インフィニット・ストラトス~【英雄】の迷い込んだ世界~ 作:芳奈揚羽
side 白銀武
――――最後は、愛している男の手で死にたい。・・・お願いだ。撃て、撃ってくれ武!!――――
――――タケルちゃん、御免ね。私が原因なの。だから、私がいなくなればタケルちゃんは帰れるから。・・・だから、今度は幸せに――――
――――貴方の御陰で、あと30年は戦える。・・・有難う白銀――――
あぁ・・・俺は、何一つ守れなかった。大切な人たちは、全てこの手から零れ落ちてしまった。何て中途半端な終わり方だよ?皆を犠牲にしてあ号標的を撃破しても、世界に満ちる【BETA】はまだまだ活動を続けるんだ。・・・せめて、【あちらの世界】に真の平和が訪れるまで、戦っていたかった。大切な
だけど、後悔しても始まらない事はこの数年の生活で十分すぎるくらいに分かっている。起きてしまったことは覆しようがない。・・・もう、純夏はいないのだから。だから、俺は彼女が望んだ幸せな世界に帰ろう。そして、今度こそ彼女と幸せになろう。・・・・・・俺の持つ全てを掛けて、彼女を守るんだ。
☆☆☆
ガンガンガンガン!という凄まじい音が頭に響き、俺は目を覚ました。
「起床ラッパか!?寝過ごした!?」
「・・・俺の部屋・・・?」
それは、何年も前には毎日見ていた筈の自分の部屋だった。壁に掛けてあるコートや制服、漫画やちょっとイケナイ本が隠してある本棚、パソコンやゲームの配置も記憶のままだ。俺は、自分が一体何故この部屋に居るのかを考えて・・・思い出した。
「・・・・・・帰ってきたのか、俺。」
念の為、窓を開けて外を見てみる。そこに広がっていたのは荒廃した街・・・ではなく、俺の記憶の通りの落ち着いた町並みだった。不意に、一陣の風が頬を優しく撫でる。それには、硝煙の匂いも血の臭いも全く含まれていない。・・・俺は、帰って来たんだ。【平和な世界】に。あんな事になるまで気がつくことが出来なかった、愛しい日常に。
「武ー!何時まで寝てるの遅刻するわよー!」
下の階から、懐かしい声とフライパンの音が響く。どうやら、さっきの音はこれらしい。俺は反射的にベッドから飛び降りて走った。軍隊で仕込まれた身体能力で、一階に降りるのに数秒もかからない。
「武、おはよう。」
「おはよう武。・・・どうした、何かあったのか?」
・・・そこに居たのは、俺の両親だった。一体何年ぶりに見たのだろう?体感時間で少なくとも4、5年は見ていない筈だ。実際は何度もループしていたみたいだから、10年位になるのかも知れない。
二人を見た瞬間に、薄れていた記憶が急速に蘇る。確か、冥夜が来た時に、世界一周旅行に出かけたんだったな。あの時から、俺の日常は変わったんだ。
「ちょっと武どうしたの?具合でも悪い?」
「え・・・何でだよ?」
何でそんなことを言われるのか分からず、聞き返す。
「だってお前、泣いてるじゃないか。・・・怖い夢でも見たのか?」
「え・・・?」
自分の目元を触って見ると、確かに濡れていた。自分が泣いていた事に、全く気がつかなかった。
「は、ははは。嬉しくて・・・嬉しくてさ・・・・・・。」
自分が泣いていた事に気が付いた瞬間、胸の奥が熱くなって更に涙が溢れてきた。あぁクソ、全然止まらない。両親に泣いているのを見られるのが恥ずかしくて必死に拭うが、それは寧ろ逆効果みたいだった。
「・・・生きていてくれて良かった。また会えて、嬉しかった・・・・・・。」
もう二度と会えないかもしれないと何度も覚悟した。一歩間違えれば無残に殺されるような戦いを何度も経験した。皆で力を合わせてあ号標的を倒したが・・・皆を失った。だから、【この世界】で両親と再開出来て安心した。俺にとっての一番の日常って、やっぱりこの二人が居ないと始まらないんだ。今、そう実感した。
「・・・何があったんだか知らないけど、泣きたい時は泣けばいいさ。」
「武が泣くのを見るのはいつ以来だろうね。」
そして、何時の間にか俺の事を抱きしめていた両親に縋り付いて、俺は大声を上げて泣き続けた。
☆☆☆
「・・・そういえば、純夏はどうしたんだ?何時もこの時間には来てたよな?」
思いっきり泣いた俺は、気恥かしさを隠す為に、出来るだけ両親の顔を見ないようにして尋ねた。この二人が無事だったんだから当然純夏や他の皆も無事だとは思うが、それでも確認しておかないと不安だったからだ。
だが、俺の質問に対して二人は怪訝な顔をした。まるで、「何言ってるんだコイツ?」みたいな失礼な顔だったのがムカツク。
「武、お前何言ってるんだ?」
本当にそんなこと思っていやがった。
「そうよ。純夏ちゃんは今年からIS学園に行っているじゃない。」
・・・・・・は?
「しかし、純夏ちゃんも可哀想にな。いくらIS適正がSSだったからって、本人が嫌だって泣いて拒否しているのに強制入学だもんな。」
「噂では、他にも武の学校に入学が決定していた何人かが強制入学させられたらしいわよ?やることが酷すぎるわよね今の政府は。一体何を考えているのかしら?」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
二人で話しているのを止める。かなり分からない話ばっかりでついて行けない。
「聞きたいことは山ほどあるが・・・純夏が強制入学させられたって?」
「そうよ?まさか忘れちゃったの?純夏ちゃんあれほど「嫌だ嫌だ武ちゃんと離れたくない」って泣いていたじゃない。」
「・・・何処に行ったんだ?」
「・・・ちょっと本当に大丈夫かお前?熱でもあるんじゃないか?IS学園に決まってるじゃないか。」
二人の本気で心配そうな顔を無視して、俺はなるべく心を落ち着かせて最後の質問を放つ。
「・・・IS学園って、何?」
その質問をした瞬間、二人がすごい勢いで近づいてきて、病院に行こうとか救急車を呼ぶべきかとか五月蝿いから家を飛び出してしまった。
「一体、何が起きてるんだ?」
何かが変だ。俺の知らない何かがこの世界にはある。それを知らないことには、純夏がどこに行ったのかを確認することは不可能だ。他の皆が無事なのかも確認する必要があるし・・・学校に行くか。・・・・・・この世界の俺が通っているのって白陵柊学園でいいんだよな?
原作をやったのがかなり前なんで、名前の呼び方とか呼ばれ方とかが若干違う可能性があります。その他にも「ここが違うよ」っていうのがあれば言ってください。出来る限り直します。
ちょっと表現がくどいかも?