インフィニット・ストラトス~【英雄】の迷い込んだ世界~   作:芳奈揚羽

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悪夢再び

side 白銀武

 

 

「う・・・・・・ん?」

 

 ボンヤリとする意識を無理矢理に繋げる。気を抜けば閉じてしまいそうな瞼を気合で開け、周りを見渡した。

 

「・・・・・・?何処だ、此処・・・・・・?」

 

 知らない場所だった。俺が今いる部屋はかなり広く、学校の教室の二倍位の大きさだろうか?様々な機械群が乱雑に放置されており、ケーブルや工具などが散らばっていて歩くのにも苦労しそうだ。部屋は薄暗く、機械のモニターなどの光のみが光源となっている。

 

 どうやら俺は、白い巨大な椅子に座らされていたらしい。この椅子からもカラフルなケーブルがむき出しになっているし、頭上には一体何に使うのか考えたくは無い、ヘルメット型の機械が威圧感を出している。

 

「・・・おいおい、アレってまさか・・・・・・!」

 

 その部屋の中で、一際存在感を放つ物。それは、今日俺が調べたこの世界の根幹を成す成分にして、女尊男卑の世界にした元凶。

 

 待機状態の【インフィニット・ストラトス】が、そこに悠然と佇んでいた。

 

「・・・・・・マジかよ。」

 

 片膝を突き待機するそのISは、やや流線的な形状で純白。その気高さを感じる姿は、まるで自分の主君を待つ騎士や武士のようだった。

 

 世界にたったの497機しか存在しない筈のソレが目の前にあるのだ。驚かない訳がない。本来なら、一般人がこんなに近くで見ることが出来る物ではないのだから。世界を変えるほどの力を持ちながら、世間とは遠い存在、それが【インフィニット・ストラトス】なんだ。

 

「・・・でも、凄いな。」

 

 【あちらの世界】で嫌というほど数々の兵器を見てきたし使ってきた。・・・だけど、コレは別格だ。ただ兵器という言葉の枠に嵌めてはいけない存在のような気がする。ただそこにあるだけなのに、有り得ないほどの存在感だ。

 

 白い装甲はキラキラと光を放っているように見えるし・・・それに、コイツは俺を呼んでいるような気さえするんだ。

 

「・・・お前は、何だ?」

 

 近づきながら俺は尋ねる。ISは兵器だ。俺の質問になんか答えてくれる訳がない。それが分かっていながらも、質問せずにはいられなかった。・・・答えてきても、可笑しくないような気がしていたのだ。

 

 まるで何かに誘われるように俺はISに近づき・・・誘惑に負けて、俺はそのボディーに触れた。

 

「・・・なっ!?」

 

 その瞬間、頭に何かが流れ込んでくる。莫大な量の情報の渦。そして、それと同時に、目の前にある機体の姿も変化していく。まるで、蛹が蝶に変わる瞬間を早回しで見ているような錯覚。今までは何処か丸っこいフォルムだったその形状が、急激に変化していくのだ。

 

 ―――皮膜装甲(スキンバリアー)展開―――成功

 ―――操縦者の潜在意識よりイメージ抽出。全身装甲(フル・スキン)へと変化―――

 ―――推進機(スラスター)正常作動―――確認

 ―――ハイパーセンサー最適化―――終了

 

「・・・・・・まさか。」

 

 ソレが形作った物を見て、俺は言葉を無くした。

 

「・・・・・・【武御雷】。」

 

 【あちらの世界】では、日本帝国の将軍家と斯衛にしか使用を許されていない廃スペックな特注品。

 全身に纏ったスーパーカーボン製ブレードエッジと、00式近接戦闘用短刀6振りにより、全身凶器と言ってもいい世界最高峰の機体だ。

 

 5m程の大きさにまで小さくはなったし、装甲にも所々違いがあるが・・・それでも、俺が【武御雷(コイツ)】を見間違える筈がない。俺は結局乗ることは無かったが、月詠さんたちが貸してくれたこの機体が無ければ、最後のあの作戦が成功することは無かっただろう。

 

「・・・何で、俺がコイツを扱えるんだよ・・・?」

 

 ただ展開出来ただけじゃない。俺はこの機体を十全に扱えると、既に確信(・・・・)している(・・・・)。ISは女性にしか扱えない兵器だったはずだ。例外として去年、織斑一夏という人物がISを動かしたらしいが、各国が行なった、他の男性でもISが扱えるんじゃないかという実験でもそれ以来誰も起動出来なかったはず。

 

「確かに俺は(・・)その調査を受けていないが・・・。」

 

 俺はその時にはこの世界の住人では無かった。恐らく【こちらの世界】の白銀武は嬉々として実験に参加したんだろうけど、結局は適正なしということだったらしい。そして、何故かこの世界にやってきて【こちらの世界】の白銀武(オレ)を乗っ取ってしまった俺には適正があるだと?

 

「成程ね、確かに束の言うとおりになったわ。」

 

「誰だ!?」

 

 その時、突然背後から声を掛けられた俺は、咄嗟に前方に転がり、即座に後ろを向いて腰に手をかけ・・・そこで止まった。

 

(しまった、銃もナイフも持ってねぇじゃん!)

 

 いつもの癖(・・・・・)で距離を取ってしまったことを後悔した。今は武器を何も持っていない。だから、離れるんではなく逆に距離を詰めて、近距離攻撃(インファイト)で押さえつけるべきだった!部屋が暗くて敵の姿がよく見えないが、声からして女性のようだ。

 

「へぇ・・・流石に奴ら(・・)と戦っていた兵士は動きが違うわね?この世界の白銀武とは根本的に違うじゃないの。・・・ねぇ【英雄】さん?」

 

「・・・・・・夕呼先生?」

 

「別に呼び捨てでもいいのよ?今の白銀に呼ばれるなら気にならないし。」

 

「・・・突然出てきてそんな事を言われても、どうすればいいんですか・・・・・・?取り敢えず夕呼先生で。」

 

「あら、そう?私が呼び捨てにさせるなんて滅多にない光栄なことなんだけど?まぁいいわ。」

 

 正直、反応に困る。聞きたいことは山ほどあるんだ。さっきの夕呼先生の話し方で、恐らく彼女は俺がこの世界の住人ではないことを確信している。それどころか、【あちらの世界】で何があったのかも知っている?・・・・・・まぁ、夕呼先生だしな。どんな非常識な事だろうと、彼女なら知っていても可笑しくはない・・・か?

 

 取り敢えず、疑問を一個ずつ解消していくか。

 

「何で俺は此処にいるんですか?此処は何処ですか?」

 

 と俺が聞くと、何故か彼女は顔を引きつらせた。

 

「・・・あれ?薬の配分間違えたかしら?・・・記憶が飛んでる?・・・・・・・・・まぁいいか、何とかなるでしょ。」

 

「小声で言っても聞こえてるからな!軍隊育ちなめるなよ!?」

 

 薬ってなんだ薬って!?俺は一体何をさせられたんだ!?

 

「ま、細かいことは気にしない。それより質問に答えるわよ。まず最初。『何故俺は此処にいるのか?』ね。この質問に対しての答えは、『お前が必要だったから、私が攫ってきた』よ。」

 

「平然と言うね!?」

 

 対BETA戦を基本にして訓練していたとはいえ、元軍人だぞ!?その俺を、大した怪我もさせずに連れ去ったっていうのかよ!?相変わらず謎の行動力だなオイ!

 

「次の質問。『此処は何処か?』だったわね。答えは、『世界を変えた天災、篠ノ之 束と、香月夕呼の共同ラボ』よ。」

 

「・・・は?」

 

 篠ノ之 束?世界中が指名手配している、あの稀代の大天災?

 

「見なさい。世界は私達の言葉に耳を傾けず、破滅への道をひた走っている。・・・本当なら無視してもいいんだけど、生憎私たちにも守るべき大切な者が出来てしまってね。」

 

 夕呼先生が白衣のポケットから出した小さなリモコンを操作すると、近くの壁に映像が映し出された。

 

「・・・・・・嘘だろ。」

 

 そこは戦場跡。焼け爛れ、破壊されて荒廃した大地がそこには映されていた。・・・だが、そこまでなら世界で普通に起きているただの戦場(・・・・・)だ。俺の目を引いたのは、そこに転がる無数の残骸(・・・・・)

 

 数え切れないほどの数を見てきた、忌まわしい敵の姿。

 

「BETA・・・・・・!!!。」

 

 俺の戦いは、まだ終わっていなかったようだ。

 

 




もしかしたら夕呼先生のキャラが違うか?まぁ、平行世界ということで納得していただければ。後から出てくる束博士はかなり性格違いますからね。

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