俺だって英雄になりたい   作:時雨。

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お久しぶりです!
時雨です!
皆さん暑くなってきましたね!
季節の変わり目、いかがお過ごしでしょうか??
私が開発でリーダーをするときにチームのメンバーによく言っていた
言葉があります。
それは

「体とバックアップには気をつけて」

です。

みなさんも心に留めておいてくださいね!
さて、今回はヴィラン連合襲撃からの一段落の幕間最後です。
マシュの出番もこれでしばらく遠くなってしまうかと…(オヨヨ)

皆様、この話でマシュの姿を目に焼き付けていってください!
ではどうぞ!


俺だって後輩を見舞いたい

「ああ、今日はいい天気だね」

 

白い光の差す病室。

あの時とは違い昼間の白い光の中で、真っ白な部屋の真っ白なカーテンが風に揺れている。

すぐ近くに置かれたベッドの上で未だ目を覚まさない彼女を起こさぬように静かに花瓶を取り替える。

少女は俺が物音を立てても起きる気配はなく、あの時保健室で見た時同様静かに心地よさそうな寝息を立てて目を瞑っている。

早く目を覚まして欲しいのは確かだが、それでも無理に起こそうという気にはならない。

今まできっと大変だったんだ。

なら、彼女が自分から目を覚ましてくれるまで隣で待ち続けよう。

それがあの襲撃の日から考え、俺の中で出した答えだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

あの日、目を覚ました俺を待っていたのは塚内さんという警察の人だった。

マシュの身元、そして俺とマシュがどういう関係なのかを調べに来たのだ。

まぁ、ヴィランと共に行動していた情報はあちらにも渡っているだろうし、そこに調査が入るのは警察として当然だ。

現状、俺には今生でのマシュとの関わりはない。

即興で考えた嘘では国家権力である警察にはすぐに調べがついてバレてしまう。

どうするべきか焦っていたところにまったをかけたのは学校にヴィランが侵入したと聞いて飛んできた土方さんだ。

マシュの身元は俺が保証する。

自分の意志でヴィランと行動を共にするような人物ではないし、なんらかの個性で操られていた可能性が高いと塚内さんに告げたのだ。

実際、俺以外の生徒からも様子がおかしかった旨の報告が上がっていたようで、妥協案として警察が管理している病棟に入ることで身柄の拘束は免れた。

そして数日が経過し、現在に至るというわけだ。

 

「今日は天気がいいね、マシュ。これから午後にかけてもっと気温が上がるらしいよ。これからどんどん夏になっていくね。でも、この病院は作り的に風通しが良くて涼しいから、これからの季節もきっと過ごしやすいだろう。俺は学校に戻ったらきっと暑苦しい毎日が待ってるだろうから、君が少しうらやましいよ。マシュ」

 

一人、静かに語りかけるが、隣で瞳を閉じたままの眠り姫は言葉を返す素振りを見せない。

だが、それでも俺は満たされた。

彼女が隣りにいる。

彼女が生きている。

彼女が、俺の手の届く場所にいる。

 

「はぁ……」

 

我ながら軽蔑する。

これは独占欲だろうか。

これは偽善だろうか。

これは、恋だろうか。

あの瞬間から俺はどうも不安定だ。

あの日、あの時、USJの入り口で広場のモヤからマシュが出てきた時。

俺はマシュを視認した瞬間に様子がおかしなことに気がついた。

そしておそらくはこの世界においてそういった手合の原因は何者かの個性であることも分かっていた。

本来ならばあの場で冷静に事を見極めるべきだった。

だが、体が言うことを聞かなかった。

まさしく衝動的に、といったところだろうか。

気がつくより先に体が動いていた。

だがそれは、一見果敢な英雄的行動に見えてその実ただの無謀な自殺行為だ。

そも、一介のヒーロー見習い、というかその卵だ。

そんな未熟者が飛び出して何ができるというのか。

普段なら、そう判断して踏みとどまって先生の援護か周囲のクラスメイトの守護に回れたはずだ。

それでも自身の内に沸き起こった衝動を自制できなかった。

なぜか。

それはきっと、この体に本来宿っていた16歳の藤丸立香が原因だ。

俺が今こうして立って、話して、息をしている体はこの世界に生まれ落ちた藤丸家の長男である藤丸立香のものだ。

俺はあの時目覚めたのだと思っていたが、それはきっと違う。

俺は、この体に一人でいるんじゃないんだと思う。

人理修復を成した藤丸立香がこの体に入ったときに、元いた藤丸立香がどうなったのかは今となってはわからない。

ダ・ヴィンチちゃんがいたのならまだ違ったのかもしれないが、今の所彼女の情報はこちらへ入ってきていない。

だから正確なことは何もわからないままなのだが、それでも想像することはできる。

きっと俺は、俺達はこの体の中で歪に、中途半端に混ざり合っているのではないだろうか。

俺はあの時おそらくこの世界での人生で最も精神を強く揺さぶられた。

感情面で大きな動揺が走ったのだ。

その時点で未だ精神的に未熟な16歳の俺が強く意識の表面に顔を出したのではないだろうか。

俺はあのときの自身の不可解な行動の原因をそう考えていた。

 

「けれど、それはあくまで彼に責任を押し付けたいとか、そういうことじゃないんだ」

 

聞いてくれているかわからないけれど、そっとマシュに語りかける。

 

「自分勝手な意見かもしれないけど、この体の中にまだ彼が生きていてくれてるかもしれないと思うと少し嬉しいんだ。俺が意図してやったわけではないけど、結果的に本来彼が歩むはずだった未来を奪ってしまったとも言える現状だからさ。今まで少し心苦しかったんだ。だからこれは酷く独善的かもしれないけど、彼が俺の中から見ていてくれるなら、俺も少し頑張りがいがあるかなってさ」

 

まぁ、今回はその結果としてお腹に大きな穴が空いたわけだけどね。と付け足す。

昼の少し温まった風に真っ白なカーテンが静かに揺れる。

マシュは未だ目覚める気配はなく、瞳は閉じられたままだ。

だけど、なんだか少しだけ微笑んでくれているように見えた気がした。

俺の都合のいい勝手な勘違いって線が濃厚だけど、それだけで少し心が軽くなった気がする。

これでこの先もがんばれそうだ。

上がり続ける外の気温は未だ詰まる気配はなく、予報通りならこのままもう少しだけ暑くなるだろう。

もうすぐ体育祭。

目を覚ましたマシュに胸を張って自慢できるような成績を残さないといけないのだから、生半可な点数で満足なんてしていられない。

それこそ、優勝を目指すつもりで行かないとね。

 

「それじゃあ、また来るよ。マシュ」

 

小さく別れの言葉を告げ、真っ白な病室を後にする。

病院の外に出ると、照りつける太陽に出迎えられた。

眩しさに目を細め、手で日光を遮る。

絶好の練習日和といったところだろうか。

 

「よぅし、頑張ろうか!」

 

小さく意気込み、駅に向かって走り出した。

ぬるい風を切って坂を駆け下りていく。

ああ、今日はいい天気だ。

 

 

 

 

 

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