわけで我々はエ・ランテル近郊、およびカッツェ平野の掃討に赴くわけだが、ひとつ大きな問題がある」
「はぁ……、やはりあの時……」
「ふむ、察するにカッツェ平野での帝国との国境問題ですな?」
「ほぅ、わかるか。騎士ドゥリアン」
なんだかしょんぼりする騎士アントンは放っておこう。時間が解決してくれるはずだ。それに騎士ドゥリアンはいつも旗掲げるのに全力を尽くすだけかと思ったら頭脳派だったようだ。騎士ドゥリアンに相槌を打ったがぶっちゃけ国境の事など考えていなかったし、どうでもいい。正解は冒険者プレートをどう入手するかなのだが理由付けには使えそうだ。中々やるな、ナイスアシストだ、騎士ドゥリアン。
「ええ、殿下。国内ならば問題ありますまい。しかしこの数とはいえ王国騎士団がカッツェ平野に展開しては国際問題になりかねませんな……」
「しかも我々は創設されたばかりの騎士団。帝国侵攻のために創設されたと思われても仕方ありますまい。陛下からの指示はありましたでしょうか」
「ふむ。特になかったな」
「やはりあの時……。やはりあの時……」
騎士ドゥリアンの意見を騎士トロワが補足してくれたが騎士アントンが帰ってこない。そんなに悲観することでもあるまいて……。ぶっちゃけいつもの遊びがちょっとグレードアップするだけだ。しかもお小遣いまで稼げるすばらしい案もある。
「というわけで、私はエ・ランテル冒険者ギルドで冒険者として登録することにする!」
「なっ!? お待ちくださ―――」
「なるほど、それならば理屈は通りますな。しかし団旗はいかがいたしましょう」
「さすがは殿下。騎士ドゥリアン、それならば王国騎士団というチーム名にし、そのまま団旗を使えばよいではないか」
「騎士トロワ。中々の名案。恐れ入った」
「貴公こそ、殿下のお考えを即座に察するその能力、すばらしいものがありますぞ」
騎士アントンは驚きに固まったが騎士ドゥリアンと騎士トロワは双方褒めあいつつ賛成のようだ。うむ、友情は大切に育まねばな。出遅れているぞ? 騎士アントン。
「いや、我々は騎士、そして殿下は第一王子なのですぞ?」なんか騎士アントンが肩をプルプル震わせて怒りだした。「そんな冒険者などになるなどと―――!」
「騎士アントン、折角の勅命なのだぞ?」だがこの件に関して否定は許さない。俺は冒険者ごっこをして遊びたいのだ。「(国費を使って全力で遊ぶのに)何をためらう? やる事(遊ぶ内容)はほとんど変わらないハズだ。その(
「殿下……(王国の民を守るためならば地位や名誉など安いものとは……)それほどまでに……(王国を愛していらっしゃるのですね)」
と、いうわけで全力でエ・ランテルに向った。3日目の早朝にはエ・ランテルに着いた。先触れを出し、団旗を掲げていたので検問はほとんどフリーパスだった。ただ、そのままエ・ランテルの都市長の所に案内された。
ぷひーぷひー言いながら都市長がお迎えしてくれたので適当に聞き流した。とりあえず任務内容に変更はない。適当にやってくれと言われた。つまりなんでもオッケーということだろう。補給と宿舎は提供してくれるそうなので全くもって問題はない。となればあとは冒険者ギルドへ行くだけだ。
全軍連れて冒険者ギルドへとスレイプニールで乗りつけると組合長が慌ててお迎えしてくれた。
「バルブロ・アンドレアン・イエルド・ライル・ヴァイセルフ第一王子殿下……で、あられますか? お初にお目にかかり光栄です。私はエ・ランテル冒険者組合の組合長を務めております、プルトン・アインザックと申します。それで、その、本日のご用向きは……」
「うむ。バルブロ・アンドレアン・イエルド・ライル・ヴァイセルフだ。その前にいくつか確認したいことがある」
「はっ、なんでございましょうか」
「うむ、冒険者組合の方針とやらだ」
「は、はぁ……」
「登録料さえ支払えば誰でも冒険者になれ、偽名でも構わぬとは
「はい、冒険者組合は独立組織として成り立っておりますので―――」
アインザック組合長から冒険者ギルドの説明を聞いた。ぶっちゃけ原作通りである。まぁそんなことは単なる確認と言質取りなのでどうでもいい。
目下の問題はスレイプニールからいつ降りたらいいのかわからない事だ。話の途中だと降りづらい。最初に降りときゃよかった。今度から話し始める前に降りよう……。原作のガゼフは話の途中で馬を降りたがやはり彼は勇者だったのだ……。
「うむ、ならば問題ない! 諸君、参るぞ!」
「は?」
「はっ! 総員下馬! 殿下に続くぞ!」
「おう! 団旗を掲げろおおおおお!」
「総員下馬! 総員下馬! 従者A班はスレイプニールを繋いでおけ! B班は
「はっ! 王国騎士団に勝利を!」
道中冒険者ギルドに関して相談や説明を行い、方針はもう決まっている。全員偽名で登録し、チーム「王国騎士団」を結成する。
戦闘は基本的に騎士たちが行い、従者諸君は二手に分かれる。8割は従軍、2割は居残りだ。従軍組は普段とあまり変わらない。基本的に細かい作業を担当する事になる。騎士やスレイプニールのお世話、討伐部位の切り取りや戦利品の回収、運搬などだ。
運搬に使いそうな物はすでに騎士と従者が相談して決め、書面にしたものを俺がサインして都市長のパナソレイさんに申請してある。彼は有能なはずだ。すぐに揃うだろう。不足があればまた申請すればいい。なんせ我々の面倒を見るのも彼のお仕事だ。
居残り組は依頼の確保、控えのスレイプニールのお世話。実質休憩のようなものなので普段から大活躍の従者諸君には順番に体を休ませて欲しい。
金に関しては揉めた。王国からお金や経費で大体揃うので稼いだお金はお小遣いになる。依頼が達成できなかった時のために違約金代として報酬は半分をプールし、半分は山分けにした。これは騎士も従者もみな平等だ。どうもこれがいけなかったらしいが、「一人でも欠けたら楽しく遊べないだろう?」と遠まわしに説得したらみんな納得してくれた。勅命が解除され、王都に戻る時にはこのプール金も山分けする事になる。
重武装のままスレイプニールから飛び降り、呆けるアインザック組合長を置き去りに、騎士を連れて冒険者ギルドへと入った。入り口でランスをガンガンぶつけながら入った。室内の天井は高いがどうも冒険者ギルドの入り口は低すぎたようだ。
「で、殿下! 少々お待ちを! い、一体どのような用向きかお聞きしておりません!」
硬直が解けて慌てて追ってきたアインザック組合長と話をするため、他の騎士に先に手続きを行っておくよう手振りで指示し、向き直った。
「うむ。冒険者登録を行おうと思ってな。問題はなかろう? 無論、登録料は支払うぞ?」
「え? いえ、問題は……。え?」
「おい! 騎士ドゥリアン! きちんと列に並べ!」
「いえ、順番を譲られまして……」
「そうか、礼を申しておくのだぞ?」
「はっ!」
団旗を掲げ、ランスを掲げ、列に並んだ重武装の騎士や、その騎士に付き従う重武装の従者が近づくたびに冒険者がどんどん避けていっているようだった。一応注意はしたが人数が人数だ。こちらとしてもさっさと終わらせたい。ご好意に甘えて列を譲ってもらおう。
再びアインザック組合長が停止してしまったので俺も列に並ぶ。しかし、説明やら何やらをひとりひとり行うので中々列が進まない。受付嬢もすっごい困った顔してるし、これはもう第一王子の権力発動するしかあるまい!
「アインザック組合長! 団体での一括処理をお願いしたい!」
「はっ? え?」
「こちとら40人ほどいるのだ! いちいち一人一人説明を受けても時間がかかりすぎるだろう。そこで全員一緒に講習を受ける形にしたいと申しておるのだ。できんとは言わんよな?」
「え、ええ、まぁ、それは構いませんが……。その前に―――」
「というわけだ、そこの受付嬢、名はなんと申す? イシュペンか、よろしい、イシュペン嬢、講習は貴様に任せる。貴様が指揮を取り場所とプレートの用意をせよ。総員、先輩冒険者の方々に迷惑になる。さっさと終わらせろ!」
「はっ! さぁ、書いた内容はこれでよろしいか?」
「うむ。混んできたようだな。私もこれでよろしいな?」
よし、回り始めた。受付嬢も何も考えずにてきぱきと業務をこなす事にしたようでサクサクと処理が終わっていく。前に並んでいた従者や騎士が列を譲ってくれ、数名の騎士が何か言っているアインザック組合長のブロックに回ってくれたので一気に最前列になった。並ぶことは苦痛ではないが他の人間はともかく面倒くさくなりそうな俺は急いだほうがいいだろう。アインザックが妨害されている今がチャンスだ。
「さぁ、登録料の銀貨10枚だ。受け取るがよい」
「あ、はい。ではこちラの用紙にゴ記入くだサイ……」(まさか本当に王子様じゃないよね?)
さて、必須事項は名前、出身地。書いておいた方がよいものは特技か。うむ。
名前:ヴァルヴァロ
出身地:リ・エスティーゼ ロ・レンテ城 なんとか宮殿
特技:ランスチャージ 偉そうにする事 ラナーをなでなですること
っと、これでよかろう。
「これでよいかね?」
「ハイ、ウケタマワリマシタ」(うわぁ……。本当に王子様だ……)
よし、手続き完了だ。これで何も怖いものはない。さて、他の者の手続きが終わるまでアインザック組合長の相手をするとしよう。
「うむ。それで何だったかな? アインザック組合長」
「ハァハァ……、王国騎士強すぎだろ……。あんなに強いイメージはなかったんだが……。ごほん、お、王子殿下! その、冒険者組合には国の政治や戦争には加担しないという規約がございまして、引退した者を除き、国家の下につかない決まりでして、その、王子殿下におかれましては……」
「ふむ。アインザック組合長。気にすることはない。今の私はヴァルヴァロだ。現に登録用紙にもそう記載した上で受理されておる。つまるところ、今の私はただの一介の駆け出し冒険者というわけだ」
「はっ!? いや、ですから、王子殿下におかれ―――」
「大体今は戦時中ではないし軍事行動をするつもりもない。強いて言うならモンスターやアンデッドの間引き程度だ。そもそも第一王子だったとしても王国の政治に関わっているわけではない。それに今は一介の冒険者。それでよいではないか」
「いや、そうは申されましても―――」
「大体、貴族であろうとも冒険者になった者もいるのであろう? ならば全く問題ないではないか。むしろ何が問題だと言うのかね?」
「え……。いえ、確かに貴族の方が英雄譚に憧れて冒険者になられることもありますが、王子殿下に置かれましては、その……」
アインザック組合長が言いよどんでいる間に騎士アントンが近づいてきた。どうやら時間切れのようだ。次の行程に進ませてもらう事にしよう。
「殿下……、いえ、ヴァルヴァロ様。全軍、第一行程完了にございます」
「ふむ、よろしい。では次に進むぞ、総員、受付嬢殿に続け! アインザック殿、また機会があったら話すとしよう。まぁ、冒険者らしく細かいことは気にしない方がよいのではないかな?」
会議室のような場所に案内され、イシュペンという受付嬢に説明を受けた。ファイル片手に気合いの入ったイシュペン嬢に次々と質問を飛ばした。むしろ質問しないと彼女にとって失礼にあたるだろう。
「つまり
「はい、そうなります」
「うむ、ところで街道警備なのだが、細かい規定はあるのかね? 例えば、そう例えばだが、決められたルートを通ったとしても通った時間が問題になるとかならないとか、そういったものはあるのかね?」
「そうですね、特に問題があったわけでもないのに遅くなりますと能力が疑われますが他は特にありません」
「なるほどなるほど。して、カッツェ平野の適正ランクは
「はい、そうなります」
「では
「申し訳ありません、それはお答えできかねます」
「ふーむ、ではこういったことは可能かね? 例えばそう―――」
「はい、問題ありません」
「よろしい。イシュペン嬢、すばらしい説明だった。褒めてつかわす」
「はっ、ありがたき幸せにございます」
イシュペン嬢のやりきった感のある清々しい笑顔を見送ると、これから我々の戦いが始まる。
そう、依頼をこなすのだ。イシュペン嬢の説明で
詳しい数字は教えてもらえなかったがチームでの依頼達成数、依頼達成率が重要だとの事なので班編成をしばらく変更することにした。つまり、報酬は安いが数の多い都市内で済ませられる仕事を全て
「総員、プレートを受け取り次第行動に移るぞ! アントン、ドゥリアン、トロワ! 依頼の精査に当たれ! 従者諸君は作戦通りだ。行動開始!」
「はっ! アント、ドリアン、ドロワ、行動に移ります!」
「動け動け動け!」
「集めた依頼書はどこだ!」
「種別ごとに纏めてあります!」
「薬草の採集? 薬草の判別ができるやつはいるのか? いない? これ関連は張りなおしてこい! むしろ討伐と街道警備、都市内で済むもの以外はいらん!」
「従者第一班! これよりバレアレ氏依頼の荷運びに出撃します! 王国騎士団に栄光あれ!」
「おう! 戦果を期待しているぞ!」
「従者第二班! これより―――」
「―――」
うむ。暇だ……。さきほどイシュペン嬢に貰った冒険者プレートをいじくるしか仕事がない。というかそろそろ俺も遊びに行きたい。というか行くべきだろう。
「アントン、トロワ! ここは任せる! ドゥリアンの隊は付いてこい! あそ――、くんれ――。ごほん、に、任――。……お仕事に出るぞ!」
「はっ! お任せを!」
「殿下が出るぞ! 団旗を掲げろおおおおおおおお!」
「スレイプニールの用意だあああああ!」
「うおおおおおおお! 王国騎士団に栄光あれええ!」
うむ。皆楽しそうで何よりだ。
side プルトン・アインザック
厄日だ……。まさかこんな事態になると誰が予想できただろうか。最初のちょっとした勘違いからここまでの事態になってしまった。
バルブロ・アンドレアン・イエルド・ライル・ヴァイセルフ第一王子殿下が王国騎士団を引き連れてエ・ランテルにやってくるとエ・ランテルの都市長であるパナソレイから聞いてはいた。その目的もその人柄も見た目も王国騎士団の団旗もパナソレイから教えてもらってはいた。
若干13歳にして王国騎士団を設立し、騎兵隊を率いての突撃を好み、馬の扱いではすでに並ぶ者がいないと言われているらしい。しかも大変聡明で、新たな戦術を生み出し、部隊を運用し、なおかつ下の者にも気安く接するため、常に先頭を駆ける殿下を慕う者が多いそうだ。
ただ、少々常識が伴っておらず、色々と国王陛下の頭を悩ませているそうだが、パナソレイに言わせれば今後の事を考えればその程度些細な事らしい。
しかし、パナソレイから聞いていた殿下の人物像はあっさりと崩された。どこが少々常識が伴っていないだ……。どう考えても常識が投げ捨てられているだろう!
最初、この冒険者ギルドを訪れた際、王子殿下は冒険者を徴集なさる気だと考えた。稀にいるのだ、事情を知らないそういった貴族が……。
パナソレイから聞いた殿下の任務の内容を考えると冒険者がいた方がいいのは確かだ。カッツェ平野は特にそうだ。一時期を除き、常に霧が立ち込め、アンデッドの巣窟となっている。慣れた者を連れずに突き進んでしまえば遭難してしまうような場所だ。
当然、私の対応も最初から殿下が冒険者を無理に徴集などしないよう注進するつもりだった。正当な報酬を支払えばいくらでも腕利きの冒険者が集まるだろう。なので殿下のご質問に答えたあとそのように説明した。間違っていなかったはずだ。しかし、殿下は何か思案していたご様子だったが、そのせいで後半を聞き飛ばしておられたのだろう。
なぜか冒険者になると言い出し、騎士団の人間も当然のように殿下の号令で手続きを始めてしまった。しかもその波を止めることができず、普段新人やランクに不相応の装備を持った成り立て冒険者に絡んだり野次を飛ばす
まぁ、私が止められないほど騎士は頑強だったがな! それにあの威容。特にでかい盾と金ぴかのバカみたいに長い
結局第一王子殿下はご丁寧に偽名でご登録あそばされた。もうどうすればいいのか全く見当もつかない。
ノックの音と共に彼らを担当した受付嬢、イシュペンが入ってきた。彼女はなぜかとても元気でむしろやりがいを感じている節すらある。まぁ、相手は王子殿下だからな。御手付きにでもなれば将来は明るいだろう。しかし、その王子はまだ13歳だぞ? いいのか?
「組合長、今回の新人冒険者の方々の登録証の整理、終わりました」
「うむ。ご苦労だった」
彼らの登録証を受け取り、ぺらぺらと中身を見た。王子殿下……。これって名前以外全部本当の事ですよね? ラナーって第三王女ですよね? 仲がよろしい事で……。って隠す気全くないな! そりゃ担当した受付嬢が挙動不審になるわ! こんちくしょうが!
大体他の連中もそうだ! 騎士と従者の区別すら簡単に付くわ! 騎士は皆特技にランスチャージが入ってるし、特にコイツ、特技が団旗を掲げることって冒険者舐めてるのか!? あ、でも従者の方は結構冒険者としてもよさそうなのがちらほら……。
「イシュペン、それで、その、なんだ。彼らは今何をしている?」
「ええ、一室借り切って依頼をどんどん片付けていらっしゃいます」
「そうか……。何かその、目的のようなものは口にしていたかね?」
「はい、でん――、いえ、ヴァルヴァロ様はカッツェ平野での依頼をお望みのようですね」
まぁ殿下の任務がエ・ランテル近郊の警備とカッツェ平野でのアンデットの間引きのようだからな。ついでに依頼を受けて経費を浮かせたいのだろう。
「なるほど……。率直な意見を聞きたい。どうしたら良いと思う?」
「さっさと
「むぅ……。やはりそうか……。わかっている、わかってはいるのだ……。しかしな……、冒険者ギルドはあくまで独立組織。相手が王族だからと言って特別扱いは、な……」
「いえ、44名分のプレート費用を考えますと、
「え?」
「彼ら、えーっと、チーム王国騎士団の皆様は人海戦術で依頼をこなし、全員同時での昇格を希望するそうです。割りに合わない仕事や依頼料が低く設定されていて残っていたような依頼を見境なくこなしていただいております。このペースが続きますと規定どおりならば数日で
「なぜそうなる?」
「え?」
私の疑問にイシュペンは不思議そうな表情を浮かべた。普通の冒険者がそんな依頼をちまちまこなした所で得られる賃金ではその日なんとか凌げる程度だし、ギルドへの貢献度もそれほど高くない。そんな冒険者は下手をすると一年近くかかるはずだ。
「だから、そもそもそのような依頼ばかり受けていては……」
「ああ、彼らは活動経費や生活費がかかりませんからね。ぶっちゃけ元々王国の費用で活動しているようなものですから利益度外視で活動できます。それになんと言っても数が違いすぎます。ひとつの依頼を44名で構成された冒険者チームで受諾、達成していくと考えればわかりやすいでしょうか? つまり、単純に4人編成の冒険者チームが一日で終える仕事を11件同時に進行し、チームメンバーとして全員に貢献度が与えられるわけです。それに一人一人の士気も高く、スレイプニールなどの装備も充実しているため依頼達成速度が普通じゃ考えられない速度でして……」
「ああああああ! なんということだ! そんな穴があったのか! なぜ今まで誰も気付かなかった。今から何とか規約に……、くっ、王都往復するあいだに奴らは
「はい。ですからギルドの公平性を疑われながら気の済むまで人気のない仕事を押し付け続けるか、さっさとやりたい事をやらせてお帰りいただくかのどちらかかと……」
「ぬおおおおおおおおお! 今度パナソレイに会ったら必ずあの鼻の穴に指を突っ込んで二度とプヒプヒ言えないようにしてやるわああああああ!」
「ちなみに説明に使った部屋ですが、現在団旗が立てられ歩哨が就きました。関係者以外立ち入り禁止との事です。あ、殿下の覚えがめでたいとの事で私がギルドの連絡係に選ばれました。受付のシフトに入れなくなる事が多くなりそうなのですが……」
「……
「はい」
冒険者組合の独立性が揺るがされ、特別措置を取らざるを得なくなった事は遺憾だが、相手は今のところ一室を無断で貸し切ったり、受付嬢の一人を連絡係にした程度の事しか問題を起こしていない。むしろ問題を避けるには必要な措置だとも言える。他の冒険者との間で問題が起こるよりは数倍マシだ。
それに彼らはこちらのルールにしたがって依頼をこなしているだけだ。どこぞの貴族のお遊びから考えると規模は大きすぎるが依頼に対しては従順で真面目だとも言える。今回の件で規約に問題点があったことがわかっただけでも良しとしよう。
それに経費度外視で動ける冒険者チームが現れたと考えればそれほど悪い事ではない。ただ、このまま続けられると
逆に
冒険者登録名
バルブロ=ヴァルヴァロ
騎士アントン=アント
騎士ドゥリアン=ドリアン
騎士トロワ=ドロワ
なおバルブロは名前の前につける騎士を外すだけで覚える気がない模様。今回の冒険者のランク上げバグに関しては捏造です。さっさとランク上げるにはこんな事くらいしか思い浮かびませんでしたorz
ストック消化しました。次回はいつになるか不明です。