インフィニット・ストラトス~【英雄】の迷い込んだ世界~   作:芳奈揚羽

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遊園地 後編

side 白銀 武

 

 

 さて、今俺たちが着ている遊園地は、あの超有名な、東京と名のついているにも関わらず千葉県にある、某夢の国な訳だが・・・ここでも、ISによる弊害というか、俺の知る夢の国と違う部分が沢山あった。

 

「ハハッ!ミ○ーよ!」

 

「わーい!○ニーちゃんだー!!」

 

 純夏が無邪気に走っていき、着ぐるみに抱きついている。基本的に、あの着ぐるみの中に入っているのは体力のある男性なので(女性が入っていることもあるが)、ちょっと嫉妬しそうになったが・・・まぁ、着ぐるみに嫉妬してもしょうがない。

 

 ・・・俺が驚いているのは、あの天下のミッ○ーが、恋人とかいう設定であったはずのミ○ーに主人公の座を奪われていたことだ。

 

 流石に驚いた。だって、ディ○ニーの主要キャラの立場を変更してしまう程に女尊男卑が浸透しているなんて思わなかったからだ。調べた所によると、ISが登場して女尊男卑が当たり前になってきた頃に、アニメやゲーム、映画や漫画等、ありとあらゆる創作物で、男性が主役になっている物に女性からの批判が集中したらしい。彼女たち曰く、『軟弱な男性共に、こんな危険な事をする根性などあるはずがない』だそうだ。意外にも世界規模で広がったその批判の嵐に、今までの作品などでもリメイクして女性を主役にする動きが出たらしい。この夢の国もそうなのだとか。・・・いや、夢の国なんだから、せめて男性にも夢を見せてやれよと思わなくもないが。どうして遊園地に遊びに来てまで、現実を思い知らされなければいけないのか?

 

 さて、元主役のミ○キーが何となく寂しそうに見えるが無視して、アトラクションを楽しむことにしようか。

 

 

 

 

「すっ・・・・・・・・・げぇえええええええええええええ!!」

 

「わーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

 

 風が顔に叩きつけられるが、そんな事を気にしている場合ではない。何しろ、俺たちの眼前には無限に大空が広がっているのだから。俺は、手元のレバーを操作して機体を傾ける。物凄い速度で向かってくるホログラムの敵を避け、時にはビームを撃って倒す。

 

 俺たちが乗っているのは、【ギャラクシー】という、新しいアトラクションだ。なんとこのアトラクション、ISの機能を一部使用しているらしく、本当に(・・・)空を飛んでいる(・・・・・・・)。しかし、PIC(パッシブ・イマーシャル・キャンセラー)とかいうISの技術の劣化版を使用しているらしく、Gがかなり軽減されている。それこそ、【バルジャーノン】レベルの揺れだ。ISという兵器が世に出てから十年、漸くこの素晴らしい技術の兵器以外の使い道を見つけたのだろうか。この【ギャラクシー】は、専用の人型機械の乗り物に乗って、客自身が操縦してゴールを目指すアトラクションだ。しかも、障害物や地面と衝突しそうになったら、A・I(人工知能)が瞬時に判断して制御して軌道を戻すため、絶対に事故も起こらないという素晴らしい使用らしい。恐らく、【あちらの世界】の技術を、【こちらの世界】は優に超越している。敵はホログラフィックの映像だし、攻撃もホログラフィックだそうだ。それで、まるで本当に敵を撃っているような臨場感を出しているんだから、この技術の大元を考えた【束博士】という人は本物の天才だな。

 

 実際に【あちらの世界】でBETAと戦っていた俺が、本物の臨場感だと認めよう。確かに、所詮は遊びだから命の危険が無いため、本物の戦いの雰囲気は無いが・・・このアトラクションは本当に凄いと感じる。

 

『お疲れ様でした。お足元にお気を付けてお降りください。』

 

 凄く楽しかった【ギャラクシー】も終わってしまった。俺たちは少しの寂しさと共に、機体を降りる。

 

『おめでとう御座います!此方のお客様が、ハイスコアを更新いたしました!!』

 

 俺たちが機体を降りると同時に、賑やかなファンファーレと共に夢の国の住人(スタッフ)が現れ、俺たちを取り囲んだ。

 

「な、何だ!?」

 

「お客様のスコアは、ハイスコア・・・というか、一度のミスもなく満点でして。スコアが一定以上のお客様には、お食事券をプレゼントしているのです。」

 

 と言って渡されたのは、この夢の国一番のホテルのディナー券。

 

「う・・・嘘。・・・凄い凄い凄い!確かここって、最低でも数万円くらいからの食事しかないところだよ!?」

 

「そ、そんな所の食事券貰っちゃっていいんですか?」

 

 と、俺が若干怯えながら聞くと・・・

 

「大丈夫です。ドレスやタキシードなども無料でお貸ししていますので、どうぞご利用ください。」

 

「あ、有難う御座います・・・。」

 

 とんでもない物貰っちまったが、まぁ純夏が楽しみにしてるし良いか。

 

「お客様、もしよろしければ、先程の映像をPVとしてテレビで放送してもよろしいでしょうか?」

 

 と、更に爆弾を投下してくる従業員。

 

「な!?」

 

「勿論、個人情報が流出するような映像や音声は全て修正いたします。先程の操作が余りにも凄いものでしたので、PVとして利用したいのですが・・・。」

 

「・・・ま、まぁ、そういうのを修正してくれるなら別にいいですよ。」

 

 断る必要もないだろ。と考えてOKしたのだが、従業員の喜びようは凄かった。

 

「そ、そうですか!有難う御座います!」

 

 そんなこんなで、俺たちは結構な戦利品を得て次のアトラクションに向かった。

 

☆☆☆

「・・・凄いですねあの男性。このアトラクションで満点を取るって、国家代表クラスでも難しい筈なんですけど・・・。」

 

「オープン前に日本代表が惜しい所まで行ってるけどな・・・。それに見たか彼らの顔?あんな恐ろしい挙動をしていたのに、二人ともケロッとした顔で、汗一つかいていなかった。」

 

「そもそも、あんな挙動をしたら、AIが危険だと判断して自動的に修正するハズなんですが・・・バグですかね?」

 

「今軽く点検しているが・・・バグのあった形跡なんて無いんだよな・・・。」

 

「・・・一体、何者なんでしょうね彼ら?」

☆☆☆

 

 

 

 楽しんだ俺たちは、少し遊び疲れてベンチで休んでいた。周囲は暗くなり始めているが、パレードなどもあるため、ここからが本番だとばかりに張り切っている親子連れも多い。あぁ・・・遊び疲れるなんて贅沢、一体何年ぶりだろうか・・・・・・?

 

「・・・・・・。」

 

「・・・・・・。」

 

 俺たちは何も喋らずに周囲の喧騒に身を任せている。だが、別に嫌な沈黙ではない。俺たちの距離は段々と近づいていって・・・何時の間にか、俺たちの手は重なり合っていた。

 

「・・・昔は、こうやって手をつないで歩いたっけな・・・。」

 

「タケルちゃんが引っ張っていったの間違いでしょ?何度も転びそうになったりして大変だったんだからね。」

 

 怒ったように頬を膨らませるも、その表情は笑っている。そもそも、俺がコイツにしてきたことの中ではかなり軽いほうなので、これで怒ってもしょうがないという考えかもしれない。

 

「・・・何時からかな、こうして手を繋ぐの止めたの。」

 

「・・・何時からかな・・・。」

 

 思い出せない。【こちらの世界】の白銀武の記憶にも、朧げにしか存在しない。・・・多分、『女と手を繋ぐのなんて恥ずかしい』みたいな考えで、俺から手をつなぐのを止めたんだろうと思う。

 

 隣に座る純夏は、少し寂しそうに

 

「何時まで私達、こうしていられるのかな・・・。」

 

 と呟いた。

 

「何時までって?」

 

「だって私・・・タケルちゃんと一緒に卒業出来なくなっちゃったじゃん。あの街からも離れて、ISなんていう兵器の適正が歴代一位だなんて嬉しくないことを言われて・・・ねぇタケルちゃん。私が動かしているのはね、戦争の道具、人殺しの為の兵器なんだよ?」

 

 それまで笑っていた純夏の表情が・・・歪む。

 

「タケルちゃんは、学校を卒業して大学生になって、恋人も出来て、社会に出て結婚して・・・何時か、私のことなんて忘れちゃうんじゃないかな・・・?IS学園に通っている以上、私は軍関係の職業に就くんだと思うし。・・・不本意とはいえ、戦争の道具を動かす練習をしている私のことなんて忘れたほうがいいとは思うけど・・・それでも・・・・・・それでもやっぱり寂しいよ。」

 

 独白を続ける純夏の瞳が潤む。俺は何時の間にか、繋いだ手に力を込めてしまっていた。

 

「・・・私達、もう普通の幼馴染には戻れないのかな・・・・・・?」

 

 ゴクリと唾を飲み込む。本当は、ディナーの後に言うつもりだった。・・・だけど、今の純夏を放っておくことは出来ない。今にも泣きそうな純夏をこのままにはしておけない。

 

 ・・・だから、言った。

 

「・・・そうだな。俺たちはもう、普通の幼馴染には戻れない。」

 

「・・・っ!」

 

 純夏が弾かれたように俺を見る。その瞳には、驚愕がアリアリと浮かんでいた。そして、その顔が更に歪んで、その瞳から涙が溢れる前に言い切った。

 

「俺はもう、お前と唯の幼馴染(・・・・・)に戻るつもりはない。戻りたくはないんだ。・・・だって俺は・・・・・・俺は、お前が好きだから!!」

 

「え・・・?」

 

「純夏、お前を愛してる!だから、今更唯の幼馴染に戻りたくはない。・・・純夏、俺と付き合ってくれ!!」

 

 一息に言い切って、深々と頭を下げる。自分では分からないが、多分俺の顔は真っ赤になっているだろう。・・・くそっ!【あちらの世界】でも純夏とは恋人になったのに、やっぱりドキドキする。【あちらの世界】の純夏みたいに断られたらどうしよう?既に純夏に好きな奴がいたらどうしよう?そんな考えばかりが頭に浮かんでは消えていく。

 

「・・・これ、夢・・・・・・じゃないんだ?」

 

 先程から自分の頬を抓るのを繰り返していた純夏は、漸くこれが夢じゃないと確認出来たらしい。

 

「え・・・え?タケルちゃんが、私のこと好きって・・・本当に?」

 

「本当だ。・・・お前が居ない世界で、俺はお前がどれだけ大切なのかを知ったんだ。俺は、今そこにある幸せを、あるのが当たり前として受け取ることしか出来なかった。身近にありすぎて、それが幸せってことなのを気づく事が出来なかった。失って始めて気が付いたんだ、お前を好きだって事に。愛しているって事に。」

 

「う・・・ぁ・・・・・・。」

 

 夢中で喋っていた俺は、純夏が顔を両手で覆ってポロポロと泣き出したのを見て混乱した。

 

「え・・・どうした純夏!?ま、マズイことを言ったか!?もしかして嫌だったか!?」

 

「ううん、違うの!・・・嬉しくて・・・・・・嬉しくて・・・。」

 

「それって・・・。」

 

 俺がその言葉の意味に気が付いたと同時に、純夏は抱きついてきた。そして、首に手を回して少しだけ離れる。

 

「・・・ぁ。」

 

 すると、俺の顔と純夏の顔が物凄く近づいた。互の吐息が感じられる程に近く、近く。こんなに近づいたのは、幼馴染人生でも始めてだと【こちらの世界】の俺の記憶が叫ぶ。勿論俺もだ。

 

「・・・・・・タケルちゃん。」

 

 真っ赤な顔をした純夏に至近から声を掛けられて、心臓が破裂しそうな程に脈打っている。いくら吸っても呼吸が苦しい。

 

「な、んだ?」

 

 それでも、どうにかその言葉を返した俺に、純夏は今まで見てきた中でも最高の笑顔と共に・・・

 

「ありがと!私も、愛してるよ!」

 

 俺の唇に、キスをしてきた。

 

「!?」

 

 本当に、唇と合わせるだけの軽いキス。だけど、俺の瞳からは何故か涙が溢れて止まらない。

 

 どのくらい続いただろうか?息苦しくなってきた俺たちは、どちらからともなく離れた。

 

「・・・。」

 

「・・・。」

 

 キスをした恥ずかしさからか、お互い無言・・・だけど、目を逸らさない。

 

「・・・純夏。」

 

「・・・はい。」

 

 珍しく丁寧な言葉をした純夏が可愛くて、思いっきり抱きしめながら

 

「俺と付き合ってくれ。」

 

「はい!」

 

 俺たちは、結ばれた。

 




ラブコメは・・・出来たんだろうか?これでいいのかラブは?もっと甘くしたかったけど、私には限界でした。
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