いやぁ、お休みの日っていいですね!
心が爽やか!
さて、今回は幕間の物語ということで沖田さんのお話です。
と言ってもまだヒッジは出ないんですが……
そもそもヒッジって出すつもり無かったんですけど今後の内容考えたらどうしても必要になって「これ家族にしてひとまとめにしちゃえば面白くね?」とか思った結果がこれさ!
とりあえずどうぞ!(投げやり)
「ひもじい……お財布がひもじいです……」
「あーおなか一杯。ご馳走様沖田」
「ほんとですよ!少しは遠慮してくれると思ってたのに全力で食べましたねあなた!一切合切の躊躇もなく!」
「いやぁ、他の人なら考えたけど…ほら、沖田だし」
「いや意味が分かりませんから!?私だしってどういうことですかぁ!」
食べ終わった後だというのに猛抗議を繰り広げる沖田。
俺の胃の中には今沖田のお小遣いで食べた食事がいっぱいに入っている。
やっぱりおなか一杯に食べるっていいね。
俺成長期だしさ。
それにここ数日の4月としては異例の温かさ、というか暑さにあまり家に居たくないのだ。
こういう飲食店なら空調も聞いていて涼しい。
その上食事は沖田がおごってくれる。
いやぁ、沖田様々だなー。
「こんな、こんなはずでは……」
「ま、ほんとにお金やばくなったら諦めて沢庵食べにまっすぐ家に帰ろうよ。おいしいじゃん、沢庵」
食後の緑茶をすすりながら人ごとのように言う。
沖田も多少諦めが付いたのか、一つ大きなため息をついてお茶に口を付けた。
「おっきなため息だなぁ。幸せが逃げちゃうよ?」
「どの口が言うんですかそれ」
「お茶飲んでる口」
「それ私もお茶飲んでるんですけど」
まったくと言っていいほど建設的ではない会話をしながらお互い再びお茶をすする。
うまい。
「ふぅ。実際のところ土方さんは沖田が外で外食を続けるのあんま快く思ってないんじゃない?」
「ふぅ。どうしてです?」
「一応記憶はあるとはいえ前の時とは違って沖田は今土方さんの娘だろ?年頃の可愛い自分の娘が夜遅くまで出歩くのは父親としては複雑な心境だと思うなぁ」
ここが周囲に誰が居るかわからないファミレスなので前世ではなく少しぼかした言い方をする。
これならすこし無理やりではあるが「お芝居の話です」なんかで言い訳できるだろう。
いや、無理か。
無理だな。
「うーん、その辺はどうなんでしょうねぇ。イマイチわからないです」
「じゃあ沖田自身はどうなのさ」
「私ですか?」
急に自身の話題に方向転換して首をかしげる沖田。
「そうそう。沖田は土方さんのことどう思ってるの?」
「私自身ですか。うーん、それもあまりはっきりとは言えないですかね」
「というと?」
沖田は手に持っていた湯飲みをテーブルに置き、少し考え込むような姿勢に入る。
しばらく「うーん、うーん」と唸っていたが、ある程度自分の中で答えが出たのか小さくうなずいた。
「やっぱりお父さん、ですかね」
「なにか理由はあるの?」
「まぁなんというか、確かに前は今の状況とは全然違って実際に生きてるわけじゃないですか。お父さんとお母さんが居て、赤ん坊として生まれてきて、成長して、そしてあなたに出会って。そう、私は今この世界に生きてるんです。ですから、生物的な本能?と言いますかなんと言いますか……」
「あー、何となく言いたいことはわかった気がする」
「なら良かったです。私は口はあまり達者な方ではありませんからね。昔から」
そこまで言うと沖田は再びお茶を啜る。
きっと沖田が言いたいのは記憶的に土方さんを父親と認識しているのではなく、一生命体として、人間という種の生物の一個体として本能的に彼を父親と体が認識していると言いたいのだろう。
俺にはよくわからない感覚だが、もしロマニなんかが俺の父親だったらそんな感じだったのだろうか。
俺が息子でロマニが父親になった世界を考えてみる。
朝起きると一回のキッチンからベーコンの焼ける心地のいい音と匂い。
そしてトーストの少し焦げた匂いの混ざった朝の香り。
そんな中俺が寝ぼけ眼でリビングへ向かうとそこから見えるキッチンにはエプロン姿でベーコンエッグを焼くロマニの姿が見える。
優しい笑顔でいつも俺を支えてくれる、すこし頼りないながらも自慢の父親。
――って、何考えてるんだ俺は。
そもそもロマニがご飯作ってるって、シングルファーザーじゃないか。
まだ結婚すらしてなかったのに離婚させちゃったよ。
ごめんな、ロマニ。
それにしても『すこし頼りないながらも自慢の父親』か。
彼は元々お世辞にも頼りになる人とは言えなかった。
いつも徹夜ばかりして、仮眠室で倒れるようにして眠っていて、通信の時も優しくはあるが覇気があったかと聞かれればあまりそうとは言えないだろう。
だが、最後は―――
「リツカ?」
「ん、ああ、ちょっと…考え事」
「……そうですか。なら、いいですけど」
俺の少しおかしな様子に沖田は目ざとく気が付いて声をかけてきた。
雰囲気の変わった俺を少し心配そうな顔で見つめる。
おいおい、そんな不安そうにこっちを見ないでくれ。
どんだけ俺は信用ないんだよ。
「ほんとにちょっとした考え事だよ。だからそんなに心配そうな顔しなくても大丈夫だって」
「べ、別にそんな顔してなんて―――」
「でも」
慌てて否定しようとする沖田の言葉を遮って言葉を続ける。
あの頃はただ前に進むことばかりに目が言ってあまり周囲に心からの言葉を伝えられる機会というのは少なかった。
いや、こんな言い方は良いわけだな。
俺がそれを避けたというのが大きい。
俺は怖かったのだ。
ただ、ただ怖かった。
彼らとの別れが怖かった。酷く恐ろしかった。
俺のミスで誰かが傷ついたらどうしよう。
俺のせいで誰かが犠牲になったらどうしよう。
そんな不安がふいに、唐突に俺を襲うのだ。
だから、彼らと一定以上の関係を築くことに少し抵抗があった。
それも魔術王戦からは吹っ切れて、できるだけたくさん伝えたいことは伝えようと思えるようになったのだが。
あの時、マシュは一度俺の目の前から消滅した。
その瞬間、俺の中にあったのは強烈な無力感、そして後悔だった。
俺は今までこうなった時が辛いから彼らとの関わりを一定のラインまでで保っていたはずなのに、彼らに依存しないよう、誰も頼らず一人で立てるようにしていたはずなのに。
そうしていたことに酷く後悔を覚えたのだ。
それ以来俺は言いたいことは言う主義になったのだ。
そのせいで心が揺らいでも、誰かとぶつかる事となっても。
だから、俺は目の前の少女にこの言葉を返すのだ。
「心配してくれて、ありがとう」
「―――あぅ」
沖田は否定を続けようとしたまま開いた口を顔を真っ赤にしながらゆっくりと閉じた。
お互いに少し赤くなった顔を隠すために、お茶に口を付ける。
さっきまで心地よく感じていた空調が嘘のようだ。
「お茶、おいしいですね」
「ああ、まったくだよ」