ようやくここまでこぎつけたぜぇ.…
今回は藤丸立香の個性についてとusjにもちょっと触れます!!
しかもタイトルでお察しの通りあの娘が登場……!?
一体この物語はどこを目指しているのか。
それは作者の私にもわからない。
ではどうぞ!
ホームルームが終わり放課後、俺のところへ沖田が向かって来るのとほぼ同時に数名が自席に座る俺の元へ走り出した。
「おいおいおい!おめぇめちゃくちゃ強えなぁ!一番最初の緑谷達のもすごかったけどよ、最後のアレもすげぇアツかったなー!」
「なんか剣戟!?みたいな!?すごかったよねー!」
「あの轟とも互角にやりあってたもんな!」
放課後になったとたん矢継ぎ早に畳みかけられる。
突然のことに対応できない俺同様沖田も何が起きたのかわからずぽかんとした表情をしていた。
俺が唖然としていると、現状を理解したのか各々が自己紹介をしてくれた。
「そういやしっかりした自己紹介まだだったな!俺ぁ切島鋭児郎、よろしくな!」
「私は芦戸三奈!刀で戦ってる人まじかで初めて見たよー!まぁ、モニター越しだったけど」
「俺、砂藤!」
「あ、ああ。じゃあ俺も自己紹介しようかな。俺は藤丸。藤丸立香だよ。呼び方は好きに呼んでくれてかまわない」
すると切島が待ちきれないといった様子で俺に迫る。
「それじゃあ藤丸!お前の個性って何なんだ!?」
やっぱりこの質問は来るよね。
俺の個性について言及する、というか疑問を持つのは至極当然のことだ。
今までの俺の行動を見ていれば分かるが、俺の個性にはこれといった特徴がまるでない。
そのせいで個性の登録時にひと悶着合ったくらいだしね。
三年間共に同じ学び舎の、しかも同じクラスで過ごすのだからやはり気になるのだろう。
「うん、それじゃあ俺の個性のことも含めてさっきの訓練の反省会とかどうかな」
「「「さんせー!!」」」
三人とも入学してまだ日が浅いのに仲いいなぁ。
俺としてもクラスメイトとは当然仲良くしていきたいと思っていたので渡りに船だ。
早くみんなの名前と顔を一致させたいし、何より第三者から見た戦闘の評価は俺も気になる。
沖田は急な出来事で驚いたようだったが、状況を理解したのか顔を綻ばせてそこへ合流した。
「はいはーい!私も混ぜてもらっていいですかー?」
「おうよ!えっと……」
「土方総司です!よろしくお願いします!」
「あれ?土方?でも藤丸には沖田って呼ばれてなかったっけ」
「それは俺が呼ぶときのあだ名みたいなものなんだ。こう見えても家が隣で付き合いがかなり長くてね。所謂幼馴染みって奴かな」
「そうだったんだ。じゃあさ、私も沖田って呼んでもいいかな?」
「もちろんです。これからよろしくお願いしますね芦戸さん!」
沖田と芦戸の間に女の子同士の友情が結ばれ、和気藹々と話しているのが目に入ったのか他のクラスメイトも何事かと集まってきた。
これからさっきの訓練の反省会をすると聞くと、特に緑谷は即答で参加を表明した。
ノートを片手にすごい勢いで頭を振っている。
いや、そこまで必死にならなくても参加制限とかないから大丈夫だよ……。
そして視界の端で爆豪が教室から出ていくのが見えた。
どうもさっきの緑谷達との訓練からあからさまに様子がおかしい。
元気がないというか、普段の周囲へ振りまく拒絶オーラが薄い感じだ。
映像や試合直後のオールマイトと会話をしていた様子を見る限り緑谷と何かあったみたいだけど……。
いや、他人の問題を不用意に詮索するのはよそう。
彼だって人間。
触れられたくないことの一つや二つはあるはずだ。
何しろあれだけ他より歪んでるしね。
クラスメイトとそれぞれの自己紹介を済ませ、ようやく先へ進む。
「それでよ、結局藤丸の個性って何なんだ?」
「うん、僕もそれはすごく気になってた。最初の個性把握テストの時は瞬間移動?みたいなことをしていたけど、僕が藤丸君に会った時はもっと別の個性を使ってたよね」
痺れを切らしたように砂藤が言い、それに緑谷が賛同する。
「え?立香と緑谷さんってお知り合いだったんですか?」
「えぇ、っと。土方さんと沖田さんとどっちでお呼びすれば……」
「??好きな方で構いませんが、迷う様でしたら沖田で大丈夫です」
「あっ、はっ、はい!」
緑谷が顔を赤くして沖田に答える。
この慌てよう、どうやら緑谷はあまり女性に対する耐性はないようだ。
言いたいことがあるはずなのに言えてないなこれは。
さっきの麗日とペアを組んだ時と言い、これは随分重症だ。
「って、この間の体力テストの時言ったじゃないか。あれだよ。アーラシュさんだよ」
「ああー!全身四散の人ですね?思い出しましたー!」
「そうそう。それが緑谷なんだ」
「ああー、なるほどそういう事でしたかー!」
「全身四散――???」
「まぁ、話は戻るけど、緑谷は俺が前に見せた個性を覚えてる?」
「えっ?えっと、確か……機械を誤作動させてお互いを攻撃させたり、後はボール投げに今日の訓練の時もかけてくれた治癒。そして何より印象深かったのはあの侍みたいなやつかな」
その話を聞いたクラスメイト達は驚きの声を上げた。
「そ、それって複数の個性を持ってるってことかよ!?」
「そうだよな…あんな多様なことができるのはそれくらいしか」
「いや、そういうわけではないよ。俺の個性は一つだ。ただ、出来ることが多すぎるだけでね」
「出来ることが、多すぎる?」
緑谷が顎に手を当てた思考モードのまま俺の言葉を復唱した。
「俺の個性は俺と深い関わりのある過去の英雄達の力を再現できるものなんだ。だから知識さえあればその英霊が残した逸話や伝説に基づいた力を発揮できる」
「そ、それってもう無敵じゃないか!すごいよ藤丸君!!」
興奮ぎみに緑谷が詰め寄るが、「ただし」と緑谷を抑えて話を続ける。
「あくまで俺の深く知ってる英霊に限るから誰でもかんでもってわけじゃない。それに体との相性もある」
「相性?」
「そもそもで相性が悪ければ能力を借りる事すらできないし、強すぎる力に体が耐えられない。だから俺は本来の英霊のスペックを2割も出し切れていないんだ」
「あ、あれで2割!!?」
少し誤魔化し、というか嘘が入っているが、それはまぁ仕方がないだろう。
彼らにカルデアとか人理修復とかいっても意味不明なわけだし。
それにすべてがすべて嘘というわけでもない。
俺が力を借りられるのはカルデアで一緒に戦った英霊だけだ。
力の話だってそもそもあの時天眼を完全な状態で発動できていたら俺は沖田の攻撃を読み切れていただろうし、あの場で負けることもなかっただろう。
やはり自分自身のスペック不足を嘆いてもしょうがないとは思うが、もう少しどうにかならないものだろうか。
いくつかみんなからの質問に答えていると、ふと何かの気配を感じた。
先程から常識を逸脱した個性の説明に驚く緑谷達をよそに廊下から感じる何者かの気配に視線を向ける。
教室後ろ側の出入り口には誰もいない。
曲がり角辺りで聞き耳をたてられているのか?
その何者か、について思い当たるのは相澤先生あたりか。
俺の個性についての危険性や対策は担任であろう彼が一番気にしているはず。
彼の見ただけで相手の個性を消すという驚きの能力で俺の個性が消えるかどうかはわからないが、こちらとしても俺の能力をある程度知ることで向こうの警戒が多少なりとも溶けてくれるとありがたい。
丸三年間担任に睨まれっぱなしとか笑えないよね。
ふと目の前にいた緑谷が何かを探すようにキョロキョロと教室内を見回す。
「どうかしたの?」
「えっと、かっちゃんがどこに行ったのかなって思って」
「爆豪ならさっき教室を出てったよ」
「えぇ!?」
「用があるなら今ならまだ走れば間に合うんじゃない?」
「あ、ありがとう!それじゃあ僕、行ってくる!」
それだけ言い残して緑谷はすごいスピードで廊下に飛び出していった。
「よっぽど大事な用事だったんだなぁ」
「そうですねぇ。それはそうと―――」
先程までの静けさを破り、沖田が話題をふる。
沖田はにやりと笑みを浮かべ、悪い顔でこちらを見た。
何を企んでるんだこいつは。
沖田がこの顔をするときは対外碌なことが起きない。
それはこの十数年で嫌というほどよく知っている。
例えば俺が嫌いな虫のおもちゃをノッブと一緒に投げつけてきたときもこの顔だった。
大体俺に不利益や不幸を意識的にもたらそうと考えているときの沖田はこの顔だ。
それに対して俺は恐ろしい無茶ぶり等が来ないことを祈るしかない。
無力だ。
「みなさんで親睦を深める事も兼ねて夕食などいかがでしょうか!もちろんリツカのお・ご・りで」
「はっ!?ちょ、ちょっと待ってよ!さっきの勝負は確かに負けたけど、みんなの分まで払えないって!」
「さぁ、行きますよみなさん!我々をチー○inハンバーグが待っています!」
「待て待て待て待てぇぇえ!!!」
「待てません!!」
皆での外食は楽しかったし、その場に居たメンツは概ね名前と顔、それから個性を把握できた。
普通に考えればわかることだったが、みんなはちゃんと自分で自分の分は払ってくれた。
沖田は当たり前のように俺の金で食っていたが……。
今回は沖田に轟君と二連敗だ。
ふたりとも次の機会があれば必ずあっと驚かせてやろう。
俺はファミレスで一人、ふつふつと胸の中で燃ゆる思いを感じていた。
「あ、あんみつおかわりでお願いしますー」
「ちょっと!?沖田さん!?まだ食べるんですか!!?」
春の陽気、周囲の森林。
いい天気だ。
六時限目、本日最後の授業はヒーロー基礎学。
高校の所有するバスに揺られ、俺達は今雄英の敷地内を移動していた。
「いやぁ、残念だったね、飯田」
「まさかこういうタイプだとは思っていなかったんだ……俺としたことがとんだ失態だ……」
隣であからさまに落ち込む飯田を慰めつつ、変わりゆく窓の外を眺める。
それにしても何時も思うけどここの学校すごい敷地面積だよなぁ。
これ東京ドーム何個分くらいあるんだろ。
これぞマンモス学校だよね。
もはやマンモス通り越して進化した結果大寒波も乗り越えられそうなくらいだ。
「それにしても、藤丸君の個性には驚かされたよ」
「確かに他にあまり見ない個性だよね」
俺の言葉に飯田が頷く。
「ああ、正直まさかクラスに俺よりも速い生徒が居るとは思わなかった」
「速いって足が?」
「最初の個性把握テストの時の記録には度肝を抜かれたよ。50メートルを0秒だなんて、いったいどうやったんだい?」
そうか、沖田は理解していたけどあの時のことを俺は飯田や他のクラスのみんなに話していないんだ。
となればめちゃくちゃ足の速い英霊の力で50m走り切ったと思われても仕方がない。
あれは正直言ってずるだ。
生真面目な飯田に勘違いをさせたままなのは聊か罪悪感が残る。
何と言っても本来走るという分野において足にエンジンという個性を持っている彼の独壇場だったはず。
早いところその勘違いを訂正しておこう。
「ごめん。あれ実は俺走ってないんだ」
「走っていない?ま、まさか本当に瞬間移動だというのか!?」
「いや、あれは入試の時に使った力のある種延長線上にある力、みたいなものかな」
「ある種延長線上にある力?」
「うん。入試の時に先頭集団を俺が追い抜いてロボット同士を壊し合わせたのは覚えてる?」
「ああ、あの時俺を追い抜く速さの他の者が居ること自体に驚いたし、仮想ヴィランが故障したのではないかという一騒動があったから記憶によく残っている」
「あれはロボット同士の認識に介入して、というかロボットだからセンサーを少しいじくってって感じかな?それでお互いを攻撃対象に設定させたんだ」
「それでああなったわけか……だが、その認識の介入とあの瞬間移動とどうかかわってくるんだい?あまり関連性があるとは思えないのだが」
「それが大ありなんだ。俺はあの時みんなの五感に干渉してまるでそこに俺が瞬間移動したように見せかけた。だから本来の俺はスタート地点から全く動いてなかったんだよ」
「ま、待ってくれ!それじゃああの時俺たちが見た藤丸君は幻覚か何かだとでもいうのか!?」
「その通り。まさしくあの時の俺は幻覚だった。要するに、あの場の全員俺の術中だったってわけさ」
飯田は目を見開いた後、戦慄したように身を震わせた。
俺としてはもう少し「やはり、すごいな君は!」みたいなリアクションが飛んでくると思っていたんだが、飯田の顔は硬く、真剣に俺の目を見ている。
俺がどうしたのかと問うと、飯田は少しためらいながら口を開いた。
「俺は、君がヴィランではなくて、今心底ほっとしたよ」
俺の知るUSJとは違う少し笑えるネーミングのUSJに到着後、主に災害救助で活躍している13号先生の講義を受けた。
彼の言う個性は人を救える力ではあるが、使い方を間違えば人を殺せる力だという話は実に的を射ていると感じた。
個性というのは昔言われていた超能力なんかとは違う。
この時代における個性というのはあくまでもその個人の身体能力の一部なのだ。
言ってしまえば腕力や握力と変わらない。
強靭な腕力を持っている人間は思い切り相手を殴れば場合によっては容易くその相手を殺すことができる。
これは握力も同様だ。
例えば筋骨隆々な男が強い力で子供を何度もぶったら?強い握力で赤ん坊の頭を思い切り握ったら?
当然ただでは済まない。
個性の場合だってこれと何ら変わりはない。
それぞれまったく違う個性をみんなが持っているが、それらを故意に誰かに振るったとしたら恐ろしいことになる。
個性の怖いところは見た目で全く分からない者も多いという事だ。
見るからに怪しい人間が居れば周りには近づかないようにする事もできるが、個性はそれこそ身体能力。
最早体内に強力な兵器を隠し持っているといっても過言ではない。
そんなことが当たり前になっている世界で、彼の講義はとても意味のあるものだったと思う。
少なくとも、この場に居る生徒たちの心に深く刻み込まれたことだろう。
そんな心に響く13号先生のお話も終わり、これからさっそく救助訓練が始まる。
そんな時だった。
背筋を何か気持ちの悪いものに舐め上げられたような悪寒に全身がビリビリと震え、俺の本能に危険信号を伝える。
その直後、この施設の中央にある広場に黒い靄のようなものが出現した。
「一塊になって動くな!!!」
普段の相澤先生からは考えられないような覇気のある怒号が飛ぶ。
「13号!生徒達を守れ!!」
現れた靄はさらに大きくなり、中からは異様な格好をした連中が多数出現した。
そんな連中の中で、一際目を引く全身手だらけの男。
そしてその隣に立つ少女。
彼女が視界に入った瞬間俺の心臓がドクリと跳ねる。
周囲の時間が止まったような錯覚さえ感じた。
両の目が視線上に捕らえて放そうとしないその少女。
うつろな目をしてただ呆然とその場に立っているだけのようだ。
あの頃の花が咲くような笑顔も、凛とした立ち振る舞いもなかったが、それでも俺が彼女を見間違えるなんてことはあるはずがない。
俺の口から自然とその名前が、こぼれる。
「―――マシュ?」
如何だったでしょうか!?
いやぁ…マシュファンのみんなごめんねぇニタァ
レ〇プ目をどうしても書きたかったんだ…すまない。
次回、彼ら彼女らはどうなってしまうのか。
乞うご期待!