俺だって英雄になりたい   作:時雨。

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もはや何番煎じか分からないけど書きたくなっちゃったからね!
仕方ないね!!

作者は基本原作と同じ口調、性格で書くのが好きなので原作に準じるようにしていますが、場合によっては極度の睡魔及び疲労で頭で思い浮かべてるキャラと喋っているキャラがちげえじゃねぇか!ということもたまになります。

※ちなみにこれ予約投稿なので今もくっそ眠いです。

そんな時は優しく教えてあげてください。
チョロインの如く喜びます。

「べっ、別にあんたに感謝することなんてっ、ちょ、ちょっとくらいしかないんだからねっ!」

……それではどうぞ。





俺だって実技試験に受かりたい

「でぇっかいなぁ」

 

桜舞うには少し早い、未だ肌寒さ残る季節。

高鳴る胸の熱を、僅かな緊張と共に口から漏らすように吐き出すと、白い霧がふわりと浮かんだ。

眼の前に聳え立つのは最早何処ぞの大企業と言われても頷いていしまいそうな巨大な門、そして校舎。

ぼんやりそれを見上げる俺の横を沢山の受験生たちが覚悟や焦りを顔に滲みだしながら歩いて行く。

俺も彼らも一様に同じくこの高校の受験が目的だ。創立から現在に至るまで、数多の英雄を排出し続けると名高き彼の学び舎。

現在俺、藤丸立香はヒーロー教育の名門、雄英高校のヒーロー科を受験すべくその正面玄関に来ていた。

どうして俺がこんなことになっているのか説明するには少し、いや、かなり時間を遡る必要がある。

少しばかり長くなるがどうかそのままで聞いてほしい。

俺を今この時まで支え続けてくれた人達の話を。俺が、救い上げ、切り捨ててきた人たちの話を。

俺が、世界を救い、壊してきた話を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

星々が瞬く夜。

少年は遍く空に向かって小さな手を伸ばした。

空一杯の美しい星達をその手の内に入れんが為に。

しかし、それらはそこにあるように見えて実物はずっと遠くにある。人がいくら必死に手を伸ばそうとも触れることのできる距離ではない。

況してや未だ生まれて五つにも届かぬ幼い少年がどれだけ頑張ったとしても、自らの物にすることなど叶わないのは当然の道理だった。

そんなことは分かっている。

彼自身も理解していた通りその手はやはり虚空を掴む。

どれだけ必死になろうとも手に入れることのできない星々を見ていると、何だか胸の奥がむず痒くなった。

何かが足りない。

尽きぬ渇望。満たされない欲求。

そもそも満たすべき器を定められていないままでは、一体何を注げばいいのかも定まらない。

この世に生まれ落ちて数年、この真夜中の恒例の儀式とも言える天体観測の時にのみ感じる謎の感情は、少年の幼い精神へ焦燥と苛立ちを与え続けていた。

その原因は未だ分からず、理解も予測も出来ない。

だから何度でも手を伸ばす。

遥か高みから自らを見下ろして輝くあの星々へと。

今までも幾度となく今日のような美しい夜に、煌めく星々に手を伸ばし、そして掴み損ねてきた。

最早この動作は彼が天体観測をするときのルーティンになりつつあった。

先程と同じ様に何気なしに手を伸ばす。いつもと同じ、何も掴み取ることのできない動作。

別段いつもと変わった点などなかった。

普段通りの自室のベランダで、特に理由もなく星を見上げる。

強いて言うならば、彼が明日で五つになるという事ぐらいなものだった。

ぎゅっと小さな拳を空に向けて握り締めた瞬間、少年は脳に閃光が走ったような衝撃に襲われる。

それと同時に焼き付くような鮮烈な痛みが右手の甲に走った。

それと同時に少年の脳に何かが駆け巡る。

眩しい、ただ眩しい光景を見た。

長く、短い旅の記憶。

 

「あっ、ぅう、ああぁ……っ!」

 

どうして忘れてしまっていたのだろうか。

こんな大切な、仲間たちとの絆を。

様々な時代の特異点に赴き、それらを修復する。

人理修復の旅。

沢山の人々と出会い、別れ、縁を繋いできた。

彼らと見上げた幾千の星空。

いつの時代も、それらは美しく輝いていた。

そうだ。

俺は天文台の魔術師。

星見の、人類最後のマスター。

それならば星が好きなのは当然だ。

何と言ったって俺は"観測者"。

星空が好きなのは当然だ。

そう、これはそういうものなのだから。

 

 

『言わばこれは言葉遊びだ』

 

 

『言わばこれは言ノ葉の鍵だ』

 

 

『言わばこれは言霊の弾丸だ』

 

 

はるか遠い世界、自身の過去の記録、記憶、それらと今とを結ぶための紐付け。

一つに括るための、強いて言うなら楔。

それは今、確かにこの小さな右手に打ち込まれた。

赤く、紅く、朱く爛々と輝く俺と彼らとこの世界とを結びつける楔。

溢れ出る涙で視界が歪む中、確かに心の中の乾きを満たした事を感じながら、ゆっくりと少年は瞼を下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして俺はその出来事と共に個性に目覚め、それから微笑ましい学生生活を送り今に至るわけだ。

うん。

大分端折ったな……。

まぁ、なんやかんやあったが別にそれらは未来が消えたとか過去から侵略だとか世界の漂白だとかそんな神様もびっくりな驚きの展開じゃない。

普通に勉強して普通に恋をして普通に暖かな家庭で育った。

それらはここで特筆することのない他愛無い話だ。

 

「さてと、過去の回想でじんわりと感動に震えるのもいいけど、そろそろ受験会場に行かないとまずいかな」

 

話は戻るがここ雄英高校は凄まじい倍率で、ただヒーロー科が有名というだけでなく普通に学力も無いと入学は叶わない。

ヒーローに成るための強力な個性が求められると思われがちなヒーロー科だが、本来の"学校"という部分で必要になる学力だって大事な受験項目なのだ。

そうとなれば少しでも多く暗記や数式の確認はしておくべきか。

早いところ自分の座席を見つけて座ってしまおうと考えた。

だから俺は視界の端に移った転びかけた緑色の髪のそばかすの少年とそれを助けた茶髪でおっとりした少女の出会いなど知る由もなかった。

俺の知らない所で、世界の歯車は少しずつ、しかし確かに音を立てて回りだす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おおー、すごい本物だ」

 

これから行われる実技試験についてプロヒーローのプレゼントマイクが説明を行っている。

話には聞いていたが、本当に教師はプロヒーローが務めているらしい。

らしい、なんて軽い言い方をしたが、実際これには俺も感動した。

普段テレビやラジオで活躍している彼を実際に生で見て年甲斐もなくテンションが上がってしまったのだ。

俺はこの世界に生まれてからは十数歳だが、前世と合わせれば結構なお歳になる。

だというのに危うく初っ端の「いえーい!」を叫んでしまいそうになった。

どうも自分が思っているより緊張で舞い上がっているらしい。

何ならいっその事後顧の憂いを無くすためにも全力で叫んでしまうべきだっただろうか。

 

「って、ばかばか。今はそんな事考えてる場合じゃないよね」

 

巨大なディスプレイにはこれから俺達受験生が戦うことになるらしい敵(仮想ヴィラン)が映し出されていた。

それぞれのタイプ毎にポイントが違うらしい。

しかも中にはポイント0のお邪魔キャラまでいるとか。

 

「これ行ってみたらそこら中お邪魔キャラばっかりで探知系の個性持ちじゃないとポイント持ってる敵を発見すらできないとかだったら目も当てられないな」

 

まぁ、そこのところ俺は大丈夫な気もするけれど。

途中眼鏡をかけた委員長タイプのうるさい奴が独り言がうるさいと他の受験生にうるさいと注意していた気もしたが、お前が一番うるさいと言いたかった。

そんなこんなでバスに乗りこみ試験会場に移動する。

 

「んーっ、と。流石雄英、敷地はどこまでも広がってるなぁ」

 

ぐーっと伸びをして体を伸ばしながらバスから降りる。

しばらくバスに乗って移動したというのに未だ学校の所有している土地から出ていないというのだから驚きだ。

ここに来る途中もいったい何に使うのかよくわからない施設をいくつか見たが、果たして雄英がどこを目指しているのかは謎である。

あちらこちらで俺と同じように広大な施設に感嘆の声が聞こえた。

他にも精神統一、自己暗示、準備運動など試験前の様子は人様々だ。

すると、先ほど説明会場でも言い合い(?)になっていた眼鏡ともっさり君がトラブルになっているようだ。

 

「君はなんだ?妨害目的で受験しているのか?」

 

険しい顔で緑っぽいもっさり君を咎める眼鏡。

確かに今もっさり君が話しかけようとした彼女は実技試験を前に心を落ち着かせようとしていたのだろう。

人生に一度の大勝負。

失敗は許されないこれっきりの大一番だ。

それを邪魔しようなど不届き千万。

だが、今彼にはそういう意思はなかったように思える。

これは単に俺の直感でしかないが、今の眼鏡の言い方は正直に言って腹が立った。

さっきといい今といいちょっと言いすぎだ。

一言文句でも言ってやろう。

そう思い一歩踏み出したところで後方の塔からプレゼントマイクの声が響き渡った。

 

「ハイ、スタートー!」

 

周囲が静まり返り、その言葉の意味を理解しようとするが、それよりも早く再度声が響いた。

 

「どうしたあ!?実戦じゃカウントダウンなんざねえんだよ!!走れ走れぇ!!」

 

その言葉に受験生が一斉に現状を理解した。

 

「賽は投げられてんぞ!!?」

 

楽し気に塔の上から叫ぶプレゼントマイク。

あそこはすべての試験会場を見渡せる監視位置。

彼があそこに上っているという事はすでにこれから行われる事のすべての準備が整っているという事なのだろう。

それがすでに試験は開始しているという事を決定づけていた。

 

「うわぁ、そういうパターンか」

 

悪態を付つきながらも他の受験生たちと共に試験会場へと駆ける。

だが、彼らの中も早く走れる、加速できるタイプの個性持ちとそうでない者とですでに差が開いていた。

ならここは俺も少し工夫が必要か。

幾度となく自分のサーヴァント達に使用して来た魔術。

あの時は礼装の補助がなければろくに使用できなかったが、

今は俺の個性の一部として確立しているおかげで礼装に関係なく自由に使えるようになっていた。

対象は自分自身。

目的は身体能力の向上。

一瞬だけでいい。

まずは小出しにして様子見が妥当だな。

ぐっと足に力を入れて個性を発動させる。

 

「『瞬間強化』!」

 

タァンッ!とアスファルトを蹴る音を前方の集団が耳にするが早いか否か、俺の体は先頭集団の頭を飛び越し最前列の前に躍り出ていた。

魔術回路が今の体に存在しているのかは分からないが、それと似たようなモノは体内に感じる気がする。

言ってしまえば認識できる血管がもう一組、または一パターン、あるという感じだろうか。

血管を数える単位はわからないが、取り合えず体の調子は良好なようだ。

眩暈も頭痛も、もちろん出血もない。

大きくジャンプした先の空中でそれらを確認し、俺はさらに個性の"ギア"を上げた。

 

 

 

 

 

 

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