俺だって英雄になりたい   作:時雨。

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どうもこんばんは!
時雨です!
いつも感想、評価誠にありがとうございます!ウェヒヒッ
いつも皆さんの声が励みになってます!
全部に返せてるわけではないですが、ちゃんと全部読ませていただいています。
これからも自己満足の文章を吐き出し続けるのでどうぞよろしく!


俺だって保護者に友人を紹介したい

昼休憩の時間になり、未だ午前の興奮冷めやらぬスタンドへ向かう俺と沖田。

ガヤガヤと先程までの競技の話をしている観客の中をかき分けていく。

ちょくちょく俺たちに気がついて話しかけてきてくれたり、遠くからも声をかけてくれる人たちに手を振りながら進む。

なぜクラスの座席や食堂ではなく観客側にいるのかと言うと、それは俺たちの昼食(弁当)を求めてだ。

 

「確か聞いてた話じゃこの辺だって言ってなかったっけ?土方さん結構ガタイいい上に年中あの服装だから結構目立つはずなんだけどなぁ」

 

「そうですねぇ、私も流石にお腹すきましたし、さっさと見つけてお昼にしたいところです」

 

キョロキョロと周囲を見渡していると、他の観客に紛れて一際小さな、しかしながら確かな母性を感じる背中を見つけた。

――母性を感じる背中ってなんだ??

とりあえず向こうもこちらを見つけられず迷っているようなので声を掛ける。

 

「茶々さん」

 

「ん?おお!ここにおったかリツカ、総司。ずいぶん探したぞー、まったくもー。茶々お腹へったし早くお弁当食べ行こっ」

 

「うん。茶々さんの作ったお弁当美味しいから楽しみだよ。ところで土方さんは?」

 

「あやつは仕事関係で挨拶回りじゃ。茶々のこと一人ほうってどっか行ったアホのことは知らん。あれから茶々が会場にたどり着くまでどれだけ苦労させられたか………」

 

この会場の外には確かかなりの数で店が出ていてそっちにいるお客さんも結構な数いたような気がする。

確かに小柄な茶々さんではこの人混みをかき分けるのは相当大変そうだ。

 

「もう何でもいいから早くお弁当食べましょうよ。私お腹すきました。午前一発目の持久走からずっとクタクタです」

 

「なんでもいいとか酷くない!?茶々これでもあなたのお母さんなんですけど!?」

 

幼い見た目でぷんぷんと両手を振って自分を蔑ろにした実の娘に抗議する茶々さん。

その姿は二児の母とはとても思えない。

相変わらずなところはあるものの、母親という立場故か甘え上手な末っ子感は抑えめになったご様子だ。

その分以前より増し増しになったと噂のバブみ。

その破壊力たるやいざとなると凄まじいらしい。

沖田やノッブが風邪をひいた時の話を聞く限り、病気の症状とはまた違う意味で再起不能になるようだ。

人をダメにするとはきっとこの人のために生まれてきた言葉なのだろう。

実のところ俺はこの世界では未だ風邪を拗らせたことがない。

あるとしても多少微熱が続くくらいだ。

体が丈夫なのはいいことだが、そのおかげで茶々さんのバブ味を味わったことがないのだ。

今度何かあった時はぜひともお願いしたい。

そんなことを考えていると、ひと目で誰かわかる服装の人物が向こうから歩いてくるのが見えた。

 

「おーい、土方さん!」

 

「おう、ここにいたか」

 

茶々さんが取っていた座席に戻り、お弁当を開けようとしていたところにやって来た土方さん。

土方さんは外に出る時はだいたい仕事着(コスチューム)だ。

見た目としては再臨前のコートのデザインをしっかり新選組仕様にしたような感じといえば伝わるだろうか。

相変わらずの重装備だが、本人曰く自分が自分であることの証明であり、ある種心構えのようなものらしい。

俺としては夏や今日のように気温が上がる日は体を壊しそうで心配だが、本人が暑くなさそうなので特に何も言っていない。

ぶっちゃけあんな格好していても汗一つ掻かない辺り早くも人間をやめてサーヴァントになっているんじゃないかと疑問が浮かんでくるくらいだ。

 

「土方さん、挨拶回りは終わったの?」

 

「おう。今は雄英の教師に専念してるモンも多いが、以前は現場で色々と世話になった奴らだ。顔ぐらい見せるのが筋ってもんだろう」

 

「そっか。時々忘れそうになるけどうちの先生たちってみんなプロヒーローなんだもんね」

 

「ああ。リツカ、奴らに教えを請うのも良いが、自分の糧になるものを見て盗め。本来奴らは第一線でヴィランと戦う猛者ばかり。中には感覚派でお世辞にも教えるのが上手いとは言えねぇ奴もいる」

 

その言葉を聞いて真っ先にオールマイトが浮かんだ。

普段の授業での彼と言えば頑張ってる感は伝わってくるのだが、どうもそれが度々空回りしている節があると言うのが俺たちA組の総意だ。

いや、ほんとに頑張ってるのはわかるんだけど、どうも慣れない教師生活にしどろもどろといった感じなのだ。

やっぱり本職のヒーローとは違って人を救うんじゃなくて教え導かなきゃいけないし、きっとオールマイトを含めて先生達はみんな一生懸命先生たろうと頑張っているのだろう。

 

「お前は人より()()()()()だ。更に言えば今までの経験上誰よりも観察力がある。奴らを遠い存在だと思うな。一挙動一投足見逃すなとまでは言わねぇが、貴重な三年間を上手く利用することだな」

 

そう言って土方さんは席を立ち、俺の隣からお弁当を広げる茶々さんの隣に移る。

どうやら本命のお弁当とは別にタッパに入れられたたくあんを目ざとく発見したようだ。

それとほぼ同タイミングでこちらへ走って来る人影。

誰かと思い目を向けると、どうやら緑谷のようだ。

駆け足で周囲の人間を観察している所から、どうやら人探しと見た。

クラスの誰かと昼の約束でもしていたのだろうか。

そう考えていると、ふと緑谷と目があった。

緑谷はぱっと表情を明るくし、俺に向かって手を振る。

探し人は俺だったか。

 

「探したよ藤丸くん!」

 

「俺緑谷となにか昼に約束してたっけか?ごめん、全然思い出せないんだけど……」

 

「ああっと、そうじゃなくて、この後の競技のことでミッドナイト先生が藤丸くんの事を呼んでたって伝えに来たんだ。詳しいことは聞いてないけど、なにか頼みたい仕事があるみたいだったよ」

 

「仕事?なんだろ、荷物運びとかかな?」

 

「うーん、さっき言った通り僕も詳しい内容は聞いてないから断言できるわけじゃないけど、荷物運びなら他の男子でも出来るだろうからもっと別のことだと思うよ。ミッドナイト先生は藤丸くんの事名指しで指名してたし」

 

「そうか、知らせてくれてありがとう。緑谷」

 

「ううん!それじゃあ僕はもう行くね―――って、ひっ、ひひ、土方歳三さん!!??」

 

驚愕の声を上げる緑谷の視線の先には、先程タッパから取り出したたくあんをバリバリと齧る土方さん。

一瞬何事かと思ったが、入学当初の緑谷の様子を思い出して納得がいった。

最近なりを潜めていたため忘れていたが、緑谷は本来相当なヒーローオタク。

そんな彼が世間一般的に見ても認知度の高い新選組の、それも副長ともなればひと目でわかるだろう。

良くも悪くも目立つしね……。

 

「ああ?おう、こいつらのクラスメイトか。いつもウチのガキどもが世話んなってるな」

 

「いっ、いえ!!むしろいつも僕のほうが助けられてばっかりで、あの時も藤丸くんがいなかったらどうなってたか……」

 

あの時?

緑谷が言うあの時と言うのはもしやヴィラン連合がUSJを襲った日のことだろうか。

だが、それを言うならば俺だって緑谷に助けられた。

 

「それを言うならお礼を言うのは俺の方だよ。あの時緑谷君が居なかったら俺はあの脳みそヴィランの一撃で最悪死んでた。助けてくれてありがとう、緑谷君」

 

「ええっ!?いや、そ、そんな大層なこと、僕はしてないよ。僕はずっと君の後ろで震えてただけだった……。けど、もしもまた君がまたピンチになったら、今度は僕が!君を助けてみせるよ」

 

そう言って緑谷は力強く笑う。

普段は見せない不敵な顔だ。

瞳の奥からはあの時と同じ、強い意志を感じる。

ああ、やっぱり君は俺が憧れる人たちと同じなんだなぁ。

きっと今は俺のほうが強くてもきっとすぐに追い抜かれるだろう。

そもそも前世なんてものの記憶がある上にそれが人理の救済なんて大それたことをしているんだから十数年しか生きてない学生にまるで歯が立たないなんてそれこそ俺に力を貸してくれた彼らに申し訳が立たない。

だがやはり本質が俺と彼らとでは違うのだ。

それでも俺はこの世界で英雄になりたいと望んだ。

自分でも欲張りな望みだと分かってる。

俺の力は他人の頑張りの表面だけを真似て勝手に振るう偽物だ。

それでも俺は対等になりたかった。

君達の後ろではなく、隣に並び立ちたいと思った。

だから、俺は答え無くてはならない。

彼の言葉に。

 

「ありがとう。これから、頑張ろうね」

 

「――?う、うん!頑張ろう!」

 

突然の的はずれな言葉に緑谷君は一瞬呆けた顔になったが、彼の中で上手くいい方向へ解釈してくれたのか、笑顔で返事をしてくれた。

俺自身もまだしっかりと目標を見つけられた訳ではない。

俺はヒーローという職業が当たり前になったこの世界で彼らのようになりたいと思ったが、どうすれば彼らのようになれるかなんてぶっちゃけ見当もつかない。

別に讃えられたいわけでも、地位が欲しいわけでもない。

答えは未だ見つからず、終着点どころか少し先さえ濃い霧に閉ざされて見えない。

ならば、ヒーローになる過程で何かその切っ掛けだけでも掴めればいいな、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後学校での何気ない話を交えながら俺たちは茶々さんの自信作だというお弁当に舌鼓を打ち、これから始まる午後の部に向けて気合を入れた。

俺は俺の好みに合わせて甘く焼かれた半熟卵焼きを味わいながら何か微妙な違和感を感じていた。

はて、俺たちはなにか大事なことを忘れていないだろうか。

もぐもぐと卵焼きを咀嚼しながら考えるが、どうも上手く出てこない。

 

「リツカ、このお稲荷さんも食べる?茶々の愛情たぁーっぷりこもった手作りだから美味しいこと間違いなし!」

 

「おおっ、食べる食べるー!」

 

まぁ、思い出せないならきっと大したことじゃないだろうし、大丈夫かな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ、これはあれじゃな。迷子というやつじゃな。出口がどっちかさっぱりじゃ」

 

背中にデカデカと今流行りのバンドのロゴが入った黒いTシャツに黒いスカート、腰に真っ赤な薄手のパーカーを巻き、首からは銀のドクロのネックレス。

そして頭には見慣れた帽子をかぶった我らが第六天魔王、今世での名は土方信長。

彼女は現在絶賛迷子ナウである。

今朝方茶々に叩き起こされ、リツカと総司の応援に行くと言われてもぞもぞと起きようとしたものの、実はついさっき帰ってきたばかりで今日が雄英の体育祭だということを完全に忘れて夜通しカラオケ三昧だった彼女は後から合流すると言って二度寝を決行した。

そして昼前にもぞもぞむにゃむにゃと目を覚まし、預かった金で電車に乗ってここまで来た。

言われた通りスタンドへ向かって進軍。

昼食、もとい朝昼兼食を目指して敷地内をズンズンと進んでいったは良いものの、気がついたらよくわからない場所に来ていた。

飾り気のない廊下に自分以外観客や出店のおっさんどももいない。

どうも雰囲気的に関係者以外お断り感満載である。

下手にやらかすと最悪食事が抜きになるのであまり騒ぎを起こしたくないが、結局奴らに弁当を食い尽くされては自分の分の飯はない。

そう思うとさっさとこんなところは出て外に向かいたいところなのだが、再びここがどこか分からないというはじめの疑問に戻ってしまう。

はて、なにか良い手は無いものか。

妙案をひねり出そうと脳みそを絞っていると、通路の向こう側からなにやら声が聞こえてきた。

 

「む?なにごとじゃ?声の雰囲気からしてどうやらあまり穏やかではなさそうじゃのう。喧嘩はだめじゃぞ喧嘩はー。え?お前が言うな?まっ、是非もないよね!……一人で言ってるとなんか悲しくなってくるんじゃが。どれ、少し覗いてみるか」

 

曲がり角からこっそり顔を覗かせると、体格のいいメラメラキンニクンと紅白まんじゅうのような頭をした子供が何やら言い合っていた。

いや、言い合っているというか、声を荒げてるのは一方的にメラメラにんにくの方だけなんじゃが。

っていうかあのメラメラものすんごく見覚えある気がするんじゃけど気の所為かのぅ。

しかし、このタイミングならば好都合ではないか、という思考に至る。

あれだけ堂々とここにいるということは奴は自分とは違ってちゃんと関係者ということだ。

ならば当然出口も知っているだろう。

近寄っただけで汗だかニンニクだかわからん匂いが染み付きそうだが、これも弁当のため。

致し方あるまいて。

 

「いよぉう!そこのモリモリ筋肉ガチムチファイヤーマン!わし出口探しとるんじゃがどっちかしらんか?」

 

「なっ、ガチムチファイヤーだと!?今こちらは取り込み中――き、貴様まさか新選組のとこの小娘か!!?」

 

「……なんだあんた。コイツの知り合いか?」

 

どちらも色んな意味で訝しげな視線を向けてくる。

まだわし何もしとらんよね??

扱い酷くない???

ちょっと涙出てきそうなんじゃが。

まぁ、嘘じゃけど。

じゃがこの火炙りニンニクがムカつくのは嘘じゃない。

そのまま炭になってしまえ。

 

「あいっかわらず暑苦しい奴じゃのー。そしてその隣のはよく見ればさっき遠くからディスプレイに見えてたお主の息子か。うちのリツカと駄妹が世話になっとるのぅ。これからもよろしく頼むぞ」

 

「リツカ、ってことは藤丸の姉貴かなんかか」

 

「おい、この小娘には気をつけろ。こいつと関わると碌な目にあわんからな」

 

碌な目に合わないとは酷い言い草だ。

一体いつこのガチムチファイヤーに迷惑をかけたというのか。

被害妄想も大概にしてほしいものだ。

あと暑苦しい。

肉体的にも個性的にも。

 

「なんだその思い当たることがないかのような顔は!個性無断使用での補導常習犯め!!ここ数年ヴィランとの戦闘の最中にふらりとどこからかやって来た貴様の攻撃に誤射されかけた回数は数え切れん!!」

 

「なんじゃとぅ!?それだとまるでわしの腕が悪いように聞こえるじゃろうが!しっかり狙って貴様に撃っておるわ!!」

 

「尚質が悪いだろうがァ!!!」

 

「………」

 

二人がやいのやいのと言い合っている内に轟焦凍は歩き出す。

頭のおかしな連中にかまっている暇はない。

瞳に冷たく暗い闇を宿して、彼はその場を去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみにその頃丁度弁当は完食されていた。

それを彼女が知る術はない。

 

 

 

 

 

 

 

 




茶々とノッブ(織田の方々)の定まらない口調難しすぎぃ……
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