インフィニット・ストラトス~【英雄】の迷い込んだ世界~ 作:芳奈揚羽
side 白銀 武
「まりも・・・ちゃん。・・・・・・無事で、本当によかった・・・!」
俺が【あちらの世界】で一番不甲斐なかったこと。情けなかったこと。自分を殺したいほど憎んだ事。それは一体何だと問われれば、俺は間違いなくあの事件を上げるだろう。
・・・そう、俺が考案し、夕呼先生が組み上げた新型OS
あの時、突如として襲来したBETA群。俺は咄嗟の事態に頭が混乱して、暴走してしまった。実際は、元々【あちらの世界】にいた
混乱し、錯乱しながら俺は、模擬戦専用の武器だけを手に、機体駆動だけでBETAを相手にし続けた。・・・もし、あの時冷静に対処出来ていたなら・・・?自慢じゃないが、俺の操縦技術はあの時点で世界でもトップクラスだった。だから、俺が囮になり、味方が武器を持ってきてくれる時間を稼ぎ・・・そのあと、制圧することだって出来たんだ。実際、あの時だって結果的には同じことが出来た訳だし、あと少し・・・あとホンの少し冷静になることが出来れば、衛士の犠牲だってもっと少なく出来た。
・・・そうすれば、全てが終わったあとに、あんな場所で放心状態になどなっていなかった筈だ。BETAの生き残りがいる可能性だって考えつけた筈だった。俺を見かねて神宮寺軍曹が慰めにくることなど無かったのだ。
・・・・・・神宮寺軍曹は、BETAに殺された。俺の目の前で。それは、酷い死に様だった。
アレは俺のせいだ。それなのに俺は、彼女が死んだ事実から逃避し、目を背けた。ガキみたいに泣き喚いて、【元の世界】に帰った。
・・・だというのに、そこでも運命は俺を許してはくれなかった。俺が『因果導体』だから。俺が<<まりもちゃんは死んだ>>と認識してしまっていたから。だから・・・彼女は殺されたんだ。
耐え切れなかった。何で俺だけがこんなに辛い思いをしなければいけない!?家族にも、友人にも、純夏にすら忘れ去られた俺は、そこで夕呼先生に言われて気がついたんだ。
責任を取らなくてはいけないと。
例え、こうなった原因が俺じゃないとしても!俺が【元の世界】に災いを持ち込んだのは変えられないのだから!まりもちゃんを殺し、純夏を傷つけたのは、他ならぬ俺なのだと、そう気づかせてもらった。
【世界を元に戻す】。
この覚悟が無ければ、俺はきっと『あ号標的』を倒せはしなかっただろう。俺のせいで狂ってしまった大切な人たちの人生を取り戻す為だからこそ、俺は命をかけることが出来たのだから。
・・・なのに、
【こちらの世界】では、純夏の無事しか確認出来ていなかった。何故、【元の世界】がこうまで変わってしまったのかは分からないが、せめて皆の無事だけでも確認したかったのだが、純夏しか不可能だったのだ。
何故か携帯のアドレス帳がまっさらだったためだ。純夏の携帯番号も入って無かったのだが、そこは幼馴染の特権を利用した。純夏の家に行き、彼女の母親に番号を教えてもらったのだ。
他のみんなには学校であえるだろうと思っていたのに、皆も純夏と同じくIS学園に入学しているし、夕呼先生やまりもちゃんは学校を辞めていた。だから・・・この二人の無事を確認出来て、本当に良かった・・・!
「ほ・・・本当に・・・本当に良かった・・・・・・!!」
「白銀・・・。」
思わずポロポロと涙を流してしまう俺。この年齢になってこんなふうに泣くのは恥ずかしいとも思うけど、それでもやっぱり止まらないのだ。
「恥ずかしくなんてないわ。思う存分泣いてもいい―――」
とは言っても、どうやら運命の神様とやらは俺のことを大層嫌っているようで、
「泣いてる時間はないわよ?貴方には、やってもらわなきゃならないことがあるんだから。」
「そうだよ?一分一秒も無駄に出来ないんだからね?君はこれから、【こちらの世界】も救わなきゃいけないんだから。」
悪夢のような状況は、どうやら【こちらの世界】でも変わらないようだ。
・・・俺も
で、今回も短め。次も説明回です。