「マシュっ!!!」
叫びながら勢いよく体を起こす。
その瞬間全身に強烈な痛みが走った。
「いっ、づあぁぁあ!!?」
「コラ!下手に動くんじゃないよ!傷が悪化したらどうするんだい!」
杖を突きながら俺が悶絶しているベッドまでやってくるリカバリーガール。
どうやらここは保健室らしい。
何だこれ頭おかしいんじゃないかと思うくらい体が痛い。
血管と内臓が弾け飛んだとか言われても普通に信じるレベルで痛い。
あとこれ外側の方も千切れそうな痛みだと思ったら筋肉痛か?
ひどすぎて筋肉痛だとわかんなかったな。
現状を理解すると共に段々と気を失う前のことを思い出してきた。
全身にズンガズンガと走る痛みに耐えながらリカバリーガールに現在の状況を問う。
「っ、今、どういう状況ですか」
「あんたはヴィランとの戦闘で全身ズタボロ!そのままUSJで気を失ってここに運ばれてきた。そのまま眠りこけてもう夕方だよ」
どうやら既にあれから結構な時間が経っているらしい。
だが、俺が今こうして治療されて保健室のベッドに寝かされているというのは詰まる所ヴィラン達はオールマイトがなんとかしてくれたのだろう。
最後の最後、彼の声が聞こえたと同時に気を失ってしまったせいであの後どうなったかわからないが、みんな無事だと思いたい。
「それと、あんたの知り合いなのか知らないけどね。隣に寝てるから静かにしんさいよ」
その言葉を聞いて心臓が大きく跳ねる。
ドクン。
俺の、知り合い?
そうだ、そうだ、そうだよ。
どうして俺があの場で飛び出したのか。
どうして俺が今こんな大怪我を負ったのか。
そして俺が、さっき誰の名前を叫びながら飛び起きたのか。
油の切れたロボットのようにぎこちない動きで窓側のベッドを向く。
そこにはベッドとベッドを区切るカーテンが掛かっていて、こちらから向こう側を窺い知る事はできない。
窓が空いているのか、夕焼け色が映し出されたカーテンは不規則にゆらゆらと波打っている。
震える手で体を支え、ゆっくりとベッドから体を起こした。
「ちょ、ちょっと!あんたまだ動いたら――はぁ、聞いちゃいないね…まったく…」
怪我による痛みのせいか、極度の緊張のせいか、未だ震えの止まらない手で波打つカーテンを捕まえる。
そして、ゆっくりとその手を引いた。
カーテンはスムーズに流れ、その向こう側が顕になる。
一瞬少しだけ強めの風が吹いて夕焼けの光と共に顔に当たった。
細めた視界を元に戻すと、そこには俺が寝ていたものと同じ真っ白なベッドに横たわる紫色の髪の少女がいた。
いつも俺のことを「先輩」と呼んでくれた少女がそこにいた。
それを認識した瞬間に涙が溢れ出す。
ああ、よかった。
本当に良かった。
「ま、ましゅぅ………っ」
枕元で膝をついき、マシュの右手をとって両手でしっかりと握る。
温かい、温もりのある、柔らかくて優しい手だ。
「かったぁ。今度は、君をちゃんと――」
一応魔術で解析をかけるが、今は眠っているものの特に傷はないと分かった。
すると、彼女の無事を確認して安心したせいか、体の痛みが再燃して来る。
ズキリズキリと痛む体を起こし、リカバリーガールに向き直る。
「いてて、俺が気絶した後のことを教えてもらえませんか」
「後のこと、ねぇ。あたしもざっくりとしか聞いてないけど、まぁだいたいあんたが想像してるとおりだと思うよ。オールマイトが助けに来て、その後雄英の教師陣が到着して完全に鎮圧さ。ただ、敵のリーダーは取り逃がしたって話さね」
敵のリーダー。
あの手だらけの男のことだろうか。
結局やつの目的はわからないままだった。
一応あとで他のクラスメイトや先生方に聞いてみようか。
いや、あまり今回の傷をつついて今後の学校生活に支障が出るようなことは聞くべきではないか?
思考を巡らせながら自前の能力で傷を治療できないか試すが、もう体中の魔力がすっからかんで治療はできそうにない。
「他に誰か怪我人はでましたか?」
「緑谷出久がまた個性で少し体を壊した以外は特に重症はいないよ。と言うよりあんたの怪我が異常なんだよ!あんた、自分がどういう状態で戦ってたか分かってんのかい!!」
凄まじい剣幕で怒鳴るリカバリーガールに驚きながらも、戦闘中の自分の体のことを思い出す。
たしかあの時は――。
「初撃で側の骨と内蔵も壊されたので最低限動き回れるように個性で応急処置をして、それから無茶しすぎて内蔵が、といった感じでしょうか」
「あんた、それ、本気で言ってるのかい………?」
本気で言っているのか。
リカバリーガールは驚いたように言うが、どういう意味だろうか。
俺が予想していたより内蔵へのダメージがひどかったとか?
実はもう二度と治らないような損傷を負ってしまったとか?
リカバリーガールの反応に少し怖くなって自分の体のあちこちを擦る。
だが、現状自分の体はひどく痛むだけで特別血が滲んでいるわけでも内蔵に違和感を感じるわけでもない。
至って正常な痛み方だ。
無理やり個性を使用したせいで体が極度の筋肉痛、魔術回路痛になっている感じとでも言えばいいだろうか。
うまく言葉で言い表せないが、要するに命にかかわるようなまずい傷の負い方はしていないように感じる。
さすがはリカバリーガールといったところだろうか。
自身の対象の自己再生能力を向上させるような個性だったと覚えがあるが、その個性だけで雄英高校でこれだけの信頼を得ているとは思えない。
通常の医術面でも専門の医者とまでは行かずとも相当の知識や経験を持っていると思う。
じっと俺を訝しむように見続けるリカバリーガール。
なんか、まずいことでもしてしまっただろうか。
するとおもむろに俺に背を向け、それきり黙ってしまった。
「あ、えっと、それじゃあ俺オールマイトにお礼言って来るので、マシュのことお願いします」
徐々痛みに慣れてきたこともあり、この異様な雰囲気から離れたいという思いもあってマシュを助けてくれたお礼をオールマイトに言わなくてはと足早に保健室を後にした。
「やぁ、リカバリーガール。彼はどうだった?」
「あの子ならついさっき出ていったよ」
保健室の扉からひょっこりと顔をのぞかせたのは校長の根津だ。
愛らしい外見とは裏腹に高い知能と計算能力を有している。
「彼の傷は完全に治癒できたかい?」
「いいや、どうも個性による特殊な痛め方だったみたいで完全には治癒してやれなかった。症状としては別に命に関わるようなものじゃない。言ってしまえば、凄まじく重い筋肉痛みたいなものさね」
「そうか、それはよかった。一番傷を負ったのは彼だと聞いていたから後遺症なんか残ってしまったらどうしようかと思っていたけれど、いらぬ心配だったようだね」
「それはどうだろうね」
「なにか、あったのかい?」
リカバリーガールの様子が普段と明らかに違うことに気が付き、根津は眉をしかめながら訪ねる。
「あの子の戦いのこと、イレイザーヘッドから少し聞いたよ。内蔵と骨を破壊された直後に自分で自分の体に最低限の治療を施して戦線に復帰したらしいじゃないか」
「ああ、僕も最初に聞いた時は耳を疑ったよ。そんなことができるのはプロヒーローにもそういないだろう」
「そう、あまりにも治療が的確すぎる。瞬時に今自分が戦えるようになるにはどこをどう繋げばいいか。内臓が潰れた、骨が圧し折られた痛みを感じながらそんな冷静な判断を下す学生がいるかい?」
「…………」
「それでいて最初に飛び出した時はあそこで寝てる子を見た瞬間衝動的に突っ込んだらしいじゃないか。あまりにもチグハグすぎる。あの子の行動にあたしゃなにか大きな違和感を感じるね。多重人格とも違う、まるでひとつの人格を複数の思考で形成してるみたいだ」
「君が感じたその違和感については概ね理解したよ。こっちでも彼に少し働きかけてみよう」
保健室に重たい沈黙が流れる。
そんな中、隣の部屋で緑谷と話す骸骨っぽい人と俺が出会うのはまた別のお話。
皆さんお久しぶりです!
時雨です!
久し振り過ぎて小説の書き方忘れちゃいました!
ごめんなさい!
只今日にちをまたぎました!
バリ眠いです!
途中から自分でも何書いてるかわかんなくなってました。
しぐべぇ「ワケガワカラナイヨ」