インフィニット・ストラトス~【英雄】の迷い込んだ世界~   作:芳奈揚羽

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公務員試験の一次試験が終わりました。まぁ、終わったと言っても
、二十九日にまたあるんですけど。
・・・というか、活動報告で、”公務員試験があるのでしばらく更新しない”と報告したつもりだったんですが、やってませんでした。弟と共同でパソコンを使用しているので、弟は頻繁にこのサイトに来ていたようですが、私は二、三ヶ月程開いていないので、『更新待ってます』というメールが来ていたことにびっくり。
返事を返せなくてすいませんでした。


束の秘策

side 白銀武

 

 

「飽和状態・・・?まさか、そんなわけがないだろ。宇宙がどれくらいの広さを持ってると思っているんだよ?」

 

 束博士の言葉は、戯言・・・というようにしか感じなかった。いや、宇宙全体・・・ではなく、既に太陽系全体を掌握されているという意味か?確かに、俺は頭脳(ブレイン)級から、やつらの数が数えるのもバカらしくなるほどの数だとは聞いていたが、それでも、宇宙全体を埋め尽くすほどとは思えないんだが・・・。

 

「信じられない?それとも、信じたくないのかな。」

 

 束博士は、俺を馬鹿にしたかのように吐き捨てると、指をパチンと鳴らした。すると、新たな空間モニターが出現し、そこには大量のBETA群と、廃墟の数々が写っていた。

 

「確か、君のいた世界は、現在からすでに三十年後だったっけ?記憶を盗み見させてもらったけど、あ号作戦で君が―――仮に、頭脳級(ブレイン)と呼称するけど―――あの化物に教えられた宇宙のBETA総数が、『10の37乗』だったよね。その総数というのが、あ号標的みたいな頭脳級(ブレイン)のことを指すのか、それとも一般的なBETAのことを指すのかは別としてさ。当然、今はその時の数よりも少ない訳だ。」

 

 周りの夕子先生たちも、暗い顔をして黙ったまま。それは、束博士が言おうとしていることを、肯定しているということにほかならない。

 

「でも、それなら聞くけど、十年後は?」

 

「・・・は?」

 

「二十年後は?三十年後は?・・・百年後は、どうなるのかなぁ?」

 

 言われた意味が、理解出来なかった。いや、先程彼女が言った通り、理解したくなかっただけ(・・・・・・・・・・・)かもしれない。恐らく俺はすでに、彼女の言いたいことが分かってしまっていたのだろう。・・・だから、こんなに冷や汗が止まらないんだ。

 

「一つのハイブが、BETAの許容量をオーバーすると、奴らは新しいハイブを形成するために新しい土地を目指すよね?それは、どれくらいの周期だった?君たちがあんなに(・・・・・・・・)一生懸命奴らを(・・・・・・・)殺しまくったからこそ(・・・・・・・・・・)あの程度の増殖率で抑えられていたんだよ(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

地球の人間のように敵対する生命体が存在しない惑星で、奴らが飽和するのに必要な時間は、一体どれくらいだろうねぇ?はてさて、この世界で、10の37乗の数値になるのは、一体何年後?その数を超えるのは、何年後だと思う?」

 

「・・・・・・。」

 

 ドクドク、ドクドクと、心臓の音が五月蝿かった。体中を汗が流れ続け、目眩まで起こしそうだ。・・・だが、目の前の女性は、そんな俺にお構いなしに話を続ける。

 

「”フェイズ5”と呼ばれる程巨大なハイブになると、宇宙に向かって何か(・・)を打ち上げているよね?・・・例えばアレが、増えすぎたBETAを、違う惑星に送り込むための侵略船だったら?そうやって、どんどんどんどん奴らの存在しない惑星なんて無くなっていって、最終的には消え去るんじゃないの?」

 

 彼女の言ったことを否定したかった。でも無理だ。仮定、推論に過ぎないとは言えるかもしれない。でも、奴らは宇宙から来たんだ。そして、すでに月と火星は占領されていた。奴らがいるのは地球だけじゃ無かったんだ。それを知っている俺が、どうしてこの推論を否定出来る!?

 

「数は力なんだよ。人間なんて、他の動物と比べればスペックが低い。それなのに私たちが地球の覇権を握っていられる。それは、知恵と、そして数という武器があるからでしょ?でも、BETAには勝てない。個体のスペックで完全に負けている上に、数え切れない程に数がいる。殺しても殺しても絶滅しない、まさにゴキブリのような存在だよね。」

 

 ゴキブリなんて生易しい存在じゃない。あんな奴らより、はるかにタチが悪い。

 

「理解したかな?最初から、人類に勝ち目なんてないんだよ。仮に、今地球に居る奴らを殲滅出来たとしても、次から次へと降ってくる。私たちに出来るせめてもの抵抗は、『地球に来させないこと』しか無かったんだ。・・・まぁ、人類が滅亡するまでの時間を引き伸ばすだけなんだけどね。地球に降下させずに、宇宙空間で叩き潰す。それをやれば、確かに地球の安全は守られるけど・・・私たちも、宇宙に出ることが出来なくなる。つまり、地球の限りある資源を使い切った時が、人類の最後というわけさ。」

 

 束博士の言葉を、誰かに否定して欲しかった。そう願って周りを見たが、夕子先生もまりもちゃんも、全員が俺から目をそらす。

 

「・・・何だよそれ・・・。つまり、あの世界の戦いは・・・全部無駄だったってことか・・・?」

 

 言いようのない、深い絶望感が俺を襲った。あれだけの犠牲を出した戦いが・・・ほぼ無意味?何だそれは?どういう冗談だよオイ・・・!!!

 

「別に、無意味というわけではないよ?既に地球に居る奴らを殲滅した後で、地球全てを守る防衛線でも作ればいい。・・・まぁ、そのことにあの世界の人間が気がつくかどうかは分からないけど。”地球の敵は倒した!ヽ(*´∀`)ノワーイ。これで人類は安泰だ!”なんて考えてたら、間違いなくBETAの第三陣によって絶滅すると思うけどね。」

 

 彼女の話には、容赦というものがない。落ち込む俺を歯牙にもかけず、淡々と事実だけを突きつけてくる。

 

「まぁ、ここまでが、消極的な話。結局、なんの解決にもなっていない、ただの時間稼ぎ。人類が宇宙に進出することはなく、緩やかな滅びに向かって行ってしまう、最悪の未来の話。・・・だけどね。」

 

 そこで、彼女は俺を見つめた。その姿からは、気圧される程の気迫が漂っていた。

 

「私は、こんなところで夢を諦めたくはない。私は宇宙に行きたいの。誰も見たことがない、未知の物を追いかけたい!あんな怪物共に、私の道を閉ざされるなんて我慢出来るものか!!!」

 

「!!!」

 

 その迫力に、俺は気がつかないうちに後ずさっていた。これが、この人の本気。本性。冷徹な仮面の裏側に隠した、熱く燃えたぎる心。

 

「何のためにISを作ったと思っているの!?人類同士で戦うためじゃない!BETA(あいつら)を退けて、安全を確保して、宇宙に出るための翼として作ったんだ!!!有象無象が私の行動を邪魔さえしなければ、今頃は解決しているハズだったのに!!!」

 

 その叫びの中に、俺は聞き逃せない言葉を見つけた。

 

「今頃は解決しているハズだった?・・・ちょっと待ってくれ。どういうことだよそれは・・・!」

 

 解決しているハズだった?つまり、俺の知らない間に地球に降下していたBETAを、殲滅出来ていたハズだということか・・・!?

 

「本来の私の目的は二つ。・・・一つは、【IS】による、【地球絶対防衛網】の構築。つまり、地球に奴らが入ってくる前に、宇宙空間でトドメを指す。それによって、取り敢えず地球を守ること。」

 

「取り敢えずってなんだよ・・・?」

 

 俺の質問に答えたのは、束博士ではなく、先程から沈黙を保っていた夕子先生だった。

 

「さっきも言ったでしょ?これは時間稼ぎにしかならないの。宇宙()にいる化物が怖くて、地球()から出られなくなってしまう。でも、いつかは地球だって寿命がくるわ。・・・まぁ、それはずっと先の話だから、私たちには関係ないんだけど・・・、それでも、”資源の枯渇”という問題が浮上してくる。いつまでも引き篭っているわけには行かないのよ。」

 

「それに、そんな悠長なことをしていたら、私の夢が潰えてしまう。・・・幼い頃からの夢。それを実現させる為に、今までの人生全てをかけてきた。あいつらなんかに邪魔されたくないの。」

 

 束博士が言葉を続ける。

 

「私の二つ目の目的。・・・それは・・・。」

 

「・・・それは?」

 

「BETAの親玉に、”人類を生命体として認識させること”だよ。」

 

 その言葉に、俺は言葉をなくしたのだった。

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