「さて、体調不良で倒れた土方少女は今しがた保健室に運ばれていったわけだが……」
先程の俺と沖田の一騎打ちが行われた戦闘訓練。
結果として俺は敗北し、今晩のメニューはチー○inハンバーグに決定した。
何ということだ、俺は沖田の目論見にまんまと乗らされ、挙げ句の果どうもこんばんはチーズin。
いや、別にチーズinが嫌なわけじゃない。
切った瞬間弾ける肉汁とどろりと流れ出す半液体状のチーズ達。
そんなもの美味しいに決まっている。
それでも俺はびっ○りどんきーを押したかった。
無念だ……。
とにかく今日のことはしっかり反省して次に活かせるようにしよう。
ふぅ、と一息ついて思考の海から浮上すると、これから授業終わりの講評に入るであろうところだった。
だが、どうも少し様子がおかしい。
うーむ、と手を顎に当ててなにか考え込むような仕草を見せるオールマイト。
いつでも笑顔で即筋肉!といった印象のオールマイトがこういった長い思考を見せるシーンというのは何気に始めて見たかもしれない。
数秒その体制のままだったが、何かを思いついたように顔を上げた。
「全員分の訓練が終了したわけだが、少々時間が余ってしまってね。早めに切り上げとうとも思ったんだが、今ここにいない土方少女は仕方がないが、藤丸少年ははまだ一対一しか行っていないだろう?もう一戦だけ行ってみようか!」
「――えっ?」
「よし!それじゃあ藤丸少年と一戦交えたいという者はいるかな??」
あ、これ俺への確認は無しなんだ。
つまり俺に拒否権はないということか。
といってもまぁ、沖田戦でだいぶ消耗してはいるものの特別えげつない個性でなければ別にもう一戦くらいは行けなくもない。
オールマイトはナンバーワンヒーローと呼ばれているだけ合って戦闘経験はダントツで多いはず。
ならば連戦における疲労やリスクだって承知のはずだ。
その上でやれというんだからやるしかない。
それに初日から二連戦させせようなんて時点で何らかの学校側の意図が絡んでいることだろう。
おそらくこの間の個性アリでの体力テストで相澤先生から学校側に報告が上がったか。
となればオールマイトに下った指示は俺が
近年ヴィランも活性化しているし、そんな中で校内の不安要素は早いところ潰しておきたいといったところだろうか。
いや、単にこれからの指導の参考にするためという線も無きにしもあらずだが。
それについてはここではただの一生徒でしかない俺がどうこう考えても仕方がない。
出来ることがあるとすれば彼らの望み通り今までとは少し違う方向性の個性の使い方をしてやるくらいだ。
唯一心配なのはオールマイトが自分の体力を基準に考えてて俺の体力は考慮してませんでしたみたいなオチだ。
いや、きっと大丈夫だ。
たぶん。
周囲がオールマイトのトンデモ発言にどよめく中、誰も手をあげようとしない。
ついさっきまで自分たちとの大きな差を見せつけられた直後。
すこし周りとは違うかな?とは薄々わかってはいたものの、あからさまな異常ぶりを見せつけられてそれでも俺と戦おうという気になるヤツのほうがおかしい。
俺だって逆の立場だったら絶対イヤだ。
今まで俺はもっとやばい英霊連中を見てきたためそんなに気にしていなかったが、この世界で俺は過剰戦力らしい。
もっと早く気がつけと言われそうなものだが、そこはもうあのキチガイ集団で常識がおかしな方向に捻じ曲げられてしっかりと固められてしまっているためどうしようもない。
どよめきが走るばかりで誰も手を挙げない現状にどうしたものかと思っていたが、後ろの方にいた誰かが小さく手を上げた。
「おお!轟少年、やってくれるか?」
「はい。俺もあいつの個性、気になってたんで」
ぎくっ、と言わんばかりにオールマイトに動揺が走る。
ごまかし方もそれはひどいもんで、「あ、ああ!べ、別に学校側は関係ないんだけど、私が個人的に気になってしまってね!HAHAHA!!」と笑っていた。
轟君は学校についてなんて一言も聞いてないだろうに……。
というか結局また一対一か。
オールマイトの嘘が穴だらけ過ぎて少し心配になった。
ヴィランの誘導尋問に引っかかって生徒の個人情報をペロッと吐き出してしまいそうだ。
筋骨隆々なドジっ子。
いや、ちょっと勘弁して欲しい。
それはそうと、やっぱり学校側が絡んでいるようだ。
だが、現段階でこちらからなにか出来ることはない。
となれば今はこれから行われる戦闘訓練の対戦相手に集中すべきだろう。
相手はあの推薦入学者の轟君だ。
さっきの戦闘訓練ではビルがあっという間に氷漬けになってほとんど両者とも何もできずに終わってしまった。
近接戦闘になったときどんな戦闘スタイルで対処するのかちょっと楽しみだ。
って、おいおい、俺は本来後方支援と指揮だけで肉弾戦なんてからっきしだったはず。
いつの間にか思考が戦闘狂になってしまっているではないか。
まぁ、せっかくの二回目の人生だ。
それもまたいいかもしれない。
そして、オールマイトが引いたくじの結果が発表された。
『さて、予定の時間まであと2分だが大丈夫かね?藤丸少年』
「はい。この分なら時間通り間に合いそうです」
指先の蒼白い光を地面に押し当て、ルーンを刻んでいく。
指を離すとスゥっとコンクリートに染み込むように消えていった。
表面に書く訳ではなく、尚且コンクリートに傷をつけない。
迎撃用の罠としては中々の出来だと思う。
これは俺が個性として魔術を会得した後に、クーフーリンやスカサハが使っていたルーンというものを上手いこと改良したものだ。
改良、といっても理論に基づいて術式を記述できている訳ではない。
なんとなく、感覚で、直感任せにやったらできたのだ。
これは偏にこの世界における個性がどういうものか、という点が大きく関わってくる。
個性というのはどんなに人間離れした現象を引き起こそうとも、どんなに原理の原の字も分からないようなものであっても、あくまでそれは個人の身体能力という枠を出ない。
スポーツをやっていた人なんかはわかりやすいかもしれないが、「この動きを練習していたらなんだか他のぜんぜん違うところにも役立った」や「出来るかどうか分からなかったけど、感覚に身を任せてやってみたらできた」というのが俺のこの世界における魔術の開発方法だ。
ぶっちゃけ同じことを元の世界でやろうと思えば一番簡単にできたものでもスカサハ完全監修の元必死に取り組んだとして理論が頭に入っても術式の行使がままならないだろう。
詰まる所どういうことかと言うと
「個性って、便利だなぁ」
この一言に尽きるのだ。
大方の仕掛けを終え、守るべき核のもとへ戻る。
そろそろ時間も迫っているはずだ。
くじの結果は轟君がヒーローで俺がヴィランだった。
となればあの時見た一瞬で氷漬けになってしまった回と同じ轍を踏まないようにするためにも工夫が必要となる。
そこでこのルーンたちだ。
条件下で勝手に発動する『自己発動術式』に、俺の意思で任意のタイミングで発動する『指定発動術式』。
これらの炎で、というか熱であの氷を何とかしようと考えてはいる。
が、連発できるものなのかはわからないが、流石に何度もあの超冷却を浴びせられればこちらは次が追いつかずに手詰まりだ。
そうなる前に直接轟君への奇襲をかけるべきだな。
奇襲は最初の回で爆豪がやったきりだが、あれはあれで有効な手だ。
ここは狭い室内。
死角になる場所も多い。
その上ヒーロー側は今現在俺の隣に立っているこのハリボテがどこにあるかわからない。
そうすれば無闇矢鱈に壁をぶち抜くなんてこともできない。
『さて、時間だ藤丸少年!準備は良いかな?』
「はい。始めてください」
『それでは、訓練開始!!』
その言葉を聞いた瞬間、足元から冷気が迫ってくるような冷たさを感じる。
おそらく前回と同じ手で来たな。
俺がこれをどう対処するか見てるんだろう。
彼は俺が熱を発するタイプの個性を使っているところを見せていない。
俺が炎でこの部屋を守ればどんな反応をするんだろうか。
そんなことを考えていると、部屋全体に張り巡らせたルーンが発動する。
書いたのはキャスニキがよく愛用していた『アンサス』の応用。
この部屋全体が発熱しているように温まっていく。
冷気がこの階にも登りきったようだが、この部屋は変わりない。
強いて言うならちょっと暑いか。
コスチュームの首元を緩めながら入り口を見る。
あのドアの向こうは一面氷漬けだろう。下手に開けると空気の寒暖差でどうなるかわかったものじゃないな。
うーん、この状態でドア開けたら一気に体冷やして風邪ひきそう。
そんなくだらないことを考えていると、徐々に近づいてきているようで、遠くから響くように足音が聞こえてきた。
ここは確か3階の窓際だし、外からこの部屋だけ凍らなかったのは見えていただろう。
迷わず俺のいる部屋まで一直線と言うわけだ。
「じゃあ、そろそろ行こうかな」
氷を踏み砕く音のしない別の扉へ近づいてドアを開ける。
その先の廊下に氷はなく、さっきまでいた部屋同様温かい。
こちらも上手く起動してくれたようだ。
「うんうん、これなら上手く後ろを取れそうだ」
俺の作戦はこうだ。
といっても今回のこれは状況が既に限定されている上に狭い屋内ということもあって作戦と呼べるような立派なものじゃない。
外から見える目立った場所に核があったからそこを目立たせて、入口側から見えない廊下を通って部屋に入ろうとする轟君を奇襲するといったものだ。
真正面からあれとぶつかるのは怖いからね。
足音のする方へ静かに近づいていくと徐々に足元に氷が見え始めた。
パキパキという音がならないように注意しながら先へ進む。
曲がり角から顔をだすと、丁度本命の部屋へ向かう途中であろう轟君の背中を見つけた。
先程部屋の守りに応用した『アンサス』を指先で空中に描き、飛ばす。
背後から迫る熱に気がついたのか、咄嗟に氷で身を守る轟君。
大きな音を立てながら地面から氷が迫り出し、壁に激突する。
怪我をさせないように手加減した炎は氷の表面を軽く溶かすのみで役目を終え、その場から消失した。
俺に気がついた轟君はついさっき作り出した守りのための氷を破壊して新たな氷の塊をこちらに差し向ける。
「うわっ、と」
慌てて出していた頭を引っ込める。
それにしても度々思うけど、轟君の個性って強力なせいか知らないけど本人の使い方が大分大雑把なんだよね。
あと、自分の勝利は揺るがないと思ってるあたりも危うい。
こうやって奇襲も気にせずまっすぐ目的の部屋に向かってくるのもね。
逃げたこちらを追うように迫ってくる氷を躱しながら元いた部屋へ戻る。
本来轟君が最初に目指していた核が置いてある場所だ。
これだけ酷評しておいてなんだけど、俺としてもちょっと彼を舐めすぎてたかな。
あれだけ冷えた空気の中で熱が接近してくればすぐに気がつくだろうに。
怪我させるのをビビって出力を絞りすぎた。
氷から部屋を守った時点で俺の火力はあんなもんじゃないと向こうにもバレてるはずだ。
足音からして轟君は俺を追ってきている。
確保が目的か、それとも俺の行先に核が置いてあると確信してるのか。
「だとしても、俺はこの建物に立て籠もったヴィラン。ちょっと警戒が足りなんじゃないかな!」
通り過ぎた足元に設置してあったルーンを起動させ、炎が上がる。
背中に一瞬熱を感じ、足音が止まったその間に部屋へと転がり込む。
流石に彼と直線上でやり合う勇気はない。
せっかくこっちは立て籠もり設定なんだ。
そのあたりを上手く利用しない手はない。
勢いよく扉を開けて部屋に飛び込んで扉を閉めた。
ここまでで数秒、様子を見ながら部屋の核のそばまで走り寄った時点で十秒は経ったはずだ。
そろそろ来るか、と思っていたところで扉の周囲が凍りつき始める。
どうやら扉のすぐ向こうにいるようだ。
流石にゼロ距離で凍らされたら耐えられないか。
こんなことなら扉にだけルーンびっしり書いとけばよかった。
やがてカチカチになったドアがゆっくりと倒れる。
部屋の中に侵入した轟くんは俺を正面から見据え、こちらを睨みつけた。
「随分と小細工仕掛けてくれたじゃねえか」
「小細工?」
「とぼけんじゃねえよ。さっきの爆発も、入口近くの階段の爆発も、わざと外から見えるこの部屋を凍っていないと見せつけたのも。全部俺の行動をある程度読んでねえとできねえ筈だ」
「まぁ、轟君わかりやすいしね」
「ちっ、よりにもよってお前があいつと同じ炎使いとは思わなかったが、この部屋じゃさっきの奇襲の後見てえに物陰に隠れもできない。痛い思いしたくなきゃさっさとリザインした方が良いぞ」
すごい自信だな……。
きっと今までひどい負け方とかしたことないんだろうことがひしひしと伝わってくる。
常に凡人でずっとみんなの背中しか見てこれなかった俺としては羨ましい限りだ。
そのうち大事故とか起きそうだけど、彼大丈夫だろうか。
「それはどうかな。君が思ってるより粘るかもよ?」
「――言ってろ!」
轟君の足元から氷が生成される。
今までより部屋が広いからか、生成される氷も大きい。
このまま俺を凍りつかせて行動不能を狙っているようだ。
だが、俺もそうそう思い通りにやられてやるつもりはない。
しかしながらさっきの沖田との全力戦闘で魔力が残り少ない。
となればルーンを含めた英霊の力に頼らない戦闘方法を取ってみようか。
イメージとしては直接戦闘に参加していなかった以前の戦闘スタイルに近いだろう。
と言うか、無理して英霊の力を使うことも出来るだろうけど、炎と言えばあの二人のどっちかだしなぁ。
下手に魔力も体力も少なくなってるときに使うと
せっかくの貴重な強い相手との戦闘機会。
現状英霊の力無しでどれだけ出来るか俺も気なるところではあるし、いい機会だ。
いろいろと試してみよう。
右手を突き出し、手のひらを迫り来る氷に向ける。
左手を右手に添え、叫んだ。
「『ガンド』!!」
黒い球体が射出され、衝突した瞬間氷塊を弾けさせる。
ガンドとの衝突でサイズが削られた氷を横に飛んで回避し、空かさず空中にルーンを刻む。
「『アンサス』!!」
「くッ!」
氷の横から見える生身に炎を飛ばすが、それも新しく生成した氷に防がれてしまう。
先程からその場から動かずに攻撃も防御も行っている轟君。
やはりこの部屋に罠がある可能性を考慮してできうる限り動きたくないのだろう。
だから核に触れに行くよりその場から動かずに俺を撃破することを優先している。
だが、それではこちらが困るのだ。
彼の予想通り彼が今入ってきた入り口から核に触れようと思うならばおそらくそこを通るであろう部屋の中央付近。
そこにとっておきを隠してある。
初っ端の奇襲で使ったルーンは何だったのかと言いたくなるような高火力の罠。
きっとこの場に沖田がいたならば、「うわー、直接手を下すような時はやたらビビるくせに間接的になると途端に強気になるとか」なんて言われてしまいそうだ。
いやいや、違うんだよ。
あれはほら、奇襲の一発で終わらなかったってことはちゃんと防いでくれるかなっていうさ。
思いが、その、こもってるんです。
「いい加減ッ、うぜえ!!」
何度か炎をぶつけた後、急に焦り出した轟君。
何事かと思いながらも回避回避と避け続ける。
前世でも基本攻撃能力はガンドくらいなものだったから、事逃げに関しては割と自身があるのだ。
ふと、気がついたことがある。
先程まではガンドをぶつけたり攻撃の直前に炎をけしかけたりして攻撃を邪魔しないと回避できなかったようなタイミングも、何故か普通に回避できる様になっていた。
この短時間で俺が成長したとは考えにくいし、原因があるとすれば轟君のほうか。
「――霜?」
「チッ!!」
どうやら当たりのようだ。
彼の体には氷の連続使用制限のようなものがあるらしい。
考えても見ればあれだけ派手にビルやらなんやら凍らせてればその冷気は彼自身の体も蝕んでいくだろう。
冷気に対する完全耐性なんて人間とは思えない力も個性に含まれてるなら話は別だが、現状の彼を見る限りその線はなさそうだ。
今までの横飛ではなく大きく後退して部屋の中央まで下がる。
「なるほど、轟君はある程度氷を出すと体が冷えて上手く動かなくなるってかんじか」
「だったらなんだってんだ。別にお互いやることに変わりはねえだろ」
「確かにそうなんだけど、俺の方も大分限界が近くてさ。結構頭がフラフラしてきてるんだ」
「――何が言いたい」
「次で、最後にしよう」
一際魔力を込めてルーンを描く。
今までより高威力が飛んでくると轟くんも気がついたのか、向こうもこれままでの氷の生成より大きなタメを作った。
「『アンサス』!!」
炎の塊と氷がぶつかり合う。
しかし、炎は氷を溶かしきることも破壊することもできない。
そのまま氷は俺を飲み込んで壁際に叩きつけた。
きっと地下のモニタールームも轟君も、これで終わったと思っていることだろう。
だが、甘い。
まだ終わってなんかいない。
自分で言うのもなんだけど、俺の意地汚さを舐めてはいけないんだ。
ゆっくりとこちらへ近づいてくいる轟君。
わざわざ核じゃなくて俺の方に来るのはやはり慢心からだろうか。
それともお互いの健闘を称え合ってとか?
核でも俺でもどちらに向かうにせよそこを通る。
なら、別に問題はない。
「さっきあれだけの戦いを見せて、それでもこれだけやれる奴が同学年にいるとは思わなかった」
「へぇ、それは嬉しい評価だな」
「さっきの侍みてえな個性。使わなかったのはなんでだ」
「それは俺にも君と同じように個性を連続で使える限界があるからだよ。と言っても、君のはその霜が解ければすぐ使えるようになるんじゃないの?」
「――そうだな」
「俺のは体力とは別に個性限定の体力がある、みたいな?HPとは別にMPがあるって感じだと思ってくれればいいよ」
あと、少し。
「そうか、それだと回復に時間がかかるのも頷ける」
もうちょっとだ。
「あはは、当面はその上限アップと回復速度の向上が課題かな……」
「――そうか」
ここだ!
「『トゥール』!!」
「ッ!?」
俺がルーンで障壁を張ると同時に轟君の足元が光る。
そこには俺が仕掛けたとっておき。
『ソウェル』のルーン。
眼の前で轟君の全身が炎に包まれる。
今更ながらちょっとやりすぎたかな………。
燃え盛る炎を見て些か心配になるが、俺としてはこの氷で鎮火どころか起き上がることもできない。
少し心配になってきたあたりで氷が炎をかき消すように現れた。
氷の中から姿を表したのは体のあちこちに火傷を負った轟君だ。
「うわぁ、今のも防ぐのか。これは驚いたな」
「いってえな……。別に防げてねえよ。おかげで全身火傷だらけだ」
体には確かに火傷の痕が数箇所見られる。
だが、轟君の半身をみて納得がいった。
「さっきの炎でむしろ冷えてた体が温まっちゃったか」
なんとも間抜けな話だ。
攻撃のつもりが敵の弱っている部分をわざわざ治しただけなんて。
ああ、二連敗か。
悔しいなぁ。
そんなこんなで俺の腕には確保テープが巻かれ、訓練は轟君の勝利となった。